10月10日 2014年の保険給付伸び率 
Source :2014 Segal Health Plan Cost Trend Survey (Segal Consulting)
上記sourceは、保険加入者一人当たりの保険給付の伸び率を推計したものである。ポイントは次の通り。
  1. 出来高払い制の保険プランでは10%程度の伸びが続くものの、その他は10%を下回り、概ね8%前後にとどまりそうである。診療給付、処方薬ともに、2013年を若干下回る伸び率になりそうだ(Table 1)。

  2. より長期に、2002年からの推移を見てみると、2000年代前半の10%以上の伸びにはならないものの、大きく抑制されたという印象も持てない(Table 4)。

  3. 予防診療が義務付けられたことによる影響の大きさについて、影響なしとの回答が25%、2%以内と回答した割合が50%であった(Graph 1)。
いずれにしても、アメリカ国民は引き続き医療費の高い伸び率に悩まされるようである。

※ 参考テーマ「医療保険プラン

10月9日 CO-OPとExchange保険料 
Source :Lower premiums in CO-OP states (POLITICO)
HHSが公表したExchange保険料(「Topics2013年9月28日 Exchangeの保険料」参照)をもとに、National Alliance of State Health CO-OPs(NASHCO)が行なった分析によると、同じレベルの保険プランを比較すると、"Consumer-Oriented and -Operated Plan (CO-OP)"が参入した州のExchange保険料平均は$318/M、参入していない州のそれは$347/Mとなり、8.4%低い水準に抑えられている。

CO-OPは、PPACAにおける保険料抑制策の一つの柱であり、Obama政権としては期待するところ大である(「Topics2013年7月9日 CO-OPsの可能性」参照)。設立にあたっては、連邦政府からかなりの補助金が出ているので、イニシャルコストが低い分、当面の保険料が抑制できるのは当然だろう。課題は、今後とも中長期にわたって保険料抑制の要因になり得るかどうか、である。

なお、上記sourceでは、まだCO-OPsに加入した人数はわずかのようだが、NASHCOによれば、10月1日の0時過ぎに、Oregon州のCO-OPsに最初の加入者手続きが完了したそうだ。

CO-OPに関する話題もちらほら出始めたので、新たなIssueとして分類しておくことにしよう。

※ 参考テーマ「CO-OP

10月8日 失業保険の効力低下 
Source :Why Isn't Poverty Falling? Weakening of Unemployment Insurance Is a Pivotal Factor (Center on Budget and Policy Priorities)
2012年の貧困率は15.0%と、2011年とほぼ同様の水準で高止まりしている(「Topics2013年9月20日 無保険者割合は微減」参照)。3年連続の景気回復にも拘わらず、貧困率が改善しない理由の一つは、失業保険の効力が低下しているからだ、というのが上記sourceの主張である。

2010年当時の失業保険の効力が維持されていれば、2012年の貧困率は14.7%に低下していたはず、という推計を示すとともに、失業保険のおかげで貧困層に陥らずに済んだ人数が、2009年をピークに低下を続けており、2012年のその数は170万人にとどまったとの推計を公表している(下図)。
このように、失業保険が貧困層に陥らないように引き上げる力(=失業保険の効力)が低下している理由を、3点挙げている。
  1. 長期失業者が多く、失業保険の給付期間を超えても職が見つからないケースが増えている。

  2. いくつかの州では、州財政の健全化策として、通常給付の給付期間を短縮している(「Topics2011年5月11日 FL州:失業給付を削減」、"STATE UNEMPLOYMENT INSURANCE"参照)。

  3. 最も影響を及ぼしているのが、連邦政府負担の2つのプログラムの給付期間の短縮である。

そうなると、ますます失業保険の効力は低下し、貧困層に陥る人数が増えてしまうのである。

しかし、こうした事態を憂えることも理解できるが、景気回復に伴って、(財政事情によるとはいえ)セーフティネットを縮小しようという動きが明確になる社会は、ある意味健全であり、羨ましい限りである。

※ 参考テーマ「解雇事情/失業対策

10月7日 Medicaidに繋がらない 
Source :Federal Insurance Marketplace Can’t Yet ‘Talk’ To State Medicaid Agencies (Kaiser Health News)
連邦立Exchangeで、深刻なトラブルが発生している。

連邦立Exchangeのwebsiteで、保険加入申し込みの時に様々な情報を入力した後、Medicaid加入資格があると判別したとしても、その情報を申込者の居住地である各州のMedicaid担当部局に送信することができないという。しかも、この状況は、早くとも11月1日までは継続してしまうらしい。

原因は「技術上の問題」とされているが、12月15日までに加入手続きが完了しなければ、来年1月1日からの加入にはならない(「Topics2013年10月3日 Exchange:初日のトラブル」参照)。残された申込期間が極端に限定されてしまう可能性があるのである。

いよいよ、Exchangeの成否が問われる時期が迫っている。

※ 参考テーマ「無保険者対策/州レベル全般

10月5日 Detroit市の挑戦 
Source :Detroit pension proposal would push workers, retirees into 401(k) plan, shut out new employees (AP)
Chapter 9に基づく再建を進めているDetroit City(MI州)は、州職員年金制度の抜本改革を提案した(「Topics2013年7月20日 Detroit市破産申請」参照)。そのポイントは次の通り。

  1. 来年から、新規採用者には現行のDBプランを提供しない。

  2. 来年から、現役職員に対する(DBプランの)受給権賦与を停止する(freeze)。

  3. 制服組以外の職員は、すべて401(k)タイプの年金プランに移行する。拠出額は基本給の5%。

  4. 警察官、消防士の年金プランは変更しない。
当然、労働組合は猛反対しており、仮に決定となったとしても、延々と訴訟が続くであろう。しかし、Detroit市の再建責任者は、連邦破産法が州法に優先する、との立場を貫く決意である(「Topics2013年8月8日 Detroit市再建の争点」参照)。

San Jose市とともに、全米の注目が集まっている(「Topics2013年9月27日 San Jose市の挑戦」参照)。

※ 参考テーマ「地方政府年金

10月4日 AR州Medicaid拡充策を承認 
Source :U.S. clears Arkansas Medicaid expansion proposal (Reuters)
9月27日、HHSは、AR州のMedicaid拡充策を承認する旨、AR州知事に伝えた。AR州は、PPACAの規定に沿ってMedicaidを拡充した場合の連邦政府の負担額を利用して、低所得者層に民間保険プランへの加入を促す方策を提案していた(「Topics2013年3月23日(1) Medicaid拡充へ妥協策」参照)。

同様の提案を、IA州、PA州もしているので、両州議会の対応次第で、連邦政府からの承認が得られる可能性が高まる(「Topics2013年9月23日 PA州:Medicaid拡充代替案」参照)。

本当に、オバマ政権は、なりふり構わずレッドステーツとの妥協策を講じている。

※ 参考テーマ「無保険者対策/AR州」、「無保険者対策/PA州」、「無保険者対策/州レベル全般

10月3日 Exchange:初日のトラブル 
Source :Insurance Markets Open Amid Heavy Volume and Delays (New York Times)
上記sourceに掲載されている事例だけでも、これだけある。おそらく全米各地で、同じようなことが報道されているのだと思う。

また、州によって、Exchangeに対するアクセス数は様々だったようだ。 しかし、ほとんどが保険プランの比較を見ただけで、実際に加入申し込みを行ったのはわずかだったという。

そうした中、CA州Covered Californiaは健闘した模様である(Los Angeles Times)。もちろん、websiteやcall centerが混んでアクセスできないという事態は発生したようだが、それでもwebsiteには500万回、call centerには17,000本のアクセスがあった。しかも、1日夕方にはLAのUnion Stationで記念イベントを開催し、Exchangeの初日を祝ったそうである。

ExchangeはPPACAの重要な柱であり、その入り口であるwebsiteにすら初日からアクセスできないという事態は明らかにまずい。Exchangeへの信頼感が最初から揺らいでしまう。

なお、12月15日までに加入手続きが終われば、来年1月1日から被保険者となる。また、来年用の保険加入申し込みは、3月末まで継続する。

この間、Exchangeは、加入手続きをつつがなく終えることができるだろうか。Medicaid加入資格の審査や保険料補助金の決定もしなければならない。

10月1日は、おしなべて厳しい船出となったようだ。

※ 参考テーマ「無保険者対策/州レベル全般」、「無保険者対策/連邦レベル

10月2日 Stockton市:年金拠出は変更せず 
Source :Stockton releases bankruptcy plan; CalPERS payments unaffected (Sacramento Bee)
9月27日、Stockton市は、市議会に膨大な再建計画を提出した。

注目されていたCalPERSへの拠出金については、今後とも規定通り拠出を継続する、としている。CalPERSはこの計画案を評価するコメントを公表した。

How Stockton plan would close general fund spending gap

by Calpensions
一方、市の財政再建に貢献するのは、@市の職員の大幅削減、ACalPERS以外の債権者に対する債務削減、B新規財源である(Calpensions)。

市当局は、19の主要な債権者のうち、既に14の債権者とは仮合意に至っているそうだ。その説得材料の一つが新規財源で、報道によれば、次の2つが用意されている。
  1. 固定資産税の税収増分

  2. 駐車料金収入
今後のスケジュールは次の通り。

※ 参考テーマ「地方政府年金

10月1日 同性婚は共同納税申告ができるのか 
Source :State Taxes and Married Same-Sex Couples (benefitsattorney.com)
DOMA違憲判決後、同性婚者は連邦所得税では共同納税申告が可能となった(「Topics2013年8月31日 同性婚:連邦税でも認める」参照)。しかしながら、州所得税との関係で、本当に共同納税申告が可能となるのかは、さらに対策が必要と言われている(「Topics2013年9月7日 "State of Celebration" Standard」参照)。

上記sourceでは、『州税においても同性婚者の共同納税申告が可能なのかどうか』という問題について、現状の法制度から中立的に分析している。そのポイントは、次の4つのカテゴリーである。
Group 114州州所得税がない、または州所得税において単独納税と共同納税の間で税率構造が同じであるため、問題は生じない。(この場合、共同納税できるかどうかは、税務計算上の課題ではなくなる、という意味であろう。)
Group 216州州法上、または連邦税と州税の納税形態を統一させるとの州側の要請から、同性婚者は(連邦所得税と同様)州所得税を共同納税することとなる。
Group 34州州法で同性婚を認可しておらず、かつ連邦税と州税の納税形態を統一させる規定がないことから、同性婚者は単独納税せざるを得ない。
Group 417州州法で同性婚を認可していないが、連邦税と州税の納税形態を統一させる規定があることから、同性婚者が州所得税で共同納税ができるようにするためには議論が必要となる。
注目は、最後のGroup 4がどのように同性婚者を扱うのか、である。さらには、州税レベルで共同納税を認めないということになった場合、連邦税レベルでは共同納税が認められるのか、という課題も残される。

※ 参考テーマ「同姓カップル