Source : | Income, Poverty and Health Insurance Coverage in the United States: 2012 (U.S. Census Bureau) |
17日、2012年の所得、医療保険に関する国勢調査の結果が公表された。失業率や就労人口が大きく改善しない限り、リーマンショック以前のアメリカ社会に戻ることは難しそうである。
- 無保険者
無保険者割合は微減となっているが、公的保険(主にMedicare)への加入が増えたことによるものとみられる。2012年はPPACAの効果はまだ出ていなかったといえる。
2011年 2012年 無保険者数 4,860万人 4,800万人 無保険者割合 15.7% 15.4% 公的保険加入割合 32.2% 32.6%
- 貧困層
貧困者数は4,650万人、貧困者割合は15.0%と、2011年とほぼ同様の水準。ただし、リーマンショック前の2007年よりは2.5%pt上昇している。
※ 参考テーマ「無保険者対策/連邦レベル」、「人口/結婚/家庭/生活」
Source : | The Attack on Self-Insurance (Wall Street Journal) |
少し前に、PPACAでコスト増になることを回避する手段として、中小企業の間で"self-insurance"への移行が関心を集めていることを紹介した(「Topics2013年5月2日 保険料対策は"self-insurance"」参照)。
その動きが現実のものとなりつつあるようだ。企業提供プランでカバーされている従業員のうち、"self-insurance"に加入している割合は、2000年の49%から2013年には61%に上昇している。今では25人以下の小規模グループでも利用できる"self-insurance"が人気を呼んでいる。2012年の調査では、"self-insurance"に移行した小規模企業の6割が、PPACAを理由に挙げている。
こうした流れに危機感を覚えているのが、PPACA推進派の政治家・団体で、"self-insurance"を『抜け穴』だと位置付けて、何とかその広がりを阻止しようとしている。中小企業の従業員が"self-insurance"に流れてしまえば、Exchangeを通じて加入する健康な若者が減ってしまい、Exchangeでの保険料が高騰してしまうことを恐れているのである。
推進派は、具体的に次の2点を法制化しようとしている。想定以上に高額な医療費が発生した場合、"self-insurance"を提供する企業の負担を肩代わりするのが、"stop-loss insurance"である。企業の規模が小さくなるほど、この"stop-loss insurance"の役割は重要になる。従って、上記1.のように、"stop-loss insurance"の購入を禁止してしまえば、中小企業は事実上"self-insurance"に移行できなくなる。
- 中小企業の"stop-loss insurance"購入を禁止する。
- "Stop-loss insurance"が発動する保険給付総額を大幅に引き上げる。
また、2.のように、"stop-loss insurance"のトリガーをうんと高めてしまえば、中小企業が自ら負担する金額が大きくなってしまうため、中小企業はそのリスクを負えなくなる。
実に無謀な話なのだが、今やExchangeはPPACAの重要な柱であり、これがコケればPPACA推進派にとっては耐えられなくなる。従って、Exchangeを成功させたいがために、その障害となりそうな"self-insurance"への移行を阻止しようという行動につながる。
しかし、上記sourceでも指摘しているのだが、Obama大統領の国民への約束、『望むのであれば、今加入している保険プランを維持できる』という公約は完全に破棄されることになり、それこそ、国民からの怒りを買うことになるのではないだろうか。
※ 参考テーマ「医療保険プラン」、「無保険者対策/連邦レベル」
Source : | California public pension payouts doubled after bump in benefits (Sacramento Bee) |
Sacramento Bee紙が入手したCalPERSの内部資料によると、CalPERSが支給している年金額は、1999年から2012年の間に倍額、場合によっては3倍額になっているという。これらの数字は、年金支給開始の最初の月に支給した額である。CalPERSが公表している数字は、全ての受給者の受取額の平均値であり、月額$2,629となっているが、この内部資料によれば、最初の支給月の平均受取額は$3,025であり、1999年当時の最初の支給月の額のほぼ倍となっている。
1999年 2012年 警官・消防士 : $1,770 ⇒ $4,978 高速道路パトロール隊員 : $3,633 ⇒ $7,418 州保安隊員 : $3,296 ⇒ $6,867
積立不足が膨らみ、CA州財政が厳しくなっている中で、州政府職員の退職者の年金受給レベルはどんどん上昇しているのである(「Topics2012年4月12日 CA州公務員年金の苦悩」参照)。
※ 参考テーマ「地方政府年金」
Source : | The Great Migration (LRP Publications) |
Private exchange(P-exchange)が急速に伸びそうである。そして最近、何かと話題提供の多いDarden Restaurants Inc.が、今年、20万人の従業員を、伝統的なPPOプランからP-exchangeを利用したCDプランへ移行させた(「Topics2012年10月20日 パートタイマーにシフト」参照)。 移行した従業員側では、従来よりも安い保険料でプランの選択肢が増えたため、その加入率は上がっているという。
- P-exchangeへの参加者(Accenture推計):約100万人(2014年)→ 4,000万人(2018年)(「Topics2013年6月15日 Exchange:公 vs 私」参照)
- 2014〜2015年にCDプランへ移行する企業(Alegeus調査):回答者の75%
しかし、上記sourceは、もう少し懐疑的な目でP-exchange、CDプランを見ている。本当に重要なのは、自社プランを止めてしまって一旦P-exchangeに移行してしまったら、引き返すことはできないということである。退路を断ってP-exchangeに移行する企業がこれからどれだけ出てくるのか、注目していかなければいけない。
- 選択肢が多いことが、必ずしも従業員にとって最も適したプランに加入することにはならない。
- 本当に適したプランを選択できるように、従業員教育が不可欠であり、そのコストはばかにならない。
- 医療費コストの上昇に合わせて企業拠出額が増額されるかどうかわからない。Darden社では、インフレ率には連動することになっているが、急速に保険料が上昇していくような局面ではどうなるか。
※ 参考テーマ「Private Exchange」、「CDプラン」
Source : | California lawmakers approve measure to allow driver’s licenses for illegal immigrants (Sacramento Bee) |
CA州議会は、12日、不法移民(正式な入国許可証を持たない外国人)に運転免許証を交付することを認める法案(AB 60)を可決した。州知事も署名する意向だ(⇒10月3日署名、法案成立)。これで、同州における長い論争に終止符が打たれた。(「Topics2012年10月3日 CA州:退去猶予者に運転免許証」、「Topics2013年8月28日 退去猶予者への免許付与」参照)
ただし、まったく同じ運転免許証が交付されるわけではない。不法移民に対して交付されたという『特別印』が付されることになっている。アメリカ社会における運転免許証に対する信頼感を考えれば、当然の措置であろう。不法移民支援団体も、不満ながらも大きな前進ととらえている。
また、運転免許証を発行するための手続きを経ることで、国外退去命令対象者リストを簡単に作成できるようになるということも忘れてはならない。
※ 参考テーマ「移民/外国人労働者」
Source : | Jerry Brown, lawmakers poised to hike California’s minimum wage to $10 (Sacramento Bee) |
CA州議会上下両院民主党は、最低賃金引き上げ法案(AB 10)を可決する意向を固めた。州知事も署名する意向を明確にしている。(⇒9/25署名)
最低賃金の引き上げスケジュールは次の通り。CA州商工会議所は、エネルギーコストが嵩んでいるうえに、PPACAへの対応もあり、とても耐えられるものではない、として反発している。同商工会議所の推計では、4.8〜6.8万人の雇用が失われるという(Sacramento Bee:Editorial)。これを受けて共和党は反発しているものの、既に諦めモードに入っているようだ。
- 現 行:$8(2008年〜)
- 2014年7月1日〜:$9
- 2016年1月1日〜:$10
この法案が正式に成立すると、アメリカ国内で初めて、$10/hの最低賃金制度となる。※ 参考テーマ「最低賃金」Consolidated State Minimum Wage Update Table (Effective Date: 01/01/2013)
source:Minimum Wage Laws in the States - U.S. Department of Labor
> Federal MW
Equals Federal MW of $7.25
< Federal MW
No MW Required
AK - 7.75
DE
AR - 6.25
AL
AZ - 7.80
HI
GA - 5.15
LA
CA - 8.00
IA
MN - 6.15
MS
CO - 7.78
ID
WY - 5.15
SC
CT - 8.25
IN
TN
DC - 8.25
KS
FL - 7.79
KY
4 States
IL - 8.25
MD
5 States
MA - 8.00
NE
ME - 7.50
NH
MI - 7.40
NJ
MO - 7.35
NY
MT - 7.80
NC
NV - 8.25
ND
NM - 7.50
OK
OH - 7.85
PA
OR - 8.95
SD
RI - 7.75
TX
VT - 8.60
UT
WA - 9.19
VA
WV
WI
19 States + DC 22 states
Source : | G.O.P. Eyes Hard Line Against Health Care Law (New York Times) |
先に紹介したように、10月半ばには、連邦政府の債務が上限に達する見込みである。これを睨みながら、連邦議会での議論が行われる予定だが、上記sourceによれば、連邦議会下院の共和党は、今週中に2つの決議案を可決したいと考えている。これにより、下院共和党幹部は、『PPACAの本格実施を遅らせれば、債務上限の引き上げに応じる』とのメッセージを発していると解説されている。
- 10月1日〜12月13日までの期間、連邦政府債務上限を現行レベルとする。 ⇒ これは、強制歳出削減の継続を意味する。
- PPACA絡みの歳出を削減する。
共和党支持の保守層からは、PPACAに真っ向から反対しろ、との批判が出ているそうだが、現実的な行政サービスの継続と医療保険改革を取り引きにするというのは、国民の目から見ても理不尽なものと映るだろう。本当にそんなことが実現すれば、ただでさえPPACA本格実施目前で混乱している州政府・地方自治体が、大混乱に陥ることは間違いないだろう。
※ 参考テーマ「無保険者対策/連邦レベル」、「政治/外交」
Source : | Immigration Reform Falls to the Back of the Line (New York Times) |
現在、連邦議会は、内戦状態にあるシリア問題で持ちきりである。例え、この問題に早々に決着がついたとしても、今度は、連邦政府の債務上限をどうするか、という財政問題が待ち構えている。いずれもすんなりと与野党の間で結論が出てくるとは思えない。
そうした中、下院での移民制度改革法案(S. 744)の議論がストップしてしまっている。来年は中間選挙の年であり、来春には共和党の下院議員候補者選挙が始まる。そうなると、下院議員達はますます態度を硬化させ、決着は中間選挙後に先送りという可能性もある。
こうした事態に、移民法改革推進派が焦りを見せているのは当然として、ビジネス界も早く議論を進めるように求めている。110人の人事担当役員が署名したレターをベイナー(R)、ペロシ(D)両下院議員に送付し、上院とよく協議して今年中に決着するよう求めている。また、USCCも、450社以上が署名した7月のレターを改めて送付した(New York Times)。
※ 参考テーマ「移民/外国人労働者」
Source : | Poll shows healthy young adults may keep Obamacare afloat (Reuters) |
Exchangeで提供される保険プランの保険料がどれだけ安く抑えられるかどうかは、健康な若い無保険者がどれだけExchangeに参加するかにかかっている。
19〜34歳の無保険者を対象に調査したところ、約1/3の回答者が、Exchangeを通じて保険プランを購入する可能性があるとしている。現在、19〜29歳の無保険者は約1,600万人いることから、この回答率の半分でも実際に保険プランを購入することになれば、Obama政権が目標として掲げている270万人の若い無保険者の保険加入が実現することになる。
実際、若者は、ただ保険加入する考えがあるかと質問されるとノーと回答するが、保険料補助金の説明を聞くと多くが考え直すという。
ここまでは、よかったね、という話で済むのだが、同じReutersの記事で、企業提供保険プランの社会的位置付けを大きく変えてしまうかもしれない研究結果が紹介されている(Reuters)。そのポイントは次の通り。ということで、表面では大きな変化はなさそうであるが、大きなマグマを抱えていることになる。もしも、低中所得者層が『勤務先の保険プランじゃなくてExchangeで加入したい』と言い出したら、企業側はどう対応するのだろうか。ペナルティを覚悟でExchange加入を認めてあげた方が従業員の福利厚生の向上に役立つ、という判断になるのだろうか。もしそのようなマグマが動き出したら、連邦政府の負担はとてつもなく大きなものとなってしまう。
- 現在、企業提供保険プランに加入しているアメリカ国民は、約1億7,000万人いる。
- そのうち、最大で3,700万人は、企業提供保険プランに加入するよりも、Exchangeで保険加入する方が経済的に有利となる。これは、Exchangeを通じて加入することで、保険料補助を受けることができるからである。
- 仮に、3,700万人全員がExchangeに移行した場合、連邦政府が追加負担する保険料補助額は$132Bに達する。
- 企業提供保険プランの保険料が毎年$100ずつ上昇する場合、毎年約225万人がExchange加入の方が有利になり、連邦政府の追加負担は$6.7Bずつ増えていく。
- 企業側は、今のところ、採用に有利であること、ペナルティがあること、などから、保険プランの提供をやめると決めているところは稀である(「Topics2012年9月16日 企業提供プランへのこだわり」参照)。
この問題も、思わぬ大きな副産物となる可能性を孕んでいる。
※ 参考テーマ「無保険者対策/州レベル全般」、「医療保険プラン」、「無保険者対策/連邦レベル」
Source : | GE, IBM Ending Retiree Health Plans in Historic Shift (Bloomberg) |
退職者医療プランをprivate exchangeへ移行する動きが具体化し始めた(「Topics2012年12月2日 退職者用P-Exchange」参照)。上記sourceによると、GE、IBM、Time Warnerなどの企業が、退職者医療プランをprivate exchangeに移行することを決定し、Caterpillar、DuPontなども移行を検討している。
そのうち、大企業もPublic Exchangeを使えるようになって違和感がなくなってくれば、65歳未満の退職者をPublic Exchangeに移行するようになるだろう。Exchangeの創設は、思わぬ副産物を生んだようである。
※ 参考テーマ「Private "Exchange"」