10月10日 肥満人口上昇 
Source :Adult Obesity Rates Could Exceed 60 Percent in 13 States by 2030, According to New Study (Robert Wood Johnson Foundation)
アメリカ人の肥満人口が上昇を続けている。上記sourceは、2030年までの予測を州別に行っている。そのポイントは次の通り。なお、ここでは、BMI30超を肥満、25〜30を太り過ぎ、25未満を健康体と定義している。
  1. 2011年時点で、アメリカ人(成人)の肥満人口割合を州別に見ると、最高はMS州の34.9%、最低はCO州の20.7%となっている。
  2. 今の増勢が継続すると、2030年時点で、MS州の肥満割合は66.7%、最低のCO州でも44.8%に達する。
  3. 肥満に関連する医療費は、現時点で$147〜210B(年間)とみられているが、2030年までにかけて、さらに$48〜66B(年間)増加すると推計される。
  4. 仮に、全成人がBMIを5%下げることができれば、各州の医療費は6.5〜7.9%引き下げることができる。
何ともすさまじい推計である。決して他人事ではない。気をつけなければ。

ところで、レポート本体を眺めていると、生後6ヵ月間母乳のみで育てる母親の割合と成人の肥満割合が反比例している、との説明があった。
これって、日本でもあてまはるのでしょうか?

※ 参考テーマ「人口/結婚/家庭/生活

10月9日 NY州:Medicaid改革の成果配分 
Source :New York’s Medicaid Reforms (New York Times)
上記sourceは、New York Times紙の論説で、『NY州のMedicaid改革により、連邦政府には$17Bの歳出削減効果があるのだから、そのうち$10BくらいはNY州に還元すべきだ』という主張だ。

NY州のMedicaidは、約500万人(州人口の約1/4)が加入する全米最大の制度であり、年間$54B以上が支出されている。

昨年法制化されたNY州のMedicaid改革の内容は次の通り。

こうした改革を進め、他州の見本となるような成功を収めることができれば、今後5年間で、連邦政府負担分は$17Bも削減できることになるので、そのうちの$10BはNY州政府に還元すべきである、と主張しているのである。

改革の手法としてはかなりマイルドな手法であり、どこまで実効があがるのか、長期的視点で確認するしかないようなやり方である。さらに、今のような高い失業率(NY:9.1%(July))が長期間継続すれば、Medicaid加入者も増えてくる。本当に全米のお手本になるのか、じっくりと見極めていきたい。

※ 参考テーマ「無保険者対策/NY州」、「解雇事情/失業対策

10月8日 大企業保険プランに追加コスト 
Source :Reinsurance Program Already Causing Migraines for Large Employers (AIS Health)
PPACAの規定により、保険会社とSelf-insured保険プランは、2014年から3年間で$20Bの拠出が求められる(「Topics2010年1月21日(2) 2つの企業提供保険プラン」参照)。応諾義務のある個人・小規模グループ保険プラン用の再保険財源としてプールされることになっている。

加入者一人当たり$60〜100の負担となる見込みであるが、保険会社は加入者や小規模企業に転嫁することができるし、再保険のメリットも享受できるが、self-insuredの企業にとってメリットは見当たらない。一方的な負担であり、見方によってはself-insuredプランを提供していることに対するペナルティともとれる。

このような課金が行われた結果、
  1. Fully-insuredに移行する
  2. 保険プラン提供を止めてしまう
  3. 対象とする従業員を限定する
といった対応が出てくるのではないかと見られている。"Exchange"の動向と相俟って、大企業の保険プラン提供は縮小方向にあるとみてよいだろう。

※ 参考テーマ「医療保険プラン

10月7日 年金保険料引き上げ必至 
Source :Payroll Tax Cut Is Unlikely to Survive Into Next Year (New York Times)
上記sourceは、"Fiscal Cliff"(財政の崖)が注目されている中、その要因の一つとなっている年金保険料の引き上げは避けられないだろう、との見通しを紹介している。

年金保険料は、景気対策として、本人負担分が6.2%から4.2%に引き下げられている(「Topics2012年2月18日 協議成立」参照)。議会が何も行動をとらなければ、自動的に本来の6.2%に戻ってしまう。まさに崖が立ちはだかることになる。

この問題について、ガイトナー財務長官は、再三にわたり、『暫定措置であり、延長を支持する理由は見当たらない』としている。財政健全化と公的年金財政に責任を持つ立場からは当然の発言だろう。ただし、ガイトナー長官は、もう次期政権では入閣しないと決意表明している。

第2に、民主党下院のトップ、Pelosi議員が『特例引き下げは廃止すべき』としている。元々、特例引き下げに反対している立場であり、これも当然だろう。

最後に、CBOの試算では、法律通りに年金保険料引き上げされた場合、税収は$85B増加する(「Topics2012年8月23日(1) Fiscal cliffの影響」参照)。財政赤字削減には大きな効果をもたらすのである。

果たしてこうした結末をむかえることができるような政治状況になっているのかどうか。11月の選挙後にしかわからない。

※ 参考テーマ「公的年金改革

10月6日 株高で積立比率改善 
Source :US plans manage modest funding recovery in Sept. (Mercer)
S&P 1500のDBプランは、9月中に株式が約3%上昇したことを受けて、資産の改善が図られた(「Topics2012年8月8日 企業DBプランの危機」参照)。
2011/9/302012/6/302012/7/312012/9/30
積立不足$480B$543B$689B$593
積立比率75%74%70%73%
このため、上の表の通り、7月から9月にかけては積立不足が縮小し、積立比率も改善したが、その改善度はわずかなものにとどまっている。1年前の2011年9月末と比べれば、悪化していることに変わりはない。

(Mercer>
※ 参考テーマ「DB/DCプラン

10月5日 Chicago市長の危機感 
Source :$1.5 billion a year cost to fix pensions? (Chicago Tribune)
10月1日、Chicago市議会で、 との監査報告が行われた。

これを受けて、Emanuel市長は、『(イリノイ)州政府には、州政府職員年金だけでなく、自治体の年金改革も推進してもらいたい。』と発言している。自治体単独では解決できないほど深刻な危機であるとの認識を示したものと思われる。

そのイリノイ州政府職員年金も、全米中最悪の状況にあり、しかも小手先の弥縫策にしか着手できていない(「Topics2012年9月25日 IL州教職員年金:予定利率引き下げ」参照)。州政府の支援がどこまで自治体に届くのか、極めて不透明である。

※ 参考テーマ「地方政府年金

10月4日 Proposition 32:CA州 
Source :California Is Latest Stage for Election Battle Over Unions (New York Times)
CA州で、労組活動に打撃を与える可能性のある州民投票が正式に提案されている。内容は以前、当websiteで紹介した通り(「Topics2012年6月15日 労組への締め付け:CA州」参照)。

もちろん、労組側は大量資金を投入して反対キャンペーンを張っている。中でも教職員組合が中心になって活動しているそうだ。一方、推進派も保守系団体が後押ししている。今のところ、世論調査では反対派が有利に立っているようだが、立場を決めていない人も2割近くいて、予断を許さない。

先月、州議会が州政府年金改革を決定したが、その内容は、労組の反発で現役世代には影響のないものとなっている(「Topics2012年9月5日 CA州年金改革法案可決」参照)。これに対して、州民達がどのような意見を持っているかが、結果を左右する鍵になると思われる。

※ 参考テーマ「労働組合」、「地方政府年金

10月3日 CA州:退去猶予者に運転免許証 
Source :New law to allow many undocumented immigrants to drive - Gov. Jerry Brown (Sacramento Bee)
9月30日、Brown州知事は決断し、連邦政府が行っている不法移民の退去猶予適用者に対して運転免許証交付を認める法案(AB 2189)に署名した(「Topics2012年8月28日 退去猶予者への免許付与」参照)。州法上、退去猶予を認めた連邦政府書類をもって、新たな移民証と位置付けることにしたようだ。

これで、CA州在住の不法移民の子弟で、退去猶予が認められた者については、運転免許証を取得することができるようになる。これは、生活するうえでも就職するうえでも圧倒的に便利になるばかりでなく、様々な場所に対するアクセスを確保できるようになることを意味する。

アメリカの場合、身分証明書として運転免許証は極めて効力が強く、免許証を提示できれば、ほぼ信用してもらえる。反対派は、このことをもって、新たなセキュリティ上の問題が発生するのではないかと危惧している。

なお、CA州の運転免許証の有効期間は5年が一般的だが、外国人の場合には、VISAの有効期限に合わせて有効期間が設定されることがある。退去猶予期間が2年しかないことを考えると、今回の法的措置によって運転免許証が認められたとしても、有効期間は2年以内に設定される可能性が高い。

ところで、今回成立した法案の内容を読んでいて初めて認識したのだが、運転免許証交付の前提条件として、"Social Security Number"を保有しているが挙げられている。つまり、不法移民はSSNを持っていないので、運転免許証を取得できないのである。おそらく、SSNがなければ、銀行口座も開けないだろう。

退去猶予となったとしても、依然として、生活基盤は不安定なままである。

※ 参考テーマ「移民/外国人労働者

10月2日 民間版"Exchange"を使え 
Source :Sears to overhaul health insurance benefits (Sun-Times)
Searsは、来年から医療保険プランの提供方法を大幅に変更する。そのポイントは次の通り。
  1. 会社は、従業員の家族構成によって、定額の保険料負担を行う。この企業側の保険料負担は、税制上損金算入される。

  2. 従業員は、Aon Hewittが提供する民間版"Exchange"で、用意された5つの保険プランの中から選択して購入する(Plansponsor)。

  3. Aon Hewittの民間版"Exchange"には、保険会社9社が参加している。

  4. Aon Hewittの民間版"Exchange"で提供されている保険プランでは、病歴や健康状態によって加入を拒否されることはない(応諾義務)。
まるでPPACAに基づく"Exchange"のようだが、このような民間版"Exchange"は、20以上の州で運営されている(Kaiser Health News)(「Topics2012年6月2日 民間版Exchange」参照)。2014年から正式に創設・運営される公営"Exchange"の運営主体として名乗りを上げる可能性もある。

※ 参考テーマ「医療保険プラン」、「無保険者対策/連邦レベル

10月1日 Exchangeを使え:D.C., VT州 
Source :D.C., Vermont May Require Small Employers to Use Only Exchanges (AIS Health)
"Exchange"は、初年度(2014年)こそ連邦政府からの助成が得られるが、2015年以降は独立採算が求められる。今のところ、保険会社から保険料収入の数%(5〜6%)を徴収して運営費に充てることが検討されているようだ。

そこで、Washinigton, D.C.は、従業員100人未満の企業に、"Exchange"を通じた保険加入義務付けを検討している。これは、
  1. 小規模企業従業員の無保険者をなくす
  2. 人口が少ない中で、Exchange運営費を確保する
という2つの狙いがあるものと思われる。

一方、同じように人口規模の小さいVT州は、"Exchnage"に参加する保険会社を2つまでに抑えるとともに、2014年から、個人・小規模企業に"Exchange"を通じた保険加入を義務付ける方針である。さらに、一歩踏み込んで、小規模企業には自ら保険プランを提供することを止め、その従業員が直接"Exchange"で保険プランを購入するよう、推奨している。

VT州の人口規模は、ほぼD.C.と同じであり、狙いは同様であろう。加えて、VT州は、"Exchange"を単一保険プラン実現までの重要なステップとして位置付けている(「Topics2012年9月10日 Exchangeの4プラン:VT州」参照)。小規模企業に保険プラン提供を止めさせようとするのは、その一環として考えれば自然な流れではある。それでも、現在提供しているプランまで止めさせようとするのは、ちょっと性急に過ぎないか。

※ 参考テーマ「無保険者対策/連邦レベル」、「無保険者対策/VT州」、「無保険者対策/その他州