9月10日 AFL-CIOの新戦術 
Source :A.F.L.-C.I.O. Has Plan to Add Millions of Nonunion Members (New York Times)
AFL-CIOが、今後の活動方針として、新たな戦術を打ち出すそうである。主な柱は次の2点。
  1. 労働組合が組織されていない職場の労働者の組合活動への参加を促す。

  2. 路線の近い他の分野の団体との共闘を深める。
1.は、気持ちはわかるが、「どうやって」が難しい。非組合員が労働組合活動に参加して、自分の職場にどのようなメリットがあるのか、実感することは難しいだろう。また、労働組合側も、非組合員に対してどのようなアプローチができるのか、現実的かつ日常的な手段がみつかるかどうか。何よりも、組合費を徴収するのかどうかすら決めていないという。これでは、精神運動だけ、という印象を持ってしまう。

2.の方は、WA州がモデルとなっているそうだ。労働組合、女性活動、移民団体などが、お互いの課題について、協力し合いながら活動を進めるということが実を結んでいる。緩やかな連合体を形成している、ということだろう。これをAFL-CIOは連邦レベルに広げていきたいということである。

ところで、少し前には、州政府職員労働組合に対する風当たりが相当強かったという印象だが、この逆風は収まったのであろうか。それとも、今後とも官民労組の溝を抱えながら、新たな戦術を進めようとしているのであろうか。

※ 参考テーマ「労働組合

9月9日 Exchange速報 
Source :An Early Look at Premiums and Insurer Participation in Health Insurance Marketplaces, 2014 (Kaiser Family Foundation)
上記sourceは、2014年のExchangeに関する情報を開示している17州+D.C.について、分析を行ったまとめである。州によって、また地域によってまったく異なる様相となるため、「平均」などという概念は使えそうもない。

それでも、一応気になる情報をまとめておく。
  1. 州単位で見た場合、Exchangeに保険プランを提供する保険会社の数には、大きな差が生じている。一番少ないのは2社のみ。一方NY州では16社も参加している。

  2. 同じbronzeクラスの保険プランでも、その保険料は、Baltimore(MD)の$146からBurington(VT)の$336まで、大きな差がある。

  3. ざっと眺めてみたところでも、やはりMD州の保険料はかなり抑制されている印象を持つ。
アメリカ国民は、他州の保険プランの情報を目にして、どのような印象を持つのであろうか。

※ 参考テーマ「無保険者対策/州レベル」、「無保険者対策/MD州

9月8日 労組はもはや反対勢力 
Source :Labor's Love Lost Over Obamacare? (The Huffington Post)
2010年当時、あれだけPPACAを応援していた労働組合は、いよいよ本格施行を迎えるという段になって、反対勢力の最右翼に立っているという。上記sourceが列記している反対の理由は次の通り。 いずれも当websiteで紹介してきた内容である。確かにこれだけ材料が揃うと、反対に回っても仕方ないだろう。しかし、労組にとっては、時すでに遅し、である。PPACAの本格施行を止められる訳ではなく、Obama大統領も既に二期目に入っている。政治的代償を求めるには、民主党そのものとの軋轢を覚悟しなければならない。

※ 参考テーマ「無保険者対策/連邦レベル」、「労働組合

9月7日 "State of Celebration" Standard 
Source :IRS Issues “State of Celebration” Guidance for Same-Sex Couples - Further Guidance by 24 States May Be Required (Tax Foundation)
表題は、『挙式地原則』とでも意訳すればよいのか。今回の同性婚に関する連邦税の扱いは、この『挙式地原則』に基づいたものだ、という訳である(「Topics2013年8月31日 同性婚:連邦税でも認める」参照)。対立する概念は、"State of residency" standard,『居住地原則』である。

上記sourceは、当websiteが呈示した『同性婚カップルは州税について共同納税申告できるのか』という疑問点に示唆を与えてくれている。少し丁寧にポイントをまとめておきたい。
  1. Maryland州(MD)は同性婚を認めている。すぐお隣のVirginia州(VA)は認めていない。両州で、『居住地原則』の場合と『挙式地原則』の場合を比較すると、連邦・州の納税申告書の扱いが異なってくる(上記sourceの"Table 1")。MD州では、どちらの原則であっても、同性婚カップルは連邦税・州税とも共同納税申告が可能となる。一方、VA州では、『居住地原則』の場合、連邦税・州税とも共同納税申告はできなくなる。また、『挙式地原則』の場合は、連邦税では共同納税申告が可能となるが、州税では州法がどう規定するかにかかってくる。

    今回、IRSが示したガイドラインは『挙式地原則』を採用している。MD州では連邦税・州税とも共同納税申告が可能となるが、VA州では今後の州税法の規定次第で、州税の共同納税申告が可能となるかどうかが分かれる。

  2. 大半の州は、税額計算の簡素化、記録保存、虚偽申告防止等の観点から、州納税申告書と連邦納税申告書との連動を図っている。MD, VA州とも、連邦納税申告書で算出した"Adusted Gross Income (AGI)"から、州所得税の計算を開始するようになっている(上記sourceの"Table 3")。

  3. 同性婚を認可しておらず、かつ州納税申告書で連邦納税申告書との連動を持っている州は、全部で24州ある。これら24州は、2014年の納税申告書提出時期までに、なんらかの申告ガイダンスを示す必要がある。

  4. これらの州では、同性婚カップルは、州納税申告書では単独、連邦納税申告書では共同となる。ところが、通常、州法で連邦納税申告書と州納税申告書の納税単位を一致させるよう求められている。これは不可能となるので、州政府としては何らかの解決策を示す必要がある。

  5. これらの州に居住する同性婚カップルが連邦税で共同納税申告書を提出できるようにするためには、次のような方策が考えられる。

    1. 共同連邦納税申告書とは別に、同性婚カップルの双方について『仮の単独連邦納税申告書("dummy")』を用意し、州納税申告書では、このdummyとの連動を求める。

    2. 共同連邦納税申告書に記載したAGIの分割を認め、その半額をそれぞれの単独州納税申告書に記載する。

    3. 共同連邦納税申告書を提出した同性カップルが共同州納税申告書を提出できるよう、新たな納税単位を創設する。

  6. 連邦納税申告書と州納税申告書の連動を断ち切るというやり方もあるが、これは全納税者にこれまでにない事務負担を求めることとなるほか、企業活動に対しても優しくない制度となってしまうので、選択すべきではない。
上記5.に示された解決策は、同性婚者が共同連邦納税申告書を提出できるようにするためのものである。しかし、同性婚を認めていない州政府・議会が、同性婚者にとってメリットとなる共同連邦申告書を提出可能とするよう対策を講じることがあるのだろうか。何も対策を講じないまま、連邦納税申告書と州納税申告書の納税単位を一致させるよう求め続けることとすれば、同性婚者は連邦・州とも単独での納税申告を継続せざるを得なくなる。つまり、州レベルでは意図的に『居住地原則』を維持するのである。州知事・州議会が、政治的な判断として、こうした選択を採り続けることも充分あり得るのではないだろうか。

同性婚者が共同連邦納税申告書を本当に提出できるようになるのかどうかは、この24州の判断にかかっているのである。

その他、関連事項で初めて知ったこともあったので、以下にまとめておく。 最後に、「Topics2013年8月31日 同性婚:連邦税でも認める」で、例示として『仮に、NY州の同性婚カップルが転居先のAL州で州納税申告書を提出する場合、両方に所得があると州税での共同納税申告はできず、単独納税申告書を提出することになる。』と記したが、Alabama州の州所得税計算は連邦納税申告書との連動がなく、不適切な例示であることが分かったので、修正しておく(上記sourceの"Table 3")。

※ 参考テーマ「同性カップル」、「無保険者対策/連邦レベル全般」、「ベネフィット

9月6日 MI州:Medicaid拡充決定 
Source :Delay in Medicaid expansion to cost Michigan $7M a day in lost federal funds (Detroit Free Press)
9月3日、MI州議会下院は、Medicaid拡充法案を圧倒的多数で可決した(「Topics2013年8月30日(1) MI州:Medicaid拡充へ」参照)。州知事は、10日間の訪中貿易ミッションから帰国した後に署名すると明言している。これで、Medicaid拡充を実施するのは、24州+D.C.となった。
Exchange & Medicaid (2013.9.3.現在)

State Health Insurance Marketplaces (CMS)
Health Reform's Medicaid Expansion (Center on Budget and Policy Priorities)
ところが、施行時期は、来年3月終わりから4月初め頃となるそうだ。今年1月からの施行について、州議会上院での賛成が足りなかったためである。このため、来年4月頃までは、拡充Medicaidの受給資格のある人でも、Medicaidにしばらく加入できないことになる。しかも、一定期間Medicaidに加入できないことで、加入義務違反のペナルティを課される可能性がある。

期の途中から拡充することが認められているとはいえ、ペナルティとの関係は明確にしておく必要があるだろう(「Topics2013年8月17日(1) Medicaid拡充の努力」参照)。

※ 参考テーマ「無保険者対策/MI州

9月5日 大企業の医療コスト:傾向と対策 
Source :Large U.S. Employers Project a 7% Increase in Health Care Benefit Costs in 2014 (National Business Group on Health)
上記sourceは、National Business Group on Healthという団体が大企業を対象に行った医療コストに関する調査の結果である。ポイントは次の通り。
  1. 2014年の医療保険プランのコストは7%増と見込んでいる。この伸び率は、3年連続同じものとなる。

  2. 2017年までは大企業はExchangeを利用できないが、一定の関係者が活用できるのではないかと期待している。
    • COBRA加入者にとって有効な選択肢 → 41%
    • 65歳未満の退職者にとって有効な選択肢 → 26%
    • パートタイマーにとって有効な選択肢 → 20%

  3. CDHP(consumer-directed health plan)の活用が医療保険コストの抑制に有効と考えている企業が36%を占める。
    • 少なくとも1つのCDHPを提供している企業 → 72%
    • CDHPのみを提供する企業が増えている。2013年 19% → 2014年 22%

  4. 従業員の健康管理に注力する企業が増えている。
    • 事業所内に診療所を設置している企業 → 44%。来年設置を予定している企業 → 9%。
    • 禁煙プログラムを提供している企業 → 89%
    • 肥満防止プログラムを提供している企業 → 55%
CDHPとカフェテリアプラン、そしてHSAと高免責額、これらを組み合わせてコスト管理をしようという考え方である。よく言えば従業員の自主性による部分の拡大、悪く言えば従業員への負担のシフトが進んでいるようだ。

※ 参考テーマ「医療保険プラン

9月4日 結婚証明書は不要? 
Source :FINDINGS FROM SURVEY OF LARGE EMPLOYERS ON SAME-SEX BENEFITS COVERAGE (THE ERISA INDUSTRY COMMITTEE)
上記sourceは、6月のDOMA違憲判決を受けて、ERICが大企業を対象に調査した結果である。気付きの点は、次の通り。

  1. 大企業では、既に同性カップルに対するベネフィット提供が進んでいるので、連邦最高裁判決を受けてベネフィット提供プランの見直しを行う予定にしているところは少ない。


  2. 現状、配偶者にベネフィットを提供する要件として、結婚証明書を必要としている企業は意外と少ない。異性婚は58%、同性婚は38%しかない。どちらも求めてないという企業も35%に達する。同性婚の場合は、法的なステータスが州によって区々なので、根掘り葉掘り聞き出すのはやめて申請ベースで提供しているということなのだろう。大企業はこれまで同性カップルに対して寛容であったと思われる。
  3. ところが、DOMA違憲判決を受けて、配偶者にベネフィットを提供する要件として結婚証明書を求めるように変更すると回答した企業が4割以上に達している。おそらく、連邦法上、同性婚が認められることになれば、異性間、同性間にかかわらず、結婚しているかどうかのステータスを確認する動きが強まってくるのだろう。
  4. 他州での婚姻を含め、同性婚を認めていない州に居住する同性相手を婚姻上の配偶者として認めるかどうかについては、方針が分かれている。どこに居住していても配偶者として認めるという寛容な姿勢を示している企業が15%ある一方、同性婚を認めている州に居住する場合のみ配偶者として認めるというシビアな姿勢を示している企業が11%となっている。

    もちろん様子見が大半なので、これからの政府の動き次第なのだが、それでも、明確に同性婚を認めている州だけ、という判断をしているところが既に1割もあるという現状は、注目しておいてよいだろう。もしかすると、州税での扱いが影響しているのかもしれない(「Topics2013年8月31日 同性婚:連邦税でも認める」参照)。


※ 参考テーマ「同性カップル

9月3日 保険料を払わなかったら? 
Source :Readers Ask: Will Premium Subsidies Come In A Lump Sum And What Happens When You Don’t Pay Your Premium? (Kaiser Health News)
FAQの一つに、面白いものがあったのでまとめておく。 途中で保険料を払えなくなると、次の年はペナルティがついてくる可能性があるので、再加入は難しくなるかもしれない。

それから、もう一つ別のFAQ。 うん? そうなると、事前に受け取っていたり、Exchangeから保険会社に送金していた場合、途中で保険料の支払いを止めたらどうなるのだろうか。個人や保険会社に、『補助金返せ』というIRSの請求書が送られて来るのだろうか。ちょっと考えたくない場面である。

※ 参考テーマ「無保険者対策/連邦レベル

9月2日 州政府年金の積立状況とIL州改革案 
Source :Improvement Needed for State Pension Funding Levels (PLANSPONSOR.com)
2011年の州政府年金の積立状況は、2010年よりも悪化したものの、悪化幅は縮小した。 ということで、相変わらずIL州が最悪であるという証拠が出続けている。

そのIL州では、州議会で、州政府年金改革の議論が続いている。現在議論されている素案では、新しい項目が含まれる一方、これまで議論されていながら含まれていない項目もある。 これまで長い間議論を継続していながら、今回の素案に入っていないということは、どうしても小幅な改革にしかならないという妥協のシグナルである。それでも職員労組は、州憲法を盾に強硬に反対しているそうだ。仮に、州議会が法案を成立させることができたとしても、間違いなく法廷闘争となる。IL州政府年金の改善への道は遠い。

※ 参考テーマ「地方政府年金

9月1日 SB市もChapter 9確定 
Source :San Bernardino, California, gets bankruptcy protection (Reuters)
8月28日、連邦破産裁判所は、『San Bernardino市(SB市)は真摯に債権者との協議を続けてきたが、財政破綻状態に陥っている』との判決を下し、『同市はChapter 9を申請する資格はない』とのCalPERSの訴えを退けた(「Topics2012年12月25日 CalPERSの提訴差し止め」参照)。

これで、CalPERSは、Stockton市のケースと同様、破産裁判所の土俵で、他の債権者との間で債権回収論争をしなければならなくなった(「Topics2013年4月30日 いよいよガチンコ勝負」参照)。

これに関し、CalPERSは、『残念であり、今後とも法的根拠に基づき、債権の全額回収を求める。また、控訴裁判所に訴えることも検討する』とのコメントを公表した。

今後の争点は、『州政府年金の債権は、他の債権よりも優先されるか』である(「Topics2013年8月8日 Detroit市再建の争点」参照)。

※ 参考テーマ「地方政府年金