9月30日 AL州移民法:連邦地裁でも勝訴 
Source :Alabama Wins in Ruling on Its Immigration Law (New York Times)
6月に成立したAL州不法移民対策法(「Topics2011年6月11日 最も厳しい不法移民対策法:AL州」参照)に対し、連邦政府、教会指導者、人権グループが訴訟を起こしていたが、28日、連邦地裁はこれらの訴訟を一括して退けた。

これにより、AL州移民法は、依然として全米で最も厳しい内容を維持していることになる。

※ 参考テーマ「移民/外国人労働者

9月29日 保険料の急騰 
Source :Costs Of Employer Insurance Plans Surge in 2011 (Kaiser Health News)
Kaiser Family Foundationの調査結果によると、企業が提供する医療保険プランの保険料は、2011年、急騰したとのことである。家族加入プランで平均9%、単身加入プランで平均8%の上昇となった。診療報酬、高価な新薬、高度な医療技術の普及など、実際の医療コストが上昇したことに加え、医療保険改革法により、26歳まで被扶養者としてプラン加入させることとなったことも効いているようだ。

医療保険料の上昇は、21世紀に入ってからもじわじわと続いており、企業、従業員ともにその重圧のもとにある。

from New York Times
特に、経済の先行き不透明感が高まりつつあり、失業率も高水準で推移しているような状況では、雇用と家計支出に大きな影をもたらすことになる。

医療保険改革法の推進派は、だから保険料の抑制を図らなければいけない、10%ルールを早く施行すべきだ、ということになるのだが、ことはそう単純ではない。例として、NY州では、2012年の個人・小規模企業向け保険プランの保険料については、実際のコストの積み上げだけで見積もっても10%以上とならざるを得ないと見られている(New York Times)。こうなってしまっては、10%ルールも無力である。やはり、根本的な医療コスト抑制策が必要となっている。

※ 参考テーマ「医療保険プラン」、「無保険者対策/連邦レベル」、「無保険者対策/NY州

9月28日 失業者差別禁止 
Source :Obama Proposes Protecting Unemployed Against Hiring Bias (New York Times)
先のObama大統領が提案した雇用拡大戦略には、失業者に対する差別扱いを禁止する規定が含まれている(「Topics2011年9月10日 Obama大統領の雇用拡大戦略」参照)。 実際、こうした内容の求人広告はあるそうだ。当websiteでも何度か紹介しているように、アメリカの失業問題の中で、特に失業の長期化が深刻化している。そうした事態に対処するための規程である。

しかし、こうした規定が法制化されれば、企業にとって最も厄介な差別禁止規定が増える訳で、共和党、企業経営者は「訴訟が乱発される」と強く反発している。実際、失業していることを理由に雇用を断ったかどうかを検証することは難しく、実効性も低いのではないかと思われる。

それでも、大統領が提案せざるを得ないほど、事態は深刻化しているということであろう。

※ 参考テーマ「労働市場」、「人事政策/労働法制

9月27日 移民政策で溝 
Source :Stance on Immigration May Hurt Perry Early On (New York Times)
Perry TX州知事が、移民政策で他候補との間に、自ら溝を作ってしまった(「Topics2011年9月7日 共和党候補者の移民政策」参照)。切っ掛けは、当websiteでも取り上げてきた、不法移民の子弟に対して州民大学授業料を適用するかどうかの是非である。

Perry知事は、『州民授業料の適用に反対するのは、ハートがないからだ』と言い切ってしまったのである。これに対して、Romney候補は、『ハートと頭脳を持っているからだ』と強烈に反論したのである。これは、州知事としてのバックグランドの違いを表わしている。

ご承知の通り、TX州は、不法移民の子弟に対して州民授業料を適用している(「Topics2011年4月16日 MD州:不法移民に州民授業料」「Topics2011年5月17日 MD州:不法移民に州民授業料(2)」参照)。一方、Romney候補は、MA州知事時代に、同様の法案に対して拒否権を発動している。両者の立場の違いは鮮明である。

Perry知事にしてみると、MA州なんかで何がわかるか、と言いたいところであろう。TX州内にはたくさんの不法移民が居住し、その子弟の教育問題や雇用問題で、現実的な対応を取らざるを得ない。こうしたスタンスは地元の経済界からも支持を得ている。

移民政策は大統領選で最優先課題として取り上げられることは少ないが、Perry知事は、Romney候補よりも保守的な候補者として登場してきただけに、ここでRomney候補から保守の立場で攻撃を受けることは打撃である。また、本番の大統領選でも、ヒスパニックの少ない州から始まることは、Perry州知事にとって不利となる。

しかし、同時に、Perry知事が本番の大統領選でヒスパニックから大きな支持を得られる可能性も高くなっている。また、民主党が有利で大選挙区であるNY州やCA州などでも、TX州と同様、州民授業料を適用している。こうした州で、多くの共感を得られるかもしれない。

共和党の候補者選びはまだまだ混乱しそうである。

※ 参考テーマ「移民/外国人労働者」、「大統領選(2012年)

9月26日 企業誘致合戦に疑問符 
Source :US states play tax contest to attract jobs (Financial Times)
アメリカ各州、特に州知事は、自分の任期中にいかに雇用を創出したかをアピールする。雇用創出は州知事にとって最大の任務の一つなのである。従って、企業誘致にあたっては、税制上の恩典や補助金など、あの手この手で働きかける。

ところが、上記sourceでは、こうした各州の企業誘致合戦・雇用獲得合戦に疑問を呈している。その理由は次の2点。
  1. 減税・補助金などに相当のコストをかけているが、それに見合った利点があるのか。

  2. 企業は雇用を右から左に移しているだけで、雇用を新たに創出しているわけではないのではないか。
両方とも当たっている部分もあるだろうし、もちろん、反論可能な部分もあるだろう。当方としては、そうした議論が沸き起こるほど知事が雇用獲得に熱心であることを、羨ましく思う。

※ 参考テーマ「労働市場

9月24日 法案からキャンペーンへ 
Source :2012 Could Be Tie Breaker of Last 2 Cycles (New York Times)
やはり、連邦議会民主党議員達も、『Obama大統領は、(共和党との妥協点を探る)法制化の動きを離れ、(来年の再選を目指した)雇用拡大と財政赤字削減のキャンペーンに軸足を移した』と認識しているようである(「Topics2011年9月21日 大統領の財政赤字削減策」参照)。

しかし、世論調査では、人気は上がらず、仕事に対する評価は下がるばかり。特に、経済政策に対する評価は日増しに悪くなっている(POLLSTER.COM)。さらには、パレスチナの国連加盟申請を阻止できず、おそらく外交面でもマイナスを食らっていると思われる。

※ 参考テーマ「労働市場」、「大統領選(2012年)

9月21日 大統領の財政赤字削減策 
Source :Living Within Our Means and Investing in the Future (Health Care)
19日、Obama大統領は、独自の財政赤字削減策を公表した。柱は次の通り。
分 野主な項目金 額($B)
裁量的経費の削減・農業部門の補助金削減
・連邦政府職員の人件費削減 ほか
256.7
医療費の削減・Medicare/Medicaid削減
・保険料、窓口負担の見直し ほか
320.0
軍事費の削減・海外派兵の縮小 ほか1,084.0
税制改革・富裕層への課税強化
・企業税制の見直し、課税強化 ほか
1,572.6
国債利払費の減額(国債発行額減少に伴う)436.0
合  計3,669.3
(参考)雇用拡大戦略447.1
上記sourceは、医療費削減のメニューをまとめたものである。

これらを見ての感想をいくつか。
  1. 両院協議会に求めた赤字削減策の倍以上の規模であり、かなり驚かされる数字である。

  2. 中身を見ると、富裕層・企業への課税強化が約半分を占めている。さらに軍事費の削減幅も大きい。他方、医療費の削減は全体の10分の1しかない。これでは、共和党に対して厳しく、民主党に甘い提案、と言われても仕方ないだろう。

  3. しかも、Obama大統領は、『増税を含まない赤字削減策には拒否権を発動する』とまで宣言してしまった(New York Times)。これは明らかに共和党に対する挑戦である。

Obama大統領は、『協調路線』を捨て、『対立路線』を選択した。当websiteとしては、『大統領、民主党、共和党の三者のバトルロイヤル』という見方を変更しなければならないようだ(「Topics2011年9月14日 民主党は戦々恐々」参照)。

※ 参考テーマ「労働市場」、「Medicare」、「無保険者対策/州レベル