Source : | Income, Poverty and Health Insurance Coverage in the United States: 2010 (U.S. Census Bureau) |
13日、2010年のセンサス結果が公表された。やはりアメリカ社会は厳しくなっている。当websiteとしてのポイントは次の通り。経済成長はしてきたものの、アメリカ国民の生活は、この15年間、改善していない。
- 家計所得の中位数は、2009年に較べて2.3%低下した。中位数の所得レベルは$49,445と、1997年と同水準である。
- 貧困レベル以下の家庭は15.1%と、2009年の14.3%から上昇した。これも1993年と同水準である。
(New York Times)- 無保険者割合率も、16.1%から16.3%に上昇した。これまで最悪だった90年代後半のレベル以上の水準になっている。
※ 参考テーマ「人口/結婚/家庭/生活」、「無保険者対策/連邦レベル」
Source : | House Clears Bill Restricting N.L.R.B. (New York Times) |
連邦議会下院は、15日、NLRB権限抑制法案(Protecting Jobs From Government Interference Act (H.R. 2587))を可決した(「Topics2011年7月27日 NLRB権限抑制法案」参照)。注目したいのは、その投票結果である。必ずしも完全なパーティーラインになっていないのである。この点を確認するために、次のように投票結果を整理してみる(govtrack.us)。
賛成 反対 無投票 共和党 230 7 4 民主党 8 179 5 独 立 - - - 合 計 238 186 9 南部選出の民主党議員が賛成に回り、北部(特にRust Belt)出身の共和党議員が反対に回ったと言える。来年の選挙のことを考えれば、地元の有権者の意向が気になるところであろう。
- NLRBを巡る論争は、Boeing社が生産拠点をWA州からSC州に移転したことから激しさを増している。そのSC州とWA州の投票結果は、完全なパーティーラインになっている。
- 賛成票を投じた民主党議員の選挙区は次の通り。
GA、OK、TN、TX、UT、NC(2)、AR
- 逆に、反対票を投じた共和党議員の選挙区は次の通り。
PA(2)、NY(2)、OH、WV、AK
こうした傾向が、上院でも見られるのかどうか、注目しておきたい。
※ 参考テーマ「労働組合」
Source : | G.O.P. Gains House Seat Vacated by Weiner(New York Times) |
13日、連邦議会下院の空席となっていた2議席について補選が行われ、いずれも共和党が議席を獲得した。一つは保守色の強いNevada州(第2区)の議席で、これは順当である。
意外な結果となったのは、NY州の議席(第9区)で、共和党が同選挙区議席を獲得したのは1920年以来初、ということである。先の中間選挙では、NY州29選挙区中、21選挙区を民主党が獲得していた。特に、この第9区は、ユダヤ系が多く、民主党の強固な支持基盤のある選挙区であった。それだけに、今回の補選結果の持つ意味は大きい。
上記sourceでは、次のような選挙民の言葉が引用されている。また、民主党候補者が同性婚に賛成したことも悪影響をもたらしたと言われている。
- 私は生粋の民主党支持者なのに、今回は共和党候補者に投票せざるを得なかった。大統領に『いい仕事をしていない。経済はひどい状況だ』と伝える必要があった。
- 社会保障制度に対する心配はあるものの、経済がよくないと伝えることの方を優先した。我々には職が必要である。
いずれにしても、Obama大統領の雇用戦略提案は、カウンターを食らった形になってしまった。
一方、Obama大統領の大胆な雇用戦略提案により、財政赤字縮減策を検討する両院特別委員会のハードルは一気に高まった。与えられた削減目標でさえ、両党代表の間で合意するのは難しいと見られていたのに、大統領からさらに上積みするよう求められてしまったためである(New York Times)。
実際、この資料(New York Times)を見ると、社会保障、税制、防衛といった主要検討項目で、一致を見るのは至難の業である。おそらく、ワシントンでは相当緊張が高まっていると思う。
※ 参考テーマ「労働市場」、「社会保障全般」
Source : | Democrats See Perils on Path to Health Cuts (New York Times) |
やはり、来週の大幅赤字削減提案で、Obama大統領は、Medicare、Medicaidについても大幅歳出削減を提案するようだ。さらには、物価スライドの計算式を変更することにより、公的年金の支給額の伸びを抑制しようともしているらしい(Financial Times)。
こうした観測が流れている中で、連邦議会民主党の議員達は戦々恐々としているようだ。政治信条もさることながら、来年の選挙で共和党を戦う術を失ってしまうという恐怖があるからだ。
また、医療機関も危機感を高めており、上記sourceでは、『医療産業は公共工事の犠牲になろうとしている』とまで述べている。
ホワイトハウスの賭けが、吉と出るか凶と出るか。いよいよ来週は、大統領、民主党、共和党の三者のバトルロイヤル開始である。
※ 参考テーマ「労働市場」、「Medicare」、「無保険者対策/州レベル」、「公的年金改革」
Source : | Obama sends jobs plan to Congress (Financial Times) Tax break cuts linked to Obama jobs plan (Financial Times) |
Obama大統領が、先に公表した『雇用戦略提案』を、法案形式にして議会に送付した(「Topics2011年9月10日 Obama大統領の雇用拡大戦略」参照)。その際、中高所得者層をターゲットとした所得税増税を財源確保策の一つとして提案している。さらに、来週には、大幅赤字削減策の詳細も提案するという。
Obama大統領としては、『これだけお膳立てしてやっているのだがら、連邦議会も早く行動しろ』と圧力をかけているのである。
これはホワイトハウスからすれば賭けのようなものである。大統領は雇用対策を成功させて来年の再選を確実にしたい。連邦議会共和党は、雇用戦略を妨害したとの汚名は着たくない。そこを狙って大統領が強く出ていって、共和党も議論に乗ってくれれば大統領の勝ち。それでも共和党が対決姿勢を崩さなければ、大統領の指導力に疑問符がつく。
さらに、来週になれば、大統領の財政赤字縮減策に民主党議員達がどのような反応を示すのか。これも民主党内でのObama大統領への支持度合いを測る要素となる。
共和党、民主党の双方相撃ちという形が出来上がれば、大統領の政治的勝利となる。
共和党は、増税提案に強く反対を打ち出しており、その姿勢をどこまで貫けるのか。民主党は、財政赤字縮減策をどこまで支持できるのか。三者の睨み合い、根比べがしばらく続きそうである。
※ 参考テーマ「労働市場」
Source : | Employers Say Jobs Plan Won’t Lead to Hiring Spur (New York Times) |
折角のObama大統領の雇用戦略提案(「Topics2011年9月10日 Obama大統領の雇用拡大戦略」参照)であったが、企業経営者は、『医療保険プランのコスト増くらいは相殺できるかもしれないが、雇用を増やす効果までは見込めない』と見ているようだ。何よりも、アメリカ経済の先行きに不透明感が高まっていることが大きく影響している。
これまで雇用増を支えてきた医療産業では、Obama大統領が近日中に提案するという大胆な歳出削減策を不安視している。Medicare関連支出が大幅削減となれば、雇用削減に向かわざるを得ないからだ(「Topics2011年8月19日(1) 雇用拡大策メニュー」参照)。
より深刻なのは、企業は数ヶ月も失業しているような労働者は、何らかの能力が不足しているのではないか、と見ているという。これでは、現在の最大の雇用問題である『失業期間の長期化』を解決できない。やはり、雇用拡大には経済成長が必要である。
※ 参考テーマ「労働市場」