Source : | Poll Finds Americans Gloomy On Some Promises In Health Law (Kaiser Health News) |
上記sourceは、KFFが行った世論調査結果のサマリーである。特徴的なところを2点まとめておく。※ 参考テーマ「無保険者対策/連邦レベル」、「社会保障全般」
1. 約半数の人が、医療保険改革法は無保険者対策として有効であろうとみているが、一方で、同じ数の人が、コスト抑制はできないとみている。この辺りは、同法の審議過程で何度も繰り返し指摘されてきたところである。
それよりも驚きは、消費者保護について、8割の人が改善しないとみているところである。ここには、既往症を理由とした保険加入拒否の禁止、生涯給付上限の撤廃などが含まれている。
Obama政権の広報が行き渡っていない実態が明らかとなっている。2. 財政健全化策の一つとして、社会保障関連の歳出削減が検討されている。しかし、それらの大幅削減に対しては根強い反対があることがわかる。
なお、28日夜に予定されていた下院の債務上限引き上げ法案は、共和党内の賛成票が確保されない見通しとなったために、投票延期となった。歳出の大幅削減を不可欠とする「茶会」の強硬路線は、世間の認識とはかなり距離があるようだ。
Source : | The Impact of the Recession on Employment-Based Health Benefits: The Case of Union Membership (EBRI) |
労組があれば、職場を通じた医療保険プランへの加入割合は高くなるし、従業員の負担増も抑制される。ただし、民間企業では労組加入率が大きく低下しており、公的部門でも若干減少傾向がみられる。保険加入に関する労組の力は、その及ぶ範囲が徐々に狭まっている。それにしても、民間労組の加入率の低下は著しいものである。
- 労組員の方が、保険加入割合は高い。
- 労組員の方が、保険料の水準も引き上げ幅も抑制される。
- しかしながら、民間企業の労組加入率はどんどん低下しているし、公的部門でも低下傾向がみられる。
※ 参考テーマ「医療保険プラン」、「労働組合」
Source : | Federal Auditors Will Soon Review Health Insurance Rates in 10 States (New York Times) |
上記sourceによると、近々、CMSが、10の州の保険監督当局が行っている保険料監督についてレビューを行うという。保険料引き上げに関する監督ルールは、さる5月に定められたばかりである(「Topics2011年5月25日 10%の壁」参照)。このルールに基づいて、CMSがレビューを行うというのだが、州政府側には戸惑いも見られるようである。元々、原則は、医療保険プランの監督権限は州政府にある。そこに、連邦政府が手を突っ込もうとしているのだから、反発は当然だろう。一方で、州政府が小規模グループ保険市場や個人保険市場を(言葉は悪いが)野放しにしてきた面もある。
States レビュー主体 個別事情・反論 Small-group plans Individual plans Alabama 連邦政府 連邦政府 ― Arizona 連邦政府 連邦政府 ― Idaho 連邦政府 連邦政府 保険料に関係する情報は、州法上は企業秘密であり、連邦政府が要求する情報公開はできない。 Louisiana 連邦政府 連邦政府 州法で医療保険料を規制する権限が与えられていない。
保険会社に保険料を報告する義務がないため、引き上げが適正かどうかわからない。Missouri 連邦政府 連邦政府 州法上、保険料引き上げの申請を求めていないし、それを認可するかどうかの権限もない。 Montana 連邦政府 連邦政府 保険料監督権限を州政府に賦与する法案が廃案となった。 Wyoming 連邦政府 連邦政府 連邦政府の決定は州政府が医療保険市場を運営する自由を奪うものである。 Iowa 連邦政府 州政府 CMSの決定に反発しており、再考を要求。
連邦政府の決定は恣意的である。Pennsylvania 連邦政府 州政府 州政府には、小規模グループ保険の保険料をレビューする権限がない。 Virginia 連邦政府 州政府 州政府には小規模グループ保険の保険料を規制する権限がない。
それにしても、州政府が自主的にレビューを連邦政府に委ねるのであればわかるが、連邦政府の方から積極的に介入するというのは想定していなかった。
ここでも、連邦政府と州政府の緊張関係が生まれつつある。
※ 参考テーマ「無保険者対策/連邦レベル」
Source : | Americans Don't Want Biases in Hiring Smokers, the Overweight (Gallup) |
世論調査には、時々面白いものがある。上記sourceは、喫煙、肥満に対するアメリカ社会の許容度を示している。
大雑把に結果をまとめてみると、次のようになる。喫煙、肥満ともに、雇用を拒否する理由にするのは『差別』という認識があると考えられるが、雇用された後、喫煙を理由に高い保険料を課してもよい、という判断である。これは、
質問項目 喫 煙 肥 満 〜〜を理由に追加保険料を課してよいか ○ × 〜〜を理由に企業が雇用を拒否してよいか × × 公共の場は禁煙にすべきか ○ 法律で公共の場を禁煙にすべきか × といったことが背景になっていると考えられる。
- 喫煙が病気を引き起こす原因になるとの認識が共有されている
- 既に喫煙に対する追加保険料が一般化している
一方、肥満については、本当は様々な生活習慣病の原因になるということはわかっているが、自分のお腹を見ると保険料を高くされては困る、と思うのであろう。
別の言い方をすれば、『禁煙はできるが減量はできない』というアメリカ人が多いのであろう。
※ 参考テーマ「医療保険プラン」
Source : | Protecting Jobs From Government Interference Act (H.R. 2587) |
経済界との対立が激しくなっているNLRBに対し、19日、その権限を抑制する法案が提出された。しかも、提出した議員は、SC州選出の共和党下院議員。共同提案者の中には、同じくSC州選出の共和党下院議員4人が含まれている。
法案の内容は至って簡単で、NLRBが、企業に対し、権限を認めない、というものである。
- 雇用、生産、生産ライン、設備の回復を命じる
- 生産活動の移転を無効にする
- 設備投資を要求する
つまり、Boeing社のSC工場を閉鎖させたり、WA州に生産ラインを戻させたりはしないぞ、と言いたいのである(「Topics2011年7月3日 NLRB vs Boeing」参照)。民主党が多数を占めている上院で可決される見込みは低いが、こうした法案提出が地元のSC州へのアピールになる。逆に、SC州選出で唯一の民主党下院議員にとっては、苦しい立場に追い込まれることになる。
※ 参考テーマ「労働組合」
Source : | Medical Loss Ratio (CMS) |
連邦医療保険改革法で定められたMLR(Medical Loss Ratio, 償還割合規制)(個人保険プラン:80%)について、新たに、KY、ND、IAの3州からの特例申請に対する結論が示された(「Topics2011年5月29日 MLRの特例申請」参照)。これまでの結果をまとめると次のようになる。やはり、2013年には80%に持って行きたいという政権全体の意思が感じられる。2012年11月の大統領選を念頭に、その前にできる限り医療保険改革の成果を実感してもらいたいということなのだろう。
州・地域 申請内容 HHS決定 2011年 2012年 2013年 2011年 2012年 2013年 Maine 65% 65% 65% 65% 65% 65% New Hampshire 70% 70% 70% 72% 75% 80% Nevada 72% - - 75% - - Kentucky 65% 70% 75% 75% 80% Florida 保険会社65%
HMO 70%保険会社65%
HMO 70%保険会社65%
HMO 70%(審査中) Georgia 65% 70% 75% (審査中) North Dakota 65% 70% 75% 80%(特例申請却下) Iowa 60% 70% 75% 67% 75% 80% Louisiana 70% 75% - (審査中) Guam 65% 65% 65% (審査中) Kansas 70% 73% 76% (審査中) Delaware 65% 70% 75% (審査中) Indiana 65% 68.75% 72.5% (審査中) 2014年:76.25% 2015年:80% (審査中)
※ 参考テーマ「無保険者対策/連邦レベル」
Source : | Gang Of Six Deficit Plan: Executive Summary (Kaiser Health News) |
連邦債務上限引き上げのタイムリミットが8月2日に迫る中、下院共和党は、大幅な財政支出削減策を盛り込んだ法案を可決した。Obama大統領は拒否権を発動する意向を表明しており、対立はますます激化している。
そうした中、今週に入って、Gang of Sixが復活し、上院両党議員に妥協案を提示した。上院では支持が広がっており、Obama大統領も評価している。しかし、肝心の中身はなかなか報道されず、おそらく上記sourceが初めてと思われる。
当websiteとしての関心事項に関する言及は次の通り。他の政策分野についても同様なのだが、歳出削減のための具体策がなく、すべてを先送りする内容となっている。これでは、下院共和党を突き動かしている財政健全化理念を揺さぶることはとてもできまい。Gang of Sixの提案としても相当後退した感がある(「Topics2011年4月13日(2) Obama vs 上院6人組」参照)。とにかく債務上限引き上げだけを先行させましょうと言っているのに等しいのではないか。
- Medicare、Medicaidの支出効率を高める。ただし、これらの制度の基本的な枠組みは維持する。
- 今後10年間は、"doc fix"を完全履行する。
- 上院財務委員会は、Medicare償還削減プログラムの抜本的改革とそのための財源確保を検討する。
- 2020年以降、連邦政府の医療関係支出全体を見直し、受給者一人当たり支出の伸び率を『GDP伸び率+1%』以内に抑制する。もしその上限を超えてしまった場合には、議会、大統領が適切な措置を講じる。
- 公的年金については、今後75年間の持続可能性を確保する。ただし、財政赤字削減策とは別枠で議論し、公的年金支出の削減は公的年金の財政健全化に利用する。
本当にこれで上院議員達や大統領が支持しているのだろうかと首を傾げたくなる。
※ 参考テーマ「社会保障全般」
Source : | Obama backs repeal of Defense of Marriage Act (Los Angeles Times) |
民主党のDianne Feinstein上院議員が、DOMA廃止法案を提出した。しかし、などから、同法案の成立見込みはまったく立っていない。
- 共同スポンサーは27人しかおらず、filibuster阻止に必要な60票には遠く及ばない
- 下院は共和党が多数となっている
にもかかわらず、Obama大統領が同法案への支持表明を行なったという。上記sourceによれば、連邦議会のどちらの院でも可決していないような段階から大統領が支持を表明するのは異例だそうだ。
NY州同性婚法案成立の際に、Obama大統領は同性婚に対して消極的であると、リベラル派から批判された(「Topics2011年7月1日 同性婚議論に与える影響」参照)。今回のDOMA廃止法案支持表明は、そうした批判を打ち消すための政治ショーの色彩が濃いようである。いや、こうした政治的パフォーマンスを演じるために、大統領側からFeinstein上院議員に法案提出を依頼した可能性が高い。
※ 参考テーマ「同性カップル」