6月10日 Flight Benefits 
Source :American Airlines' Retirees Are Furious Over Changes to Their Flight Benefits (Businessweek)
初めにタイトルを読んだだけでは何の話題なのかさっぱりわからなかったが、航空会社の従業員がただ、もしくは格安の料金で自社のフライトに搭乗することができるベネフィットのことだった。上記sourceは、American AirlinesとUS Airwaysが合併した際に、両社の"Flight Benefits"を見直して整理したことにより、元US Airwaysの退職者が不利になったと怒っていることを伝えている。

11万人の従業員はもとより、その配偶者、子供、親戚、友人、退職者などを含めると、このベネフィットを利用できる人が70万人にものぼる。American Airlinesでは、現役従業員が年間16便、退職者は24便から減らされて8便となっている。

航空会社の説明では、「空席が出た場合にしか利用できないのでコストにはならない」としているが、そもそもそんなにたくさんの従業員が利用できるような空席が出ていること自体、非効率な証拠だろう。

日本の航空会社でもこんなベネフィットがあるのかしら?

(9月11日追記)

9月10日、AA退職者が『不利益変更であり承服できない』と集団訴訟を提訴した(Businessweek)。

※ 参考テーマ「ベネフィット

6月9日 ESOP支援法案
Source :Senator Sanders and Colleagues Propose Innovative Ideas to Encourage Employee Ownership (ESOP Association)
連邦議会のSanders 上院議員(I-VT)は、6月2日、次の2つの法案を提出した。 まだ法案の内容が明らかになっていないので、詳細はわからないが、依然としてESOPは推奨されているようだ。

最近、The National Center for Employee Ownership (NCEO)が公表した、従業員持株会社 TOP 100 をみると、その広がり具合が確認できる。 従業員持株比率が100%の企業の経営者と従業員の関係とは、どのようなものなのだろうか。想像がつかない。

※ 参考テーマ「企業年金関連法制

6月8日 ようやくスタートラインに 
Source :THE EMPLOYMENT SITUATION .MAY 2014 (BLS)
6日に発表された雇用統計は、4ヶ月連続で民間の雇用増が20万人を超えたことから、アメリカ経済が緩やかに回復しているが再確認された。
しかし、いつもの実感失業率を重ねた失業率データでは、不本意ながら職に就けない人の割合は、根雪のように残っており、その外には労働市場から退出した人々がたくさん存在している。
労働市場は失業率だけを見ていると順調に回復を続けているように見えるが、雇用者数では今月ようやく景気後退以前の水準に戻ったに過ぎない(Center on Budget and Policy Priorities)。
失業率が高止まりしたままでは、アメリカ労働市場は構造的に変質してしまいかねない。長期失業者、やむなく労働市場を退出した者達を置き去りにしたままの景気回復では、生活の改善を実感できまい。

※ 参考テーマ「労働市場

6月7日 PPACA財政検証放棄 
Source :CBO throws in the towel on scoring ObamaCare (The Hill)
CBOは、 こととした。PPACAの個別規定を単独で取り出して評価することは不可能、との判断に基づく。

これは民主党政権にとっては願ったりかなったりで、PPACAと財政赤字との関連性を薄めることができる。また、Medicareの"doc fix"も曖昧にされて忘れ去られていくことだろう。

流石のCBOも、手に負えないようだ。

※ 参考テーマ「無保険者対策/連邦レベル

6月6日 医療保険統合への一里塚? 
Source :GOP’s Obamacare fears come true (POLITICO)
医療保険制度改革議論は、もともと民主党リベラル派の発想(「国民皆保険」)から始まっている。共和党などの保守勢力は、州政府の独自性、市場メカニズムの重視といった観点から、医療保険制度改革に反対の立場を取ってきた。

従って、PPACAが妥協の産物として各州毎のExchange創設を含んでいたとしても、PPACAを廃案にするという立場から、共和党は各州でExchage創設に反対してきた。

その結果、州政府独自のExchangeを創設したところは17州(+D.C.)、連邦政府と共同で運営しているところは7州、残りの26州は連邦立Exchangeに押し付けてしまった。さらに、トラブルが発生し、システム構築コストが膨大になったことから、州立Exchangeを諦めて連邦立に移行することを検討しているところが、OR州、MD州、MA州、NV州と4つも出てきている(「Topics2014年5月8日 MA州:Exchange変更の決断」「Topics2014年5月26日 NV州も連邦立を利用へ」参照)。上記sourceによれば、さらに、HI州、MN州、RI州なども危ないと見られている。しかも、共同運営している7州から州立に移行しようとする動きは見られない。
もしも仮に州立を創設した7州すべてが連邦立に移行するとなるとどうなるか。州立Exchangeは、わずか10州(+D.C.)で運営されるのみとなる。

こうした状況は、医療保険制度改革(PPACA)の想定していた状況とは異なる。PPACAでは、基本は州立Exchangeで、連邦立の利用は緊急避難的な位置付けであった。従って、連邦立Exchange運営のための恒久財源も手当てされていない。

より深刻なのは、本来、医療保険については州政府が主体的に所管すべき分野なのに、そのためのインフラが連邦立主体になってしまうという矛盾である。共和党だって、そんなことは想定していまい。

逆に民主党リベラル派にとっては、またとない好機となり得る。各州が積極的に州立Exchangeを放棄することにより、全米の医療保険制度のインフラが連邦政府に集中し始めているのである。

※ 参考テーマ「無保険者対策/連邦レベル」、「無保険者対策/州レベル全般

6月5日 Seattle市:最低賃金$15決定 
Source :Seattle Approves $15 Minimum Wage, Setting a New Standard for Big Cities (New York Times)
6月2日、Seattle市(WA州)の市議会は、全会一致で最低賃金の$15/hへの引き上げを決定した。引き上げ方は、以前当websiteで紹介した通り。

これでWA州には、連邦レベルの最低賃金の2倍を超える$15/hの都市が2つ誕生することになる(「Topics2013年12月18日 Sea Tac市:最低賃金引き上げ決定」参照)。しかし、Seattle市の人口が65.2万人なのに対し、SeaTac市の人口は2.7万人しかいない。しかも、SeaTac市の場合は最低賃金の適用対象を絞っている。

従って、今回のSeattle市の決定がもたらすインパクトは、SeaTac市のそれとは比較にならないほど大きい。上記sourceでは、特に影響を受けるのが、Seattle市に本社を構えるAmazonだと言われている。

また、学者も、『連邦レベルの最低賃金の2倍超というレベルは、未知の世界』であり、評価が難しいとしている。かなりの程度、社会実験的な位置付けになりそうである。

※ 参考テーマ「最低賃金

6月4日 OR州/PA州 同性婚解禁へ 
Source :Two More States Extend Marriage Rights to Same-Sex Couples; State Bans Continue to Fall (Thomson Reuters/EBIA)
連邦地方裁による、同性婚禁止規定に対する違憲判決が続いている。Oregon州(OR)、Pennsylvania州(PA)は、連邦地方裁判決後、控訴を諦めたため、同性婚解禁が決定した。

6月3日 やる気をなくした失業者達
Source :Workers Really Are Dropping Out of the Job Market (Reason.com)
上記sourceは、失業者1,500人を対象としたアンケート調査結果を紹介している。
職探しを諦めている47
前月は求職のための面接に行かなかった46
最後の求職面接は2012年以前である23
求職活動は想像以上に厳しかった60
求職活動のために異なる街に引っ越したくない44
求職活動のために他州に引っ越したくない60
失業給付が当面の助けになっている72
失業給付があるので懸命に求職活動をする必要がない48
およそ半分の失業者が再就職を諦めてしまっているのである。かなり刺激的なインセンティブを設けないと、これらの人々は労働市場に戻ってこないだろう。

※ 参考テーマ「労働市場」、「解雇事情/失業対策

6月2日 大学は出たけれど 
Source :Congrats on That Diploma. You May Not Need It. (Bloomberg)
大学の卒業シーズンを迎えている。今年は180万人が学位を取得して卒業する見込みだ。

ところが、就職先となると、学位を必要とする仕事はそれほど多くない。大卒に関しては、供給超過になっている。しかも、今後10年間、さらに超過幅は広がる見込みである。DOLが公表している将来推計(2012〜2022年)によると、 にしかならない。

これは、対人サービスの部門での雇用が増加することが見込まれているためだ。大学を出ても大卒を必要とする職につけない、そんな大卒が増えてくれば、当然、学生ローンを返却できない者がさらに増える可能性がある。

アメリカの若者の将来は厳しい。

※ 参考テーマ「労働市場」、「教育

6月1日 MA州:皆保険制度のインパクト
Source :What We Know About Health Reform in Massachusetts (Center for Retirement Research at Boston College)
MA州は、アメリカで皆保険制度の先駆者である。現在本格施行中のPPACAも、MA州の皆保険制度を下敷きに設計されている。

上記sourceは、2006年に導入されたMA州皆保険制度のパフォーマンス、インパクトについて、既刊の調査研究結果をまとめるとともに、統計数字を使って分析をして見せたものである。概要は次の通り。
  1. 無保険者割合

    皆保険制度導入後、明らかに無保険者割合は低水準に移行している。これは全米と比較しても明白である。
    依然として無保険者である中で、FPL300%以下の低所得者、ヒスパニックの占める割合が高くなっている。

  2. 健康状態

    健康状態が『極めてよい』または『よい』と自己判断している割合は、2006年の59.7%から2010年には64.9%に上昇している。また、健康状態が『極めてよい』とする子供の割合も10%高まっている。

  3. 労働市場への影響

    皆保険制度導入前には次のような懸念が示されていたが、いずれも該当しなかった。
    • 医療保険に加入するために就職する必要性が低下するので、労働供給が減少する。

    • 従業員の雇用にかかるコストが高まるので、雇用が減少する。

    • 企業提供の医療保険プランが減少する。

  4. 医療費の高騰

    皆保険制度の導入によっても収拾できていない。

  5. 55〜64歳男性の労働力人口

    1. 皆保険制度導入前後の失業率

      MA州では2.2%ポイント上昇したが、近隣の他州とほぼ同じである。MA州を除く全米でも2.1%ポイントの上昇となっている。
    2. 労働参加率

      一方、MA州の労働参加率は、近隣他州と較べて大きく低下している。MA州を除く全米でも1.7%ポイントの上昇となっている。医療保険加入が容易になったことから、早めに退職して労働市場から退出した割合が大きくなっていると考えられる。
    3. 労働市場に参加していない55〜64歳男性の医療保険加入率は、皆保険制度導入後、高まっている。そのうち、公的保険制度の加入割合が大きく高まっている。
MA州皆保険制度はほぼ成功という評価でよいのではないだろうか。残る課題は、これまでにも何度も指摘している通り、コスト増である。MA州は、その課題に、今真正面から取り組んでいる。

※ 参考テーマ「無保険者対策/MA州