Source : | Feds reject California’s immigrant license design (Sacramento Bee) |
昨年9月にCA州議会は不法移民に免許証を発行する法案を成立させたが、その実現に向けて実務面での課題が山積する中、なかなか施行の姿が見えなくなっている(「Topics2014年2月1日 CA州不法移民免許証の実務」参照)。
それに加え、今度は、連邦政府(Homeland Security Department, DHS)から注文がついた。CA州が検討中の不法移民免許証のデザインは受け容れられない、との見解を表明したのである。
現時点で、CA州が提案したデザインはよくわからないが、といったもののようである。
- 完全免許証であることを示す"DL"(for driving license)ではなく、それとは異なるイニシャル"DP"(for driving privilege)を免許証番号の前に記す
- 免許証の裏に、「連邦政府が求める身分証明書ではない」旨記載する
これに対し、DHSは、正式の運転免許証とは異なることが瞬時に判別できること、または免許証の表に明確な言葉で正式な運転免許証ではないことを明記することが必要であり、CA州のデザイン案はこの規定を充足しない、と主張し、CA州案を拒否したのである。
参考までに、他州の不法移民免許証のデザインを見ると、確かにDHSの主張は表現されている。CA州がなるべく目立たないようなデザインにしたいのは、それが差別や強制送還候補者リストにつながりかねないからだ。しかし、それではDHSが了承しない。CA州の不法移民免許証の発行は、法律上の施行期日、2015年1月までに実現できるのだろうか。
- IL州:不法移民用は青のライン(正式は赤)が入っており、見分けがつきやすい。また、連邦政府が求める身分証明書ではないことが表側に記載されている。
- UT州:一目して"P"の字が目立つデザイン。DPのPを強調している。
- NC州:一目瞭然という訳にはいかないが、それでも正式なものではないことが表面に目立つように記載されている。
※ 参考テーマ「移民/外国人労働者」
Source : | 4 in 10 Employers Believe Affordable Care Act Has Impacted Their Retirement Savings Plans (LIMRA Secure Retirement Institute) |
以前、PPACAによるコスト上昇が年金プランの合理化・縮減につながる可能性があることを紹介した、その時はまだまだ半信半疑であった(「Topics2014年2月13日 AOL:DCプランとPPACA」、「Topics2014年3月16日 DCプラン戦略」参照)。
しかし、上記sourceによれば、その流れは本物のようである。ポイントは次の通り。企業はベネフィット戦略を大きく変えてきそうである。
- PPACAが退職者年金プランの戦略や支出に影響をもたらしている。 ⇒ 43%
そのうち、年金プランへの支出を減らした、または従業員の負担を引き上げた。 ⇒ 55%
- 将来的には、PPACAを理由に年金プランを変更する。 ⇒ 45%
そのうち、年金プランへの支出を減額する。 ⇒ 63%
- 実際、過去においても、医療への支出割合を増やす一方で年金プランへの支出割合を減らしてきている。
※ 参考テーマ「DB/DCプラン」、「ベネフィット」、「無保険者対策/連邦レベル」
Source : | Mass. scrapping flawed health insurance website (Boston Globe) |
州立Exchangeの深刻な不具合が続いていたMA州だが、5月5日、次のような決断を公表した。2015年の保険加入申請受付は、11月15日から始まる。そう考えると、新しいwebsiteの立ち上げにはぎりぎりのタイミング、もしくは既に遅いのかもしれない。それにしても、皆保険制度の先駆であるMA州としては悔しい決断であろう。
- 昨年立ち上げたwebsiteの修復作業は断念する。
- 他州の州立Exchangeのwebsiteで実績のある業者に新たなサイトを作成するよう要請する。
- それと並行して、一時的に連邦立Exchange(HealthCare.gov)に参加する準備も進める。
Websiteに深刻な不具合が生じていたのは、OR州、MA州、MD州、MS州の4州である(「Topics2014年2月5日 州立Exchangeの明暗」参照)。このうち、OR州は既に連邦立への移行を検討している(「Topics2014年4月25日 OR州:連邦立Exchangeへ」参照)。今回のMA州も片足を連邦立に突っ込んだ形だ。他の2州はどう対処するのだろうか。
※ 参考テーマ「無保険者対策/MA州」、「無保険者対策/州レベル全般」
Source : | Obama's work edicts could kill businesses on military bases (Washington Examiner) |
Obama大統領が発した最低賃金引上げ令により、アメリカ軍基地で勤務する請負業者の雇用が減少すると見られている(「Topics2014年2月14日 Obama大統領の賃上げ要請参照)。つまり、基地内のファストフード店は、労働コストは大幅に引き上げられる一方、その負担増を価格に転嫁することができない。海軍の推計では、米軍基地内の390のファストフード店が閉鎖され、5,750人の雇用が失われるるとみられている。また、陸軍、空軍では最大10,000人の雇用が失われるとみられている。
- アメリカ軍基地で働く請負業者従業員の最低賃金は、2015年1月1日より、7.25/hから10.10/h($2.85/hの増)に引き上げられる。
- 労働省は、昨年秋に、基地内にあるファストフード店で働く従業員の医療・福祉費用を請負業者が負担することを義務付けた。これに伴う負担増は、$3.81/h。
- よって、基地内のファストフード店は、従業員一人当たり$6.66/hの負担増となる。
- ところが、軍の請負契約規則で、基地内の飲食店の値段は、地域の一般的な価格水準を上回ることはできない。
Obama大統領は、自ら発した大統領令により、軍基地内の雇用を減らしてしまう可能性について、どのように考えているのだろうか。
※ 参考テーマ「最低賃金」
Source : | The Unemployment Puzzle: Where Have All the Workers Gone? (Wall Street Journal) |
失業率は低下してきているのに労働参加率も低下している。アメリカ労働市場としては、これまで経験していないような現象が起きており、様々な推察が行われている。
上記sourceの筆者は、経歴からみて共和党系の経済学者だが、傾聴に値する主張を行っている。そのポイントは次の通り。確かに共和党的、保守よりの提言である。特に、どんな人でも働け、高額所得者をいじめるな、という主張が強い。しかし、これぐらい徹底しないと、労働参加率は上昇してこないということなのだろう。さて、ワシントンはどのようにこれから議論していくのだろうか。
- シカゴ連銀の分析では、労働参加率低下の1/4は退職者の増加で説明できるとしている。また、別の分析では、約半分はベビーブ−マーの高齢化と説明している。
- しかし、それだけでは全てを説明したことにはならない。若者世代の労働参加率が低下しているからだ(「Topics2014年3月18日 10代の雇用率低下」参照)。
- 政府の施策が若者の労働市場参加のディスインセンティブになっていることに加え、経済のグローバル化、技術変化が、低技術層の雇用、賃金を抑制している。
- ワシントンでは失業保険特別給付の延長や最低賃金引上げの議論が盛んだが、これらの施策は一部のアメリカ人の所得に影響するだけで、大規模な労働参加を促すことにならない。
- 労働市場への参加を促すための政策提言は次の通り。
- "Earned-Income Tax Credit(EITC)"の拡充は、労働インセンティブを高めるとともに、限界所得税率を引き下げるので効果的である。
- 障がい年金(Social Security Disability Insurance)の支給要件を厳格化する。1980年代に支給要件が緩和された結果、障がいを持つもので働いている者が半減した。障がい者の労働インセンティブを著しく阻害している。むしろ、障がい者を雇用した企業に税制優遇を設ける方が有効である。
- 医療保険改革(PPACA)の規定では、所得が上昇すると保険料補助金が縮小していくことになっているため、労働ディスインセンティブとして働いている(「Topics2014年2月7日 PPACAで労働供給減少」参照)。
- 失業保険給付を長期化することは、所得保障を長期化すると同時に失業期間も長期化させる。長期失業者の雇用は、企業にとって魅力が低下する。
- 州政府に一定額を基金として提供し、州政府はそれをもとにcommunity collegeや職業教育を強化する。
- 個人再就職勘定("Personal Re-employment Account")を創設する。失業した者の勘定に連邦政府から一時金として定額を拠出し、職業訓練を支援する。早く再就職先を見つければ、勘定の残高の一部は、再就職ボーナスとして提供される。
- 高齢労働者の年金保険料を負担を廃止する。年金保険料を負担しても給付が増えることにはならないため、労働市場から退出するインセンティブとして働いている。また、年金保険料負担をやめれば、企業の高齢者雇用を促進する効果もある。
- 退職時所得調査を廃止する。現在、62〜65歳で退職した歳、$15,000以上の所得の半額を年金給付から減額することとしている。これは労働ディスインセンティブとして働いている。
※ 参考テーマ「労働市場」
Source : | We Just Saw The Biggest Explosion In Health-Care Spending In Over 30 Years, And It Had A Big Impact On GDP (Business Insider) |
先月、今年2月の医療支出が急増したことを紹介したが、マクロのGDP(第1四半期・第1次推計)でも同様のことが確認された(「Topics2014年4月24日 医療支出急増」参照)。個人消費が堅調で、前期比年率3.0%となったが、寄与度で見る通り、その伸びの半分は医療費の伸びによるものであった。仮に医療費の伸びがなければ、実質GDPは▲1.0%とマイナス成長に陥っていた可能性がある。
前期比年率(%) 同 寄与度(%P) 前年同期比(%) 実質GDP 0.1 0.1 2.3 個人消費 3.0 2.04 2.5 サービス 4.4 1.96 2.4 医療費 9.9 1.10 -
前期比年率でこれだけの伸びとなったのは、1980年第3四半期の10.0%以来である。 また、上記sourceで紹介された推計では、昨年第4四半期あたりから入院費等の病院費用の伸びが高まっており、ついで今年に入ってから診療費の伸びが高まってきた。 PPACAの本格施行に伴い、これまで無保険であるがために抑制してきた受診が一気に表面化した可能性が高い。GDP成長率という面で見れば成長して良かったということかもしれないが、アメリカ社会の歪みがいよいよ表に出てきたと考えると、そう喜んでばかりもいられない。医療費が伸びるということは、他方で負担も増えるということである。
※ 参考テーマ「無保険者対策/連邦レベル」
Source : | The coming job apocalypse (Washington Post) |
上記sourceは、アメリカの労働市場の現状を分析するとともに、将来像を呈示している。昨日紹介した記事とは真逆のような示唆だが、労働市場の二層化については共通しているように思われる。ポイントは次の通り。現時点でも、失業率がそれほど改善せず、長期失業者を残したままの景気回復が続いている。職を続けられた者、再就職できた者だけによる景気回復は、底の浅い不安定さが残る。
- アメリカでは、労働参加率が長期的に低落し続けている。
- 特に顕著なのが25〜34歳の層で、2007年83.3%であったのが、現在では81.8%に低下している。
- 労働市場参加率低下の原因は、@貿易政策(特に対中貿易の自由化)と、A機械化の進展である。
- 推計によれば、機械化(含むコンピュータ活用)の更なる進展により、今後20年間のうちに47%の労働者が代替される可能性が高い。推計が半分当たれば23.5%の労働者、1/3当たれば15.7%の労働者が職を失うことになる。
- こうした事態に対処するためには、
などから始めなければいけない。
- 連邦政府による大規模なインフラ投資・改修
- 幼児教育の提供
- 高齢者介護の提供
- さらには、富と所得の再分配を一層強化していかなければならなくなる。
※ 参考テーマ「労働市場」
Source : | This Economist Foresees 15 Years of Labor Shortages (Businessweek) |
労働市場の改善が充分に進んでいない、というのが一般的な認識だが、上記sourceで紹介されたエコノミストは、今後15年間は労働力不足の時代になると予測している。その理由は次の3点。最後の3点目で、企業が必要とする技能を身につけていない労働者については、どのような政策が講じられるのか。若年世代であれば、再教育の機会はあるだろうが、そうではない世代について、なんらかの手立てが必要だろう。
- 機械化、省力化投資が進んでいるとは言えない。その証拠に、労働生産性は緩やかな下降傾向を示している。
- ベビーブーマーの退出が続き、労働市場参加率は低下を続ける。
- 労働市場の二層化が進み、企業が必要とする労働力の不足が慢性化する。
※ 参考テーマ「労働市場」
Source : | Insurance chief OKs ‘no surprises’ rule for health-plan networks(The Seattle Times) |
昨日紹介したNY州に続き(「Topics2014年5月1日 NY州:ネットワーク外給付を義務化せず」参照)、4月28日、Washington州(WA)も、2015年のネットワーク内給付について、次のような決定を行った。保険会社、医療機関、消費者グループともに、このルールに不満があるそうだが、2015年の保険料申請を目前にして、州政府当局は見切り発車をした形になったようだ。それでも、当局の意向は明確になっている。ネットワーク内給付の原則を守ることで、保険料を抑制したい、ということである。
- 保険プラン提供者は、プランが規定する医療機関ネットワークについて、加入者に対して充分に説明するとともに、ネットワークに参加している給付対象医療機関に関する情報を毎月更新する。
- ネットワークに関する標準を規定する。
- ネットワークがカバーする地域におけるプライマリーケア医の数を、WA州平均以上とする。
- 保険加入者の80%が、30マイル圏内(郊外の場合には60マイル)のプライマリーケア医にアクセスできるようにする。等々。
- スポット的なネットワーク外給付を制限する。
- ネットワークがカバーする地域にある低所得者向けの地域医療機関を必ずネットワークに入れる。
- 当決定は、5月26日発効、2015年5月1日から適用とする。
※ 参考テーマ「無保険者対策/WA州」、「無保険者対策/州レベル全般」、「無保険者対策/連邦レベル」
Source : | New York Will Keep Affordable Care Act Health Plans Restricted (New York Times) |
2015年の保険料を申請する時期が近づく中、New York州(NY)は、Exchangeで提供される保険プランのネットワーク外給付について、次のような決定を行った。ネットワーク外給付に対する不満は高いものの、決定的だったのは、Medicaidから発展してきた4つの保険プランがネットワーク内給付に限定して保険料を低く抑えていることであった(「Topics2014年4月11日 ネットワークと保険料」参照)。ネットワーク外給付を義務付ければ、こうした安い保険料の保険プランは提供できなくなる。
- ネットワーク外給付を義務付けることはしない。
- 保険会社が自主的にネットワーク外給付を含めることを勧奨する。
医療機関へのアクセスを緩和するよりも、保険料の抑制を採ったのであり、合理的な判断と言えよう(「Topics2014年3月1日 ネットワーク絞込み有益論」参照)。さて、豊富な選択肢がお好きなアメリカ人は、どれだけ納得できるだろうか。
※ 参考テーマ「無保険者対策/NY州」、「無保険者対策/州レベル全般」、「無保険者対策/連邦レベル」