8月20日 Detroit市もVEBA 
Source :Detroit to Sell Millions in New Debt to Settle Bankruptcy (Bloomberg)
再建計画策定中のDetroit市は、8月14日、財源調達のための債券発行計画を決定した。そのうち$450Mは、市職員の退職者医療用のVEBAに拠出される予定だ。

これまで、市職員年金のことばかりが話題になっていて、退職者医療プランのことを忘れていたが、しっかりと積立不足が$5.7Bも存在する(「Topics2014年2月24日 Detroit市:年金給付カットを提案」参照)。

上記の拠出額と積立不足額の間に大きな落差があり、これをどうやって埋めるのかはわからないが、VEBAを設立することは間違いなさそうだ。

これで、Detroitという自動車の街は、官民とも退職者医療用にVEBAを設立することとなった(「Topics2010年11月23日 Big3 VEBAの特徴」参照)。

※ 参考テーマ「VEBA/Legacy Cost」、「地方政府年金

8月19日 労働需要の弱さ 
Source :More Jobs Are Open, but They’re Filling Slowly (New York Times)
8月12日にBLSが公表した"JOB OPENINGS AND LABOR TURNOVER - JUNE 2014"で、企業の求人数が467万人(季節調整値)に達し、景気後退前のピーク値である466万人(2007年3月)を上回った。
それだけ求人が旺盛になったということなのだが、実際に雇用している人数のレベルは、依然として低水準にとどまっている。
企業側の雇用姿勢がこのように消極的である一方、労働者の方も、積極的に転職を試みようとリスクを取りに行く地合いにはなっていない(「Topics2014年8月3日(2) 労働市場のダイナミズム低下」参照)。

本格的な労働市場の回復はまだ道半ばのようである。

※ 参考テーマ「労働市場

8月18日 FMLの取り扱い 
Sources : Employee fired for failing to cooperate with FMLA leave approval process (McAfee & Taft)
‘Improper’ Request for Medical Proof Imperils Employer’s FMLA Defense (Smart HR)
最近、FMLAに基づく休暇取得を巡る裁判で、2つの異なる判決が下された。
  1. 郡側が休暇取得に必要な書類提出を再三求めたのに対し、郡職員がなかなか応じないまま休んでしまったため、郡はこの職員を解雇した。第10控訴裁判所は、郡側の主張を認め、解雇は有効との判決を下した。

  2. 従業員は医療機関の忠告に従って入院並びに自宅待機を余儀なくされた。会社側がは必要な書類を求めたが、従業員は容態が悪化していたため、直接書類を会社側に提出することができなかった。会社側はFMLAの乱用と判断し、解雇した。連邦地方裁判所は、会社側の連絡が不十分であり、従業員側の事情を汲んでやる必要があったとして、解雇は不当との判決を下した。
状況はよく似ているが、雇い主側がいかに根気よく必要書類の提出を求めていたかが判決の分かれ目になっているようだ。

それにしても、FMLの取得手続きは大変だ。最初の事例では、セカンド・オピニオンまで求めている。それだけ悪用する人も多いということか。

※ 参考テーマ「人事政策/労働法制

8月17日 低賃金職への移行 
Source :Economic recovery marked by lower-paying jobs, analysis finds (Los Angeles Times)
上記sourceは、『雇用は景気後退前の水準に回復したが、低賃金の職がそれを支えている』との分析を紹介している。レポートは、US Conference of Mayorsが公表した"Income and Wage Gap Across the US"である。ポイントは次の通り。
  1. 景気後退期に失われた雇用は871万人だったが、その平均報酬から、その後回復した雇用の平均報酬は23%も低下した。
  2. 失われた雇用は、製造業、建設業に多く、しかもその報酬は高かった。
  3. 逆に増えた雇用のうち多かったのは、サービス・飲食業、ヘルスケアだったが、その報酬は低いものが多い。
  4. 結果として、所得上位者に所得がさらに集まり、格差が広がっている。
こうしたところにも、回復の力強さが感じられない要因がある。

※ 参考テーマ「労働市場

8月16日 Exchange加入者漸減か? 
Source :ObamaCare Exchange Enrollment Is Shrinking, Top Insurers Say (Investor's Business Daily)
今年4月、Obama大統領は、『Exchange初年度の加入者は800万人に達した』と高らかに公表した(「Topics2014年4月19日 初年度は合格点か」参照)。ところが、その後、Exchange加入者は漸減しているらしい。連邦政府からの公表がまったくないため、推測の域を出ないのだが、次のような傍証が出てきていて、誰もそれを否定しないという。 理由はいろいろ考えられる。 さらにもう一つ、大きくて厄介な問題が浮上している。不法移民問題である。

8月12日、HHSは、約31万人宛てにレターを発出すると発表した(Washington Post)。

連邦立Exchange加入者のうち、これまでの調査や問い合わせの結果、国内に居住する資格が確認できないのが31万人にものぼるということだ。このレターを受け取った者は、9月5日までに法的資格の確認ができる書類のコピーを送付する必要がある。もしコピーの送付が間に合わなければ、9月30日で保険加入を取り消すという。

4月時点では当局の記録と合わない加入者が97万人いたそうだが、その後調査・照会で45万人分は解決したとのことで、今回のレター対象者は、そもそも加入資格がなかった不法移民である可能性がかなり高い。

最初の連邦立Exchangeのシステムトラブルが尾をひいている。

※ 参考テーマ「無保険者対策/連邦レベル」、「移民/外国人労働者

8月15日 控訴裁がVA州同姓婚禁止法違憲判決 
Source :Court Refuses to Stay Its Decision Striking Down Virginia’s Same-Sex Marriage Ban (New York Times)
第4控訴裁判所小法廷は、7月、連邦地方裁の判決を支持し、VA州の同姓婚禁止法が違憲であるとの判決(2 vs 1)を下した(「Topics2014年2月16日(2) VA州:同性婚憲法違反判決」参照)。さらに、8月13日、州政府の執行一時停止措置請求を退ける判決(2 vs 1)を下した。

このままいけば、8月20日にVA州の同姓婚禁止法は無効となり、その後、同姓婚証明書の発行が行われることになる。そればかりか、第4控訴裁判所が所管するNorth Carolina, South Carolina, West Virginiaの各州同姓婚禁止法にも影響をもたらす(Marylandは既に同姓婚を認めている)。

ただし、専門家達は、UT州のケースと同様、連邦最高裁が執行一時停止措置を命じるものと見ている(「Topics2014年6月28日 UT州同性婚禁止法:控訴審で敗訴」参照)。その場合、連邦最高裁は、今年10月からのセッションで、州における同姓婚禁止法に関する判断を下すことになる。

(8月22日追記) 専門家達の予想通り、8月20日、連邦裁判所は執行一時停止命令を下した(New York Times)。

※ 参考テーマ「同姓カップル

8月14日(1) Chipotlesの快進撃 
Source :Americans can’t stop eating Chipotle’s burritos (Washington Post)
Chipotlesというメキシコ料理のチェーン店で提供されている"Burritos"というメニューをご存知だろうか。アメリカ在住の頃、家内と一緒によく食べた思い出があり、懐かしくて上記sourceを取り上げてみた。ポイントは次の通り。



※ 参考テーマ「人口/結婚/家庭/生活

8月14日(2) ビールを飲もう 
Source :Beer May Be More Rewarding Than Wine for the American Worker (Businessweek)
上記sourceは、アメリカ人は経済のためにビールを飲もう、と主張している。
  1. 2012年のビール製造会社は869社と、2007年の倍以上になっている。一方、ワイナリーも、同時期に34%増加している。

  2. しかし、両者の従業員の報酬は、給与もベネフィットもビール会社の方が上回っている。
  3. 支払っている税金もビールの方が多い。
従業員の報酬に差があるのは、ワイナリーにはぶどう園の低所得農業従業者が含まれるのに対し、ビール会社は原料の麦芽を購入するので農業従業者は含まれていないことが大きいようだ。

それでも、従業員も潤う、税収も潤うということなら、大いにビールを飲もうではないか、ということである。ビール党は大賛成!!!

※ 参考テーマ「労働市場」、「人口/結婚/家庭/生活

8月14日(3) 雲雀 vs 梟 
Source :With Flextime, Bosses Prefer Early Birds to Night Owls (Harvard Business Review)
アメリカにも『早起きは三文の徳』と同義の言葉がある。
"Early to bed, early to rise, makes a man healthy, wealthy, and wise."
では、職場での業績評価となるとどうなるのか。同じようにフレックスタイムを利用している場合でも、朝早くから出勤している場合(雲雀)とゆっくり出てきて遅くまで職場に残っている場合(梟)を比較してみるとどうなるのか。

上記sourceでは、3つのタイプの実験を行なってみたところ、いずれも雲雀さんの評価が高く出たそうだ。

ただし、注意しなければならないのは、自分の上司が雲雀さんだと自分も雲雀さんを高く評価する傾向がはっきりあるそうである。つまり、評価を行う管理職の上司が雲雀さんの場合、管理職は梟さんの部下を不当に評価している場合があり得る、というのである。

そこで、上記sourceは、次のように勧めている。 この話はよくわかる。若い頃は、朝が忙しいのだ。特に子育て時期は、幼稚園、保育所に連れて行く、学校に出さなければいけない、食器を洗ったり、選択をしたり。兎に角朝は時間がないのだ。ゆっくり出社できるのであればそれに越したことはない。

ところが年齢が上がってくると、子供達に手が掛からなくなり、出勤時間も早めになってくる。自分のことを考えてみても、子育て真っ盛りの頃は、始業10分前に滑り込みだったが、今では40分以上余裕を持って職場に到着している。確かに、雲雀さんタイプになってくるのである。

※ 参考テーマ「Flexible Work

8月13日 自転車通勤が急増 
Source :If Your Co-Workers Look Sweaty, It's Because Bike Commuting's On the Rise (Businessweek)
サイクリストとしては見逃せない記事である。

センサス調査によると、自転車通勤人口は、2000年の48.8万人から約10年後に78.6万人と、約60%の増加となった。とはいっても、通勤人口全体の中での割合は、わずか0.6%しかない。

それでも、自転車道路(bikeways)を整備すれば、確実に自転車通勤の割合は高まっている。 319マイルもの自転車道路を整備しているOregon州Portlandでは、約6%が自転車通勤となっている。

道路の整備は大事だが、それと同じくらい大事なのが、職場のシャワーである。Sourceの表題にあるように、"Look Sweaty"ならまだいいが、"Smell Sweaty"ではまずかろう。

※ 参考テーマ「人口/結婚/家庭/生活

8月12日 スペインの労働生産性 
Source :Spain, Land of 10 P.M. Dinners, Asks if It’s Time to Reset Clock (New York Times)
本当はアメリカ労働市場をウォッチしているのだが、上記sourceがとても興味深かったので、コメントをまとめておく。

スペイン経済は、欧州債務危機で大きな痛手を被った。国債利回りこそ落ち着いてきたが、失業率は25%と他の欧州諸国に較べても大変厳しい状況が続いている。そのスペインで、生産性回復のために、労働時間・生活時間・生活スタイルを変えようという動きがあるそうだ。

上記sourceで紹介されているスペインの会社員の一日の様子は次の通り。 こうした生活の結果、『スペインの勤労者は、ドイツの勤労者よりも長く働いているのに、59%の仕事しかこなせていない』との推計もあるそうだ。

そこで、生産性を向上させるために、伝統的なスペイン国民の生活スタイルを変えようとの動きがある。
  1. スペインの標準時を1時間遅らせる

    スペインの標準時は、ドイツ・フランスなど大陸欧州諸国と同じタイムゾーン(グリニッジ標準時+1時間)となっている。しかし、世界地図を見ると、スペインのマドリードはイギリスのロンドンよりも西にある。これでは、夜遅くまで明るい時間帯が続き、食事やテレビ、スポーツ観戦などが遅く始まって深夜時間帯まで続くことになる。そうなると、次の日は眠くなるのでsiestaが必要になる、ということだろう。

    元々スペインはイギリスと同じタイムゾーンに入っていたが、WWU前、フランコ総統がナチスドイツと連携を深めるために、標準時を1時間早めた。その際、隣国のポルトガルも1時間早めたが、戦後、元のグリニッジ標準時に戻した。ところがスペインは戻さなかった。それが今の生活をもたらしている。

    スペインが農業国であった頃は、農家は標準時に関係なく太陽の動きに従って仕事をしていたが、近代の企業活動が一般的になると、標準時に従った生活が一般的になっていったため、昼に長く休憩を取る必要が出てきたのだろう。

    こうした地理的な『歪み』とも言うべきものから是正しようというのが、この主張である。

  2. 生活習慣の変更

    先進国と同様の通常一日8時間労働、テレビのプライムタイム番組の早い時間での放映なども提唱されている。特に、ワーキング・マザーからは、『早く帰宅して子供たちの夕食を準備しなければならないのに、遅くまで仕事が続くようでは困る』といった不満が高まっているそうだ。
こうした動きに対して、スペイン政府は昨年の一時期、変革を試みたものの、国民がついてこないために、今はほとんど諦めてしまっている。上記sourceで紹介されている26歳の男性の言葉が象徴的である。
“Reduce lunchtime?” he said. “No, I’m completely against that. It is one thing to eat. It is another thing to nourish oneself. Our culture and customs are our way of living"
はたして、それで本当に済まされるだろうか。働き方を変えるのは、いづくも女性ということなのだろうか。

※ 参考テーマ「人口/結婚/家庭/生活」、「労働市場」、「Flexible Work

8月11日 所得増とRight-to-Work 
Source :Income Boost from Right to Work Laws (National Center for Policy Analysis)
上記sourceは、Right-to-Work法の導入州(24州)と非導入州(26州)の所得を比較した分析結果("An Interstate Analysis of Right to Work Laws," Competitive Enterprise Institute, July 16, 2014)を紹介している。ポイントは次の通り。 企業側も従業員側も、労組を徐々に排除しているようである。

※ 参考テーマ「労働組合