6月30日 Exchange自動加入制 
Source :HHS announces auto-enrollment plans for current Marketplace consumers for 201 (HHS)
6月26日、HHSは、2015年加入手続き時期から自動加入制を導入すると発表した。連邦政府の発表なので、当然ながら連邦立Exchangeが対象となるわけだが、州立Exchangeにも導入するよう働きかけていくという。

医療保険制度なので、何もしなくても自動的に加入が更新されていくのではないが、11月15日の手続き開始時期近くになれば、現在契約している保険会社から更新手続きの連絡が来るようにするそうだ。もちろん、加入者が選択すれば、オンラインで別の保険に加入することはできる。

加入手続きを簡素化し、昨年のような大混乱を回避するためには、この自動加入制度は有効だろう。プランを比較して選択するのは面倒くさいと思うような加入者にとっても便利だろう。

しかし、手続きを簡素化することで、高い保険料のプランへの加入を継続してしまうケースも出てくるだろう。保険料が大きく伸びてもそのまま加入し続けてしまうかもしれない。

プランを選択することにより市場を競争的にしようという当初の意図が薄れてしまう可能性がある。

※ 参考テーマ「無保険者対策/連邦レベル」、「無保険者対策/州レベル全般

6月29日 Obama大統領の完敗 
Source :Supreme Court Rebukes Obama on Right of Appointment (New York Times)
Obama大統領が行なった"recess appointment"の正当性について争われた案件で、6月26日、連邦最高裁は、全員一致で『正当性はない』との判決を下した(「Topics2013年3月15日 大統領が最高裁に上告」参照)。Obama大統領の完敗である。

ただし、争われた"recess appointment"の対象であったNLRBは、既に昨年7月末、上院の指名により5人のフルメンバーで再生している(「Topics2013年8月3日 新生NLRB」参照)。問題は、それ以前の正当性がない間に下されたNLRBの決定事項436件の扱いである。

上記sourceによれば、これらのほとんどは連邦最高裁その他で無効とされ、現在のNLRBに差し戻される。現在のNLRBは民主党3、共和党2の構成なので、大半が過去の決定通りの判決になるのではないか、と見られている。

実質的な逆転決定はほとんどないと見られるものの、大統領の権限に制限がかけられた形になった。下院共和党は、次々に出される大統領令を問題視しており、提訴も検討しているという。今回の連邦最高裁の判決が、下院共和党に勢いをもたらすことになろう。

※ 参考テーマ「労働組合」、「政治/外交

6月28日 UT州同性婚禁止法:控訴審で敗訴 
Source :Federal appeals court strikes down Utah ban on same-sex marriage (Washington Post)
6月25日、第10控訴裁判所小法廷は、UT州の同性婚禁止法は連邦憲法違反であるとの連邦地方裁の判決を支持する判決(2対1)を下した(「Topics2014年1月11日 UT州:同性婚現状凍結」参照)。州の同性婚禁止法に対する違憲判決は、連邦控訴裁判所では初めてとなる。

UT州は、第10控訴裁判所大法廷での審議、連邦最高裁への上告については決断をしていない。また、同州の同性婚現状凍結状況は変わらないようだ。

第10裁判所の管轄は、Colorado, Kansas, New Mexico, Oklahoma, Utah, Wyomingの6州だが、同性婚を州法で認めているのはNM州だけである。ということは、その他の州ではUT州同様の訴訟が第10控訴裁判所までは認められる可能性が高くなったということである。実際、OK州については、既に連邦地方裁が違憲判決を下しており、UT州のケースに続いて第10控訴裁判所で支持される可能性が高い(「Topics2014年1月18日 OK州:同性婚憲法違反判決」参照)。

※ 参考テーマ「同性カップル

6月27日 医療支出は減少だった 
Source :Good News on Health-Care Spending Is Making U.S. GDP Look Bad (Businessweek)
6月25日、2014年第1四半期GDPの第3次推計が公表された。これが大きな驚きをもたらした。

まず、実質GDP伸び率(前期比年率)が大きくマイナス改定されたことである。
第1次推計が+0.1%だったのが、▲2.9%になったのである。マイナスに寄与している項目のうち、2つは設備投資と輸出入である。いかに今年の大寒波が大きく生産に影響したのかがわかる。

もう一つは、医療支出の伸びが、大幅増から一転、マイナスになったことである(「Topics2014年5月5日 医療支出急増(2)」参照)。次の表は、第1次推計時に当websiteで作成したものである。
2014年第1四半期 実質GDP 第1次推計
前期比年率(%)同 寄与度(%P)前年同期比(%)
実質GDP0.10.12.3
 個人消費3.02.042.5
  サービス4.41.962.4
   医療費9.91.105.4
これを第3次推計で直してみると、次のようになる。
2014年第1四半期 実質GDP 第3次推計
前期比年率(%)同 寄与度(%P)前年同期比(%)
実質GDP-2.9-2.91.5
 個人消費1.00.712.0
  サービス1.50.671.7
   医療費-1.4-0.162.6
そこで、第1次推計から第3次推計の寄与度の変化だけを取り出してみると、次のようになる。
2014年第1四半期 実質GDP 寄与度の変化
寄与度の変化(%P)
実質GDP-3.0
 個人消費-1.33
  サービス-1.29
   医療費-1.26
個人消費の寄与度のマイナス分のうち、ほとんどが医療費で説明できてしまうのである。

医療支出がこれだけ大きなマイナス改定になった理由として、上記sourceは、次の2つを紹介している。
  1. BEAの推計方法として、第1次、第2次推計では、Medicaidの支出トレンドを基調にしていた。

    → コメント:PPACA本格実施で個人の保険加入が増えたとしても、その推計方法が分からないため、公的医療保障であるMedicaidの実績を利用したのであろう。今年からMedicaidの対象者要件を拡充した州が過半であり、かなり早い段階から低所得層の保険加入が進んでいたことは間違いない(「Topics2014年6月13日 3月初旬の新規保険加入者」参照)。しかし、これを全体の医療支出の推計に反映させる手法はかなり難しい課題であり、過大推計となってしまったのは仕方ないかもしれない。

  2. 2014年のExchange保険加入の締め切りが3月末だったが、今年の新規加入者は、3月になってから急増した。そのおかげでObama政権の加入者目標をクリアすることができた(「Topics2014年4月19日 初年度は合格点か」参照)。ということは、1〜2月の間には、保険加入者数が見込みほど入らなかったということであり、その分、過大推計となっていた。

    → コメント:3月に多くに新規加入者があったとすれば、4月以降、それらの新規加入者が医療支出の増加に貢献することになるかもしれない。
当websiteとしては、もう一つ、過大推計の理由と思われることを挙げておきたい。 ※ 参考テーマ「無保険者対策/連邦レベル

6月26日 "Play AND Pay" 
Source :Play or Pay? . . . Employers say more like "Play AND Pay" (International Foundation of Employee Benefit Plans)
『"Play or Pay?"なんかじゃなくて"Play AND Pay"だよ。』

上記sourceのタイトルは、PPACAに関する経営者のこんな心境を表している。ポイントは次の通り。 PPACAに対する企業の取り組みは、2015年以降が本番となりそうである。

※ 参考テーマ「無保険者対策/連邦レベル」、「医療保険プラン

6月25日 やっぱりフレックス? 
Sources : FACT SHEET: The White House Summit On Working Families (The White House)
Presidential Memorandum -- Enhancing Workplace Flexibilities and Work-Life Program (The White House)
6月23日に開催された"the White House Summit on Working Families"で、Obama大統領は、多様な働き方を推進することを宣言した。その推進方策の主な柱は次の5点。
  1. 職場の柔軟性を拡充する。

  2. 適正価格の保育サービスを充実させる。

  3. 有給休暇の普及を図る。

  4. 女性の職業能力を高める。

  5. EITCの拡充を図る(「Topics2014年1月29日 Obama大統領も賃上げ要請」参照)。
う〜ん、今度は残業代の対象拡大が入ってこない。多様な働き方を推進しようとする際に、残業代の対象者をどの程度に考えているのかも示さないと、フレックスが事実上制限されるのではないかとの不安が広がってしまう(「Topics2014年6月24日 残業代よりもフレックスを」参照)。

※ 参考テーマ「Flexible Work

6月24日 残業代よりもフレックスを 
Source :To Help Working Women, Set Them Free (RealClearMarkets)
Obama大統領は、残業代を支払わなければならない従業員の範囲を拡大しようとしている(Obama大統領スピーチ)。最低賃金の引き上げとともに、中産階級の底上げ策として位置づけている。

現行制度では、$455/W, または$23,660/Y以下の報酬しかない従業員は、残業代支払いの対象となっている。Obama政権は、この上限額の大幅引き上げを目論んでいるのである。

しかし、上記sourceは、大幅引き上げは働く女性、特に働く母親のフレックスを奪うのではないか、と懸念しているのである。残業代の対象となれば、残業を命じられれば従わざるを得なくなり、家庭生活維持のために必要な労働時間の柔軟性が奪われるとしている。

今の残業代対象の上限額も低すぎると思うが、その上限額の変更で影響を受ける従業員も相当出てくるだろう。

そうした懸念に応えるために、既に昨年、"Working Families Frexibirity Act of 2013"(H.R. 1406)という法案が提出されている。その法案では、企業側が残業を命じた場合、残業代を支払うことに代えて、残業時間の1.5倍の休暇時間を提供するという選択肢を認めることとしている。上記sourceは、残業の対価として金銭と時間の選択肢が生まれるので、働く女性がよりフレックスを利用できるようになるとして評価しているのである。

残念ながら、同法案は、昨年5月に下院で可決された後、上院に回されたがそのままになっている。下院採決においては、民主党から賛成3、反対196と、民主党は大反対している。そのせいで上院では審議が進んでいない。民主党は残業は金銭で償わなければならないという強固な考えを持っているのだろう(「Topics2014年2月20日 CA州:民主党がflextimeに反対」参照)。

※ 参考テーマ「Flexible Work

6月23日 FMLAも"State of Celebration"へ 
Source :Obama Administration Announces Proposed Rule Extending FMLA Leave Rights for Same-Sex Couples (FMLA Insights)
6月20日、労働省(DOL)は、『Family and Medical Leave Act (FMLA)の適用原則を"State of Residence"(「居住地原則」)から"State of Celebration"(「挙式地原則」)に変更する』との改正案を公表した(FACT SHEET)。DOMA違憲判決に基づきIRSが連邦税への適用を変更したことに続く改正案である(「Topics2013年9月7日 "State of Celebration" Standard」参照)。

この改正案が採用されれば、次のような変更が生じる。 このDOLの改正案公表に続き、6月23日にはOPMがFMLAにおける配偶者の定義の変更案を公表した。パブリック・コメントが求められており、提出期限は8月22日となっている。
"The new definition will replace the existing definition, which contains language from DOMA that refers to “a legal union between one man and one woman.” The new definition permits Federal employees with same-sex spouses to use FMLA leave in the same manner as Federal employees with opposite-sex spouses."
税制だけでなく、働き方についても同性婚者の権利を広げようとするObama政権の強固な意志を感じる。

※ 参考テーマ「同姓カップル

6月22日 Starbucks社の負担は? 
Source :Starbucks degree program not as simple as it seems (AP)
少し前に紹介した、Starbucks社の学士取得支援策は、当初報じられたような寛容な内容ではないようだ(「Topics2014年6月19日 スターバックスの学士取得支援策」参照)。

上記sourceによると、学費の負担構造は次のように曖昧な形になっている。 これでは、当初受けた『Starbucks社の寛容さ』はだいぶ薄まってしまう。要するに、『ASUのオンライン・コース登録者数増加のためのキャンペーン』にStarbucks社が一役買っている、という構図だ。そう簡単に企業がベネフィットを拡充してくれないのである。

それでも、卒業すれば3〜4年生の自己負担を償還払いとする仕組みだけでも、若者にとっては大きなインセンティブとなろう。まさか、これも違いました、ということにはならないように願いたい。

※ 参考テーマ「ベネフィット」、「労働市場」、「教育

6月21日 Detroit市:新ハイブリッド年金 
Source :Detroit Rolls Out New Model: A Hybrid Pension Plan (New York Times)
再建中のDetroit市は、労組との間で、現役の市職員を『新型ハイブリッド年金プラン』に移行することで合意した模様だ。現時点でのスケジュール、移行プランは次の通り。 "ハイブリッド"と称しているので、てっきりキャッシュバランス(CBプラン)かと思ったら、労組の意向を汲んでDBの骨格、つまり「給付建て」の形は残しているようだ。理想はCBを目指したいところなのだろうが、現実に労組と折り合うにはこういう形に落ち着くことになるのだろう(「Topics2013年6月14日 地方政府年金はCBへ」参照)。

※ 参考テーマ「地方政府年金