Source : | Workers Organize, but Don’t Unionize, to Get Protection Under Labor Law (New York Times) |
アメリカで従業員の労働条件、労働環境の改善を進める主体は『労働組合』と思っていたが、労働組合を結成するのが難しい場合には、次善策として"Workers Committee"を結成するのが一般的らしい。比較的小さな職場で結成されるようだが、"National Labor Relation Act"の下での権利保護については、労働組合と同様の機能を持つとされている。
こういう形の組織が広がっていけば、日本の企業別・職場別の労働組合と同様の機能・役割を担っていくことになるのではないか。
※ 参考テーマ「労働組合」
Source : | In Boston speech, Obama unveils executive order for more paid sick leave (Washington Post) |
9月7日、Obama大統領は、有給病気休暇(Paid Sick Leave)に関する大統領令に署名し、翌8日、訪問先のBostonでの演説でその内容を紹介した(「Topics2015年8月16日 有給病気休暇大統領令」参照)。 ちなみに、BostonがあるMA州は、有給病気休暇制度については全米の中でも先頭集団に入っている(「Topics2014年11月9日 MA州:有給病気休暇法可決」参照)。最後の適用開始時期は、意味がよくわからない。大統領の退任直前に実際の適用となる大統領令なんてあるのだろうか?
- 連邦政府と取引のある企業、またはその下請け企業に、有給病気休暇(Paid Sick Leave)を提供するよう求める。
- 30労働時間毎に1時間の有給病気休暇時間を獲得。年56時間(7日分)以上にまで積み上げられる。
- 利用されなかった有給病気休暇は、年を越えて繰り越しできるようにする。
- 労働省(DOL)は、本件に関する規則案を2016年9月30日までに公表する。
- 発効は即時だが、実際の契約に適用されるのは2017年1月1日以降。
※ 参考テーマ「人事政策/労働法制」
9月3日、HHSは、PPACAにおける公平性確保のための規則案を公表した。いくつかの分野にまたがるものではあるが、ここでは性差別禁止に関する事項について、ポイントをまとめておく。この規則案が適用された場合の影響等は次の通り。
- 性に基づく差別禁止を明文化する。
- 自ら認識する性別に基づく差別を禁止する。例えば、性転換に関する診療を除外するような保険プランは違反となる。
- 施設利用も含め、個人は自ら認識する性別に基づいて診療を受けられるようにしなければならない。
- 適用範囲
- HealthCare.govを利用しているExchange(連邦立)
- 同Exchangeにプランを提供している保険会社が提供する保険プラン
- HHSが運営するプログラム
- 連邦支出が含まれている医療保障制度(Medicare, Medicaid)
- パブリック・コメントの受け付けは11月6日まで。
明らかに"transgender"の権利保護を意識した規則案になっている(「Topics2015年7月27日 Transgenderの保険プラン」参照)。
- 連邦政府・州政府の追加支出は$558M。
- 1/3の保険会社が給付プランの見直しをしなければならなくなる。
※ 参考テーマ「LGBT」、「医療保険プラン」、「無保険者対策/連邦レベル」
Source : | In a setback for Mass., health care costs spike in state (Boston Globe) |
医療費の伸び率抑制に取り組んでいるMA州だが、2014年の医療費は大きな伸び率を残す結果となった。これは、MA州が目標としている3.6%を大きく上回るどころか、アメリカ全体の伸び率予測(2024年まで平均4.9%)をも上回っている。以下、上記sourceで紹介されている増加要因の説明ポイントである。
MA州 2013年 2014年 医療費総額 $51.3B $54B 伸び率 4.7% 19%
2013年は初年度として幸先の良いスタートを切ったのに、すぐさま2014年に躓いてしまった(「Topics2014年9月7日 MA州:初年度は目標クリア」参照)。これが特殊要因によるものと言い切ってよいものかどうか、専門家もまだ判断しかねているようだ。
- 何といっても大きな伸び率を示したのはMedicaid(MassHealth)である。なんと19%もの伸び率となってしまった。これには特殊要因がある。
- 2014年の保険加入申し込み時期である2013年10月、MA州のExchangeであるConnectorがシステム障害を起こした(「Topics2014年2月5日 州立Exchangeの明暗」参照)。
- Connectorに加入手続きができなかった州民を、一時的にMassHealthに加入させた。所得などの加入資格審査は省略された。このため、MassHealthの加入者は30万人増加した。
- 2015年に入って加入資格審査を再開し、20.5万人がMassHealthから退出した。
Connector不具合の影響がこんなところに出ていたのだ。
- 処方薬支出も13%の伸びとなった。高価な新薬がたくさん発売されたためとされている。
- 一方、Medicare、民間保険の支出の伸び率は州全体の目標を下回っている。
州政府も、2016年のConnector保険料の6%以上引上げを認めている。ということは、2015年もかなりの伸びとなった可能性が高いということを示唆している。
※ 参考テーマ「無保険者対策/MA州」
Source : | Millions of Working People Don't Get Paid Time Off for Holidays or Vacation (Economic Policy Institute) |
有給休暇のあり方について議論が盛んになっている(「Topics2015年8月17日 無制限の有給病気休暇」参照)。上記sourceによると、有給休暇の普及率は70%台後半にまで高まっている。ところが、所得階層別に見ると、様相が変わってくる。 所得上位10%の従業員には9割以上提供されているが、下位10%の従業員では4割に満たない。所得の低い従業員ほど有給休暇の恩恵に与っていない可能性が高い。
こういう統計数字を見るにつけ、『アメリカの何々は・・・』とか『日本では・・・』とか、一国全体で一括りに労働市場を語るのは難しいことを肝に銘じておくべきと再認識する。
※ 参考テーマ「人事政策/労働法制」、「労働市場」
Sources : |
Board Issues Decision in Browning-Ferris Industries (NLRB) U.S. Chamber Criticizes NLRB’s Re-write of Joint-Employer Standard (U.S. Chamber of Commerce) |
新生NLRBが経済界と火花を散らしている。
8月27日、NLRBは、共同雇用者(Joint Employer)の定義を変更するとの判断を示した。共同雇用者とは、ここではの関係にある企業で働く労働者に対して、関係企業が共同で雇用者としての責任を負う場合を意味している。
- Franchising relationship (Franchisor - Franchisee)
- Subcontracting relationship
従来、DOL、EEOC、NLRB、連邦裁判所いずれも、次のような場合、共同雇用者(Joint Employer)とみなす基準を示していた。ところが、8月27日のNLRBの決定は、これを大きく見直し、
- いずれの企業も法律上の法人である、かつ
- 主な雇用条件について共同で決定している。
場合には共同雇用者(Joint Employer)とみなす、とした。ただし、ボードメンバーの投票は、3対2(党派別)と割れている。
- 直接的であれ、間接的であれ、主な雇用条件について実質的な影響力を及ぼしうる
簡単な事例で言うと、コーヒーショップ・チェーン店の場合、従来の基準でいけば、チェーンを展開する本社はフランチャイズ店の共同責任者とはならない。本社は本社直営の店についてのみ、雇用者責任を負うことでよかった。時給や休暇制度、シフト制などはフランチャイズ店の経営者が決めているからだ。ところが、新基準でいくと、本社もすべからく共同責任者とみなされる可能性が高い。
役 職 氏 名 政 党 指名者 任 期 上院承認 Chairman Mark Gaston Pearce D President Obama @2010.4.7〜2013.8.27
A2013.8.28〜2018.8.27A PN266-113 Member Philip Andrew Miscimarra R President Obama 2013.8.28〜2017.12.16 PN265-113 Member Kent Yoshiho Hirozawa D President Obama 2013.8.28〜2016.8.27 PN679-113 Member Harry I. Johnson III R President Obama 2013.8.28〜2015.8.27 PN264-113 Member Lauren McFerran D President Obama 2014.12.17〜2019.12.16 事務局長 Richard F. Griffin, Jr. - President Obama 2013.11.4〜2017.11.3 ×
そうなると、フランチャイズ展開は大きなリスクを負う形になるため、経営形態の見直しは必至である。なので、USCCは、今回の基準変更は小規模企業経営、起業を阻害するものだと猛烈に反対しているのである。
さらに、NLRBの基準変更の背景には、労働組合の強い働きかけがある。フランチャイズ店の従業員に対して本社が雇用者責任を持つということになれば、これら従業員を一気に労組に取り込むことが可能になってくるため、労組にとって今回の基準変更は大きなメリットをもたらす。なので、なおさらUSCCは危機感を強めているのである("Opportunity at Risk")。
ところで、上述のUSCCのレポートを読んでいて初めて知ったことがあるのでまとめておきたい。シアトル市の最低賃金引上げ法が、大型フランチャイズにとって不利になっているというのである(「Topics2014年5月13日 Seattle市:最低賃金$15へ」、「Topics2014年6月5日 Seattle市:最低賃金$15決定」参照)。
これでは、全米展開をしているほとんどのフランチャイズ・チェーン店は従業員500人超の企業とみなされ、早く最低賃金を引き上げなくてはならなくなる。フランチャイズ店経営者にとっては不利な扱いを受けていることになるというのである。
- 最低賃金を$15/hに引き上げる時期が企業規模によって異なる。
- 従業員500人超 ⇒ 2017年1月
- 従業員500人以下 ⇒ 2021年1月
- 従業員500人超:フランチャイズ店を含め、全米で雇用している従業員が500人を超える企業
- 従業員500人以下:フランチャイズ店を含め、全米で雇用している従業員が500人以下の企業
しかし、有名店で賃金も高ければ人材も集まってくるのでいいんじゃないかと思うが・・・。
※ 参考テーマ「人事政策/労働法制」、「労働組合」、「最低賃金」
Source : | Narrower Doctor Choices Coming For Obamacare And Employer Plans (Forbes) |
2016年、医療保険プランに参加する医療機関ネットワークが絞り込まれる傾向にある。企業が提供する医療保険プランでは今後その傾向が明らかになってくるようだが、Exchangeで提供される保険プランでは、明確に現れている。
下図は、State Variation in Narrow Networks on the ACA Marketplaces (Robert Wood Johnson Foundation)で示された表である。 保険プラン提供地域の中で、25%未満の医療機関しかネットワークに参加していないものを『選別ネットワーク』と定義して、そのような保険プランが占める割合が高い順に並べた表である。上からGA(83%), FL(79%), OK(78%), CA(75%)の4州では、『選別ネットワーク』が3/4以上を占めている。
上記sourceでは、『選別ネットワーク』をコスト抑制のためにパフォーマンスのよい医療機関を選別した結果だ、と前向きな評価をしているところが新鮮である。また、一般国民の間でも積極的に『選別ネットワーク』を選択しようという流れが広がりつつある(「Topics2015年7月19日 ExchangeプランのNetwork」参照)。
CA州のExchangeが保険料抑制に成功している一つの要因ともなっているようだ。
※ 参考テーマ「医療保険プラン」、「無保険者対策/連邦レベル」、「無保険者対策/州レベル全般」、「無保険者対策/CA州」
Source : | 'Cadillac tax' could wreck popular medical accounts (POLITICO) |
"Cadillac Tax"の設計如何では、FSA(Flexible Spending Arrangements)の存続が危うくなる可能性があるという。
FSAは、HSA, HRAと並んで普及している医療貯蓄勘定で、比較的支出対象が柔軟に設定できるために一定の人気を保ってきた勘定である(「Topics2014年5月22日 医療貯蓄勘定(2)」、「Topics2004年1月7日(1) 医療貯蓄勘定」参照)。
しかし、"Cadillac Tax"の課税対象にFSA拠出金をまともに組み入れられてしまうと、企業側としてはFSAの存在意義を見直さざるを得なくなる。上記sourceでは、次のような事例が紹介されている。ただでさえ、"Cadillac Tax"の課税を如何に回避するかを考えている企業にとっては、とんでもない賦課となる。加えて、HSA/HDHPであれば、FSAと同様の貯蓄機能を持つ上に、高免責額プランを導入することで保険料を抑制することができ、"Cadillac Tax"の課税回避に役立つ可能性が高い(「Topics2015年8月23日 HSA人気の背景」参照)。
- 現時点でのFSA拠出限度額:2,550/Y。 ⇒ 2018年には2,700/Y程度になる(物価スライド適用)
- "Cadillac Tax"の課税対象給付額:$10,200(2018年)
- 2018年時点で、医療保険プランの給付額が$11,000の場合、"Cadillac Tax"の課税対象となり、その税額は、
($11,000-$10,200)x40%=$320- これにFSA拠出額全額(ここでは$2,700)が課税対象となった場合、税額は、
($11,000+$2,700-$10,200)x40%=$1,400にまで膨れ上がる。
そのような状況から、FSAの存続が危ぶまれているのだが、むろん企業の方は、最終的なIRSの通達を見守っている段階である。上記sourceでは、来年になるとの見通しが示されており、それまでは企業側の顕著な動きはないものと思われる。
※ 参考テーマ「HSA」、「医療保険プラン」、「無保険者対策/連邦レベル」
Source : | Since President Obama took office, 85 of 98 state legislative bodies got more Republican (Wasihngton Post) |
2009年にObama大統領が就任して以来、州議会における民主党の議席数は大幅減となっている。上記sourceのポイントは次の通り。
- 州知事、両議会ともに多数となっている州は半数近くに及んでいる。⇒ 正確には8月14日時点で23州(NCSL)。
- 2009年以降、98の州議会のうち、40の上院、45の下院で共和党が議席数を伸ばしている。
- 州議会の民主党議員数も、2009年の4,082人から2015年には3,163人となり、919人、22.5%の減となっている。
※ 参考テーマ「大統領選(2016年)」、「政治/外交」
Source : | In 3 States, an Overwhelming Response to New Driver’s Licenses for Undocumented Immigrants (Route Fifty) |
上記sourceでは、不法移民に対して発行されている運転免許証について、その実態を紹介している。やはり人も金もかけているCA州で、免許証の交付が進んでいるようだ。
- 免許証発行数
- California:452,000(8月7日時点)
- Colorado:12,297(8月14日時点)
- 不法移民に免許証を発行する州:10州+D.C.(Pew Report, 以下同様)
- そのうち、NM, WA両州は、在住の法的根拠を求めていない(「Topics2013年9月30日 不法移民免許証への疑問」参照)。
- 発行手数料及び有効期間
- 全米不法移民のうち、37%が不法移民免許証発行州に居住しているとみられる。
※ 参考テーマ「移民/外国人労働者」