Source : | CEO pay at S&P 500 companies rises 10.6% in 2014 (Pensions & Investments) |
2014年、アメリカの代表的な企業のCEOの報酬が軒並み大幅アップとなったそうだ。次の表はそのポイントをまとめたものである。S&P 500の方で顕著だが、総報酬額の伸びの中で年金給付額の増大が大きな割合を占めている。これは割引率と余命年数の見直しによるところが大きいという分析である。経営裁量の範疇外の要因との説明がなされているが、そうした年金プランの給付設計をしているのも経営者であろう。
CEO報酬(2014年) S&P 500 Russell 3000 総報酬額(中位数) $11.29M $3.89M 同 伸び率 10.6% 11.9% 総報酬額(除く年金額の増分)(中位数) $10.1M $3.78M 同 伸び率 4.4% 10.6%
※ 参考テーマ「経営者報酬」、「DB/DCプラン」
Source : | 26% of employers could face the ‘Cadillac tax’ on health insurance (Washington Post) |
上記sourceでは、Cadillac Taxが企業提供医療保険プランに与える影響に関する推計を紹介している。また、CRSは、医療支出に関して新たな推計(The Excise Tax on High-Cost Employer-Sponsored Health Insurance: Estimated Economic and Market Effects)を公表している。
- Kaiser Family Foundation(How Many Employers Could be Affected by the Cadillac Plan Tax? )
- 保険料の伸び率が5%と仮定した場合、2018年時点では26%の企業、2028年には42%の企業が課税されることになる。
- やはり大企業への影響が大きく、200人以上の従業員を抱える企業では、2018年に46%、2028年には68%の企業が対象となる。
- 仮に保険料伸び率が6%となると、2028年には半分以上の企業が課税対象となる。
- National Business Group on Health
会員企業(大企業中心)の半分は、2018年に課税されることになると推測している。
これだけ大きな影響、特に大企業は被ることになるため、企業と従業員は一致して同課税に強く反対している(「Topics2015年8月7日 Cadillac Tax廃止で労使連合 」参照)。
- 保険給付額は、2018年で0.5〜0.6%、2024年で2.2〜2.5%減少する。
- 診療報酬単価は、2018年で最大0.4%、2024年で1.5%低下する。
- 医療費支出は、2018年で0.6〜0.9%、2024年で2.5〜3.65%減少する。
ただし、同課税はPPACAにとっては重要かつ大きな財源である。簡単に廃止するとは言い難い。共和党、民主党どちらが政権を握っても難しい課題になることは間違いない。
※ 参考テーマ「無保険者対策/連邦レベル」、「医療保険プラン」
Source : | Among 23 health insurance co-ops, Maine stands out for its success (Association of Health Care Journalists) |
"Consumer-Oriented and -Operated Plan (CO-OP)"の初年度の成果は散々な状況になってしまった(「Topics2015年8月5日 CO-OPs初年度は散々」参照)。全米で23あったCO-OPsのうち、IA/NEで運営を行っていたCoOportunity Healthは既に昨年末に破綻宣告を受けた。さらに、今年7月、LA州のLouisiana Health Cooperative Inc.が今年末に営業を停止すると発表した。 上の地図から、ちょうど真ん中のAI, NE, LAの3州のCO-OPsが消えてしまうことになる。
このように最近悪い情報ばかりのCO-OPsだが、上記sourceはそうした中で唯一成果をあげているME州のCommunity Health Options (CHO)を取り上げ、その成功の理由を紹介している。このような成果を出したCHOは、2015年、NH州でも運営を開始した。CO-OPsの中では唯一気を吐いているのである。
- 連邦政府からの借り入れについて、慎重に行っている。枠としては$132Mあるのだが、実際には保険行政のために積み立てておく必要のある$45Mのみを借り入れている。
- CHOが参入する際、保険プランを提供していた機関はBCBSしかなかった。つまり、CHOの参入で、初めて保険プラン提供者が2社になった。
- しかも、その2社が、ほぼ同水準の保険料を設定した。他州のように、CO-OPがシェア獲得のために極端に安い保険料を設定するということがなかった。
⇒ 結果として、CHOは連邦立Exchange加入者の80%を獲得した。
- CHOが用意した医療機関ネットワークは、主要な医療機関を広く網羅したものであった。
- 慢性病患者の自己負担を大幅に軽減した。
※ 参考テーマ「CO-OP」、「無保険者対策/ME州」
Source : | Americans' Support for Labor Unions Continues to Recover (GALLUP) |
8月17日、労働組合に関する世論調査が公表された。ポイントは次の通り。次回の世論調査では、是非とも就業先の官民別の支持率を調査してもらいたい。
- 労働組合に対する支持率は58%と、リーマンショック以前の水準にようやく近づいてきた。リーマンショック後のビッグ3、州政府職員労組に対する風当たりがいかに強かったかがわかる。
- 今後、労組にもっと影響力を持ってもたいらいと考えている人の割合は高まっている。
- ところが、今後の労組の影響力について、強くなる、変わらないとみている人の割合は20%強で変わらない一方、弱まるとみている人の割合は50%を超えている。アメリカ社会にも判官びいきという意識があるのだろうか。
- これらの数字はより深刻だと思うのだが、労組にもっと影響力をもってもらいたいと考えているかどうかについて、
・年齢別にみると、35〜54歳という最も働き盛りの世代の割合が最も低い
・Independentの層でも35%しかいない
と、労組にとって厳しい状況が浮かび上がってくる。
※ 参考テーマ「労働組合」
Source : | Social Security coverage for state and local government workers: A reconsideration (Brookings Institution) |
8月14日、アメリカの公的年金制度(Social Security)は制度発足80周年を迎えた。そうした節目には当然、制度の見直し議論が行われる。その中で、上記sourceは地方政府職員を強制加入にすべきかどうかを論考している。
現行制度下では、地方政府が退職後所得プランを提供していない場合には、その職員は強制的にSocial Securityに加入させなければならない。逆に言えば、退職後所得プランを提供している場合には、職員加入の問題は地方政府の裁量に任されている。
上記sourceによれば、はSocial Securityに加入していない。
- 地方政府職員2,380万人の27.5%(2008年)
- 公立学校教師の40%(2014年)
2001年当時は25%が未加入だったのと比較すると、実は未加入者の割合が高まっているのである。その一つの要因が最近の地方政府年金制度改革にあると指摘されている。新規採用者についてはSocial Securityに加入させないとの措置が多く採られているので、彼らを強制的に加入させるべきではないか、との議論が行われている。
実は、こうした議論は今に始まったことではなく、Obama政権初期の2010年にまとめられた超党派提案(NCFRR報告書)でも既に強制加入が提案されている(「Topics2010年12月5日 NCFRR報告書」参照)。しかし、それでも制度改革に至らないのには、それなりの理由がある。このような状況の中で、強制加入反対を強く主張しているのが、当の退職後所得プランを提供していない地方政府とその職員達なのである。結局負担が増えるからなのだ。
- Social Securityの財政状況からみると、強制加入にした方が当面の財政状況は改善する。しかし、長期で見た場合、給付債務は膨らんでいくのでむしろ悪化する。
- 地方政府年金の側からみると、これまで行ってきた拠出がSocial Securityに移ってしまうため、財政状況は急激に悪化する。
- 加えて、地方政府の退職後所得プランよりもSocial Securityの方が負担が大きくなる場合が多く、地方政府財政を圧迫する可能性が高い。
- 地方政府職員年金プランで積立比率が低いところほどSocial Security未加入者が多い。
- 地方政府年金プランでは、運用でリスク資産に投資できるため、高いリターンが得られれば保険料負担は少なくてすむ。
そして、そのように反対する地方政府を強制的に動かせないのは、"連邦政府 vs 州政府"の憲法問題が存在するためである。本件も結論を得るには相当の時間がかかりそうである。
※ 参考テーマ「公的年金改革」
Source : | Why Republicans Can't Stop Obama's Executive Actions on Day One (GovExec.com) |
共和党の大統領候補者選が本格化している。ほとんどの候補者達が、「Day OneにObama政権の政策をひっくり返す」とアピールしている(「Topics2015年8月21日 S. Walkerの医療保険改革案」参照)。
しかし、実務経験者達の話では、法律にしろ、大統領令にしろ、前政権の政策を取り消すのは簡単なことではない。取り消すならそれなりのプロセスと時間が必要になるからだ。今までの経験則から言えば、政治的リソースを最初に集中するのは政府高官の指名、または打ち出したい政策の法定化だそうだ。実際、Obama大統領は、2009年1月20日に就任し、最初の法案への署名は1月29日であった(「Topics2009年1月31日 Obama政権立法第1号」参照)。
そうした中、本気で取り消しにかかって実現しやすいのは不法移民保護大統領令であると指摘されている。同大統領令は、司法の場で執行を止められて以降、行政活動も完全停止に陥っているからだ(「Topics2015年6月13日(1) 大統領令施行停止」参照)。しかし、そのような状況になっているのなら、わざわざ大統領令の取り消しを打ち出しても大きな成果として見せることは難しいのではないだろうか。
逆に、民主党の大統領が実現すれば、このような状況を前進させるために施策を打てばアピールできる可能性が高い。
※ 参考テーマ「移民/外国人労働者」、「大統領選(2016年)」
Source : | HSA-HDHPs as a Health Care Cost Control Strategy (Marsh Consulting Group) |
HSAの口座数、資産残高ともに順調に増え続けている。HSA提供機関上位100社を対象にした調査結果(Devenir)によると、2015年中にHSA口座数は1,600万、残高は$30Bに到達しそうだ。伸び率は年率20%以上となっている。 高免責額プラン(HDHPs)とHSAの組み合わせは、医療費が急増している中で、企業、従業員ともに一定の評価をしており、2014年、大企業では3/4がHSA-HDHPsを提供していると言われている。さらに、上記sourceでは、従業員の理解を得ながら円滑にHSA-HDHPsへ移行するための手順を紹介している。
- 従業員
- 保険料が低いうちに投資することができる
- 口座残高を将来に向けて繰り越しできる。
- 企 業
- 従業員にコスト意識を持ってもらうことができる。
- 医療プランの比較・選択が容易になる。
- 従業員・企業が負担する保険料を下げることで、Cadillac Taxを回避することができるようになる(「Topics2014年10月16日 Cadillac Taxへの備え」、「Topics2015年8月7日 Cadillac Tax廃止で労使連合」参照)。
上記sourceでは、ある企業(従業員・家族で約2,800人)で2011年からHSA-HDHPsを導入したところ、全米平均に較べて年間保険料負担(企業+従業員)が$5,000近く抑えられた例を紹介している。 このように大幅な抑制効果を得られることは稀であるとしながらも、通常のPPO, HMOプランに較べて20%程度負担が抑えられるのが典型であるとされている。
- 従来型の保険プランと並行して、HSA-HDHPsを導入する。ただし、このままでは、コスト削減につながらない。健康な従業員ほどHSA-HDHPsを選択する傾向が強く、保険料収入が減ってしまうからである。
- 次に、従来型の保険プランにおける従業員負担を高める。上述の通り、従来型保険プランのコストが高まることがその理由となる。
- 従来型保険プランの選択肢を外し、完全にHSA-HDHPsへ移行する。その際、従業員の免責額負担を軽減するために、企業がHSAに拠出することもある。
※ 参考テーマ「HSA」、「医療保険プラン」、「無保険者対策/連邦レベル」
Source : | The real deal on Obamacare (CNN Money) |
上記sourceは、医療保険制度改革(PPACA)の実際の姿を取りまとめている。当websiteではお馴染みの内容ばかりだが、折角なので簡潔にポイントを列記しておく。※ 参考テーマ「無保険者対策/連邦レベル」
- PPACAのもとで保険料は上昇した。 ← ベアボーンプラン(「Topics2013年8月29日 Bare Bones Health Plans」参照)、病歴による保険加入拒否が禁止されたため。
- ただし、Exchangeから加入した1,000万人のうち85%は保険料補助金を受け取っているため、保険料全額を負担していない。
- 高免責額制となっているため、自己負担は増えている。ただし、これに対しても追加的な補助がある。
- 就業時間の短縮という現象は起きていない。また、PPACAを理由にした雇用縮小が起きているかどうかは確認できない。 ← 景気回復期に当たっているため、むしろパートタイマーの就業時間を延長し、トレーニングコストを節約している。
- Urban Instituteの推計によれば、260万人が保険プランの変更を余儀なくされた。この点、オバマ大統領は公約違反だと強く批判された(「Topics2013年10月30日 公約違反」参照)。
- 無保険者の減少に貢献した(「Topics2015年8月15日 PPACAの政策評価(2)」参照)。
- 国民医療支出は増大した。今後10年間で平均5.8%増が予想されている。 ← Exchange創設、Medicaid拡大により加入者が増加したことが一因。一方で、Medicare改革などにより従来よりも増加幅を抑えていることも事実。
- PPACAが全ての国民から嫌われている訳ではない。
- PPACAにより税負担は増加した。 ← 無保険者・保険無提供企業へのペナルティ、Cadillace Taxの導入、医療機器メーカーへの課税など、新税が導入された。
大統領選に名乗りを上げているScott Walker氏が医療保険改革案の骨子を提示した。同氏はWI州知事であり、当websiteでは、労組に対して厳しい政策を展開していることでお馴染みである(「Topics2015年3月11日 WIが25番目のRight to Work州に」参照)。
骨子のポイントは次の通り。もちろん、財源問題にはまだまだ触れておらず。民主党からは単なる"wish list"と一蹴されている。また、見てお解りの通り、PPACAの部分改正という内容になっているため、同じ共和党の候補者達からは"Obamacare lite"と揶揄されている。
- PPACAで導入された保険料補助金(tax credit)を廃止する。替わって、年齢に応じた税額控除制度を導入する。企業から保険プランの提供を受けていない勤労者が対象で、所得には関係なく、一人当たり$900〜3,000とする。
- HSAへの拠出非課税限度額を引き上げる。
- PPACAで定められた保険プラン給付内容に関する規制を廃止する代わりに、州政府にその権限を委譲する。
- PPACAにより導入された新税を撤廃する。
- (実質的には上記と同じ意味ではあるが)保険加入義務を撤廃する。
- 州際を越えて保険プランを購入することを認める。
- Medicaidの連邦負担を、一部については上限額付きの割り当て制とする。ただし、急性診療については、現行通り、上限を設けないものとする。
- Medicaidの運営に関する州政府の裁量権を強化する。
- 既往症を理由とする保険加入拒否の禁止は継続する。
- 被扶養者である若者(26歳以下)を親の保険プランに加入させる措置については、州政府の裁量に任せる。
しかし、Scott氏は全く意に介していない。むしろ、Obama大統領も民主党候補者も共和党候補者も一括りにして、"Washingtonがだめなんだ"と主張している。つまり、共和党候補者でも連邦議会議員は何にもできなかったではないか、と批判しているのである。
現役の州知事らしく、そして保守本流の『自立・自決』を全面に打ち出した政策提案となっている。特に、州政府の権限強化を打ち出しているところが特徴で、上院議員達ではなかなか言い出せないところだ。
州政府の権限強化という立ち位置は、他の候補者達との差別化、草の根からのサポートという点で、うまい戦略だと思う。
全くの余談だが、他の共和党候補者達が「Day OneにObama政権の政策をひっくり返す」とアピールしている中、Walker氏は「大統領就任初日に医療保険改革法案を議会に送る」としており、実務的な対応にも目配りができるのかな、と思った。
※ 参考テーマ「無保険者対策/連邦レベル」、「無保険者対策/州レベル全般」、「大統領選(2016年)」