12月31日 Medi-Cal大改革
Sources : Federal government approves California's Medicaid overhaul (ABC News)
California’s historic Medi-Cal transformation to improve and expand services gains federal approval(California Department of Health Care Services)
California州(CA)のMedicaid、"Medi-Cal"は、
  1. CA州民の1/3をカバーしている。

  2. 学生の半分以上をカバーしている。

  3. 介護施設入所者の2/3以上をカバーしている。

  4. 移民資格の有無に拘わらず、50歳以上、または25歳以下の在CA州民に医療保険を提供している(「Topics2021年7月29日 CA州:不法移民Medicaid加入資格緩和」参照)。
そのMedi-Calが大きな改革を実施することとなった。12月29日、CA州厚生省は、連邦政府から"California Advancing and Innovating Medi-Cal (CalAIM)"の認可を得た、と公表した。2022年1月1日から施行となる。改革のポイントは次の通り。
  1. "Care Coordinator"制度を全面的に導入する。医療サービスだけではなく、入院手続き、診療内容の説明、地域サービスの確保、住居確保の支援、食料援助なども支援する。

  2. 地域の医療サービス強化のための支援を行なう。

  3. 4つのサービス(Medi-Cal Managed Care, Dental Managed Care, Specialty Mental Health Services, and Drug Medi-Cal Organized Delivery System)を一つのサービス体系に統一する。

  4. 薬物乱用への対処、短期間の住居提供を行なう。

  5. MedicaidとMedicare両方に加入している加入者に対して、サービスの組み合わせができるプランを提供する。

  6. 無保険者に対する医療サービスをカバーする。(※現在、CA州の公立病院は、州全体の入院サービスの6%しかない。ところが、無保険者の入院の40%、Medicaid加入者の入院の35%を公立病院が提供している。)

  7. 先住民に対するカイロプラティックサービスをカバーする。
Medi-Calは、2022年の早い時期に、次のサービスも提供できるよう、連邦政府からの認可を求めている。
  1. 収監されている成人、少年への医療サービスの提供

  2. 大陸先住民、アラスカ先住民に対する伝統的な診療サービスについても保険償還の対象とする。
※ 参考テーマ「無保険者対策/CA州」、「無保険者対策/州レベル全般

12月30日(1) 民主党の判事指名戦略:多様性
Source :Biden had a productive year picking federal judges. The job could get tougher in 2022 (NPR)
2021年、バイデン大統領のもと、40人の連邦判事が就任した。これは、レーガン大統領時代以来、新任大統領のもとで最も多いとのことだ。

特徴は、多様性を高めていることだ。 トランプ大統領時代に就任した判事226人のほとんどが白人男性であったこととは対照的である。

民主党も、遅ればせながら、戦略的に判事の指名を行なえるよう、候補者リストを作成し、民主党上院議員に働きかけているそうだ(「Topics2018年8月8日 共和党の長期戦略」参照)。その中心にいるのが、Dana Remus氏で、バイデン大統領の補佐官に就任している。

最大の注目は、連邦最高裁判事の指名である。それはいつになるかは、まだわからない(「Topics2021年7月18日 Breyer判事の去就」参照)。

※ 参考テーマ「司 法

12月30日(2) 薬価MFNモデル廃止
Source :Most Favored Nation Model (Federal Register)
2020年7月のトランプ大統領令で、『Medicare Part Bで提供する処方薬の価格を、先進国で最も低い価格とする』(Most Favored Nation Model, "MFN")という大統領令が発せられた(「Topics2020年7月27日 医薬品価格抑制大統領令」参照)。その後、2020年11月27日に、7年間のテスト期間を設けてMFNを試行するとの政府規則が定められ、2021年1月から施行される予定であった。

しかし、2020年12月28日、CA州連邦地方裁判所から仮差止が命じられ、施行は止まっていた。

そして、上記sourceの通り、12月29日付の政府広報により、2022年2月28日を以って、正式にMFN規則は廃止となった。

薬価抑制策が盛り込まれていたBBB法案も頓挫寸前である(「Topics2021年11月24日 BBB:薬価抑制策」参照、「Topics2021年12月20日(1) BBBが窮地に」参照)。連邦レベルの薬価抑制策はなかなか進展しない。

※ 参考テーマ「医薬品

12月29日 DBプラン数は6.4%
Source :Private-Sector Pensions in 2019: Number of Plans, Participants, and Amount of Assets (CRS)
12月27日、CRSは2019年の企業年金の状況をまとめて公表した。
これを、DB/DCの比率(%)で見てみると、下表のようになる。
  Defined BenefitDefined Contribution
プラン数6.493.6
総加入者数24.175.9
保有資産額30.659.4
DBのプラン数は相当少なくなったものの、プラン当たりの資産規模は大きく、まだまだ恵まれた退職後所得プランと言えよう。

※ 参考テーマ「DB/DCプラン

12月28日(1) Roberts長官への信頼
Source :Justice Roberts Tops Federal Leaders in Americans' Approval (GALLUP)
上記sourceは、ワシントンのリーダー達に対するアメリカ国民の信頼感を調査したものである。その中で、出色なのがRoberts連邦最高裁長官であった。 アメリカ社会の分断に対処するために、Roberts長官は重責を担っている(「Topics2020年7月5日 Roberts最高裁長官」参照、「Topics2020年11月12日 最高裁:PPACA審理開始」参照)。

※ 参考テーマ「司 法

12月28日(2) 2020年保険料償還額
Source :Big MLR Rebates Point to Ever-More-Profitable ACA Exchanges (AIS Health)
12月17日、CMSは2020年の保険料返還額を公表した。

PPACAでは、保険料率抑制の手法として、Medical Loss Ratioが導入された(「Topics2010年10月23日 償還割合規制固まる」参照)。個別保険プランの保険料収入の内、一定割合を医療費償還に使うよう規制するものだ。
医療費償還/保険料収入≧{個人保険・小規模グループは80%、企業保険は85%}
2020年の保険料返還額は次の通り。
Individual Market Small Group Market Large Group Market Total - All Markets
$1.3 billion $384 million $291 million $2 billion
2021年4月に公表されたKFFの推計では、個人保険プランの返還額がもう少し大きかった(「Topics2021年4月15日 2021年保険料返還額推計」参照)。

保険料償還額の総額は、2018年$700M、2019年$1.4B、2020年$2Bと増え続けている。その増加要因は個人保険プランである。保険料の高めの設定と、コロナ禍に伴う通常診療の減少が原因だ。

上記sourceでは、大きな課題が提起されている。保険料償還額は、保険加入者に対して『保険料』に応じて払い戻す。『保険料』は、予め設定された保険料額であって、保険加入者が全額負担しているとは限らない。PPACAでは、保険料補助金(tax credits)が用意されている。ちょっと古いが、2015年の連邦立Exchangeでは、加入者の87%が補助金を受けており、その平均補助金額は$263/Mとなっている(「Topics2015年3月12日 保険料補助金利用率は87%」参照)。場合によっては、加入者負担がゼロの場合もあり得る。

それなのに、償還額は全額加入者のもとに払い戻されるというのはおかしな話ではないか、というのである。保険料補助金を受け取っている場合には、その負担割合に応じて、加入者と連邦政府に還元すべきではないか、という提言をしている。

確かに一理ある提案だ。

※ 参考テーマ「医療保険プラン

12月28日(3) 企業の接種証明提示要求
Source :Employers can require proof of COVID-19 vaccination ? with some exceptions, EEOC says (HR Dive)
EEOCは、12月14日、コロナワクチン接種に関するガイダンスを更新した。そのポイントは次の通り。
  1. 企業は従業員に対してワクチン接種証明書の提示を求めることができる。

  2. その場合、企業は、提示要求が職務に関連し、事業遂行に必要なことを示さなければならない。

  3. 健康上の理由で従業員がワクチンを接種できず、様々な対策を講じても職場への脅威を減じることができない場合、当該従業員の職場への物理的入場を禁止することができる。

  4. 同様に、宗教上の理由で従業員がワクチンを接種できず、様々な対策を講じても職場への脅威を減じることができない場合、当該従業員の職場への物理的入場を禁止することができる。
バイデン政権が進めようとしている民間企業に対するワクチン接種義務を実施するには必要な政策的手当である。

※ 参考テーマ「人事政策/労働法制」、「人口/結婚/家庭/生活

12月26日 就業義務規定に終止符
Source :White House nixes work requirement in Georgia Medicaid plan (ABC News)
12月23日、CMSは、GA州のMedicaid就業義務規定の認可を取り消す通達を行なった(「Topics2020年10月27日 GA/NE州:就労義務規定認可」参照)。COVID-19感染症が広がる中で就業義務規定はMedicaidが必要な人にとって有害であるというのが理由だ。

CMSは、つまりバイデン政権は、今年2月以降、順次就業義務規定認可を取り消してきた(「Topics2021年7月2日 バイデン政権はMedicaid拡張」参照)。Kaiser Family Foundationの整理によれば、今年12月20日までに9州が取り消された(下図赤下線)。今回、これにGA州が追加されたことになる。

地図上はKY州の認可が司法で止められているとなっているが、KY州は連邦地方裁判決後の2019年12月に、就労義務規定を取り下げている(「Topics2020年2月19日 控訴裁も就労義務規定停止」参照)。従って、今回のGA州への通達で、Medicaid就業義務規定を施行する州はなくなったことになる。

2018年1月から始まった、トランプ政権によるMedicaid就労義務規定推進政策は終止符を打たれた(「Topics2018年1月30日 Medicaid:就労義務規定の許容」参照)。

※ 参考テーマ「無保険者対策/州レベル全般」、「無保険者対策/GA州

12月24日(1) OSHAルール意見陳述決定
Source :Supreme Court says it will hold a special session on Biden vaccine requirements (NPR)
12月22日、連邦最高裁は、2022年1月7日に、OSHAルールに関する意見陳述会を設けると発表した(「Topics2021年12月19日 OSHAルールは最高裁へ」参照)。同じ場で、CMSが所管する(Medicare/Medicaidの資金を受け取っている)医療機関への接種義務についても意見を聞く。

これで、ワクチン接種期限である2022年1月4日は、事実上、効力を失うことになる(「Topics2021年11月6日(1) 企業接種期限は1月4日」参照)。仮に最高裁で接種義務化を認める判決が出れば、改めて接種期限を設けることになろう。

※ 参考テーマ「人事政策/労働法制」、「人口/結婚/家庭/生活

12月24日(2) WA州介護保険に待った
Source :Washington Delays Implementation of Long-Term Care Act (OneDigital)
12月17日、WA州知事は、WA州介護保険制度("WA Cares Fund")の施行を中止すると発表した。当初の予定では、2022年1月1日から保険料を徴収することになっていた。

理由は、2022年州議会で改善策を講じることが可能となるということだが、実際は、同制度に対する集団訴訟が行なわれていることが要因だろう。訴訟原告は、州独自の社会保障制度の創設はERISAに違反すると主張している。

おそらく司法決着にはかなり時間がかかると思われる。全米初の州介護保険制度はしばらくお預けとなる。

※ 参考テーマ「公的介護保険

12月24日(3) NLRB-Amazon合意文書
Source :Amazon unionization efforts get a boost under a settlement with U.S. labor board (NPR)
NLRBとAmazonは、労組結成に関する合意文書を作成した。上記sourceによれば、ポイントは次の通り(NLRBのHPは更新テンポが遅く、まだ合意文書を確認できていない)。
  1. Amazonは、従業員が自由に労組を結成することを認める。決して懲罰的な処分はしない。

  2. 今年3月22日から現時点まで配送所の従業員であった者に対して、メールを介して労組結成権利があることを伝える。

  3. 時間外に作業場所以外で行なう労組結成活動に対して威嚇したり、警察を呼んだりはしない。

  4. NLRBがAmazonの不適切行為を発見した場合には、通常の手続きを省いて直ちに提訴することができる。
明らかに懲罰的な合意文書である。Alabama州での労組結成運動に対して、相当悪質な妨害行為を行なったのだろうと推測される(「Topics2021年11月30日(1) Amazon労組再投票命令」参照)。こちらの再投票日はまだ決まっていない。

他方、NY州での労組結成の動きがあった。12月22日、Amazon Labor Unionが労組結成を再申請したとのことだ(「Topics2021年11月15日(2) Amazon:NY労組結成要求取り下げ」参照)。ちなみに、同団体への寄付金は、大幅に増えている。
※ 参考テーマ「労働組合

12月23日(1) 移民減少も労働逼迫の一因
Source :Fewer immigrant workers are coming to fill key jobs. That has slowed the U.S. economy (NPR)
先日、2021年のアメリカの人口増加率はわずか0.1%であり、その要因は、出生数、移民の減少、死亡率の上昇(高齢化に伴う)であると紹介した(「Topics2021年12月22日(1) 人口増加率0.1%」参照)。
上図(再掲)を見ると、移民の増加率は人口増加率を下回っており、2016年頃から伸び率が低下し続けている。ちょうどトランプ大統領就任の時期からだ。

上記sourceでは、専門家の次のような見方を紹介している。
  1. 移民数の減少は、サプライチェーン問題、インフレ、人手不足を引き起こしている。

  2. 移民への依存度が高い産業は、食品サービス、ヘルスケア、トラック輸送、配送などである。いずれも求人数が増えており、なかなか充足されない。

  3. 移民数の抑制は、賃金全般の上昇に貢献している。
労働市場の需給逼迫の一因が、移民の減少であることは間違いなさそうだ。

※ 参考テーマ「移民/外国人労働者」、「労働市場

12月23日(2) 学生ローン返済停止措置再延長
Source :President Biden extends student loan payment freeze through May 1 (NPR)
12月22日、バイデン大統領は、学生ローン返済停止措置を再び延長すると発表した(Statement)。

  1. 連邦学生ローン返済、利払い停止措置は2022年1月31日で終了する予定であったが、これを5月1日まで延長する(「Topics2021年8月9日 学生ローン返済停止措置延長」参照)。

  2. 債務不履行に陥った借入人に対するペナルティの執行は、さらに90日間猶予する。ペナルティの一例は、公的年金の差し押さえ(「Topics2021年1月1日 親たちの教育ローン」参照)。
前回の延長措置は、教育長官によるもので、その際、『最終("a final extension")』との表現を使っていた。そのため、今回は大統領による決定という見せ方にしたのであろう。

※ 参考テーマ「教 育

12月22日(1) 人口増加率0.1%
Sources : COVID-19, Declining Birth Rates and International Migration Resulted in Historically Small Population Gains (Census Bureau)
New Vintage 2021 Population Estimates Available for the Nation, States and Puerto Rico (Census Bureau)
12月21日、Census Bureauは、2021年の人口推計速報を公表した。

2021年の人口増加率は、何と0.1%しかなかった。これは、スペイン風邪及び第1次世界大戦に影響された1918-1919年をも下回る低さだ。
その要因は、出生数、移民の減少、死亡率の上昇(高齢化に伴う)である。
これを州別に見ると、増減率に大きな幅が見られる。


※ 参考テーマ「人口/結婚/家庭/生活」、「移民/外国人労働者

12月22日(2) 複数事業主プラン救済第1号
Source :PBGC Approves First Special Financial Assistance Application (PBGC)
12月21日、PBGCは、ARPに基づく複数事業主プラン救済策の第1号案件を承認したと公表した(「Topics2021年7月16日 複数事業主プランへの支援策」参照)。

対象となったプランは、NYの輸送関係のプランで、加入者は1,723名、受取金額は$112.6M。同プランは2022年には基金が枯渇し、救済策がなければ給付水準をPBGC保証レベルまで引き下げざるを得ない状況(約20%のカット)であった。それが、今回の救済策により、長期にわたって給付水準を維持できることとなった。

救済策の対象となり得るプランは約250プラン、加入者は300万人と推計されている。7月9日の施行以降、既に20プランが申請を提出している。

※ 参考テーマ「PBGC/Chapter 11