Source : | Biden Wants To Help Pay Some Student Loans, But There's Pressure To Go Further (NPR) |
バイデン氏は、学生ローン債務を一定規模免除にしたいと考えている。
学生ローン残高は、既に$1.5Tを超えていると言われている。これまで、連邦議会民主党では、学生ローン免除法案を提出しており、大統領選挙戦でもその主張を続けていた。(「Topics2019年11月27日 学生ローン債務免除提案」参照)
それに加えて、このCOVID-19の影響で、若者の収入が限定されている。また、債務免除になれば、消費、住宅投資が進むとの思惑もある。
連邦政府提供ローンに限れば、大統領および教育省長官が決定しさえすれば、議会上院の法案承認なしに実行できるとの法解釈が行なわれている。
バイデン氏は、債務免除と合わせて、community collegeの授業料無料化を推進したいと考えている。バイデン夫人、Jill Bidenは、Community Collegeで長年教鞭をとっており、Community College授業料無料化を提唱している。
実際、Community College授業料無料化は、NM、NY、WA、TN各州で実施または検討が進んでいる。
またまた余談になるのだが、先に触れた『2020-2030 アメリカ大分断』(ジョージ・フリードマン)では、アメリカ社会の大分断は、地政学的な宿命と大学教育の高額化によってもたらされたと主張している(「Topics2020年11月12日 最高裁:PPACA審理開始」参照)。特に、大学教育の高額化は、階層の固定化ももたらす。Community Collegeの無料化くらいでは、社会の分断を修正する力にはならないだろうが、これ以上の分断を深めることを防ぐことができるかもしれない。
ただ、これも財源問題が立ちはだかることになる。
※ 参考テーマ「教 育」
Source : | 2020 ELECTION LIVE UPDATES (NPR) |
上記sourceでは、大統領選の選挙人獲得数は、10日前と変わっていない(「Topics2020年11月8日 大統領選速報」参照)。これは、GA州の最終結果は未定であるとの立場を反映している。ここが決着済みとの立場に立てば、GA州16人分がバイデン氏のものとなり、306人を確保したことになる。 そのGA州の開票状況を見てみると、ほとんどの郡でトランプ氏が勝っているものの、総得票数でバイデン氏がわずか13,977票リードしている。現在、手作業で再集計中である。
連邦議会上院も、GA州が決選投票となったため、最終結果は出ていない。現時点で共和党が50議席を確保しており、リベラル派は48議席にとどまる。GA州2議席のうち1議席でも共和党が取れば、共和党が過半数を握ることになる。
一方、連邦議会下院は、未定議席が12残っているが、一応、民主党が過半数を確保した。しかし、ここまでで共和党が8議席も取り返しており、共和党が善戦していると言えるだろう。
※ 参考テーマ「大統領選(2020年)」
Source : | Fight Over Gig Workers Persists Despite Win for Uber and Lyft (New York Times) |
CA州のProposition 22が可決された(「Topics2020年11月5日 CA州:Prop.22可決」参照)。しかし、Uber/LyftなどのGig Workersの労働関係がすべて確定した訳ではない。両社にとって、課題は山積となっている。
- Proposition 22の合憲性について訴訟を起こす動きがある。「今回の決定を変更するためには州議会で7/8以上の賛成を必要とする」との条項が入っており、これが州議会の権限を必要以上に制限しているとして、訴訟を起こそうというのである。
- Uber/Lyftは、CA州政府から訴訟を受けている。AB5に従って契約ドライバーを従業員として位置付けることを怠っている、との訴訟である(「Topics2020年10月26日 Uber/Lyft敗訴」参照)。Prop.22は12月に発効するが、今年1月からProp.22発効までの期間は、違法状態にあったということで、CA州政府は州最高裁まで争うことになろう。
- MA州政府も、CA州同様、Uber/Lyftドライバーは従業員であるとして、両社がそのように扱っていないことを問題にして訴訟を起こしている(「Topics2020年7月18日 MA州 Uber/Lyftを提訴」参照)。
- NY、IL、NJ州は、Uber/Lyftドライバーは従業員であるとして、失業手当を給付すべきとの立場を取っている(「Topics2020年7月30日 Uber/Lyft包囲網」参照)。
- NLRB、労働省(DOL)は、これまでUber/Lyftドライバーは独立請負業者であるとの見解を示してきた(「Topics2019年1月31日 独立契約者の定義拡張」、「Topics2020年9月23日 労働省:独立契約者定義案」参照)。しかし、バイデン氏が大統領に就任すれば、労働省のスタンスは変更される可能性がある。一方、ハリス副大統領候補は、Uber/Lyft社に好意的で、義理の兄弟がUber法務部門の主席に就いている。
- Uber/Lyftと労働組合との協議も続いている。
※ 参考テーマ「人事政策/労働法制」
Source : | Goodbye NAFTA, Hello USMCA (SHRM) |
今年7月1日、The United States-Mexico-Canada Agreement (USMCA)が発効した。同協定は、労働市場にも大きな影響をもたらす。上記sourceで紹介されているのは、次の2点。ある推計によると、米国内のGM労働者は時間給$27を稼いでいるのに対し、同じ職務をこなすメキシコ人労働者は時間給$3しか得ていない。この差は間違いなく縮小方向に向かうだろう。
- 自動車部品のうち、北米3ヵ国で生産されている割合が75%に引き上げられた(NAFTAでは65%)。加えて、部品の40%は、時間給$16以上を得ている労働者によって生産されなければならない。
- メキシコで、労働組合の結成が認められた。併せて、労働裁判所が新設された。
このことは、メキシコからの労働移動にとって、どのような影響をもたらすであろうか。メキシコ人の給与が上昇することで、アメリカに向かう労働移動は縮小するという面と、メキシコ内の企業が賃金上昇、雇用縮小と流れることで、アメリカへの労働移動圧力は高まる面があると思う。
※ 参考テーマ「移民/外国人労働者」、「労働市場」
Source : | Farm Workers Say The Government Is Trying To Cut Their Wages (NPR) |
アメリカ農業は、季節限定のゲストワーカー(H-2Aビザ(季節農業労働者))への依存度を高めている。最近5年間で約2倍に増え、アメリカ農業被用者の10%を占めるに至っている。
季節農業労働者の賃金は、アメリカ人農業労働者の職を奪わないよう、またアメリカ人農業労働者の賃金を抑圧しないよう、実態調査を実施したうえで一定のフォーミュラに基づいて決定されている。そうして決まった時間給は、Adverse Effect Wage Rates(AEWR)と呼ばれている。
この水準を見ると、連邦最低賃金や多くの州最低賃金よりも概ね高い水準に設定されていることがわかる。しかも、その上昇スピードは、ここ数年、インフレ率よりも高い。
それは、農業従事者が不足しているからだ。
ところが、現トランプ政権は、突然、実態調査を中止した。そして、11月2日、労働省が農業ゲストワーカーの賃金決定に関するルール変更を公表した。ポイントは次の通り。農業従事者が不足しているという実態を無視して、AEWRの伸び率を抑制しようとしているのである。これは農業経営者にとっては大歓迎である。
- 2021、2022年のAEWRを、現状水準で凍結する。
- 2023年以降は、全国の一般的な労働者給与の上昇率で引き上げる。
トランプ大統領は、今さら農業経営者の支持を増やそうとしているのだろうか。
※ 参考テーマ「移民/外国人労働者」
Source : | San Francisco Passes Tax on Highly Paid Executives (SHRM) |
San Francisco市民投票で、CEOに高額報酬を提供している企業に課徴金を課す条例が可決された。本条例のポイントは次の通り。このようなCEO高額報酬への課徴金制度は、全米のCityで初めてとのことだ。
- CEOの報酬が、同社の平均的従業員の報酬の100倍を超えている場合、法人課税の0.1%を上乗せ徴収する。200倍を超える場合は0.2%、300倍を超える場合は0.3%と上げていき、上乗せ徴収の上限は0.6%とする。
- 2022年から施行する。
- 収入見込み額は、$60M~$140M。
- 収入額は医療サービス用の財源とする。
※ 参考テーマ「経営者報酬」
Source : | Weekly jobless claims fall again in another sign of labor market improvement (CNBC) |
11月12日、労働省は新規失業保険申請数を公表した。今週は70.9万人と、前週から4.8万人の減少となった(「Topics2020年11月6日 新規失業は微減」参照)。これで4週連続の減少だ。34週間で累計6,741万人となった(新規失業保険申請件数data)。
雇用保険被保険者の中の失業者数は678.6万人と、43.6万人の減少で、こちらも順調に減少している。 また、COVID-19対策で導入された追加失業給付(「Topics2020年3月30日 2兆ドル対策(COVID-19)」参照)の新規申請数は、
5/30: 79.9万人
6/ 6: 70.0万人
6/13: 77.4万人
6/20: 88.1万人
6/27: 99.7万人
7/ 4:104.6万人
7/11: 95.5万人
7/18: 96.0万人
7/25: 90.9万人
8/ 1: 65.6万人
8/ 8: 49.0万人
8/15: 52.5万人
8/22: 60.8万人
8/29: 75.1万人
9/ 5: 86.8万人
9/12: 67.5万人
9/19: 61.6万人
9/26: 50.8万人
10/3: 37.9万人
10/10:33.7万人
10/17:34.5万人
10/24:35.9万人
10/31:36.3万人
11/7: 29.8万人
と、減少に転じた。
一方、COVID-19感染状況を見ると、第2波のピークを超えて一日10万人超のペースになってしまっている。また、現時点で手が付けられない状況に陥っている州は45州と、ほぼ全土に広がってしまっている。
Johns Hopkins University Health※ 参考テーマ「労働市場」
COVID Exit Strategy
Sources : |
Supreme Court Appears Likely To Uphold Obamacare (NPR) Supreme Court justices appear ready to uphold Obamacare (Los Angeles Times) |
11月10日、連邦最高裁において、PPACAの合憲性に関する意見陳述が始まった(「Topics2020年9月22日 PPACA存続の危機」参照)。
これまで、PPACAの合憲性に関する連邦最高裁判決は2回行われており、今回は3度目となる。(「Topics2012年6月30日 医療保険改革法に合憲判決」参照、「Topics2015年6月26日 保険料補助金合法判決」参照)
その最初の意見陳述ならびに質疑から、最高裁各判事の大まかな方向性が示されたようだ。(○=合憲 ×=違憲 △=保留)もしこのまま、来年6月に判決が出るとすると、トランプ大統領の目論見は崩れることになる。保守派とリベラル派の構成比が6対3になったのに、PPACAの存続については、4対5で存続が支持されることになる。Current Justices of the US Supreme Court (as of October 26, 2020)
Name Born Appt. by First day University ①2012年
6月②2015年
6月③今 回 John G. Roberts
(Chief Justice)January 27, 1955 George W. Bush September 29, 2005 Harvard ○ ○ ○ Clarence Thomas June 23, 1948 George H. W. Bush October 23, 1991 Yale × × × Stephen Breyer August 15, 1938 Bill Clinton August 3, 1994 Harvard ○ ○ ○ Samuel Alito April 1, 1950 George W. Bush January 31, 2006 Yale × × × Sonia Sotomayor June 25, 1954 Barack Obama August 8, 2009 Yale ○ ○ ○ Elena Kagan April 28, 1960 Barack Obama August 7, 2010 Harvard ○ ○ ○ Neil McGill Gorsuch August 29, 1967 Donald Trump April 10, 2017 Harvard - - △ Brett Kavanaugh February 12, 1965 Donald Trump October 6, 2018 Yale - - ○ Amy Coney Barrett January 28, 1972 Donald Trump October 26, 2020 Notre Dame Law School - - △
PPACAに関する審理において、Roberts長官が果たしてきた役割は大きい。今回改めて、前2回のコメントを読み返してみたところ、Roberts長官について、次のように評価していた。今回も同様の役割を果たすことになるのだろう。ところで、ちょうど今、『2020-2030 アメリカ大分断』(ジョージ・フリードマン)を読んでいる。そこでは、「専門知識と政治的常識の重要性が説かれているが、現在のアメリカ統治機構は、専門知識が圧倒的に優位に立っている。それ故、社会の分断が拡大している」と主張している。その例として、1954年「ブラウン対教育委員会」裁判を紹介している。黒人差別が焦点になった訴訟だが、当時のウォーレン最高裁長官は、これを政治的メッセージが必要だと判断して、全員一致で差別は違憲との判決を出した。それに引き換え、今の最高裁にはそうした判断ができる判事がいない。全員超エリートで、専門知識だけで判決を出している、と主張している。
- 2012年6月
"州際取引条項に基づく判断をしてしまえばどうしても「違憲」との判決になってしまうため、裁判長が知恵を出して違う理屈で「合憲」にしたのではないだろうか。ここで「違憲」判決を出してしまえば、政治も生活も医療業界も大混乱に陥ってしまうことが容易に想像される。そうした混乱を回避する大人の知恵だったのではないだろうか。"- 2015年6月
"今回、Roberts最高裁長官が再び賛成に回り、しかも賛成意見のとりまとめを行っていることの意義は重い。2012年6月の個人加入義務を認めた判決と、今回の保険料補助金の合法判決について、『若い』Roberts長官が賛成したということは、連邦最高裁長官がPPACAの肝を今後長期にわたって支え続ける、ということを意味する。"
しかし、これまでのRoberts長官の判断を見れば、まさに社会的大混乱を回避するという政治的常識を優先していることは明らかだ(「Topics2020年7月5日 Roberts最高裁長官」参照)。
※ 参考テーマ「無保険者対策/連邦レベル」、「司 法」
Sources : |
Biden's First 100 Days: Here's What To Expect (NPR) What Biden's Election Means For U.S. Health Care And Public Health (NPR) |
大統領も連邦議会も確定してないが、早くもバイデン氏の大統領としての初動について、観測記事が出てきた。
最大の課題はCOVID-19対策であろう。この大統領選の間に、感染増加スピードはますます加速している。 大統領就任日(Day 1)に発するメッセージとしては、COVID-19対策、法人税引き上げ(21%→28%)、パリ協定への復帰、投票権の強化に加えて、移民問題が注目されている。
- 在米不法移民への市民権賦与を目指した総合的な移民法改正
- メキシコ国境で分離されている家族のアメリカ入国
- イスラム諸国からの旅行者受け入れ
そして、大統領就任100日の間には、医療保険制度に関する政策が打ち出されてくる。これは、リベラル左派の関心が高い課題だ。PPACAについては、連邦最高裁において今月から意見陳述が行なわれ、来年6月までには合憲性に関する判決が下る。もしもここで違憲判決が下れば、バイデン氏は大幅な軌道修正を迫られることになる。
- PPACAの強化により、Medicare的な公的保険プランの創設(「Topics2019年4月12日 Medicare for "All"/"America"」参照)
- 貧困ライン(PL)400%以上に対する経済的支援
- Medicare加入資格を60歳まで引き下げる。
- Medicare標準給付に、歯科、眼科、耳鼻科を加える。
- 移民に対する医療保険給付制限を解除する(「Topics2019年10月6日 移民申請要件に医療保険」参照)。
- DACA対象者を含む不法移民にExchange加入資格を与える。
- 連邦政府がMedicare処方薬価格の交渉を行なう(「Topics2019年12月15日 Medicare処方薬価格抑制法案」参照)。
また、連邦議会の勢力が確定しなければ、上記のような政策遂行は画餅のままとなる。
※ 参考テーマ「大統領選(2020年)」、「移民/外国人労働者」、「無保険者対策/連邦レベル」、「Medicare」