12月20日 ビザ規制強化案
Source :H-1B, L-1 Visa Reforms on Tap for 2020 (SHRM)
これまでトランプ政権は、大統領令や政府の裁量の範囲内で、外国人労働者関係の規制強化策を進めてきた。その集大成としてビザに関する規制強化を図る考えで、近いうちに成案を公表するそうだ。概要は次の通り。
  1. H-1B

  2. アメリカ人の雇用と賃金をより強固に守ることを目的とする。特に、技術の分野では、多くの就労ビザがアウトソーシング先の企業に提供されており、これがアメリカ人の雇用を奪い、賃金を押し下げているのではないか、との問題意識を持つ。

    1. 次の3点について、該当するかどうかを吟味する。
      1. 特定の分野で学位が必要かどうか。
      2. アウトソーシング先の職場において、本当に雇用関係が保たれているかどうか。
      3. 賃金水準が特別な職業に相応しいかどうか。

    2. 同時並行的に、仕事の内容の定義を明確にし、特定の科目を履修した学士が必要となる職業のみを特別な職業と位置付ける。

    3. 2021年用の申請手続き(H1-B Lottery)を、2020年から変更する。3月1〜20日の間に電子登録を行い、合わせて$10の手数料を支払う。抽選で選出された場合には、4月1日以降、申請書を提出する。

  3. L-1

    1. 給与の最低水準を新設する。

    2. 必要となる「専門知識」の定義を厳格化する。

  4. H-4

  5. H1-Bビザかつグリーンカードの保有者の配偶者、H1-Bビザが6年以上に延長された者の配偶者は、就労を認められていたが、2020年3月以降はこの制度を廃止する。
※ 参考テーマ「移民/外国人労働者

12月19日(2) Cadillac Tax廃止/SECURE法案成立へ
Source :Congress Set to Repeal 40 Percent Excise Tax on High-Cost Health Plans; Pass SECURE Act (Sibson)
12月17日、連邦議会下院は、2020年度予算案を可決した。これと合わせて、民主・共和両党の合意を盛り込んだ法案(HR 1865)もセットで可決された。その中には、当website関連の事項が含まれている。
  1. PPACA関連税制の廃止

    1. Cadillac Tax(2022年〜)
    2. 保険会社への課税(2021年〜)
    3. 医療機器への課税(2020年〜)

  2. THE SECURE ACT(「Topics2019年8月22日 年金改革法案目白押し」参照)
同法案は既に上院で可決されており、予算案と一緒に大統領に送られ、20日までに署名、成立する見込みである。

※ 参考テーマ「無保険者対策/連邦レベル」、「企業年金関連法制」、「DB/DCプラン

12月19日(1) NY/NJ州:不法移民免許証
Source :Long Lines as Undocumented Immigrants in N.Y. Rush to Get Licenses (New York Times)
12月16日、NY州Department of Motor Vehicles(DMV)は、新法に基づいて不法免許証の発行を開始した(「Topics2019年6月21日 NY州:不法移民免許証」参照)。DMV事務所の周りには長蛇の列ができ、当日では処理しきれなかったそうだ。

一方、州議会で審議中であったNJ州も、同日、州議会が不法移民免許証を認める法案を可決し、即時に州知事が署名して成立した。両州とも州知事、州議会を民主党が握っている。

これで不法移民免許証を認めているのは15州(14州+D.C.)となる。 ところで、15州というのは、昨日のトピックスで紹介した、州知事、州議会ともに民主党が握っている州の数と一致する(「Topics2019年12月18日 民主党挽回?」参照)。15州の州知事、州議会の勢力を調べてみると、次のようになる。
州知事
民主党共和党
州議会 民主党12州2州
共和党-1州
制度導入時の勢力とは関係ないため、直接の因果関係はないが、制度が維持されているという意味では州政治勢力と不法移民免許証の間には相関関係があるといえる。

※ 参考テーマ「移民/外国人労働者」、「政治/外交

12月18日 民主党挽回? 外国人労働者
Source :Democratic Governors Make A Big Comeback Under Trump (NPR)
上記sourceは、州知事の数で民主党が挽回しつつあると報じている。
2010年の国勢調査を受けて共和党が激しくゲリマンダリングを展開したものの、@期待していたほどの効果が得られない、A州レベルでの司法判断で見直された、3人口が移動した等の理由が考えられている。

では、州議会レベルまで考慮した勢力はどうなっているのか。2016年大統領選直後と比較してみよう(「Topics2016年12月3日 2016年秋選挙の総括」List of United States state legislatures(Wikipedia)参照)。
2016年12月
州知事
民主党共和党独立系
州議会民主党6州7州
共和党6州26州
ねじれ3州1州1州
2019年12月
州知事
民主党共和党独立系
州議会民主党15州4州
共和党8州21州
ねじれ1州1州1州
確かに州レベルで民主党が挽回していることがわかる。このような情勢が、1年後の秋の選挙にどのように反映されるのだろうか。

※ 参考テーマ「大統領選(2020年)」、「政治/外交

12月17日 IL州:給与歴調査禁止法施行
Source :Illinois Law Banning Salary History Questions Takes Effect in January (HR Daily Advisor)
来年1月1日、Illinois州(IL)の給与歴調査禁止法(Illinois Equal Pay Act)が施行される。当websiteで把握している限り、IL州は6番目の導入州となる(「Topics2018年7月18日 HI州:給与歴調査禁止法成立」参照)。

対象となるのは、従業員4人以上の民間企業、州政府関係機関、学校区。同法の概要は次の通り。 ※ 参考テーマ「人事政策/労働法制

12月16日 マック本社は無関係
Source :McDonald's Not Responsible For How Franchisees Treat Workers, U.S. Agency Rules (NPR)
12月12日、NLRBは、McDonald本社とフランチャイズ店、当時の従業員の間で和解をするよう、判決を下した。ことの流れは次の通り。
  1. 2012年、マクドナルド従業員数百名が、"Fight For $15"運動を支持し、ストライキを行なった。

  2. 2015年、労働組合であるSEIUが、"Fight For $15"運動を支持した従業員が不当に扱われているとして、マック本社とフランチャイズ店を訴えた。
  3. 同じ2015年、NLRBは、担当判事(Lauren Esposito)に対して、訴えを吟味し、マック本社を"joint employer"と位置付けるよう命じた。

  4. ところが、2018年、NLRBの担当官が従業員との和解案を持ち出し、担当判事はそれを拒絶した。

  5. 2019年12月12日、NLRBは、正式に和解案を認めるよう、担当判事に命じた。加えて、フランチャイズ店における労働問題について、マック本社は責任を問われない、との判断も示した。
このNLRBの判断の変更は、政権交代に伴うメンバーの変更と方針の変更にそったものである(「Topics2018年9月19日 共同雇用者定義の規則化」参照)。

※ 参考テーマ「人事政策/労働法制」、「労働組合

12月15日 Medicare処方薬価格抑制法案
Source :The House Just Passed Its Prescription Drug Plan — Here's What's In It (NPR)
12月12日、連邦議会下院は、処方薬価格抑制のための法案(Elijah E. Cummings Lower Drug Costs Now Act (HR 3))を可決した。投票結果は、ほぼ党派別にそったものとなった(ROLL CALL 682)。
  民主党共和党独立系合計
賛成2282230
反対1911192
棄権448
同法案が上院で可決される見込みは低く、トランプ大統領も拒否権を発動すると明言している。それでも同法案が注目されているのは、 からだ。

法案の骨子は次の通り。
  1. HHSがMedicare処方薬価格を交渉する。⇒ 上院超党派法案に含まれていない。

    現行法では、Medicare処方薬価格について連邦政府が交渉することが禁じられている。同法案では、Medicareによる給付額が大きくジェネリックが存在しない処方薬250品のうち、毎年数十品目の価格を交渉する。政府は、外国での価格を参照する。交渉結果を公表することで、民間保険会社の価格交渉を促進する。

  2. Medicare加入者の負担上限額を設定する。⇒ 上院超党派法案に含まれている。ただし、年間上限額は$3,100。

    現行法では、加入者負担額の上限額は設定されていない。同法案では、年間$2,000の上限額を設定する。併せて負担割合も変更する。
    現行法:免責額が数千ドルに設定され、それを超えた額については、加入者5%、処方薬プラン15%、Medicare80%の割合で負担する。

    同法案:上限額$2,000ドルを超えた額については、加入者0%、製薬会社30%、処方薬プランとMedicare70%の割合で負担する。
  3. Medicare処方薬価格の上昇を抑制する。⇒ 上院超党派法案に含まれている。

    インフレ率よりも高い割合でMedicare処方薬価格を引き上げた場合、その超過分を連邦政府に返納しなければならない。
※ 参考テーマ「Medicare」、「医薬品

12月14日 SC州:就労義務規定承認
Source :South Carolina becomes first nonexpansion state with a Medicaid work requirement (Modern Helalthcare)
12月12日、CMSは、South Carolina州(SC)のMedicaid就労義務規定申請を承認した。Medicaid加入者をFPL100%以下にとどめたうえで、給付要件に就労義務を加えることになる。

SC州は、PPACAに基づくMedicaid拡充策を採用していない17州のうちの一つで、Medicaid不拡充で就労義務規定を導入する州は初めてとなる。

Health Reform's Medicaid Expansion (Center on Budget and Policy Priorities)
これは、州知事、州議会上下両院とも共和党が占めているからできることである。

就労義務規定の施行日は2020年7月1日。課題はその執行だ。AR州では、就労義務規定を導入した途端に、Medicaid加入者がどんどん減少してしまった(「Topics2018年11月16日 AR州:就業義務が果たせない」参照)。

Kaiser Family Foundation
※ 参考テーマ「州レベル全般」、「その他州

12月13日 DBプランは絶滅危惧種
Source :"It's really over": Corporate pensions head for extinction as nature of retirement plans changes (USA TODAY)
上記sourceでは、DBプランは絶滅に向かっている、と紹介している。 一つの時代が終わろうとしている。

※ 参考テーマ「DB/DCプラン

12月12日 "Medicare for All"大企業の反応
Source :Large Employers' 2020 Health Care Strategy and Plan Design Survey (National Business Group on Health)
上記sourceで、Medicare拡張策に対する大企業の反応が掲載されていたので、まとめておく。
  1. "Medicare for All"については、『確かに無保険者は減少するものの、医療コストは上昇し、医療の質は低下する』とみている。
  2. Medicare対象者の年齢を65歳から引き下げることには一定の理解を持っている。
意地悪な言い方をすれば、罹病のリスクが高まる中高年齢層は自社の保険プランから外したい、というように読める。

※ 参考テーマ「無保険者対策/連邦レベル」、「Medicare」、「医療保険プラン

12月11日 州最低賃金引上げラッシュ
Source :State Minimum Wage Increases for 2020 (HR Daily Advisor)
年末から来年秋にかけて、州最低賃金が相次いで引き上げられる。

いよいよ「$15/h」が実現し始める。

※ 参考テーマ「最低賃金