6月29日 最高裁:ゲリマンダリング判断不能
Source :Supreme Court Rules Partisan Gerrymandering Is Beyond The Reach Of Federal Courts (NPR)
6月27日、連邦最高裁は、党派的な選挙区割り(ゲリマンダリング)について、その公平性を連邦裁判所が判断することはできないし、合憲性についても判断することはできないとの判決を下した。解決策を見つけるのは政治の課題であり、司法の権能ではないとの見解だ。

こちらの判決は、保守派とリベラル派が党派別にきれいに分かれた意見の結果である(「Topics2019年6月28日 最高裁:市民権質問停止」参照)。

今の連邦最高裁判事の構成が大きく変わらない限り、ゲリマンダリングに関する司法判断は行なわれない。従って、今後は、州知事、州議会選挙の結果が大統領選、連邦議会選を決定的に左右することになる。つまり、州知事、州議会選挙で優勢になった党派は、躊躇なくゲリマンダリングにより自党派に有利になるよう選挙区見直しを行なうことになる。

参考までに、前回の2010年国勢調査後の選挙区見直しを例にとってみよう。

  1. 2010年中間選挙前、州知事、州議会の勢力図では、ゲリマンダリング可能な州は民主党14、共和党4と、民主党が有利だった(「Topics2010年9月11日 州議会の戦い」参照)。

  2. ところが、中間選挙終了後の勢力図に基づくと、ゲリマンダリング可能な州は民主党7、共和党15と、共和党が逆転した(「Topics2010年12月23日 Redistricting開始」参照)。

  3. さらに、国勢調査結果は、共和党が強い州での人口が増え、議席の割り当てが増える結果となった。

  4. 2012年大統領選で、オバマが圧勝するも、連邦議会下院は共和党の優勢を維持(「Topics2012年11月8日 2012年秋選挙結果」参照)。

  5. 2014年中間選挙で、共和党は上院の過半数を奪取し、過半を制していた下院でも議席数を伸ばした。共和党の圧勝(「Topics2014年11月6日 中間選挙後の政策動向」参照)。

  6. 2016年大統領選で、トランプ氏が当選。連邦議会上下両院とも共和党が多数党(「Topics2016年12月3日 2016年秋選挙の総括」参照)。

  7. 2018年中間選挙では、連邦議会下院が民主党多数に(「Topics2018年11月8日 中間選挙結果」参照)。
2010年の中間選挙結果により、共和党が選挙区割りで圧倒的に有利となり、その後、徐々に連邦レベルで挽回していったことがわかる。

2020年の国勢調査と州知事・州議会選挙は、今後10年間のアメリカ政治を左右する(「Topics2019年6月28日 最高裁:市民権質問停止」参照)。

※ 参考テーマ「司 法」、「政治/外交」、「人口/結婚/家庭/生活」、「大統領選(2020年)

6月28日 最高裁:市民権質問停止
Sources : Trump Threatens Census Delay After Supreme Court Leaves Citizenship Question Blocked (NPR)
Supreme Court puts census citizenship question on hold (Washington Post)
6月27日、連邦最高裁は、国勢調査に『市民権の有無』を質問する項目を追加することを停止するとの判決を下した(「Topics2019年4月27日 国勢調査の変遷」参照)。質問追加の決定と最高裁における説明の関連性が明確になっていないというのが理由だ。

連邦政府が関連性をしっかりと説明できることができれば最高裁の判決を覆せるとの考えから、大統領は、国勢調査の実施を遅らせても説明の再提出ができないか、検討を指示したとのことだ。

しかし、ここまで連邦最高裁で審議してきたことを、短期間に覆すような説明が生まれてくるとは思えず、ずるずると調査実施が先送りされていく懸念がある。

国勢調査の結果は、今後10年間のアメリカの選挙、連邦補助金の分配に大きな影響をもたらす(「Topics2018年11月5日 センサス訴訟始まる」参照)。

もう一つ、今回の最高裁判決の注目点は、判決内容に賛成した判事である。リベラル派の4人が賛成するのは予想できたが、保守派のRobert長官が賛成し、主文の執筆者になっているのは予想外だ(「Topics2018年10月7日 Kavanaugh判事就任」参照)。今後、Robert長官がトランプ政権の動きに歯止めをかける役割を果たすことになるのかどうか、注目していきたい。

※ 参考テーマ「人口/結婚/家庭/生活」、「政治/外交」、「移民/外国人労働者」、「司 法

6月26日 窓口負担急増
Source :Patients' out-of-pocket costs increased up to 14% in 2018 (ModernHealthcare)
上記sourceによると、2018年の窓口負担は急増した模様だ。 免責額の増加とともに、保険プラン加入者の負担が高まっている(「Topics2019年5月21日 免責額負担増」参照)。

※ 参考テーマ「医療保険プラン

6月25日 医療費開示大統領令
Source :Trump Administration Pushes To Make Health Care Pricing More Transparent (NPR)
6月24日、トランプ大統領は、医療機関に対して医療費を開示することを義務付ける大統領令に署名した。ただし、具体策には触れておらず、HHSにその手法を検討するよう指示したにとどまる。

開示強化による医療費、処方薬価格抑制は、トランプ政権の十八番だが、必ずしも実効があがっているとはいえない。

昨年5月には、処方薬価格抑制の青写真を公表したが、その後の具体化は進んでいない(「Topics2018年5月19日 処方薬価格抑制策を提案」参照)。また、Medicareでも、処方薬価格について国際的な販売価格を考慮するとの案を出したが、これまた具体化されていない(「Topics2018年10月27日 Medicare処方薬価格の改定案」参照)。

いずれも医療機関や製薬会社、保険会社が強く反対しており、今回の大統領令に対しても強い反発が出ている。

2020年大統領選が始まったことで、医療に関してもファイティングポーズを採って見せた、ということか。

※ 参考テーマ「医療保険プラン」、「大統領選(2020年)

6月23日 強制退去2週間猶予
Source :Trump Delays Immigration Raids, Giving Democrats 'Two Weeks' To Reform Asylum Laws (NPR)
6月22日、トランプ大統領は、不法移民の強制退去を2週間猶予すると発表した(「Topics2019年6月20日 不法移民強制退去」参照)。同時に、連邦議会に対して、つまりは民主党に対して、2週間内に亡命手続きに関する法改正を実現するように要請した。

やはり、強制退去の対象は"runaway aliens"で、初回は2,000人程度を計画しているようだ。

※ 参考テーマ「移民/外国人労働者

6月22日 AR州:就労義務規定不発
Source :More Arkansans uninsured, unemployed post-Medicaid work requirement (ModernHealthcare)
Arkansas州(AR州)は、2018年7月からMedicaid拡充プランに就労義務規定を導入した。ところが、Medicaidへの加入者が減り続け、所期の目的を達成できていなかった(「Topics2018年11月16日 AR州:就業義務が果たせない」参照)。

加えて、2019年4月には、連邦地方裁から就労義務規定の運用停止命令を受け、現在は執行していない(「Topics2019年4月1日 KY/AR 就労義務規定停止処分」参照)。

州政府の発表では、2018年初のMedicaid拡充プラン加入者は約25万人だったが、そのうち18,000人以上が就労義務規定違反で加入を取り消された。そのうち、2019年に再加入したのはたった4,300人しかいなかった。就労義務規定を守れないのでMedicaid加入申請を諦めたのだろう。

一方、全国を見渡してみると、就労義務規定を認められて実際に運用しているのは2州のみで、認定を受けながらも運用を開始していない州が5つもある。さらに、AR, KY両州は司法により執行停止となっている(Kaiser Family Foundation)。

※ 参考テーマ「無保険者対策/AR州」、「無保険者対策/州レベル全般

6月21日 NY州:不法移民免許証
Source :Driver’s Licenses for the Undocumented Are Approved in Win for Progressives (New York Times)
6月17日、NY州議会で不法移民に運転免許証を発行することを認める法案が可決された。州知事は即日署名し、同法案は成立した。NY州としては、20年ぶりの発行復活ということになる。

この法案については、共和党が強硬に反対したばかりでなく、民主党内も意見が対立したようだ。実際、17日の上院の投票結果は、僅差の33 vs 29であった(上院の議員構成は、民主党39、共和党23、独立1)。最後は、不法移民排斥を主張するトランプ大統領に対抗する姿勢を見せた方がポイントになるとの判断だったようだ(「Topics2019年6月20日 不法移民強制退去」参照)。

これで、不法移民に運転免許証を賦与できるのは、13州+D.C.となった。当websiteで12州+D.C.と確認したのは3年前だから、3年振りの出来事ということになる(「Topics2016年11月26日 不法移民免許証の変遷」参照)。上記sourceによれば、NJ州が同様の法案を検討中とのことである。

※ 参考テーマ「移民/外国人労働者