1月20日 実質賃金低下が続く
Source :Real Earnings Summary (BLS)
1月29日、労働省は2021年第4四半期の被用者平均賃金を公表した。週間名目賃金の中位数は、$1,008/w(季節調整済み)となった。ただし、実質賃金中位数は2020年第3四半期以来、低下が続いている。
物価の上昇が実質賃金の低下を招いている(「Topics2022年1月13日(2) 物価急騰継続」参照)。

※ 参考テーマ「労働市場

1月18日 テレワークと州法
Source :Out-of-State Remote Workers Are Increasing Legal Risks for Employers (SHRM)
コロナ禍の中で、企業側がテレワークを積極的に広げようとする動きがある(「Topics2020年5月23日 Facebookのリモートワーク」参照)。しかし、アメリカはご存知の通り、州によって税制や労働法が異なる。上記sourceでは、FL州に本社がある企業の従業員がずっとCA州でテレワークしていたら、CA州がFL州企業にCA州法を適用することがあり得るとしている。

当websiteでも、テレワークを行なう従業員に対して異なるFMLAが適用される可能性を紹介したことがある(「Topics2021年7月11日 テレワークとFMLA」参照)。

そこで、労働法の専門家は、次のような行動を企業に推奨している。
  1. テレワークをしている従業員の居場所を積極的に確認する。

  2. 従業員がテレワークを行なっている州の税法、労働法を事前に研究しておく。
テレワークを自由放任している企業がある一方、こうした課題があることからテレワークの場所を限定する企業も出てきているそうだ。アメリカならではのテレワークの課題である。

※ 参考テーマ「人事政策/労働法制」、「Flexible Work

1月15日(1) OH州最高裁が選挙区案差戻し
Source :Ohio Supreme Court Rejects GOP-Drawn Congressional Map (AP)
1月14日、Ohio州(OH)最高裁は、州議会と選挙区設定委員会が策定した選挙区案について、2018年にゲリマンダリングを禁止した州憲法改正に反しているとして、差し戻しを決定した。今回の選挙区案は、連邦議会下院議員選挙用だが、その前に、州議会選挙用の選挙区案についても、州最高裁は同じように差し戻しの判決を下している。

OH州では、2月2日に州議会選挙立候補登録、3月4日に連邦議会選挙立候補登録が予定されており、選挙区見直しが間に合わない事態が想定されている。5月3日予定の予備選挙は延期せざるを得ない状況も考えられる。

OH州は連邦議会下院の議席数が1つ減らされている。州議会で多数を握る共和党としては絶対に落とせないと考えたのであろう(「Topics2021年8月5日 選挙区見直しの主導権」参照)。

OH州最高裁は、ゲリマンダリングには厳しい(「Topics2019年5月5日 OH州:ゲリマンダリング違憲判決」参照)。

※ 参考テーマ「政治/外交」、「中間選挙(2022年)

1月15日(2) ND州PBMs規制執行
Source :On Reconsideration, Eighth Circuit Concludes That ERISA Does Not Preempt State Law Regulating PBMs (EBIA)
第8控訴裁判所は、North Dakota州(ND)のPBMs規制は、連邦法ERISAの先占の対象にならず、執行は認められるとの判決を下した。同裁判所は、以前、ERISAの先占の対象であり、執行は認められないとの判決を下していたが、2020年の連邦最高裁の判決を受け、再審査したのだった(「Topics2020年12月18日 AK州PBMs償還額規制」参照)。

州によるPBMsへの規制強化はますます進んでいる。

※ 参考テーマ「医薬品

1月14日(1) OSHA× CMS○
Sources : Supreme Court blocks Biden's vaccine-or-test mandate for large private companies (NPR)
1月13日、連邦最高裁は、OSHAルールについては差し止め(3vs6)、CMSルールについては執行を認める(5vs4)との判決を下した。一般の予見通りであった(「Topics2022年1月9日(3) OSHA/CMSルール意見陳述」参照)。各判事の賛否は次の通り。
Name Born Appt. by First day University OSHAルール CMSルール
John G. Roberts
(Chief Justice)
01955-01-27 January 27, 1955 George W. Bush 02005-09-29 September 29, 2005 Harvard ×
Clarence Thomas 01948-06-23 June 23, 1948 George H. W. Bush 01991-10-23 October 23, 1991 Yale × ×
Stephen Breyer 01938-08-15 August 15, 1938 Bill Clinton 01994-08-03 August 3, 1994 Harvard
Samuel Alito 01950-04-01 April 1, 1950 George W. Bush 02006-01-31 January 31, 2006 Yale × ×
Sonia Sotomayor 01954-06-25 June 25, 1954 Barack Obama 02009-08-08 August 8, 2009 Yale
Elena Kagan 01960-04-28 April 28, 1960 Barack Obama 02010-08-07 August 7, 2010 Harvard
Neil McGill Gorsuch 01967-08-29 August 29, 1967 Donald Trump 02017-04-10 April 10, 2017 Harvard × ×
Brett Kavanaugh 01965-02-12 February 12, 1965 Donald Trump October 6, 2018 Yale ×
Amy Coney Barrett 01972-01-28 January 28, 1972 Donald Trump 02020-10-26 October 26, 2020 Notre Dame Law School × ×
OSHAルールは越権。CMSルールについては、公的医療サービス提供のための条件付けは従来から行なわれていたとの判断だ。

この結果、バイデン政権が打ち出しているワクチン接種義務化の方策は、次表の通りとなった。
対象機関 従業員100人以上の民間企業 連邦政府契約企業 Medicare/Medicaid医療機関等
従業員のワクチン接種期限 2022年1月4日 2022年1月4日?
新ルール(25州+D.C.のみ)1回目1/27 2回目2/28
接種免除
対象者数 8,400万人 700万人 1,700万人
規則所管機関 OSHA The White House CMS
この判決について、バイデン大統領は、『判決には失望したが、大統領の声としてワクチン接種の義務化を呼びかけ続ける』とのステートメントを公表した(Statement by President)。

一方、民間企業の動きについて、同じ大統領ステートメントの中で、Fortune 100の1/3が従業員にワクチン接種を義務付けているとしている。また、KFFの11月時点の調査でも、従業員100人以上の企業では、36%が接種義務化している(「Topics2021年12月3日(2) ワクチン接種動向(11月)」参照)。逆に言えば、2/3の企業はワクチン接種を義務化しておらず、今回の判決を受けて、慎重な態度を残す企業も多いだろう。バイデン大統領は、大きな武器を失ったことになる。

※ 参考テーマ「人事政策/労働法制」、「人口/結婚/家庭/生活」、「司 法

1月14日(2) 大学入学者数減少続く
Source :More than 1 million fewer students are in college. Here's how that impacts the economy (NPR)
1月13日、National Student Clearinghouse2021年秋の大学入学者数推計を公表した。

大学入学者は1,444万人と、2年前の2019年秋から100万人以上、6.6%も減少した。ピークだった2012年からみれば、約30%減である(「Topics2019年12月21日 大学入学者数の減少」参照)。
また、community collegeへの入学者数も、2019年から13%減少した。
減少の背景には、もちろんコロナ禍もあろう(「Topics2021年6月12日 大学進学者数が急減」参照)。

短期的には、 などの理由が考えられる。

しかし、これだけ長い期間、減少傾向が続くとなると、若い世代の大学教育に対する考え方の変化が生じていると考えられる。これは個人のレベルだけでなく、地域社会、企業活動、国家全体に影響をもたらすことになる。

※ 参考テーマ「教 育」、「労働市場

1月13日(1) Amazon(AL)労組結成投票日程
Source :Amazon workers in Alabama will vote again on whether to unionize next month (CNBC)
1月11日、Alabama州におけるAmazon集配所労組を結成するかどうかの再投票のスケジュールがNLRBから発表された(「Topics2021年11月30日(1) Amazon労組再投票命令」参照)。

労使とも投票所における直接投票を希望したが、NLRBの裁定により郵便投票となった。

現時点で、Amazonは3つの拠点での労組結成問題を抱えている。
  1. Alabama州Bessemer(上記)

  2. New York州Staten Island(「Topics2021年12月24日(3) NLRB-Amazon合意文書」参照)

  3. Illinois州Chicago:Amazonians United Chicagolandが同地域で労組結成を検討している。
※ 参考テーマ「労働組合

1月13日(2) 物価急騰継続
Source :Inflation is still surging and some Democrats see one culprit: Greedy companies (NPR)
1月12日、BLSは12月の物価指数を公表した(News Release)。前月比0.5%、前年同月比7.0%の上昇となった。前年同月比では、先月に続いて大幅な上昇となった(「Topics2021年12月12日 1982年以来の物価上昇」参照)。
その要因を見ると、相変わらずエネルギー価格の上昇が飛び抜けて大きい。
その前年比伸び率は30%前後を続けている。
食料品の価格上昇も、2ヵ月連続6%台(前年同月比)と加速している。
エネルギー、食料品を除いた物価指数上昇率も5.5%に達した。
※ 参考テーマ「労働市場

1月13日(3) 企業保険プランの負担感
Source :State Trends in Employer Premiums and Deductibles, 2010-2020 (The Commonwealth Fund)
医療保険改革法(PPACA)が始まってから10年。上記sourceは、その間の企業提供保険プランの負担感について調査したものである。
  1. 保険料負担と免責額負担の所得中位数に対する割合は、2010年の9.1%から2020年には11.6%に上昇した。免責額の占める割合は、2010年の36.3%から2020年の40.5%に上昇した。
  2. 保険料+免責額の負担が所得中位数の10%を超える州が、年々増加している。
  3. 保険料負担が所得中位数の8.5%を超える州が8州となっている。
  4. 免責額負担が所得中位数の5%以上となっている州が22州に達している。
徐々に負担感は高まっている。

※ 参考テーマ「医療保険プラン

1月12日(1) CT州FML拡大
Source :All Connecticut Employers Are Covered by State Family and Medical Leave Act Beginning 2022 (JacksonLewis)
Connecticut州(CT)のFMLAが大幅に改定された。

  1. 改定施行日は2022年1月1日。

  2. CT州に一人以上の従業員がいる企業はすべて対象となる(改定前は75人以上)。

  3. 従業員は、就職から3ヵ月後に取得権を得る。

  4. 適格従業員は、年間12週間の無給休暇を取得できる。

  5. 妊娠中の深刻な状況の場合、さらに2週間取得できる。

  6. さらに、1月1日以降、別制度として有給休暇も取得できる(Connecticut Paid Leave Authority
CT州は、2012年、最初にFMLAを導入した州である(「Topics2014年9月1日 CA州:有給病気休暇を法定」参照)。 ここで、州ベースでのFMLA導入状況を確認しておこう。FMLAの導入は広がっているが、

NCSL
有給FMLAは、依然として限られている。

KFF
※ 参考テーマ「FMLA

1月12日(2) Citi接種義務日程を堅持
Source :Citi moves ahead with Jan. 14 vaccine mandate deadline (HR Dive)
多くの民間企業がOSHAルールに対する連邦最高裁の判決を固唾をのんで見守る中、Citiは従業員に対するワクチン接種義務の遂行スケジュールを固守している。Citiが提示しているスケジュールは次の通り。 支店従業員は別の日程が提示されている。また、健康上、宗教上の特例措置も認められている。

職場の安全を優先する姿勢を明確にしたいのだろう。

※ 参考テーマ「人事政策/労働法制」、「人口/結婚/家庭/生活」「」、「解雇事情/失業対策

1月12日(3) 日米企業の雇用形態比較
Source :「その働き方、本当に新しい?」鶴光太郎・慶大教授 (日経/経済教室)
とても示唆に富む、よい論考だと思う。1980年代以降、アメリカ企業が『革新的に』取り込んできた人事政策は、日本の大企業の典型的な人事制度の特徴を踏まえたものとなっているとの整理だ。しかし、決定的に異なるのは、随意雇用(解雇自由)の原則があるため、長期雇用・賃金後払いを特徴とするメンバーシップ型雇用は目指していないという点だ。

雇用の形態は、社会的な慣習(文化)のもと、個々の企業が長期的戦略と合わせて築き上げるものであることを、改めて確認させられた。

※ 参考テーマ「人事政策/労働法制

1月11日 接種拒否者失業給付州が増加
Sources : At least 5 GOP-led states offer jobless benefits to workers who refuse vaccines; others may follow (Washington Post)
Extra benefits for anti-vax jobless? Really? (American Enterprise Institute)
ワクチン接種拒否を理由に解雇された労働者にも失業給付を認める州が増えている(「Topics2021年11月14日(1) 接種拒否者失業給付」参照)。 これらの州は、共和党が握っている州である。

失業保険の保険料を負担しているのは企業であり、当然のことながら、こうした政策変更に企業、経済団体は反対している。リベラル派のシンクタンクが反対するのもよくわかるが、保守派と目されるAEI(American Enterprise Institute)からも反対の声が上がっている。その主張のポイントは次の通り。

  1. 企業と労働者が雇用関係に入るのは、いずれも自発的な意思に基づくものである。

  2. 労働者は職場環境を選択しているのであり、その選択の結果に対して責任を負うべきである。決して犠牲者ではない。

  3. 今なすべきは、労働者を労働市場に参加してもらうことであり、決して労働市場から引き離すことではない。これは、保守派の州が連邦政府負担失業保険上乗せ給付を早期に停止した時と同じ理屈だ(「Topics2021年6月13日 失業保険上乗せ給付停止」参照)。

  4. 労働者を労働市場から引き離すことにより、労働市場の逼迫は益々強まり、ひいてはインフレを加速することになる。

  5. 失業給付は他人の負担で賄われていることを、保守派の人々は銘記すべきだ。
民主党大統領の方針に反対することで、保守派の自らの原則論を見失ってしまっていると批判している。

※ 参考テーマ「解雇事情/失業対策」、「人事政策/労働法制」、「人口/結婚/家庭/生活