5月10日 Uber/Lyftドライバーのストライキ
Source :Uber And Lyft Drivers Are Striking — And Call On Passengers To Boycott (NPR)
Uber/Lyftのドライバー達が、5月10日に主要都市でのストライキを全ドライバーに呼びかけている。また、Uber/Lyft利用者にも、アプリを停止するなどして、ドライバーへの協力を訴えている。

ドライバー達は、Uber/Lyftは上場した、またはしようとしているが、経営幹部にばかりその利益が回ることに怒っている。それに加えて、自分たちの最低賃金の保証、レシートでの詳細内訳明示、会社のコミッションの上限設定、突然のアカウント廃止の禁止などを求めている。

法的地位が個人請負業者であるとの明示により、従業員としての権利行使は難しくなっている(「Topics2019年5月3日 Gig workersは独立請負業者」参照)。次の手段は独禁法のくらいなのか。かつてのバイク便、バイシクル便の若者達を思い出してしまう。

※ 参考テーマ「人事政策/労働法制

5月5日 OH州:ゲリマンダリング違憲判決
Source :Federal judges declare Ohio congressional map unconstitutional (Washington Post)
5月3日、Ohio州(OH)でも、前回の選挙区見直しについて、違憲であるとの司法判断が示された。MI州の場合と同様、2020年大統領選用に選挙区を見直すよう命じている(「Topics2019年4月29日 MI州:ゲリマンダリング違憲判決」参照)。

上記sourceによれば、両判決とも判事全員一致の意見となっている。判事の構成は共和党系、民主党系が混じっているという。これは下級審の連邦最高裁に対するメッセージと理解されている。つまり、連邦最高裁で選挙区見直しに関する合憲性について指針を示すべきである、とのことである。

現在、連邦最高裁はNC州、MD州に関する選挙区見直しの事案について意見聴取を行なっており、6月にも判決を下すものとみられている。しかし、保守系の判事達は、選挙区見直しに関する合憲性の指針を示すことに懐疑的な態度を示している。

ところが、専門家によると、今回のOH州事案の判決では、判断基準に関する大きな方向性が示されており、連邦地方裁としては4つ目の判決だという。その判断基準として挙げられているのは次の3点。
  1. 選挙区割りが意図的に一方の党派を利し、もう一方の党派を不利にする。

  2. その区割りが効果的で継続的な影響をもつ。

  3. 他の要素で判断して正当化できない。
ただ、これを連邦最高裁判事達が採用するとは思えない。これらを柱とするのであれば、それぞれを具体的に判断できる数値基準のようなものが必要になるからだ(「Topics2017年6月25日 ゲリマンダリングの合憲性」参照)。最高裁判事達は厳しい夏を迎えようとしている。

※ 参考テーマ「政治/外交」、「司 法

5月4日 単一保険制度の基本設計
Source :Key Design Components and Considerations for Establishing a Single-Payer Health Care System (CBO)
連邦議会下院でMedicare for All法案に関する意見陳述が行われている中、CBOが"Single-Payer Health Care System"(単一保険制度)に関する基本的な制度設計についてのレポートを公表した(「Topics2019年4月12日 Medicare for "All"/"America"」参照)。当webisteでは、以前、単一保険制度に関する定義を紹介したことがある(「Topics2016年1月28日 「単一保険制度」とは」参照)。今回のCBOレポートは、より具体化されている。

レポートの中で注目した点についてまとめておく。
  1. 単一保険制度の構成要素は次の図の通り。
  2. 単一保険制度の特徴は、次の4点。
    1. The government entity (or government-contracted entity) operating the public health plan is responsible for most operational functions of the plan, such as defining the eligible population, specifying the covered services, collecting the resources needed for the plan, and paying providers for covered services;


    2. The eligible population is required to contribute toward financing the system;


    3. The receipts and expenditures associated with the plan appear in the government’s budget; and


    4. Private insurance, if allowed, generally plays a relatively small role and supplements the coverage provided under the public plan.


  3. 現在、無保険者は2,900万人いると思われるが、不法移民1,100万人を加入対象者に含めるかどうかで皆保険の性格が決まってくる。

  4. 単一保険制度に移行した場合、政府支出は大幅に増大する。

  5. 単一保険制度の運営費は現行よりも低減するものと考えられる。それは、バラバラな保険プランの運営を統一できることと、民間保険会社の利益が不要となることから実現する。

  6. 保険プラン間の加入者の移動がなくなることから、単一保険制度では健康増進策、予防策への投資インセンティブが働くようになる。

  7. 単一保険制度では、現行の無保険者や一部の加入者が今以上の保険給付を受けることとなることから、医療サービスの提供不足、医療受診機会の低下などが起こる可能性がある。

  8. 単一保険制度では、加入者のニーズに応じた新たな給付が迅速に行われない可能性がある。
そして、これらの理論的・抽象的考察もさることながら、VT州が2011年に単一保険制度創設法案を成立させながら(「Topics2011年5月8日 VT州:法案議会通過」参照)、3年後の2014年には制度創設を断念したことを充分に理解しておく必要がある(「Topics2014年12月20日 VT州:単一保険制度創設を断念」参照)。しかも、VT州の状況は、単一保険制度を導入するにはよい条件が揃っていた(Washington Post)。
それでも導入を諦めたのは、多額の財源を捻出できなかったからだ。

"Medicare for All"導入の先頭に立つ、VT州選出のBernie Sanders上院議員(I-VT)は、この点について何も語っていない。

※ 参考テーマ「無保険者対策/連邦レベル」、「医療保険プラン」、「無保険者対策/VT州

5月3日 Gig workersは独立請負業者
Sources : U.S. Department of Labor Issues New Wage and Hour Opinion Letter, Concludes Service Providers for a Virtual Marketplace Company Are Independent Contractors (U.S. Department of Labor)
Labor Dept. Says Workers at a Gig Company Are Contractors(New York Times)
4月29日、労働省(DOL)は、Gig企業のプラットフォームを利用した労働者は独立した個人請負業者であるとのOpinion Letterを公表した。これは、ある仮想市場提供企業の要請に基づき、労働省の見解を示したものである。

労働省は、この文書の中で、独立した個人請負業者であるかどうかの判断は、かつて連邦最高裁が示した基準に従って行われたとしている。その基準とは次の6点。
  1. The nature and degree of the potential employer's control;
  2. The permanency of the worker's relationship with the potential employer;
  3. The amount of the worker's investment in facilities, equipment, or helpers;
  4. The amount of skill, initiative, judgment, or foresight required for the worker's services;
  5. The worker's opportunities for profit or loss; and
  6. The extent of integration of the worker's services into the potential employer's business.
今回のOpinion Letterを受け取ったのは、UberLyftではないそうだが、同社のビジネスモデルにとっては重要な事項だ。もしも運転手たちが従業員であると認定されるのとそうでないのとでは、人件費が大きく変わってくる。例えば、社会保障制度や最低賃金の適用がなくなるからだ(「Topics2016年8月5日 Gig economyと社会保障」参照)。

また、上記sourceのNew York Timesの記事は、今回、労働省の見解が特定企業に対するOpinion Letterという形で表明されたことを問題視している。特定企業にとっては労働省からの免罪符を受け取ったも同然だからだ。Obama政権時代は、同じ労働省が「従業員と考えた方がよい」というガイダンスという形で判断を示していた。ガイダンスという形なら、個別ケースについての判断は示されないものの大まかな考え方がわかる。ところが、今回のOpinion Letterという形だと、一般論は分からないものの特定企業には免罪符が与えられるということになる。

Uberはじめサービス提供者と利用者をマッチングさせるプラットフォームを提供している企業は、続々と労働省に対してOpinion Letterを求めてくるだろう。一方で、アメリカ社会のセーフティネットからはずれる労働者が多数発生することになる。またまた大きな社会的課題が出てきたようだ。

※ 参考テーマ「人事政策/労働法制」、「社会保障全般