Source : | Massachusetts Joins California and New York with Aggressive Equal Pay Law (LaborSphere) |
8月1日、MA州で報酬均衡法("An Act to Establish Pay Equity")が成立した。州議会上下両院とも全会一致で賛成している。施行日は、2018年7月1日。
上記sourceからその内容を整理してみる。一応の防衛措置は用意されているとはいえ、企業にとっては厳しい環境が待っている。それにしても、「2.」にある『同一労働』の定義は難しい。上記sourceでは、広く捉えていると説明しているが、同様の「技能」、「努力」、「責任感」、「労働環境」といっただけでは判断できない。しかも、それを誰が判断するのかで異なってくる。
- 企業側は、採用とその後の報酬が決まるまで、就職希望者の過去の報酬額を質問してはいけない。
- 同一労働において、過去の報酬額を理由に男女の報酬格差をつけてはならない。
- 従業員は報酬交渉を公開しても処罰されない。
- 報酬額の格差の正当な理由としてシニオリティ(年功)を考慮しても構わないが、妊娠や家族ケア休暇などによりシニオリティを減価させてはならない。
- 報酬格差を是正するために、報酬を減額してはならない(CA州法と同様)。
- 報酬格差是正の訴訟を可能とする期間を、現行の1年から3年に延ばす。
- 報酬格差是正の訴訟を、MA差別防止委員会への提訴をしなくても、直接裁判所に行なえるようにする。
- 企業が報酬格差是正に向けて具体的な調査、行動を取っていれば、3年間は訴訟されない。
- 企業が行なっている是正措置をもって訴訟の材料とすることはできない。
今後、州司法長官が公表する解説、ガイドラインが重要な判断材料となってくる。
※ 参考テーマ「人事政策/労働法制」
Source : | State approves largest insurance rate increase since start of Obamacare (POLITICO) |
8月5日、NY州政府は、来年のExchange保険料を認可した。個人保険プランについては、加重平均で前年比16.6%増と、2014年のPPACA施行後最大の上げ幅となった(「Topics2015年8月13日 NY州は7.1%アップ」参照)。
ちなみに、小規模グループプランについては、加重平均で前年比8.3%増に収まっている。
これだけ大きな引き上げ幅となった理由は、主に次の3つ。これで、CA州に続き、NY州も2桁上昇率となった(「Topics2016年7月21日 CA州保険料13.2%上昇」参照)。この大幅上昇が加入者にどのような影響をもたらすか。
- 診療費の高騰(個人保険プランでは約7%の上昇)
- 薬価の高騰
- 連邦政府が提供していた再保険プログラムの廃止(約5.5%分)
※ 参考テーマ「無保険者対策/NY州」、「無保険者対策/連邦レベル」、「無保険者対策/州レベル全般」
Source : | Fewer Small Employers Offering Health Coverage; Large Employers Holding Steady (EBRI) |
医療保険プランを提供している企業の割合を、ここ10年超の推移でみると、大企業(100人以上)は95%超で高位安定しているものの、中小企業(100人未満)ではゆっくりと低下してきている。 この理由を上記sourceでは次のように説明している。これに、各州のSHOPsが本格稼働して、使いやすい市場となれば、この傾向はますます強まることになろう(「Topics2016年8月2日 州立SHOPの現状」参照)。
- もともと中小企業は、医療保険プラン提供へのコミットメントが弱い。その理由として、中小企業の提供プランの保険料率がより大幅に触れることが挙げられる。また、従業員の雇用と保険プランの関係性を強く認識していない。
- 2007年末からの景気後退、高失業率時代に、保険プランの提供をやめた中小企業が多かった。
- 2010年のPPACA成立により、企業提供保険プランの規制が強まり、コストも上昇することが見込まれた。
- その一方で、保険料補助金(tax credits)が提供されるExchangeの設立が決まり、従業員が医療保険に加入しやすい環境が提供されるようになった。
※ 参考テーマ「医療保険プラン」、「無保険者対策/州レベル全般」
Source : | The Benefits - or Lack Thereof - of the 'Gig' (Workforce) |
上記sourceのタイトルになっている"gig economy"とは何なのか。わからなったのでネット検索してみたら、こんな記事(Forbes Japan)が見つかった。専門職の個人請負業者、ということらしい。
アメリカでは、こうした形態での働き方をしている労働者が5,000万人近く、あるいは労働者全体の34%を占めているそうだ。一方で、アメリカの社会保障制度(公的年金やMedicare)は、フルタイムの常用雇用者をモデル対象者にしている。具体的には企業の源泉徴収制度("W-2"申告書)が利用されている。そのために、個人請負業者は社会保障制度から外れてしまう可能性が高くなってしまう。
さらに、常用雇用者でないために、その他の労働者保護のための施策(休暇制度や最低賃金など)の対象からも外れてしまう。上記sourceでは、次のような項目が挙げられている。アメリカの社会保障制度は、財源面と制度面の両面から改革が必要となっている。
- Overtime pay rules
- Unemployment insurance
- Workers’ compensation insurance
- Paid vacation time
- Sick days
- Family medical leave
- Right of assembly
- Minimum wage
- Americans with Disability Act protections
※ 参考テーマ「社会保障全般」、「公的年金改革」、「Medicare」、「人事政策/労働法制」
Source : | Survey: Employee Benefits Trends Show Shifting Priorities (SHRM) |
上記sourceでは、この20年間で各ベネフィットを提供している企業の割合を調査している。その中で注目なのは、20年前との比較である。 黄色の丸印をつけたように、在宅勤務(または社外勤務)、能力開発、健康促進などのベネフィットが急速に普及していることがわかる。つまり、企業側は、フレックス、人材確保、医療費抑制に重点が置いているということである。
※ 参考テーマ「ベネフィット」
Source : | State-Run SHOPs: An Update Three Years Post ACA Implementation (Commonwealth Fund) |
上記sourceは、最近話題に上がることの少ないSHOPsの現状に関するレポートである。
なぜか話題にならないのは、公式データがほとんど公表されていないことが理由とされている。特に、連邦立SHOPsについてはほとんど公表されていないらしい。そこで、州立SHOPsに関する現状をまとめている。SHOPsは、"Exchange"と並んで、PPACAの下での無保険者対策の柱となるはずであった。さらなる普及が求められる。
- 現在、州立SHOPsを運営しているのは、17州+D.C.である。制度施行直後と較べると、Idaho, Mississippi州が新たに設立し、Nevada州が連邦立に移行したことがわかる(「Topics2014年3月19日 州立SHOPは健闘」参照)。Nevada州は、Exchangeでトラブルが続いた後、連邦政府のweb加入手続きシステム"healthcare.gov"に依存することに決めたことに伴う撤退であろう。
- 一方、Mississippi, Utah州は、Exchangeを連邦立に委ねているにも拘わらず、SHOPsは州立を運営している。また、Hawaii, Vermont州は、縮小・撤廃を検討している。
- 州立SHOPsへの保険プラン提供件数は多く、MA, NY, OR州では8つ以上のプランが提供されている。
- また、従業員に選択肢を提供する企業が多い(「Topics2014年6月14日 SHOP:スタートは斑模様」参照)。
- ただし、実際にSHOPsを通じて保険加入している人数は全米で14.4万人程度で、従業員10人未満の本当に小さな企業が主になっている。
- オンライン加入手続きも完全普及しておらず、5州は未だに直接手続きを必要としている。
※ 参考テーマ「無保険者対策/州レベル全般」
Source : | More than price transparency is needed to empower consumers to shop effectively for lower health care costs (Brookings Institution) |
上記sourceでは、医療費抑制策として「参照価格制度」について考察している。いずれにしても、医療費抑制策は一つの手法で可能となるのではなく、総合的な取り組みが必要となる。
- 企業提供プランに導入した場合、従業員のコスト意識を高めることができる。
- 実際、Safewayで実験的に参照価格制度を導入した場合、約32%のコストダウンができた。
- コスト比較情報を提供する場合、単純化した方が効果が高い。
- そうした意味で、保険プランが提供する医療機関ネットワークは限定的な方が効果が高い。
- 一方、外来診療の場合にはこうしたコスト比較、参照価格制度が役立つが、入院診療の場合にはほとんど効果がない。
- また、標準化された診療には効果が認められる。こうした診療は民間保険プランがカバーする診療の1/3程度しかない。
※ 参考テーマ「医療保険プラン」