7月28日 大統領選と債務残高 
Source :How Much Would Clinton and Trump Increase Our $19 Trillion Gross Debt? (Committee for a Responsible Federal Budget)
上記sourceは、大統領がクリントンになった場合、トランプになった場合、それぞれ政府債務残高がどの程度になるかを試算している。もちろん、両陣営とも正確な制度設計をした上での政策綱領となっているわけではないので、一定の前提を置いたうえでの推計ということになる。

数字的なものをまとめてみると、次のような表となる。
2016年2026年
純  債  務
Debt held by the public
現 行 法$14T$23.7T
クリントン$23.9T
トランプ$35.2T
総  債  務
Gross debt
現 行 法$19T$29.1T
クリントン$29.6T
トランプ$39.5T
総債務と純債務の違いは、連邦政府が社会保障基金に対して負っている債務を含めるか含めないかの違いである。上記sourceでは、政治家やマスコミは総債務を好んで引用するが、経済的な意味合いでは純債務の方が有意義としている。ただ、これは債務者の定義をどうするかだけの問題で、社会保障基金に対する債務(おそらく給付債務)を認識する方が、本当の意味での政府債務となるのではないかと思う。

トランプ氏は再三にわたって総債務が巨額にのぼっていることに懸念を表明しているが、今のままではトランプ政権が成立すると、10年後には総債務は倍増してしまう。一方、クリントン氏の場合には、現行法のもとでの推計とほとんど変わらないが、それでも総債務は相当膨らむことに変わりはない。
クリントン氏の政策は、ある意味で現実的と言える。違う言い方をすれば、今の路線からの変化はない、ということにもなる。

トランプ氏の政策の方が変化は大きい。ただし、最終的な辻褄が合うのかどうかが疑問となる。

いずれが選択されるのであろうか。

※ 参考テーマ「大統領選(2016年)

7月27日 同一労働同一賃金:トランプの場合 
Source :Clinton vs. Trump: Equal Pay for Equal Work (SHRM)
7月18〜21日で開催された共和党大会で、Ivanka Trump氏(トランプ候補の長女)のスピーチが注目を浴びたそうだ。スケジュールを見ると、最終日の21日にスピーチを行なったようだ。

上記sourceで引用されているIvankaの発言は次の通り。
"At my father's company, there are more female than male executives, women are paid equally for the work that we do, and when a woman becomes a mother she is supported, not shut out. Policies that allow women with children to thrive should not be novelties, they should be the norm. Politicians talk about wage equality, but my father has made it a practice at his company throughout his entire career. (My) father will fight for equal pay for equal work, and I will fight for this too, right alongside him."
『パパはとっくに実践しているのよ』という訳だ。

同一労働同一賃金といえば、民主党のお株である。現職のObama大統領は、賃金の男女格差是正に関する大統領令を提案している(「Topics2016年2月1日 賃金男女格差是正策」参照)。また、民主党の大統領候補となったClinton氏は、"Paycheck Fairness Act"の強力な推進者である。

共和党、企業経営者は、事業主の裁量を狭めるとしてこの種の立法に反対してきている。トランプ氏自身は大統領候補として明確なスタンスを示していないが、かつては『男性と同じようによく働き、成果を出しているなら同じ賃金を払うべき。でも同一賃金を立法化するのは間違い』と繰り返し発言していたそうだ。

同様に、有給休暇法についても、Clinton候補が支持する立場を明確にしているのに対し、トランプ候補は慎重な言い回しを繰り返している。

トランプ陣営にとっては、意外なところに落し穴があったという想いだろう。

※ 参考テーマ「人事政策/労働法制」、「大統領選(2016年)

7月26日 国民医療費の伸びは続く 
Source :Latest Health Spending Projection Shows Higher Spending Growth Ahead (Committee for a Responsible Federal Budget)
CMSは国民医療費の2025年までの推計を公表した。上記sourceはそのトピックスをまとめたものである。
  1. 国民医療費のGDPに占める割合は、今後10年間上昇し続ける。しかも、昨年7月の推計値を上方修正しており、医療支出の伸びが一段と高まっていることを表している。
  2. 国民医療費の伸びは約6%前後と見込まれている。
  3. 国民医療費の伸びにプラスで寄与しているのは次の通り。

    • Medicaid、Medicareへの加入者の増加。MedicaidはPPACAによる増加、Medicareは高齢者の増加による。

    • 個人保険プランへの加入者の増加。これもPPACAに基づくExchangeによるもの。

    • 無保険者割合の低下。

    • 処方薬の価格上昇が続く。

  4. 一方、マイナスに寄与するのは次の通り。

    • 企業提供保険プランへの加入者が若干減少する。

    • Cadillac Taxに伴う企業提供保険プランの給付の低下
    • 高免責額プランの普及に伴う外来診療の抑制
※ 参考テーマ「無保険者対策/連邦レベル

7月25日 3大ベネフィットの特徴 
Source :EMPLOYEE BENEFITS IN THE UNITED STATES (BLS)
上記sourceのエッセンスは、次の表に要約されている。
感想を4点。
  1. 医療保険プラン、退職後所得プランともに、企業側から提供されているのに加入しない従業員が2〜3割いる。配偶者が加入しているからそちらだけで充分、という人たちだろうか。

  2. 生命保険の企業からの提供割合は、医療、退職後所得に比べて若干低いが、提供された場合の従業員の加入率はほぼ100%となっている。こちらは、配偶者の加入状況とは関係なく入っているのだろう。意外に人気のあるベネフィットになっている。

  3. ベネフィットの手厚さについては、官民格差が歴然としている。

  4. ちょっと意外だったのは、医療保険プランにおける企業負担が低いことである。労使負担割合は、日本とちょうど逆になっている。
※ 参考テーマ「ベネフィット」、「医療保険プラン」、「DB/DCプラン

7月24日 Humanaも撤退 
Source :Humana pulling out of many Obamacare markets (POLITICO)
保険会社大手のHumanaも個人保険プランからの大幅撤退を公表した。 Countyの数でいけば、1割強の規模にまで縮小してしまう。2017年のExchangeでの保険プラン販売については詳細を公表していないが、かなり大きな規模で縮小することは間違いないだろう。

撤退の理由は単純で、個人保険プランで$1B近くの赤字を計上しているためだ(The Hill)。

これで、大手保険会社の個人プランからの撤退は、UnitedHealthに続いて2社目となる(「Topics2016年4月21日 UnitedHealth全面撤退」参照)。

折しもこの日、司法省は、AetnaとHumanaの合併に反対することを決定し、提訴した(「Topics2016年4月19日 保険会社統合の効果」参照)。

※ 参考テーマ「医療保険プラン」、「無保険者対策/連邦レベル」、「無保険者対策/州レベル全般

7月23日 次世代ACO 3機関撤退 
Source :Three ACOs bail on Medicare's Next Generation program (Modern Healthcare)
今年から始まった次世代ACOsは、当初21機関が参入したものの、これまでに3つの機関が撤退し、既に18機関まで減少してしまった(「Topics2015年3月23日 次世代ACO提案」参照)。

撤退の理由は、 といったところにあるようだ。

この2つは、密接に関連している。コスト抑制目標を達成するためには、出来高払いから包括払い方式に移行するいこととしているが、それを受け入れる医療機関が充分に集まらないことで、ネットワークが構築できない。

長い間続いた診療報酬出来高払いから脱出するのは、なかなか難しい。

※ 参考テーマ「ACO

7月21日 CA州保険料13.2%上昇
Source :Covered California health care premiums to jump 13.2 percent in 2017 (Sacramento Bee)
2017年のCA州Exchange保険料は、平均13.2%上昇する。以前の推測を上回り、PPACA本格施行以後初の2桁上昇となる(「Topics2016年5月12日 CA州保険料大幅引上げ見込み」参照)。

上記sourceで挙げられている大幅上昇の理由は次の3点。
  1. 連邦政府が負担していた再保険への拠出金が終了する。これにより、4〜7%ポイントの上昇となる。

  2. 全米で、特殊専門処方薬の価格が上昇している。

  3. 特別保険加入期間に重い既往症患者が加入した。
保険会社は、利益率は平均で1.5%しかなく、今回の保険料大幅上昇は利益確保が目的ではなく、診療費、処方薬価格が上昇しているからだとしている。一方、全米36州では22.7%上昇するとの推計もあり、CA州の上昇は全米で見れば低い方にとどまるのかもしれない。

CA州の無保険者割合は、2013年12月(PPACA本格施行直前)の17%から、2015年12月には8.1%と大きく低下しており、無保険者の減少という政策目的についてはある程度成果をあげている。しかし、医療費の高騰という根本を正さない限り、"affordable"な保険制度は持続しない。

※ 参考テーマ「無保険者対策/CA州」、「無保険者対策/連邦レベル」、「無保険者対策/州レベル全般