Source : | FLSA Overtime Rule Resources (SHRM) |
5月18日、DOLが残業代対象者に関する新たなルールを公表した(「Topics2015年7月4日 残業代対象者拡大提案」参照)。昨年の大統領提案よりは多少スケールバックしたところはあるが、大規模な影響があるものと思われる(SHRM作成ルール概要)。上記ルールに従って見直した場合、SHRMの試算では、2020年1月1日から年収最高額は$51,000を上回ると見られている。大統領提案は約3年先に実現することとなる。
現行制度 大統領提案
(2015年6月)DOLルール
(2016年5月)残業代対象者の年収最高額 $23,660 $50,400 $47,476 新規対象者(増加分) - 約500万人 約420万人
(州別増加人数)施行日 2016年12月1日 年収最高額の見直し 法改正 被用者年収の(下から)
40パーセンタイルに固定3年ごとに
インフレ調整
上表を見てもわかる通り、年収最高額が倍以上に引き上げられることになるため、企業にとっての労働コストとしては相当大きなインパクトを与えることになる。総額人件費管理の考え方からすれば、当然どこかを削る部分もないと利益が圧縮されてしまう。専門家の間では、ベネフィットの対象者、内容の見直しが行なわれるのではないかと言われているようだが、今から12月1日に向けて制度変更するのはとても難しいだろう。おそらく、来年以降、徐々に削減していくことになると思われる。
※ 参考テーマ「人事政策/労働法制」
Source : | Final EEOC Rule Sets Limits For Financial Incentives On Wellness Programs (Kaiser Health News) |
健康管理策のルールを巡って、長い間、混乱と論争を招いていたが、5月16日、EEOCが最終決定を公表した(「Topics2014年11月1日 EEOC:健康管理策を訴える」参照)。
内容的には、当初EEOCが示した案に近いものとなっており、PPACAが想定していたルールよりも企業側にとって厳しいルールとなっている(「Topics2013年6月4日(1) 健康増進策の新規則」、「Topics2015年6月29日 EEOC健康管理策ルール案に大量批判」参照)。この発表に対して、企業側は慎重な姿勢を見せている。
- 健康管理策として適用されるインセンティブは、従業員個人の保険コストの30%を上限とする。
⇒これまでのルールでは、家族加入の場合には、家族全体の保険コストの30%以内とされていたため、より制限が厳しくなったことになる。
- 禁煙プログラムの場合には50%まで認める。
- 健康管理策はあくまで自主的な参加によるものであり、不参加を理由にすべてのコストを従業員に負担させることはできない。
- 健康管理策煮によって得られた情報は、ベネフィット提供のためだけに利用される。
一方、企業の健康管理策によって差別扱いが広がるのではないかと懸念しているグループは、情報管理が甘いのではないかとやはり懸念を表明している。
- Business Roundtable:新ルールを精査して、健康管理策が有効になるように利用したい。(上記source)
- National Business Group on Health:もう少し柔軟なルールになるとよかった。(New York Times)
- U.S. Chamber:医療保険の素人(EEOC)が作ったルールが、健康管理策の普及、強化に悪影響をもたらす。(Press Release)
2017年1月から新ルールは施行されるが、論争はしばらく続きそうである。
※ 参考テーマ「人事政策/労働法制」、「医療保険プラン」、「無保険者対策/連邦レベル」
Source : | Insurers dive into ACA's exchanges as big names exit (Modern Healthcare) |
上記sourceによると、Exchangeへの新規参入が静かに進行しているそうだ。これまで大手保険会社が撤退したり、CO-OPが閉鎖されたりと、保険者がExchnage市場から退出する報道ばかりが目立っていた(「Topics2016年3月24日 ME州CO-OP赤字に転落」参照)。ところが、そうして保険者が抜けて空白になったところ、競争が減ったところを狙って参入してくる保険者もあるということである。しかも、一度撤退したところは5年間は再参入できないというルールがあるため、経験者がすぐに戻ってくることはないというのは、新規参入者にとってはありがたいことでもある。
- Kansas
Aetna, Medica, Blue Cross and Blue Shield of Kansas, Blue Cross and Blue Shield of Kansas Cityが2017年からの参入を準備。UnitedHealthが同州からの撤退を表明している(「Topics2016年4月21日 UnitedHealth全面撤退」参照)。
- Iowa
Wellmark Blue Cross and Blue Shieldが2017年加入募集期間から個人保険プランに参入予定。医療機関ネットワークを絞った保険プランを提供する考えだ。同社は、当初Exchangeへの参入を見合わせていた。2015年にCO-OPが閉鎖となっている。
- Colorado
5月16日、Bright Healthが2017年に個人プランへに参入することを公表。同州では昨年末にCO-OPが閉鎖している。
- Nevada/Wyoming
Canopy Health Insuranceが新規参入すると見込まれている。両州ともExchangeに参加する保険会社が少ないという課題を抱えている。
こうして新規参入が促され、競争状態を保とうとするメカニズムが働いているということは、Exchnageは一応成功していると言えるのではないだろうか。
※ 参考テーマ「無保険者対策/連邦レベル」、「無保険者対策/州レベル全般」、「CO-OP」
Source : | Clinton's Medicare buy-in concept revives debate on public option (Modern Healthcare) |
民主党大統領選候補者選びの先頭を走るクリントン氏が、5月初旬の討論会で、民間医療保険プランの保険料が高くて払えないという問題に対処するため、『医療ニーズの高い50歳代がMedicareに加入すれば、そのコストを分散することができる』と述べた。以前には、民間保険会社と競合するような州立保険プランの設立を促すとの提案も行なっている。さらに、現在PPACAに基づいて支給されている保険料補助金の対象者を広げることも提案している。
かつて、クリントン氏がファーストレディーだった時代(1998年)に、55〜64歳の国民がMedicareに加入できるようにすることを提案した。また、PPACAの議論の最中にも同様の提案を行った。いずれも失敗に終わったが、今回、大統領選候補者となる目処が立ってきたところで、昔の提案を復活させつつある。
今のタイミングで提案を始めたのは、サンダース上院議員の『単一保険制度』の支持者達も取り込むことが可能となるとの打算も働いているそうだ。サンダース提案よりもクリントン提案の方が財源が少なくて済むというメリットもある。民主党内の選挙戦を早く収束させたいとの狙いだろう。
とにかく医療保険プランについては、徐々にではあるものの、公的な性格を持たせたいとのクリントン氏の執念を感じる。
しかし、以前失敗したときと同様、この提案には賛否両論が根深く残っている。一方の共和党候補はトランプ氏で固まりつつある。トランプ氏はPPACAの即時廃止、連邦政府の権限縮小・州政府の権限強化を訴えてきた(「Topics2016年3月16日 トランプ候補の医療政策」参照)。公的性格を強めようとするクリントン氏提案とは真逆の方向を向いている。
- 賛成論
- 民間保険プランの保険料を抑制し、医療提供サービスの質を改善することができる。
- 現行制度よりも若い世代が大量に加入することで、リスクプールを大きくすることができる。
- Exchangeに加入している比較的高い年齢層をMedicareに移すことで、Exchange保険プランのコストを下げることができる。
- 『単一保険制度』のように一気に公的システムにしてしまうよりは、徐々に公的システムを拡充していく方が現実的だ。
- 反対論
- 民間保険市場を圧迫する。
- 民間保険や企業提供プランにコストがしわ寄せされる。
- Medicareの診療報酬は連邦政府が決めており、硬直的で、市場機能を低下させてしまう。(医療機関)
医療保険制度は、大統領選の大きな争点の一つとなりそうだ。
※ 参考テーマ「Medicare」、「無保険者対策/連邦レベル」、「大統領選(2016年)」
Source : | Your vanishing health coverage: Employers are cutting retiree health benefits at a rapid rate (Los Angeles Times) |
上記sourceでは、"retiree health coverage is becoming an endangered species"と紹介している。ここからも判るように、退職者医療保険プランは、一部大企業と公的部門に特有のベネフィットとなりつつある。ここまで医療コストが高まってくれば、この流れを戻すことは難しい。あとは、いつになれば地方政府が諦めるようになるか、だろう。
- 従業員200人以上、従業員に医療保険プランを提供している企業で、退職者医療保険プランを提供しているのは、1988年に66%もあったのが、2015年には23%に下落している。
- 企業規模別の退職者医療保険プラン提供割合
- 従業員5,000人以上:42%
- 従業員200〜999人:20%
- 業種別の提供割合
- 地方政府:73%
- 通信・公共サービス:62%
- 金融:49%
- 農業・建設:15%
- 小売:12%
※ 参考テーマ「医療保険プラン」、「自治体退職者医療/GAS 45」
Source : | Obamacare Premiums In California May Rise 8 Percent Next Year, State Predicts (Kaiser Health News) |
現在、California州のExchnage(Covered California)に参加している保険会社は、来年の保険料を州政府に提出している最中である。その後州政府との交渉を経て、7月に正式決定となる予定である。
これとは別にCovered Californiaは、来年の保険料は平均8%引き上げられるのではないか、との予測を示した。もしそうなれば、これまで続いてきた4%程度の引き上げ率を大幅に上回ることになる(「Topics2015年7月29日 CA州:2016年保険料4%増」参照)。
大幅引き上げの要因として、次の2つが挙げられれている。ただし、後者の方は、中期的には解消されるものと見られている。CA州の最低賃金が2022年までに$15/hに引き上げられていくため、Medi-CalからCovered CAに移ってくる州民が増えてくると予想されているからだ(「Topics2016年4月7日(1) CA州:最低賃金$15」参照)。
- 連邦政府からの補助金のうち、2つが終了となる。
- 加入者の伸びが想定を下回っている。
CA州は、Exhcnageの優等生と評価されており、その動きを全米が注目している。Coverd CAの予測どおり8%の伸びとなれば、大幅引き上げを目論む保険会社の勢いは強まるだろう(「Topics2016年4月28日 保険料引き上げムード」参照)。逆に、CA州政府による抑制交渉が成功すれば、各州政府も申請保険料の抑制に力を入れることになるだろう。
※ 参考テーマ「無保険者対策/CA州」、「無保険者対策/州レベル」
Source : | U.S. Government Responds to N.C. 'Bathroom Bill' Lawsuit by Suing State (SHRM) |
North Carolina州知事は、連邦政府からの要請に直接応えず(「Topics2016年5月5日 NC州法に警告」参照)、5月9日、連邦裁判所に対してNC州法が連邦法に違反しているかどうかの判断を求める訴訟を行なった(Press Release)。
同時に、州知事は、州政府機関において、独立した個室トイレの設置を進めるよう指示したことも公表した。
これに対し、同日、連邦政府は、NC州法は市民権法、教育法、性差別禁止法に違反していると、こちらも連邦裁判所に提訴した。
NC州法の是非は、司法の場に持ち込まれた格好だが、既に紹介した通り、NC州を管轄する第4控訴裁判所は、LGBTフレンドリーな姿勢を明確にしており、連邦地方裁としてもそれを考慮せざるを得ないだろう(「Topics2016年4月22日 第4控訴裁が学校トイレで判決」参照)。勝負は既に見えているように思う。
※ 参考テーマ「LGBT」