Source : | Why the Senate likes to ‘gang’ around those divisive issues (The Washington Post) |
下院共和党が事実上旗を降ろしてしまったところから、上院超党派6人組の動向が注目されている(「Topics2011年5月5日 共和党が譲歩」参照)。
ところが、上記sourceによると、上院ではこれまで何度も超党派検討グループ("Gang of Number")が結成されてきたが、いずれも成功していない、と断じている。当websiteで追い駆けていた医療保険改革の上院6人組も、正念場で内部対立が激しくなり、早々に消滅してしまった(「Topics2009年9月15日(1) 超党派6人組が対立」参照)。
では、なぜ上院議員達は超党派検討グループを結成するのか。そしてなぜ失敗するのか。それでもなお超党派グループを作ろうとするのか。上記sourceのまとめは次のようになっている。ちなみに、Conrad(D-ND)上院議員は「6人組による検討は継続している」とコメントしたが、その他の5人は、超党派で検討している理由についてコメントを断ったそうだ。
- まず、上院議員には独立性があり、従って、超党派グループの結成にも抵抗感があまりない。これに関しては、次の例えがよく説明している。
"The House functions like two choirs: party leaders pick the music, and their members generally line up and sing. The Senate, on the other hand, acts more like 100 soloists, each feeling free to make his own alliances."- ではなぜ失敗するのか。たとえ超党派グループの中で合意ができたとしても、党幹部、関係委員長など党内実力者が受け容れない。彼らにとっては党派間の争いこそが本源的な課題であるからだ。
- それでも、超党派による試みを続ける理由は何か。超党派による取り組みが政策論議の環境づくりを促し、そこでの提案が一部なりとも法律として結実していくから、というのが政治家側の説明だが、政治学者達は「単にその方が見栄えがいいから」と断じている。
※ 参考テーマ「政治/外交」、「Medicare」、「無保険者対策/州レベル」、「公的年金改革」
Source : | Judge Gives Immigrant in Same-Sex Marriage a Reprieve From Deportation (New York Times) |
以前当websoteで紹介した、ベネズエラ人とアメリカ人の同性婚者の続報である(「Topics2011年4月1日 やはり現場が混乱」参照)。
ベネズエラ人男性に関する移民裁判所の判断は、別のケースに関する移民控訴裁判所の判断が下されるまで待つこととなり、国外退去命令の決定が早くとも12月まで延期された。
別のケースのあらましは次の通りである。このような流れが作られたことにより、Obama政権は、同性カップルまたは同性婚の場合に移民法を別解釈して、同性カップルの現状を維持できるようにしようとしている、と受け止められている。同性婚賛成者は当然評価しているし、反対者は非難している。
- アイルランド人男性は、1996年にアメリカに入国し、ビザの有効期間が過ぎてもアメリカに滞在していた。
- このアイルランド人男性が、2009年6月、NJ州において、アメリカ人男性と"civil union"の関係に入った。NJ州では同性婚を認可していないが、"civil union"に対して同性婚と同等の権利を賦与している。
- この同性カップルは、アイルランド人男性の恒久ビザを求めていたが、移民控訴裁判所は、これを却下した。
- この判決に対して、Eric Holder Jr. 司法長官が、アイルランド人男性が合法的にアメリカに滞在できる選択肢を含めて再考するよう差し戻した。
報道を読む限り、今回差し戻しとなったケースの同性カップルは"civil union"であり、ベネズエラ人男性のケースは"同性婚"であることから、アイルランド人が滞在を認められれば、ベネズエラ人男性の滞在が認められる可能性は高まる。
結婚という社会の最小単位の認定問題と、既に同性カップルとして生活している現状の確保という課題とが衝突している、とても繊細な政治課題である。※ 参考テーマ「同性カップル」
州 同性婚の法的ステータス 州法 州最高裁判決 他州認可同性婚承認 認可法案審議中 異性婚同等権利賦与 Massachusetts A @ Vermont ○ Connecticut A @ Iowa ○ New Hampshire ○ Washington, D.C. ○ ○ California ○→×(→○)* ○ Rhode Island ○ ○ New York ○ Illinois ○ ○ Maryland ○ ○ New Jersey ○ ○ Oregon ○ Washington ○ Nevada ○ Hawaii ○ Wisconsin ○ Maine ○→× △
* CA州最高裁判決○ → Proposition 8× → 連邦地方裁判所○ → 第9控訴裁判所で審議中
Source : | Health care reform bill on way to governor (Burlington Free Press) |
5日、単一保険プランを目指すVT州法案(H.202)が、州議会下院で可決された(「Topics2011年4月23日 VT州の第一歩」参照)。上院は既に可決しており、法案は州知事に送付された。
上記sourceによれば、州知事は、当然のことながら『署名する』と明言している。さらに、『道程は長くなろうが、必ず正しい医療保険制度を確立できると信じており、この法案はその第一歩となる』とも述べている。
今回の法案に賛成票を投じた州議会議員達も、多くの課題が残されていることを充分認識しながらの投票であったようで、そこには苦悩の色さえ感じられる。
※ 参考テーマ「無保険者対策/VT州」
Source : | The Underfunding of State and Local Pension Plans (CBO) |
今度は、CBOが2009年度の地方政府年金の積立不足の推計を公表した(「Topics2011年4月27日 2009年度の積立不足」参照)。ただし、こちらは、126の州・自治体の年金プランのみであり、地方政府の年金プラン全体の中では約85%(資産、加入者等)を占めている。
主な結果は次の通り。いずれにしても、割引率の置き方次第でその深刻さが変わってくる。州・自治体は、割引率の設定理由を充分に説明する必要がある。
- GASBのルールに従って試算した積立不足は約$0.7T。積立比率は80%弱と、最近20年間でも最も低い水準となった。
- Fair-Value(市場価値)で試算した場合の積立不足は、割引率によって、$2〜3Tと幅を持った数値となる。
※ 参考テーマ「地方政府年金」
Source : | State Legislation and Actions Challenging Certain Health Reforms, 2011 (NCSL) |
上記sourceは、5月2日時点での、PPACAに対する州政府・州議会の抵抗をまとめたものである。大きく分けて3つのステージが並行して動いている。州議会における法案提出は活発に行われており、上記sourceによれば、2011年に入ってから、41の州で、何らかの形でPPACAに反対する法案が提出されている。ただし、両議会とも可決し、州知事も署名することで発効した法律となると少ない。
- 州議会による州法・憲法の改正
- 連邦裁判所における訴訟
- 州民投票
ちなみに、2009〜2011年にかけての法案提出とその結果は、次のような図に示されている。
今回、この資料を読んでいて、初めて知った用語が、"Interstate Freedom Compact"である。要するに、『反PPACA同盟』であり、州を越えて一緒に反対していこうね、ということである。この"Interstate Freedom Compact"を盛り込んだ法案が提出されている州議会が、全米で9つある(AZ, CO, GA, IN, MO, MT, ND, NM, TX)。そのうち、州知事、上下両院とも共和党が制しているのは、5州のみである(AZ, GA, IN, ND, TX)。従って、どこまで広がりが出てくるのかはちょっと疑問だが、訴訟の例もあるので、今後それらの動きを注目しておきたい。
※ 参考テーマ「無保険者対策/州レベル」
Source : | Budget talks: Republicans offer to seek common ground with Democrats (Washington Post) |
下院共和党院内総務のEric Cantor下院議員(R-VA)は、次のように発言したと報じされている。共和党が旗を降ろしたことで、現実的な解を求める動きが活発化することになる。その場合、例の上院6人組はどのように動くのだろうか(「Topics2011年4月13日(2) Obama vs 上院6人組」参照)。
- 共和党は今でも退職後給付プランの改革が必要と考えている。しかし、Medicare、Medicaid、公的年金プランの改革は、Obama大統領、民主党から強く抵抗されており、これらについて合意を得ることは難しい。
- 今後は、10年間で$715Bの歳出削減を目指して、民主党と協議を行う。
- その際、主な検討課題となるのは次の通り。
- 裕福な農家への補助金削減
- 医療過誤訴訟の制限
- 電波周波数の競売 等々
※ 参考テーマ「Medicare」、「無保険者対策/州レベル」、「公的年金改革」
Source : | Rule Would Discourage States’Cutting Medicaid Payments to Providers (New York Times) |
PPACAに定められた2014年のMedicaid加入資格拡充に向けて、Obama政権がMedicaid償還額に関する新たなルールを提案しようとしているそうだ。上記sourceに示された主な項目は次の通り。さらに、Obama政権は、これらの新ルールをHMOには適用しないとしているが、将来的には、HMOに加入しているMedicaid加入者についても、新ルールの適用を検討しているそうだ。
- 州政府が、償還額を削減した後もMedicaid加入者に充分なアクセスが確保されていることを示せなければ、償還額の削減を認めない。
- 州政府は、Medicaid加入者にとってアクセスが充分に確保できているかどうかを常にモニターしなければならない。
- 州政府は、Medicaidに盛り込まれている給付に対するアクセスについて、少なくとも5年に1回は調査、報告しなければならない。
- 従来より、連邦政府は、州政府に対し、Medicaid加入者が同地域の人々と同じようなアクセスを有するよう、充分なMedicaid提供医療機関の確保を求めていた。今回の新ルール提案にあたっては、改めて、Medicaid償還額を定めるにあたっては、アクセスの充分な確保を考慮することを求める。
- 州政府は、Medicaid加入者を対象に、診療予約の困難さを調査しなければならない。
- 州政府は、Medicaid償還額とMedicare、民間保険のそれとを比較しなければならない。
- Medicaid加入者の新患を受け入れた医療機関の数と割合を示さなければならない。
こうしたObama政権の施策に対し、州政府が反発するのは必至である。州政府のMedicaidに関する裁量権が拡大するどころか、ますます狭められていくことが明らかだからだ(「Topics2011年3月1日 州知事に歩み寄り?」、「Topics2011年3月3日 Medicaidの裁量を要望」参照)。Obama政権と州知事達の間の溝は深まりつつある。
※ 参考テーマ「無保険者対策/州レベル」
Source : | Proposal for Medicare Is Unlike Federal Employee Plan (New York Times) |
Medicare改革に関する下院予算委員長提案(「Topics2011年4月7日 下院予算委員長提案」参照)について、下院共和党は「連邦政府職員が加入している医療保険プランと同じ」と説明している。これに対して、民主党は、この説明は間違っていると批判している。
上記sourceで紹介されている民主党の主張のポイントは次の通り。まったく正しい指摘である。しかし、どっちもどっちなのである。共和党は制度改革案の本質をちゃんと説明すべきである。連邦政府負担割合が低下しても、その持続可能性の確保を優先するのだ、と。民主党の批判は正しいと思うが、それでは民主党はMedicareをどうするつもりなのか、それで財政健全化はできるのか、を示すべきだろう。
- 連邦政府職員の医療保険プランでは、全プランの平均保険料の72%は連邦政府が負担すると規定されている。しかも、いずれの保険プランにおいても、連邦政府の負担割合は75%を超えないこととなっている。
- 比較的安い保険プランでは連邦政府の保険料負担はおよそ4分の3、平均より高い保険プランでは約3分の2を占めている。
- この連邦政府の保険料負担割合は、どんなに医療費が高騰しても固定されている。
- ところが、下院予算委員長提案では、2022年の連邦政府負担額を$8,000と設定した後、2023年以降はその負担額をCPI-U上昇率に合わせて引き上げていく。
- 医療費上昇率が物価上昇率を上回っていれば、連邦政府負担割合は低下していく。従って、負担割合が定められている連邦政府職員の医療保険プランとはまったく異なる制度改革案である。
※ 参考テーマ「Medicare」
Source : | Massachusetts House Seeks to Limit Collective Bargaining (New York Times) G.O.P. Union Support in Florida (New York Times) |
公務員労組への対応が、ブルーステイツとレッドステイツでねじれている。
まず、ブルーステイツである。民主党の牙城ともいえるMA州で、公務員労組の交渉権限を限定しようという法案が検討されている。MA州議会下院で検討されている法案は、次のような内容となっている。州議会上院での可決の見通しや、州知事の態度は明確になっていないが、下院における投票数は111vs42であり、賛成票のうち81票は民主党議員である。WI州などに較べて極めて小さな動きではあるが、それでもMA州議会民主党が労組の権限を制約する方向に動いたことは驚きである。逆に言えば、それほど州自治体の財政は悪化しているということなのであろう。
- (州政府以外の)自治体職員を対象とした医療保険プランについて、1ヵ月の交渉期間後、自治体が一律に自己負担と免責額を決定できるようにする。
- 自己負担と免責額の水準は、少なくとも州政府職員の水準並みとする。
- 保険料の負担割合については、労組の交渉権を維持する。
次にレッドステイツである。これまた共和党の牙城とも言えるFL州で、労組の権限を抑制しようとする法案が、州議会上院で否決されようとしている。その法案の内容は次の通り。州議会下院では、これに加えて、州政府および州内自治体が組合費を天引きすることを認めない、という条項まで含まれていて可決されている。州議会上院では、反対の強いこの天引き禁止項目を外して審議にかけているが、上院では賛成多数を得られる見込みが立っていない。
- 労働組合費として集めた資金を政治的な目的に使用する場合には、組合員の承諾を必要とする。
労組側の「これまでも共和党と友好的に活動してきたではないか」という説得が、上院共和党議員を揺さぶっているとのことである。
ブルーツテイツでもレッドステイツでも、財政健全化という政策課題と2012年の大統領選を睨みながら、労組との駆け引きが行われているようである。
※ 参考テーマ「労働組合」
Source : | 42 furlough days ordered for L.A. workers who rejected labor deal (Los Angeles Times) |
4月27日、LA市長が6,300人の市職員に対して、42日間の自宅待機命令を下した。
市当局と職員労働組合は、市の歳出を削減するため、給与の引き下げや退職者医療保険プランに対する4%の拠出などを含んだ協定改定について交渉していた。労働組合は26日までに賛否を問う組合員投票を行っていたが、14組合が賛成、4組合が反対という結果となった。
これを受けて、市長は反対した4組合に加盟している6,300人に自宅待機命令を出したとのことである。反対した組合では再度投票が行われる予定であり、必ずしもこれで確定したわけではない。
それにしても、協定に反対すると自宅待機命令を受けるというのはどうなのだろうか。労組全体の投票の中では約3分の1が反対、フルタイム職員の中では43%が反対票を投じたとなっている。そうした中で、反対の議決を行った労組員だけが自宅待機となっている。こうした強引なやり方は、本当に通用するのだろうか。
※ 参考テーマ「労働組合」