11月9日 Hospital Charity Care
Source :Hospital Charity Care: How It Works and Why It Matters (KFF)
上記sourceは、"Hospital Charity Care"に関する現状と課題を分析、紹介している。 先ず、"Hospital Charity Care"とは何か。IRSは、次のように定義している(Instructions for Schedule H (Form 990))。
“financial assistance”, as “free or discounted health services provided to persons who meet the organization’s eligibility criteria for financial assistance and are unable to pay for all or a portion of the services.”
いきなり話が逸れてしまうが、最近読んだ『拾われた男』(松尾 諭)の中で、渡米して音信不通となった兄が入院したという連絡が入り、主人公がアメリカに迎えに行くシーンが出てくる。手術代、入院費とも巨額にのぼり、とても払えないと主人公が考えていると、日本総領事館と自治体、病院で話し合って、全額無料となったという結末だった。これがまさにHospital Charity Careであろう。

次に、法制上はどうなっているのかを見てみる。先ず、連邦法では、非営利病院については、非課税措置の代わりに一定の慈善医療を行なうよう求めている。ただし、量的な規定はなく、行政監査も弱いため、慈善医療の提供が低レベルとなっている指摘がある。

一方、州政府を見ると、26州+D.C.は医療機関に対して一定の慈善医療を行なうよう求めている。そのうち11州は、あらゆる病院に対して、提供すべき慈善医療の最低水準を示している。ただし、その内容は州毎に大きく異なる。

病院側では、慈善医療として扱うかどうかについての基準を策定している場合が多い。ただし、その内容は多様であり、なかなか一言では括れない。連邦貧困レベル(FPL)を利用している場合が多いようだが、ほかにも資産の状況、住居の状況、支払い能力などを考慮する場合もあるようだ。

では、実際に行なわれている慈善医療は、どれくらいの規模となっているのか。下図の通り、営業コストに占める慈善医療の割合は、中位数で1.4%、平均値2.6%となっている。ただし、その分散度合いは大きく、こうした数値が全体の姿を表しているとは言い難い。
こうした慈善医療は、低所得者や高額医療請求額に悩む家計にとって必要不可欠となっている。また、不法移民にとっては唯一の医療アクセスといってもよい。従って、連邦レベルでも州レベルでも、慈善医療を拡大させたいとの意向が働いている。CA州、WA州では、慈善医療の対象者の所得上限を引き上げ、慈善医療提供義務を強化している。

医療費負担が重いアメリカ社会では、慈善医療は一つのセーフティネットとして位置付けられている。

※ 参考テーマ「無保険者対策/連邦レベル」、「無保険者対策/州レベル全般」、「無保険者対策/CA州」、「無保険者対策/WA州

11月8日 保険市場の占有度(2)
Source :Private Health Insurance (GAO)
11月7日、GAOは、州レベルでの保険会社の占有度を公表した。2020年までの推移であるが、各州で保険会社の占有度が高まっていることを示唆している(「Topics2022年11月2日(2) 保険市場の占有度」参照)。

なお、本調査では、『3社以下で州内保険市場の80%以上を保有している場合』に、「州の市場が寡占状態にある」と定義している。

  1. 寡占状態にある州の数は、2011年から2020年にかけて高まっている。特に、個人市場、小規模グループ市場でそれが顕著となっている。
  2. 個人市場では、寡占状態にある州が11州も増えた。しかも、1社だけで80%を占有している州は、4州から11州に増えている。
  3. 中でもExchangeの占有度は高まっている。
  4. 小規模グループ市場の寡占状況は次表の通り。
  5. 大企業市場もだいたい同じ程度の占有度になっている。
Exchangeの寡占状況を改善しなければ、PPACAの精神が失われかねない。

※ 参考テーマ「医療保険プラン」、「無保険者対策/州レベル全般

11月7日 労働需給徐々に緩和(2)
Source :U.S. hiring cooled slightly in October. That could help to ease inflation (NPR)
11月4日、雇用統計が公表された(BLS)。10月の雇用増は26.1万人となった(Employment Situation Summary Table B. Establishment data, seasonally adjusted)。8月29.2万人、9月31.5万人と、若干落ち着きつつある(「Topics2022年10月8日 労働需給逼迫は緩和方向(2)」参照)。

労働需給は徐々に緩和され始めたようだ(「Topics2022年11月2日(1) 労働需給徐々に緩和」参照)。

雇用者数は153.3M人となった(Table B-1. Employees on nonfarm payrolls by industry sector and selected industry detail)。
業種別では、レジャー・ホスピタリティの増加数が低下した。
失業率は3.7%に上昇した(Table A-1. Employment status of the civilian population by sex and age)。
労働市場参加率は62.2%と、2ヵ月連続でわずかに低下した。
25~54歳の労働市場参加率も82.5%と、2ヵ月連続微減となった。(BLS)。
労働市場に参加していない人の中で仕事を得たいと考えている人数も減少した。
長期失業者(27週以上)の失業者全体に占める割合は上昇し、19.5%となった。
強い雇用増は続いているものの、労働市場全体ではマイナス要素も多々見られるようになった。ただし、パウエル議長が安心して利上げを停止する材料とはなっていない。

※ 参考テーマ「労働市場

11月4日 Whole Person Health
Sources : Healthcare Affordability Crowds out Wages (National Alliance of Healthcare Purchaser Coalitions)
As health insurance costs rise, employers weigh the risks of offering too little (Modern Healthcare)
上記sourcesは、医療費の高騰が経営上の課題、特に有能な従業員の確保にとって課題となっていることを紹介している。以下、Pulse of the Purchaser study(National Alliance of Healthcare Purchaser Coalitions)の調査結果のポイント。
  1. 医療コストの高騰が自社の競争力に影響を与えていると考える企業がかなり多い。
  2. 医療費の中で、処方薬価格、入院価格が脅威と見られている。
  3. ほとんどの企業が、入院費が合理的ではないと見ている。
  4. その要因は病院統合であると考えられている。
  5. 幸福感充実のためのケアベネフィット(Whole Person Health)を重視する企業が増えている。
Pew Research Centerによれば、昨年転職した者の43%が、「ベネフィットが良くない」を転職の理由として挙げている。また、Society for Human Resource Managementによれば、35歳以下の従業員はメンタルヘルスに関するベネフィットが最も重要だと答えている。リモートワークの普及がその背景にあることは間違いない。

アメリカ企業にとって、医療保険プラン提供の重要性は益々高まるとともに、その内容の変革が求められている。

※ 参考テーマ「医療保険プラン」、「労働市場

11月2日(1) 労働需給徐々に緩和
Source :Job Openings and Labor Turnover Summary (BLS)
11月1日、BLSが、9月末の求人数を発表した。9月末の求人数は1,071.7万人で前月比43.7人の増加となった(「Topics2022年10月5日 労働需給逼迫は緩和方向」参照)。
労働力人口に占める求人数の割合は6.5%と、こちらも上昇した。
新規雇用数は608万人となり、減少が続いている。このあたりも、景気後退を想像させる要因となっているのだろう。
失業者数/求人数は、再び0.5に低下した。
9月の自発的失業(Quits)は406.1万人と、低下トレンドは続いている。労働者側も徐々に慎重になってきている。
Quits level, Total nonfarm - 2019~2022年

Quits level, Total nonfarm - 2007~2022年
こうした中、9月の時間給は、転職した人、職に留まった人ともに、伸び率が鈍化してきた。

Federal Reserve Bank of Atlanta's Wage Growth Tracker
※ 参考テーマ「労働市場

11月2日(2) 保険市場の占有度
Source :New study shows Medicare Advantage markets lack competition (AMA)
上記sourceは、全米380都市における2022年の保険会社の寡占状況を分析している。 また、州レベルで寡占率の高い州(10州)は次の通り。 全米レベルでの市場占有率の高い保険会社は次の通り。
  一般民間保険占有率(%)Medicare Advantage占有率(%)
1UnitedHealth Group15UnitedHealth Group28
2Elevance Health - formerly Anthem12Humana19
3CVS Health - owner of Aetna11CVS Health - owner of Aetna11
4Cigna10Kaiser Permanente7
5Kaiser Permanente7Elevance Health - formerly Anthem6
6Health Care Service Corp. (BCBS)6Centene4
7Blue Cross Blue Shield of Michigan2Cigna2
8Blue Cross Blue Shield of Florida2Blue Cross Blue Shield of Michigan2
9Blue Shield of California2Highmark1
10Highmark2SCAN Health Plan1
Medicare Advantageは、制度上の課題もあり、今後改革論議が盛んになると思われる(「Topics2022年10月25日(2) Medicare Advantageの課題」参照)。医療機関にとっては、保険会社は利益の取り合い相手であり、真剣に取り組むこととなろう。

※ 参考テーマ「医療保険プラン」、「Medicare

11月1日 DE州退職貯蓄プラン始動
Source :Delaware Law Expands Access to Retirement Plans (SHRM)
DE州退職貯蓄プランの続報である(「Topics2022年6月30日 DE州退職貯蓄プラン法案可決」参照)。

8月18日に州知事が署名し、州立退職貯蓄プラン創設法案(HB 205)が成立した。以下、新たに分かったことを追記(赤字)する。
プラン名称は、Delaware Expanding Access for Retirement and Necessary Savings (EARNS) program。

5人以上の従業員を雇用し、前年に6ヵ月以上州内で営業した企業で、退職貯蓄プランを提供していない企業はすべて対象となる。

企業の責務は、従業員への周知と、従業員拠出金の納付であり、拠出義務、受託者責任、従業員教育は負わない。ただし、従業員を加入させなかった企業には、非加入従業員一人当たり年最大$250の罰金が科される

対象外となる従業員は、公務員、18歳未満等。対象となった企業の従業員は、同プランに加入して拠出金を負担するか、任意で加入を見送るかを選択できる。プランはIRA。デフォルトの拠出率は給与の3~6%。いつでも拠出率変更または脱退が可能。拠出開始日は2025年1月1日

当初は、EARNSプログラム委員会がプラン設計、施行を担当するが、2025年12月31日までに「プラン運営委員会」に移行する。

※ 参考テーマ「地方政府年金