3月10日 MD州議会週4日法案取り下げ
Source :Maryland lawmakers pull 4-day workweek bill from consideration (HR Dive)
Maryland州議会は、週4日勤務を試行するための法案を審議していた(「Topics2023年2月3日(2) MD週4日法案」参照)。しかし、法案を提出していた議員達は、一旦法案を取り下げることにしたという。その代わり、MD州政府労働省に対して、次の諸点を調査するよう要請する。
  1. 州内の企業で、週4日勤務を実施している企業の実態

  2. 関心を持つ企業への技術的な支援

  3. 州政府職員の週35時間勤務への移行の可能性
それらの調査結果を踏まえ、改めて法案を提出する考えだ。

※ 参考テーマ「人事政策/労働法制

3月9日 求人は依然強い
Source :Job Openings and Labor Turnover Summary (BLS)
3月8日、BLSが、1月末の求人数を発表した。1月末の求人数は1,082.4万人で、前月比41.0万人の減少となった(「Topics2023年2月2日(1) 労働市場過熱は天井か」参照)。

労働力人口に占める求人数の割合は6.5%と、若干低下した。
新規雇用数は637.2万人となり、増加している。
失業者数/求人数は、0.5が続いている。
1月の自発的失業(Quits)は388.4万人と、2ヵ月連続の減となった。
Quits level, Total nonfarm - 2019~2023年

0 Quits level, Total nonfarm - 2007~2023年
こうした中、1月の時間給は、転職した人、職に留まった人ともに、上昇率は低下傾向にあるものの、依然として高い水準を続けている。

Federal Reserve Bank of Atlanta's Wage Growth Tracker
労働市場の過熱状態は続いている。

※ 参考テーマ「労働市場

3月8日 Medicare保険料率引上げ提案
Source :Biden says his budget plan would extend Medicare to 2050 without adding to the deficit (NPR)
3月7日、バイデン大統領は、New York Times紙に投稿し、Medicare改革案を提示した。ポイントは次の2点。
  1. Medicare保険料率の引き上げ

    高額所得者($400,000/Y以上)について、保険料率を引き上げる提案となっている。おそらく、下表のようなフォーミュラを考えているのだろう(現行料率)。なお、Medicare保険料の課税対象所得上限は、設けられていない(「Topics2022年10月14日(2) 年金COLA8.7%」参照)。
    この措置が実行できれば、Medicare基金の枯渇時期は25年先(2053年)になる(「Topics2022年6月3日(1) 年金/Medicare延命」参照)。

  2. 処方薬価格交渉対象の拡大

    これは、既に検討が始まっている(「Topics2023年2月13日(1) Medicare薬価抑制策検討開始」参照)。その対象をもっと拡大して、費用が浮けば、基金の枯渇はさらに先延ばしできる。
このMedicare税率引き上げ提案は、今週3月9日に予定されているバイデン大統領の予算教書演説に盛り込まれることになる。

※ 参考テーマ「Medicare

3月7日 SB社従業員の公開レター
Source :Starbucks faces corporate employee revolt (HR Dive)
3月1日、Starbucks本社従業員達が、同社幹部に対して、公開レターを発出した。これに署名した従業員達は、"Starbukcs Partners United"という組織名で結集している。

公開レターのポイントは次の2点である。
  1. SB社が発表した週3日出勤義務化を取り下げることを要望する。

    SB社は、当初、火曜日、水曜日、+1日の週3日出勤を求めるとの提案を行なった。しかし、従業員から不満が出たこともあり、『火曜日、水曜日または木曜日、+1日』の週3日出勤を求めるとの案に修正した。しかし、実施までの余裕が2週間しか与えられなかったことから、子供のケア、住居などの準備が整わず、従業員は混乱した。このような出勤頻度を求めることは、従業員同士のチームワークを損ない、生産性を損ねると、従業員達は考えている。同社が週3日出勤義務化を取り下げない場合、本社における労働組合結成を進めるともしている。

  2. "Workers United"との間で、公正な労組結成選挙を行なう協定を結ぶべきである「Topics2022年12月13日(1) SB労組結成総括」参照)。
2点目について、最近、年金基金を含めた投資グループは、Starbukcs Workers United労組結成運動へのSB社の対応について総合的に見直すよう、株主投票を求めている。一方、SB社取締役会は、この提案を否決するよう、株主に対して提案している。株主総会は3月23日に予定されている。

※ 参考テーマ「人事政策/労働法制」、「労働組合

3月4日 NC州Medicaid拡充へ
Source :House, Senate leaders reach deal on Medicaid expansion for North Carolina (North Carolina Public Radio)
3月2日、North Carolina州議会は、Medicaid対象者拡大について合意した。州議会は両院とも共和党が握っており、いまだに反対する共和党議員も多いそうだ。州知事は民主党なので、法案自体は成立するとみられる。ただし、関連する予算が成立するまで発効することはない。おそらく今年の夏頃になると言われている。

もしも法案が成立し、発効すれば、Medicaid拡充を行なっていない州は、12州から11州に減ることになる。

Status of State Medicaid Expansion Decisions: Interactive Map (Kaiser Family Foundation)
※ 参考テーマ「無保険者対策/州レベル全般」、「無保険者対策/その他州

3月2日(1) 学生ローン免除:最高裁審議開始
Source :Conservative and liberals split at Supreme Court over Biden student loan plan (NPR)
2月28日、連邦最高裁において、バイデン政権の学生ローン返済免除措置の有効性を巡る口頭弁論、質疑が行なわれた(「Topics2022年12月2日 学生ローン免除が窮地に」参照)。

今回の論争のポイントは次の2点。
  1. 連邦政府にこれだけ巨額の返済免除措置を執行する権限があるのかどうか

    9/11を受けて、2003年、連邦議会は、緊急時に学生ローン債務者が経済的な打撃を受けないよう、教育長官には学生ローン制度に関するあらゆる権限を付与することを決議し、法制化している。今回の返済免除措置は、COVID-19の緊急事態宣言下で行なわれたものであるもの、これに要する費用は巨額にのぼる(「Topics2022年8月25日 学生ローン返済免除」「Topics2022年9月28日(2) 学生ローン債務免除の費用推計」参照)

    この点について、保守派判事からは、
    • 大きな社会的議論になっていることは、連邦議会で判断すべきではないか
    • 教育長官に与えられる権限は、債務免除にまでは及ばないのではないか
    との疑問が呈された。

    一方、リベラル派判事からは、
    • この措置がとられなければ、全米に破産の波が広がる
    • 教育長官に権限が付与されているのは、法律の文言通りである。
    との見解が示された。

  2. 原告となっている6つの州政府に、本訴訟を起こす権利はあるのかどうか

    この点については、両派から、『具体的な損害のない州政府は訴える権利はないのではないか』との見解が示された。
教育長官の権限について保守派が疑問を呈しているものの、州政府の訴訟権を認めないことで訴訟を棄却し、返済免除措置の執行を側面支援するというシナリオが透けてきている。

※ 参考テーマ「教 育

3月2日(2) ESG投資に議会反対決議
Source :Senate sends bill nullifying Biden’s ESG investing rule to president’s desk (The Hill)
昨年11月、労働省(DOL)は、企業提供退職所得プランの投資決定に関して、ESGを考慮することを認めるとの規則を定めた(「Topics2022年11月30日 企業年金 ESG投資を是認」参照)。この規則に関して、3月1日、連邦議会上院は、この規則を無効化する決議(H.J.Res.30)を採択した(Roll Call Vote #35)。民主党議員2人が賛成に回って、50 vs 46となった。

一方の連邦議会下院は、2月28日、既に賛成多数で採択済みである(Roll Call 124)。そこでも民主党議員1人が賛成に回り、216 vs 204となった。

バイデン大統領は、拒否権を発動するとみられるが、政権に対する圧力は高まったと言える。既に25州が規則無効を訴えて、訴訟をおこしている(「Topics2023年2月13日(2) 25州が労働省ESG投資を訴え」参照)。

※ 参考テーマ「企業年金関連法制」、「受託者責任」、「DB/DCプラン

3月1日(1) 労組パラドックス
Source :You may have heard of the 'union boom.' The numbers tell a different story (NPR)
バイデン大統領は、史上最も労働組合に寄り添った大統領であると自負している(「Topics2021年5月30日 労組支援TFの影響範囲」参照)。

またバイデン政権は、労働組合寄りの政策を打ち出している(「Topics2022年9月20日(4) 労組結成促進キット」参照)。

アメリカ国民の71%は、労働組合の活動を支持している(「Topics2022年8月31日(1) 労組支持率更に上昇」参照)。

連邦議会では、PROAct法案が審議された(「Topics2021年3月12日 "PRO Act"下院可決」参照)。

それなのに、労働組合結成の動きは盛り上がらず(「Topics2022年12月28日 労組運動の総括」参照)、労組加入率は低下する一方である(「Topics2023年1月20日 2022年労組加入率再び低下」参照)。

こうした状況を、上記sourceでは、"Union Paradox"と呼んでいる。こうした状況に陥っている要因として、専門家は次のような点を挙げている。
  1. 労組結成手続きが、従業員にとって大きな負担となる可能性が高い。

  2. 一方で、企業側の労組結成阻止活動がしやすくなっている。場合によっては多少違法な行為をしても、それに対する罰則が小さい。

  3. 27州が"Right to Work"法を採用している(「Topics2017年1月13日 KY州:27番目のRight to Work州に」「Topics2018年6月29日 州職員にも"rihgt ot work"」参照)。同法がない州からある州への事業所移転も起きている。

  4. 仮に労組結成が認められたとしても、企業との間の手続きに手間がかかり、労使協定締結まで、平均465日もかかっている。

  5. かつて労組活動が活発であった製造業、運輸、建設といった産業のウェイトが大きく低下した。

  6. 一方、サービス産業における労組結成は、他の産業に較べて難度が高い。個別の各事業所において、労組結成手続きをしなければならない(「Topics2022年12月13日(1) SB労組結成総括」参照)。また、離職、転職の割合が高いことも、労組結成には不利に働く。
大方は、当websiteで紹介してきた事象ばかりである。

※ 参考テーマ「労働組合

3月1日(2) Disney特区廃止法案成立
Source :How (and why) Gov. Ron DeSantis took control over Disney World's special district (NPR)
2月28日、Florida州知事はDisney特区廃止法案に署名した(「Topics2022年4月22日(1) Disney特区廃止法案可決」参照)。

性的指向に関する立場の違いから対立に発展し、Disney WorldはFL州政府からの介入を受け容れる形となった(「Topics2022年4月20日(1) Disney vs 州知事」参照)。

本件が、企業経営者の社会的発言に影響を及ぼすことになるのだろうか(「Topics2022年7月6日 企業幹部の党派色強まる」参照)。

※ 参考テーマ「LGBTQ」、「人事政策/労働法制

3月1日(3) Medicare Advantage高利益率
Source :Health Insurer Financial Performance in 2021 (KFF)
上記sourceは、医療保険プランの保険タイプ別加入者一人当たり利益率、MLRを紹介している。プラン管理料や税負担を考慮していないため、ストレートな指標ではないが、保険タイプ別の横並び比較は有効だ。

中でも目を引くのは、Medicare Advantageの利益率の高さである。
Medicare Advantageは、加入者数、加入者割合とも伸びている(「Topics2022年8月26日(1) Medicare Advantge隆盛」参照)。加入者数が伸びて利益率も高い、となれば、保険会社としては力を入れざるを得ない。

一方で、Medicare Advantageの課題も既に指摘されている(「Topics2022年10月25日(2) Medicare Advantageの課題」参照)。

※ 参考テーマ「Medicare