12月19日 2021年国民医療費
Source :Healthcare spending growth slowed in 2021 as COVID funding waned (Modern Healthcare)
2021年国民医療費の速報が公表された。2021年の国民医療費は$4.3Tで、前年比伸び率は2.7%にとどまった。2020年の伸び率が10.3%だったのに比べて大幅に低下した。これは、2020年に較べて政府支出が3.5%減額したことが大きい。

以下、CMSのPress Releaseには、財源別、医療形態別、負担主体別の構成比と伸び率が示されている。

(12月23日追記)

KFFが国民医療費に関するチャートを見られるサイトを提供している(National Health Spending Explorer - KFF Health System Tracker)。

※ 参考テーマ「医療保険プラン」、「Medicare」、「医薬品」、「無保険者対策/連邦レベル」、「無保険者対策/州レベル全般

12月16日 FRB引締め姿勢堅持
Source :The Fed continues its crackdown on inflation, pushing up interest rates again (NPR)
12月14日、FRBは政策金利を0.5%引き上げ、4.25~4.5%とした(FOMC Statement)。引き上げ幅は0.75pptから0.5pptに下がったものの、依然としてFRBの厳しい姿勢が窺われる(「Topics2022年11月11日 CPI7%台に下落」参照)。

上記sourceによれば、FRBは物価、労働市場を次のように見ている。
  1. 確かに、インフレ率は7.1%となったが、FRBの目標2%よりもはるかに高い(「Topics2022年12月14日(2) CPI7.1%に低下」参照)。物価安定のためには長い道のりが必要だ。

  2. 2023年のインフレ率は、5.1%と見ている。

  3. ガソリン価格は低下を始めたし、住居費の行方も見えている。

  4. 問題はサービスの価格上昇である。11月の前年同期比伸び率は6.8%で、2021年1月を起点として一本調子で上昇を続けている。これは、労働費用の上昇から導かれている。
  5. 労働市場は以前逼迫しており、賃金の上昇は急である(「Topics2022年12月1日(1) 労働市場緩和続く」参照)。

    Federal Reserve Bank of Atlanta's Wage Growth Tracker
  6. 労働市場はバランスを欠いたままである。求人数は求職者数を大きく上回っている。
  7. コロナ禍で退職した高齢者は、労働市場には戻ってこない(「Topics2021年12月10日(2) 労働市場退出の主役」参照)。

FRBの金融引き締め姿勢は、長引きそうである。

※ 参考テーマ「労働市場

12月15日(1) SECURE 2.0法案に黄信号
Source :Wait, SECURE 2.0 Might Not Pass? (PLANADVISER)
SECURE 2.0関連法案の成立が危ぶまれているという。当初は、民主・共和両党間の争点もなく、今年中には可決・成立するものとみられていた(「Topics2022年4月1日 SECURE 2.0下院可決」「Topics2022年6月16日 RISE & SHINE法案 委員会可決」参照)。関与する議員の説明によると、 というのが、その理由とのことである。

現在、連邦議会では、3本の法案が審議されている(PLANADVISER)。 ※ 参考テーマ「企業年金関連法制

12月15日(2) IRAからHSAへの移管
Source :The ins and outs of IRA-to-HSA rollovers (Journal of Accountancy)
これは知らなかったので、簡単にまとめておきたい。IRAで積み立てた資金をHSAに移管できるという。ただし、それが可能となる条件は厳しい。
  1. 移管できる回数は、一生に一度だけである(once-in-a-lifetime opportunity)。

  2. 一度に移管できる金額は、HSAの年間拠出限度額まで。

  3. HSAに対して既に事業主拠出、本人拠出が行なわれていた場合には、その分だけ限度額は減額される。
このように、厳しい制約が課されているため、移管のタイミングは年齢、退職などを考慮しながらが決定しなければならない。

※ 参考テーマ「HSA」、「DB/DCプラン

12月14日(1) Respet for Marriage Act成立
Source :Biden signs Respect for Marriage Act, reflecting his and the country's evolution (NPR)
12月13日、バイデン大統領は"Respet for Marriage Act(H.R.8404)"に署名し、同法は成立した(「Topics2022年12月10日 Respect for Marriage Act成立へ」参照)。主な内容は、既に紹介している(「Topics2022年11月21日(1) Respect for Marriage Act進展」参照)。

同法の成立には、まだ不満が残るという意見がある。その主な意見は次の通り。 確かに、同性婚容認の割合は2/3に達しているが、共和党支持者の間では半分に満たない。
また、同性婚を禁止しているまたは事実上禁止している州は32州にも及ぶ。
※ 参考テーマ「LGBTQ」、「人口/結婚/家庭/生活

12月14日(2) CPI7.1%に低下
Source :Inflation dips in November, as gasoline savings eclipse grocery price increases (NPR)
12月13日、BLSは今年11月の消費者物価指数(CPI-U)を公表した(News Release)。前年同月比7.1%の上昇と、5ヵ月連続の伸び率低下となった。また、昨年12月以来、最も低い伸び率となった(「Topics2022年11月11日 CPI7%台に下落」参照)。
エネルギー全体の価格上昇率は前年同月比13.1%と、伸び率の低下が続いている。上記sourceによれば、ガソリンは前月比で低下している。
一方、食料品の価格は、前年同月比10.6%増と3ヵ月連続の微減となった。依然として高い水準が続いている。
エネルギー、食料品を除くCPI上昇率は前年同月比6.0%と、若干の低下が続いている。依然として高水準の上昇率である。
住居費は前年比7.1%増と、上昇率の高まりが止まらない。
11月の実質時給は、前月比0.5%増、前年同月比で1.9%減となった(Real Earnings News Release)。
雇用統計、CPIの発表を受けて、12月14日に開催されるFRB会合では、どのような判断が示されるのだろうか(「Topics2022年12月5日 ゆっくりと緩和」参照)。

※ 参考テーマ「労働市場

12月13日(1) SB労組結成総括
Source :Starbucks union organizing gave labor a jolt of energy in 2022 (NPR)
今年は、Starbucksにおける労組結成が注目を浴びた。始まりは2021年8月であった(「Topics2021年9月9日(2) Starbucks労組結成の動き」参照)。上記sourceは、その総括を行なっている。ポイントは次の通り。
  1. 現時点までに、労組結成の是非を問う投票実施を申請した店舗は330以上。

  2. そのうち、労組結成を可決したのは268店舗。全SB店舗の約3%。ただし、現時点で労使協定が成立したところは一つもない。

  3. 労組結成を主導しているのは、"Workers United"。SEIUの支援を受けている。

  4. しかし、労組結成投票の申請数は、2022年3月にピークを打って、その後低迷している。
  5. これは、SB社のベネフィット戦略が功を奏している可能性がある(「Topics2022年10月3日 SB社の対労組ベネフィット戦略」参照)。
※ 参考テーマ「労働組合

12月13日(2) 若者の同居割合上昇
Source :Young folks are moving in with their parents in record numbers. Meet 5 making it work (NPR)
親と同居する若者が増えているという。上記sourceは、その具体例5人のケースを紹介しているが、統計分析はPew Research Centerの調査分析結果が元になっている。そのポイントは次の通り。
  1. 複数世代家計(multigenerational family household)とは、2世代以上の大人が同居している家計。

  2. 若者とは、ここでは25~34歳を代表させている。

  3. 50年前に較べて、複数世代家計が大きく増えている。その中でも、若者世代の同居割合が大きく伸びている。1971年には9%だったものが、2021年には25%にまで高まっている。これを学歴別にみると、大卒以上では、同居割合が16%だが、それ以下では31%にものぼる。
  4. 25%の若者が複数世代と同居しているが、そのうち、親と同居している割合は68%を占める。
  5. 同居している若者の貧困率は、学歴が低くなるほど高くなる。また、両親と同居している場合には、貧困率は低くなる。
  6. このように若者の同居割合が高くなる要因としては、①学生ローン負債の重さ、②住居費の高騰、③物価高騰などが考えられる。
※ 参考テーマ「人口/結婚/家庭/生活

12月12日 民主党上院議員離脱
Source :Here's what Sinema's switch from Democrat to independent could mean for the Senate (NPR)
連邦議会上院で民主党が51議席を確保した途端、その翌日の12月9日、Kyrsten Sinema上院議員が民主党を離脱し、独立派として行動することを宣言した。

上記sourceによれば、Sinema上院議員はとても有名な上院議員である。 これまでも民主党の方針に一致しない行動を取ってきたが、今後、その立場を明確にするために独立派になることにしたそうだ。ちなみに、これまで、連邦議会上院の独立派は2人であった。 この2人は、ほぼ民主党の会派の一員と見られてきたが、Sinema上院議員は、民主党会派の会合にはこれまで通り出席しないとしている。かといって、共和党会派に入るつもりもないそうだ。

これで、来年からの上院の新勢力は、民主党50、共和党47、民主党系独立派3、ということになる。

Sinema上院議員がここで党離脱を表明した政治的背景は、2つ考えられる。
  1. 民主党に軸足を置きながら、議会での投票でキャスティングボートを握ろうという意思をより強く表明したかった。

  2. 2024年の改選期に、AZ州民主党の予備選を回避する。
後者の要素がより大きいようだ。AZ州民主党予備選の候補として、既にRuben Gallego連邦下院議員の名前が挙がっている。AZ州の民主党支持団体は、民主党候補者を立ててSinema議員を敗退に追い込むと息巻いている。そうなると、一般の民主党支持者が分裂し、再び共和党に議席が戻る可能性が出てくる。

どちらにしても、面倒くさい政治家なのである。

※ 参考テーマ「中間選挙(2022年)」、「政治/外交