1月20日 MA州:企業の保険提供義務復活提案 
Source :Gov.'s health overhaul includes employer charge, payment cap (AP)
MA州知事が、同州Medicaidのコスト抑制策を提案した。
  1. 企業(従業員10人超)に対する医療保険プラン提供義務を復活する。違反企業には、プラン未加入従業員一人当たり$2,000/Yを課す。

  2. 医療機関に対するMedicaid診療報酬の支払い上限を定める。
MA州は、PPACAの本格実施に合わせて、2013年に医療保険プラン提供義務を廃止してしまった(「Topics2006年4月13日 MA皆保険法案成立」「Topics2013年7月17日(1) 企業提供義務先送りの余波」参照)。連邦ペナルティとの二重賦課を回避するためであった。

しかし、PPACAの保険提供義務の施行が1年先送りにされ、提供義務の空白が1年間生じてしまった。おそらくこれがいけなかったのだろう。MA州内の企業で、企業提供プランを止めてしまうところが増え、そこから公的保険、具体的にはMedicaidへの移行が進んでしまったようだ。

この州知事提案が州法として成立すれば、ペナルティは連邦レベルと州レベルで二重に課されることになる。やはり、皆保険に近づくためには企業提供義務は必須なのかもしれない。それとも、トランプ新政権のもとでのExchange廃止や提供義務(=ペナルティ)廃止を先取りしているのかもしれない。

※ 参考テーマ「無保険者対策/MA州

1月19日 規制撤廃法案で結束 
Source :Hill Republicans move full speed ahead with push to slash Obama-era rules (Washington Post)
連邦議会下院共和党は、オバマ政権下で連邦政府により導入された様々な規制を撤廃すべく、次々に法案を可決している。『小さな政府』は、共和党支持者向けの最大の公約であり、トランプ新大統領と議会共和党の間で唯一といっていいほどの現時点での合致点でもある。新大統領と議会共和党の結束を示す好機という訳である。

上記sourceで今期に入って下院共和党が可決した法案は次の3つ。
  1. Regulations from the Executive in Need of Scrutiny, or REINS, Act(H.R.26)

    政府機関が新たに設定しようとする規制が次のいずれかに該当する場合には、発効のための連邦議会の承認をが必要とする。
    1. 経済的な影響が$100Mを超える。
    2. 消費者、企業、政府機関、地域にとってコスト、価格が大きく増加する。
    3. 雇用、投資、生産性、イノベーションに逆効果をもたらす。

    1月5日に下院可決。現在、上院委員会で審議中。

  2. Midnight Rules Relief Act(H.R.21)

    オバマ政権下で導入された規制を一まとめにして廃止する。
    1月4日に下院可決。現在、上院委員会で審議中。

  3. Regulatory Accountability Act(H.R.5)

    政府機関が新たな規制を導入することに対して歯止めをかける。これで事実上、政府機関の規制導入は困難になるといわれている。
    1月11日に下院可決。現在、上院委員会で審議中。
これに加えて、下院共和党は、Congressional Review Act of 1996を利用することによって上院のfilibustersを回避して、いくつかの規制を撤廃することを検討している。その撤廃対象となる規制の中に、当websiteで注目してきた残業代新ルールも含まれているそうだ。まさに昨年末に観測記事で予言された通りになっている(「Topics2016年12月17日 残業代新ルールの行方(2)」参照)。

残業代新ルールは司法でもその効力を巡って係争中である(「Topics2016年12月9日 残業代新ルールの行方」参照)。立法府での動きが明確になれば、その存続はますます危うくなる。

これだから大統領令や政府機関規制によるルール作りは脆弱なのである。結局困ってしまうのは、既に新ルールに対応をしてしまった企業、特に大企業である。

※ 参考テーマ「人事政策/労働法制」、「政治/外交

1月18日 最低賃金の実態 
Source :4 things you didn't know about the minimum wage (USA TODAY)
上記sourceは、皆が知らない最低賃金の実態を伝えている。とは言っても、当websiteとしては、それほど珍しいことでもないような気がする。
  1. 最低賃金で働いているのは若者だけではない。最低賃金で働いている者(約260万人)のうち、16〜24歳の従業員は45%、25〜34歳の従業員は23.3%、34歳以上は31.7%となっている。

  2. 連邦最低賃金の購買力が最も高かったのは1968年時点で、2016年ドル価値で$8.68あった。

  3. 連邦最低賃金を上回る水準で最低賃金を定めている州は29州+D.C.あるが、そのうち12州は物価スライドを採用している。

  4. 最低賃金は上回るが$10.10/hを下回る時間給を得ている従業員の特徴は次の通り。

    • 30歳以下の若者の占める割合は5割足らず
    • 白人が76%
    • 女性が54%、男性が46%
    • 高卒以下が56%
2.の購買力が確保されていないのは、やはり問題だろう。

※ 参考テーマ「最低賃金

1月17日 CalPERS:州拠出金増額 
Source :State contribution to CalPERS to rise by $524 million next year (Pensions & Investments)
CA州知事が提出した2017-8年度予算案で、CalPERSに対する州政府の拠出金が大幅に増額されることが示された。
  1. 2017-8年度のCalPERSに対する州政府拠出金は$5.3B。前年度比$524M増(約11%増)となる。

  2. 増額$524Mのうち$172Mは、先日決定した予想収益率を7.5%から7.375%に引き下げたことに伴う補填分である(「Topics2016年12月26日 CalPERS:予想利益率引き下げ」参照)。

  3. 予想利益率が7.0%に引き下げられる2019-20年度には、拠出金増額が$2Bにまで達する。

  4. 2023-4年度の拠出金総額は、$9.7Bに達する見込みである。6年間で約83%増と、大幅負担増が見込まれている。
こんなに州政府の負担金を、つまりは州民が負担する税金を増やしていくことに理解を得られるのであろうか。

CA州財務長官は、拠出金増額を歓迎するとのコメントを公表したそうだ。州財務長官はCalPERSの運営理事も兼務していることからこうしたコメントになるのだろう。それも一寸驚きなのだが、もっと驚いたことに、上記sourceによれば、
『州政府拠出金額はCalPERS理事会が決定するのであり、州議会が変更することはできない』
"The CalPERS contributions cannot be changed because the state contributions are set by the CalPERS board and cannot be changed by the Legislature."
というのである。これじゃ財政健全化のための給付抑制などできるはずもない。

※ 参考テーマ「地方政府年金

1月16日 CBO労働参加率長期見通し 
Source :CBO’s Long-Term Projections of Labor Force Participation (CBO)
1月13日、CBOは今後の予算、経済見通しの基礎となる労働参加率の長期見通しを公表した。ポイントは次の通り。
  1. 現在の労働参加率は62.8%(2017年)だが、2047年には59.2%と、30年間で3.7%ポイント低下する。
  2. これだけの大幅低下となる要因は、ベビーブーマー達の退職が継続することである。

  3. 労働参加率の押し下げ要因は次の3つ。
    1. ベビーブーマーに代わって労働市場に入ってくる世代の労働参加率が低い。
    2. 障碍者給付を受ける人の割合が高まる。
    3. 結婚比率が低下する。特に、男性の結婚比率が低下する。未婚の男性の労働参加率は既婚男性よりも低い。

  4. 一方、労働参加率の押し上げ要因は次の3つ。
    1. 教育水準が高まる。
    2. ヒスパニック系の人口割合が高まる。
    3. 平均寿命が長くなる。

  5. Social Security Trusteesの見通しでは、同じ2047年の労働参加率を61.1%と見ている。2%ポイント近くの差が生じているのは、CBOの見通しで男性の労働参加率が低いことによる。
支え手の割合が低下すれば、社会保障制度にとっては脆弱性が高まるということになる。

※ 参考テーマ「労働市場」、「公的年金改革」、「人口/結婚/家庭/生活

1月15日(1) 大企業退職後給付プラン財政 
Source :Accounting for pensions and other postretirement benefits, 2016 : Reporting under U.S. GAAP among the Fortune 1000 companies (Willis Towers Watson)
上記sourceは、Fortune 1000の企業の財務諸表から、年金プラン、その他退職後給付プランの2016年の状況を分析したものである。実際の分析対象は、549社となっている。特に長期的なトレンドを中心にポイントをまとめておきたい。 超低金利が継続している中、財務上の負担が重くのしかかっている。

ところで、上記のような大企業の年金プランの状況とCalPERSの状況を較べてみると、CalPERSの方が積立比率が低く、予想収益率は高く設定されている(「Topics2016年12月26日 CalPERS:予想利益率引き下げ」参照)。CalPERSが特別に投資がうまいのであれば結構なのだが、そういうわけでもあるまい。むしろ社会的投資をしようとする分、収益率は民間に較べて低くなってしまう(「Topics2016年12月20日 CalPERS:たばこ投資禁止規定強化」参照)。

※ 参考テーマ「DB/DCプラン」、「医療保険プラン」、「地方政府年金

1月15日(2) 予算決議案下院可決 
Source :Obamacare repeal heads to committees (Modern Healthcare)
1月13日、連邦議会下院は、、予算決議案(S.Con.Res.3)可決した。これで予算決議案は成立した(「Topics2017年1月14日 予算決議案上院可決」参照)。今後は、両院委員会で具体的な廃止項目について議論することになる。

注目だった共和党からの反対票は9票にとどまった。
  共和党民主党合計
賛成227227
反対9189198
棄権5510
※ 参考テーマ「無保険者対策/連邦レベル

1月14日 予算決議案上院可決 
Source :Obamacare is one step closer to repeal after Senate advances budget resolution (Washington Post)
1月12日、連邦議会上院は、予算決議案(S.Con.Res.3)可決した。PPACAの停止に向けて、第一歩が踏み出された(「Topics2016年12月29日 議会共和党が先制」「Topics2017年1月4日 予算決議案提出」参照)。

投票結果を見ると、共和党議員が一人反対票を投じている。反対の理由は、代替案に関する幹部の合意がないことだそうだ。
  共和党民主党合計
賛成51051
反対14748
棄権011
下院でも13日には投票が行なわれる予定だ。ただし、下院共和党の穏健派議員達は、やはり代替案がないままにプロセスが始まることに対して大きな懸念を抱いているとのことである。なんだか上院と下院の役割が逆になっているような気がする。

※ 参考テーマ「無保険者対策/連邦レベル

1月13日 KY州:27番目のRight to Work州に 
Source :Kentucky Right-to-Work Law Gets Green Light (SHRM)
1月7日、Kentucky州(KY)の州知事が法案に署名し、KY州は27番目のRight to Work州となった。なお、うっかり見逃していて、26番目はWest Virginia州(WV)で、2016年7月1日以降の労使協約から適用されている(National Right to Work Legal Defense Foundation)。

by SHRM
成立した法案のポイントは次の通り。
  1. ユニオンショップ制を法的に禁止とし、労組に加入すること、または組合費を負担することを雇用の条件とすることを違法とする。

  2. 従業員は、労組に加入するかどうか、または組合費を負担するかどうかの選択権を持つ。

  3. 同法は、現行の労使協定が満期を迎えた後に適用する。

  4. 州政府機関の従業員のストライキを禁止する。
ここ4〜5年で、着実にRight-to-Work州が増えてきている。上記sourceによれば、Missouri, New Hampshire州での検討が進んでいるという。

その背景には、州レベルでの共和党の躍進がある。下の図は2016年秋の大統領選における勝敗を示しているが、上のRight-to-Work州と共和党が勝利した州とが重なっていることがわかる。

Washington Post
これをcountyレベルに落としてみると、本当に全米が真っ赤(共和党)なのである。

Washington Post
Washington Postのサイト(Election 2016)で、この図を2004年まで振り返ってみると、いかに共和党が地道に勢力を確保してきたかがよくわかる。

Obama大統領の8年間に、共和党はアメリカ社会の価値観を着実に変えてきているのである。

※ 参考テーマ「労働組合」、「大統領選(2016年)」、「政治/外交

1月12日 Chicago市年金改革第一歩 
Source :Illinois Senate sends Chicago pension reform bill to governor (Pensions & Investments)
Chicago市年金プランについては、2016年に緊急対応策が講じられ、市財政の急場を凌いできた(「Topics2016年6月2日 Chicago年金救済策成立」参照)。このほどようやく改革の第一歩が動き出した。IL州議会で、下院は昨年12月1日、上院は1月9日に関連法案を可決し、州知事に送った。主なポイントは次の通り。
  1. 2017年1月1日以降に採用された加入者については、拠出率を8.5%から11.5%に引き上げる。同時に、同じ加入者については、年金受給開始年齢を67歳から65歳に引き下げる。

  2. 2011年1月1日以降に採用された加入者については、拠出率を8.5%から11.5%に引き上げると同時に年金受給開始年齢を67歳から65歳に引き下げる、という選択肢を提供する。

  3. 2010年以前に採用された加入者については、変更しない。
州知事は署名の意向を明確にしていないが、州議会上下院とも圧倒的多数で可決しており、おそらく署名することになるのだろう。

現状、Chicago市年金の財政状況は次の通りである(2015年12月31日現在)。 このような財政状況が、上述の制度変更の結果、2057年までに積立比率がどちらも90%になるという。

対象者が極めて限定されていることや、積立比率が90%になるのにあと40年もかかるようでは、根本的な改革というには程遠い。何かのショックがあれば、すぐに揺らいでしまいかねない。これからも少しずつ改革を加えていくことになるのだろう。

※ 参考テーマ「地方政府年金

1月11日 ネットワーク絞込みの展望 
Source :Narrow Provider Networks for Employer Plans (EBRI)
昨年は、医療保険プランがカバーする医療機関ネットワークの絞り込みについて、盛んに議論が行なわれていた。上記sourceは、ネットワークの絞込みに対する企業の反応、今後の展望について紹介している。主なポイントは次の通り。
  1. 競争が激しいExchangeでネットワークの絞り込みが増加してきており、関心も高まっている。

  2. しかし、企業が提供する保険プランで大きな関心の高まりを呼んでいる訳ではない。例えば、2016年、企業提供保険プランのうち、ネットワークを絞り込んで提供している企業はわずか7%にしかならない。
  3. それは、企業が他のツールの方がコスト抑制に効果的と考えているからである。
  4. 他にも、企業が関心を寄せていない理由がいくつかある。
    • どれだけコスト抑制効果があるのか、実績がわからない。

    • 従業員の反感を買うのではないか。

    • 郊外では充分な診療機関を提供できないのではないか。

    • "Cadillac tax"がどうなるのか見極めができないと、大きなプラン変更はできない。

  5. 近い将来、企業の関心が高まる兆候はある。大企業の1/3以上は、ネットワーク絞込みに代わる代替措置を導入している。また、都市部では絞込みネットワークを導入する企業が増えている。
  6. ネットワークを絞り込む場合には、従業員に対して経済的なインセンティブを用意する必要がある。DCプランや民間Exchnageなどがそのためのツールとなるが、今のところそれらが企業プランに普及している訳ではない。
実務的には4.にある"Cadillac tax"の行方が鍵になるのではないか。トランプ新政権及び連邦議会のもとで、"Cadillac tax"廃止という方向性が決まれば、一気に導入に向けて動き出すこともあり得る。

※ 参考テーマ「医療保険プラン