6月10日 D.C.も$15/hへ 
Source :D.C. lawmakers approve $15 minimum wage, joining N.Y., Calif. (Washington Post)
6月7日、D.C.市議会は、全会一致で最低賃金を$15/hに引き上げる法案を可決した。市長も署名すると宣言している。引き上げスケジュールは次の通り。
一般最低賃金Tipped Minimum WageMaximum Tip Credit備 考
連邦レベル$7.25/h$2.13/h$5.12/h$30/M以上
D.C.(現在)$10.50/h$2.77/h$7.73/h-
D.C.(2016年7月)$11.50/h$2.77/h$7.73/h-
D.C.(2020年)$15.00/h$5.00/h$10.00/h以後物価スライド
既に、D.C.は今年11月に全従業員の最低賃金を$15/hに引き上げるための市民投票を予定している(「Topics2015年7月26日 DCも$15/hに名乗り」参照)。今回可決された法案は、それよりも早いスケジュールで$15/hに引き上げるかわりにチップ従業員制度を残している。どちらの案でいくか、最終決定はまだ下されていないようだ。

D.C.は、最低賃金を$15/hに引き上げた後、事業所に1%の課税をすることで財源を確保して、最大16週間の有給病欠制度を創設することを検討している。どんどん従業員にとっての待遇を改善していこうという訳だ。

しかし、ここに、D.C.特有の課題があるとの指摘がある。D.C.は極めて狭い地域であり、隣には依然として最低賃金が連邦レベル並み($7.25/h)のVirginia州(VA州)が存在する。あるシンクタンクの調査では、1/5の企業がD.C.からVA州への移転を検討しているという。

本当にこんなに大きな規模で企業移転が起こるのかどうか、興味のあるところである。

※ 参考テーマ「最低賃金

6月8日 WA州:退職貯蓄プラン始動 
Source :First State-Run Retirement Plan for Private-Sector Set to Launch (PLANSPONSOR)
上記sourceによると、Washington州(WA州)は、2017年1月1日より、州立退職貯蓄プランを施行する。おそらく全米で最初の州となろう。

具体的には、専用のポータルサイトを開設し、Exchnageのような仕組みで貯蓄プランを選択することになるようだ。主な制度設計は、以前紹介したのと同様だ(「Topics2015年5月25日 WA州:小規模企業年金プラン創設へ」参照)。

※ 参考テーマ「地方政府年金

6月3日 医療と保険の融合(3) 
Source :The ins and outs of provider-sponsored health plans (Healthcare Finance News)
保険プランを運営する医療機関が増えてきているという(「Topics2012年9月9日 医療と保険の融合」「Topics2014年9月24日 医療と保険の融合(2)」参照)。2つの調査会社が調べた、保険プランを抱える医療機関の数の推移は次の通り。
McKinsey & CompanyPwC Health Research Institute
2010年2014年
94106
2014年2016年
107270
特に、この2年間の伸びは大きく、倍増以上となっている。これは、PPACAに基づくExchangeを通じて個人保険市場の加入者を取り込む動きが顕著であったためである。上記のPwC Health Research Instituteによれば、医療機関の半数が保険会社の免許申請を検討しているという。

ところで、上記sourceによると、医療機関と保険会社の融合形態には3パターンある。
  1. ネットワーク型:医療機関は医療提供役を中心とし、単純な保険プランを販売することにより、当該医療機関に誘導する。

  2. 中 間 型:1.と3.の中間に位置するが、保険プランは医療提供機関からは独立している。

  3. 完全統合型:医療提供機能と保険機能を一体として提供し、医療の質を維持しつつコストを抑制する。
1.と2.では、医療機関が既存の保険会社と提携するのが手っ取り早く、リスクシェアも可能となるが、利益も分配しなければならなくなる。

3.のような形態を目指すとすると、医療機関にとっての課題は、@医療情報処理の技術、A保険機能の十分な理解、ということらしい。いずれにしても、医療機関の人間にとっては大きなパラダイムシフトとなる。

※ 参考テーマ「医療保険プラン

6月2日 Chicago年金救済策成立 
Source :State lawmakers override bill veto to ease Chicago pension payments (Reuters)
Chicago市職員年金に対する一時的救済策が成立した。

  1. IL州議会:年金プランに対するChicago市の拠出金を減額する。

  2. Chicago市議会:年金プラン拠出金に充てるため、固定資産税を引き上げる。
IL州議会では、民主党が上下両院を握り、法案の成立を図ってきたが、共和党の州知事が拒否権を発動した。これに対して上下両院で5月30日、拒否権を覆す投票が成立したのである。

これらの措置により、絶体絶命に陥っていたChicago市財政は一時的に救われる(「Topics2016年3月26日 Chicago市絶体絶命」参照)。しかし、年金給付の削減ができない状況になった以上、増税で財源を賄うしかない。こうした救済策を重ねていくことになるのだろう。

※ 参考テーマ「地方政府年金

6月1日 保険料上昇率は10%台半ば 
Source :Obamacare Exchange Average Premium Hike 16 Percent Next Year (NCPA)
2017年のExchnage保険料申請は、これまでに8州+D.C.で公表されている、これらを集計してみると、次のようになるという。
  1. Exchangeで人気のあるSilver Plansの保険料上昇率は、平均16%(2016年は、Exhcnage加入者の68%がSilver Plansを選択している)。

  2. 上昇率は8州+D.C.の中でも相当異なっている。最高はVermont州の44%、最低はWashington州の5%となっている。

  3. 人気のあるSilver Plansの中でも保険料が低いプランは上昇率も低くなっている。最低保険料のプランでは7%上昇、最低から2番目の保険料のプランでは8%となっている。これはExchnage保険料補助金が、Silver Plansの最低から2番目の保険料のプランをターゲットにしていることから、保険会社はそこに加入者を誘導し、シェアを確保したいという思惑があるためと見られる。
Exchange加入者の2/3がSilver Plansを選択しているということは、中長期的にはカテゴリーの集約が行なわれるかもしれない。

それにしても、一番人気で保険会社が誘導したいと思うプランでも、保険料が8%の上昇というのは相当な打撃となろう。

※ 参考テーマ「無保険者対策/連邦レベル」、「無保険者対策/州レベル全般