1月10日 処方薬の高騰が続く 
Source :Prognosis for Rx in 2017: more painful drug-price hikes (CBS News)
上記sourceで紹介されている処方薬の価格上昇率の見通しは次の通り。
2016年 2017年
65歳未満11.3%11.6%
65歳以上10.9%9.9%
賃金上昇率も物価上昇率も遥かに上回る処方薬価格上昇率が2年続くことになる。

トランプ新大統領は、具体的な対応策を明示しているわけではない。選挙期間中に言及があったのは、 程度である。これらのメニューは以前から議論されては消え、を繰り返してきたもので、実現可能性もさることながら、その効果の程も不明である。

処方薬価格の高騰は、政治問題化するだろう。

※ 参考テーマ「医薬品」、「処方薬輸入」、「Medicare

1月9日 複数事業主プラン給付削減第1号か 
Source :Retired ironworkers could face pension cuts next month (Washington Post)
2014年12月、複数事業主プラン給付削減法が成立した(「Topics2014年12月12日(2) 複数事業主プラン給付削減法案(2)」参照)。これまでもいくつかのプランが給付削減提案を財務省(DOT)に持ち込んでいたが、すべて却下されていた。投資収益の見通した甘かったり、給付削減が不十分でプラン財政の健全化に至らないなどの理由だったそうだ。

そうした中で、昨年の12月16日、財務省がIron Workers Local 17 Pension Fund (Cleveland)給付削減案を承認した。主な内容は次の通り。
  1. 給付削減率は、平均約20%。最大で50%となる場合もあるようだ。

  2. 高年齢や障害者の場合は削減を免除する。加入者の約半数が該当する。

  3. 加入者約2,000人は、1月20日までに賛否の投票をしなければならない。

  4. 投票しなかった加入者は承認したものと看做される。

  5. 加入者の過半数の承認が得られれば、今年2月分の給付から削減される。
加入者の賛否を問うことにはなっているものの、上記2.と4.の事項により、賛成が過半数となる可能性が高いということだ。そうなれば、給付削減法適用第1号となる。

当該プラン以降も、削減案を申請して承認待ちとなっているプランが少なくとも5つはあるそうで、第1号が出現すれば雪崩を打って申請が増えてくる可能性もある。いよいよ複数事業主プランの終わりが始まったのかもしれない。

※ 参考テーマ「DB/DCプラン」、「PBGC/Chapter 11

1月8日 連邦政府財政の課題 
Source :2016 Fiscal Follies and Reasons for Hope (Committee for a Responsible Federal Budget)
上記sourceは、2016年に浮上した、または先送りされた財政上の課題を10項目挙げている。

最大の課題は、政府債務の拡大である。トランプ新大統領のもと、連邦政府の債務はGDPの77%から、10年後には105%に拡大するだろうと見ている。

他では、公的年金の財源問題が3回も登場している。2034年にはOASDI基金が枯渇してしまい、何も対処しなければ21%の給付カットをせざるを得なくなることは判っているのである(「Topics2016年6月24日 公的年金・Medicareの財政見通し」参照)。
そして、医療支出の増大である。GDPの支出項目としては所得拡大要因だが、その分、公的私的に負担も増える。
こうした課題を考えるだけでも、新政権の政策運営は難しい。

※ 参考テーマ「公的年金改革」、「無保険者対策/連邦レベル

1月7日 共和党医療保険改革法案 
Source :House Republicans roll out new ACA replacement plan (Modern Healthcare)
1月3日の連邦議会招集日、上院で予算決議案(Budget Resolution)が提出された数時間後、それに呼応するように、共和党保守派が下院に医療保険改革法案(The American Health Care Reform Act of 2017)を提出した(「Topics2016年1月4日 予算決議案提出」参照)。PPACAの共和党版代替案であり、オバマケア廃止に向けた長い道のりの第1ラウンドと位置づけている。

主な項目は次の通り。
  1. HSAを拡充する。具体的には次の通り。

    1. Medicare、Veterans等の加入者にもHSA開設を認める。

    2. HSA利用対象となる適格診療の範囲を拡大する。

    3. 年間拠出額の上限を、個人負担上限額にまで引き上げる。

      ※HSA個人拠出上限額(2016年):$3,350「Topics2016年6月22日 401(k)よりHSA」参照) ⇒ 個人負担上限額(2017年):$7,150「Topics2016年1月7日 加入者自己負担再引き上げ」参照)

    4. 人工中絶を非適格診療とする。

  2. 州政府がハイリスクプールを創設するために連邦政府支援を拡大する(10年間で最大$25B)。ハイリスクプールは、既往症のある州民をカバーするもので、保険料を標準プランの200%以内に収めるものとする。

  3. 企業提供プランと個人購入プランとの税制上の公平性を確保する。企業提供プラン給付の所得控除制度を廃止し、新たに標準医療保険税額控除制度(個人:$7,500、家族:$20,500)を設ける。

  4. 保険会社に保険プランの州際販売を認める。

  5. 法案が可決されれば、施行日は2018年1月1日を予定している(!)。
これを読んでの感想をいくつか。 一方、こうした動きを受けて、シンクタンクの方も活動を活発化させている。CRFBの試算によれば、仮にPPACA全体を廃止すれば、2027年までの10年間で、連邦政府支出は となり、総計 $350Bの増加が見込まれる。共和党はその財源対策も示す必要がある。

※ 参考テーマ「無保険者対策/連邦レベル」、「医療保険プラン」、「HSA

1月6日 金融危機後の地方年金改革 
Source :Most state pension funds made benefit cuts in years following financial crisis — report (Pensions & Investments)
Center for Retirement Research at Boston Collegeが、金融危機後の地方政府年金改革に関する調査研究を発表した。ポイントは次の通り。
  1. 地方政府年金のうち、見直しを行なったプランは、州政府レベルでは74%、自治体レベルでは57%となった。州政府の方が危機意識が高いとも言えるが、いずれも新規採用者からの適用が過半を占めており、現役職員に対する見直しは相変わらずタブー視されている。
  2. 現役職員を対象とした見直し内容は、職員の拠出金、COLAが中心であり、基本的には職員の負担増を求める内容となっている。
  3. また、新規採用者を対象とした見直し内容は、最終給与水準、勤務年数などが中心となっており、現役との差が当面は出にくいようなものとなっている。
評価は色々とあるだろうが、地方政府年金の制度設計の見直しは少しずつ進んでいる。ただし、以上の結果は、金融危機後5年という短い期間の対応である。その後の低金利政策に伴う年金財政に対する圧迫は長期的な効果を持っており、これからどんどん表面化してくるだろう。本格的な見直しはこれからが本番である。

※ 参考テーマ「地方政府年金

1月5日 CA州:年金減額承認判決 
Source :Second California appeals court rules pension benefits can be reduced (Pensions & Investments)
昨年12月30日、CA州控訴裁判所小法廷は、2013年に施行されたCA州年金改革法に盛り込まれた給付減額規定について認める判決を下した(「Topics2012年9月5日 CA州年金改革法案可決」参照)。主な内容は次の通り。
  1. CalPERSの年金給付額は、例え一旦受給権が賦与された分であっても、適切なルールの下でない限り、減額することは可能である。

  2. ただし、減額が認められるのは、受給者が継続して年金を受給でき、しかも適切である場合である。

  3. 今回の判決は、CalPERSのみならず、CA州の地方政府年金全てに適用される。
この判決は、2015年に示されたCA州地方裁の判決を肯定するものとなっている。

CalPERSは、本判決に対してコメントを発表しておらず、州最高裁に持っていくかどうか、明らかになっていない。

※ 参考テーマ「地方政府年金

1月4日 予算決議案提出 
Source :Resolution bill to repeal ACA introduced on the first day of Congress (Modern Healthcare)
年明けの1月3日、新連邦議会が召集された。その初日、上院共和党議員が、PPACAの一部を変更する予算決議案(Budget Resolution)を提出した(「Topics2016年12月29日 議会共和党が先制」参照)。

そこに盛り込まれている主な内容は次の通り。 オバマ大統領と議会民主党は、4日に会合を開き、対応策を検討するとされているが、議会は共和党主導でどんどん審議が進んでいく見込みだ。

ちょっと興味深いのは、全米医師会(the American Medical Association, AMA)の反応である。「AMAはPPACAの成立、施行を支持してきた。議会はPPACAに関する何らかのアクションをとる前に、具体的な代替案を示すべきである」との議会リーダー宛のレターを、3日に発表したのである。

AMAは、HHS長官指名を巡って、内部対立を引き起こしている(「Topics2016年12月28日 AMAの内部対立」参照)。今回のレターは、PPACA支持のスタンスを明確にすることで、軌道修正を図っているものと思われる。

※ 参考テーマ「無保険者対策/連邦レベル