12月20日 CalPERS:たばこ投資禁止規定強化 
Source :CalPERS opts to keep ban on tobacco stocks (Sacramento Bee)
CalPERSは、12月19日開催予定の投資委員会で、たばこ関連産業への投資禁止を継続することを決定した(「Topics2016年12月16日 CalPERS:投資政策の見直し検討」参照)。それだけでなく、外部の信託等を通じて間接的に保有していたたばこ関連産業株($547M相当)も売却することとした。

主な理由は次の2点。
  1. 病気を引き起こしている企業の収益に頼って年金給付を行なうことに労働組合が強く反発した。

  2. 将来の喫煙率は低下傾向にあり、高い収益率が見込めない。
まさに政治的判断である。投票結果は9対3の圧倒的賛成多数であり、近い将来にこの方向が逆転することはないだろう。また、間接保有もなくしたことで、CalSTARSのスタンスと同じになった。CA州の地方政府年金の姿勢は強固になったといえる。外部のコンサルタント会社のレポート、スタッフからの提案が逆効果を生んでしまった。

次はCalPERSが、どうやってキャッシュフローを確保するのか、その具体策の提案が求められる。

※ 参考テーマ「地方政府年金

12月19日 超党派BRIDGE法案 
Source :Senators Propose Legal Status for Young Immigrants (SHRM)
連邦議会上院の超党派議員達が"Bar Removal of Individuals who Dream and Grow our Economy (BRIDGE)"法案を提出した。Obama大統領令(DACA:Deferred Action for Childhood Arrivals)に基づいて国外退去の免除、就労資格を賦与された若者(74万人)に、三年間の法的地位を与えて保護しようというものである(「Topics2016年7月5日 不法移民保護策の行方」参照)。

トランプ新大統領がDACAを撤廃した場合に混乱が生じないようにするため、というのが主旨である。しかし、超党派提案とはいえ、共和党の中から多数の賛同を得るのは容易ではない。

一方、トランプ氏の側も、大統領令を廃止するとは言っているが、賦与された保護策まで無効にするとは発言していない。また、インタビュー等でも対象となっている若者に対する配慮も口にしているそうだ。

どこかで折り合いをつけるのが政治家の仕事だろう。

※ 参考テーマ「移民/外国人労働者

12月18日 不本意パートタイマー 
Source :Part-time work becoming new normal (Economic Policy Institute)
当websiteで度々紹介しているように、不本意就労の根雪がまだ溶けていない(「Topics2016年11月28日 働き盛りの男性がいない」参照)。上記sourceでは、不本意パートタイマーの長期トレンドを分析している。主な結果は次の通り。
  1. 不本意パートタイマーは全米で640万人、就労者全体の4.4%を占めている(2015年)。これは、景気後退期に較べて200万人、割合は1.3%増えている。
  2. 不本意パートタイマーを増やしているのは下表の上位4業種で、全体の増分の85%を占める。
  3. PPACAの医療保険プラン提供義務は、不本意パートタイマーの増加に影響はしていない。

  4. 労働者の特性で見ると、ヒスパニック、黒人、働き盛りの現役(prime-age)に多い。男女差は顕著に見られない。
こうした不本意パートタイマーの増加に対する政策対応として、伝統的な成長政策のほかに、次のような項目を挙げている。
  1. パートタイマーに対する報酬をフルタイマー並みにする。
  2. 失業保険給付の見直し。
  3. 勤務時間要求権利を付与する。
  4. 労働時間増分に対してパートタイマーを優先的に充てる。
  5. シフトがキャンセルされた場合でも最低限の給与を支払う。
いずれも現行制度からの移行は厳しい。

※ 参考テーマ「労働市場

12月17日 残業代新ルールの行方(2) 
Source :Regulatory Reform Likely Under Puzder (SHRM)
トランプ新政権の下での「残業代新ルール」の見直し手法について、次のような観測が出ている(「Topics2016年12月9日 残業代新ルールの行方」参照)。
  1. 連邦議会が、Obama大統領令の無効を法定する。

  2. Trump大統領、Puzder労働長官は、連邦裁判所で争われている訴訟に専念する。
大統領令のプロセスをもう一度やり直して廃止にするのは時間の無駄で、連邦議会は共和党が上下両院とも多数を握っているので、法律を一本通せば済む、という訳である。

それにしても、上記sourceを読んでみると、Puzder氏の指名について賛否が激しく対立している。概ね、ビジネス界は歓迎、労働組合や民主党は猛反発という様相だ。中でも、Warren上院議員コメントは辛辣だ。
"Throughout his entire career, Andrew Puzder has looked down on working people. At Hardees and Carl's Jr., he got rich squeezing front-line workers on wages, overtime, and benefits, all while plotting to replace them with machines that are so much better than workers because they are 'always polite' and 'never take a vacation.' Appointing Puzder to run the federal agency responsible for protecting workers is a slap in the face for every hard working American family."
「一所懸命に働くアメリカ国民の顔を平手打ちするようなものだ」と評している。

しかし、Warren上院議員や民主党がいくら反発して見せても、上院の過半数で指名承認される。Puzder氏の労働長官就任は粛々と進んでいく。

※ 参考テーマ「人事政策/労働法制

12月16日 CalPERS:投資政策の見直し検討 
Source :CalPERS staff recommends dropping tobacco investment ban (Pensions & Investments)
CalPERSは、12月19日開催予定の投資委員会で、たばこ関連産業への投資禁止を見直すよう提案する(「Topics2002年6月17日 CalPERSの投資基準」参照)。

見直し提案の根拠は次の通り。
  1. 投資禁止に伴う投資収益へのインパクト。外部のコンサルタント会社からは、「たばこ関連産業への株式投資を禁止した2001年から今年6月30日までの期間に、30億ドル以上の機会損失が生じた」とのレポートが提出されている。

  2. プランが成熟化し、キャッシュフローが不足している環境の中、給付を賄うために投資収益率を高める必要がある(「Topics2016年11月25日 CalPERS:拠出率大幅引上げを検討」参照)。

  3. 投資禁止にすることと、受託者責任を果たすこととの折り合いがつかない。
まさに、先日紹介した「地方政府年金の社会的投資がパフォーマンスが悪く、受託者責任に忠実になるべき」とのレポートにそった提案である(「Topics2016年11月29日 地方政府年金の社会的投資」参照)。超低金利政策の継続により、地方政府年金の投資政策に変化が生じることになるかもしれない。

※ 参考テーマ「地方政府年金

12月15日 小企業HRA 
Source :New Law Lets Small Employers Use Stand-Alone Health Reimbursement Arrangements (SHRM)
12月13日、Obama大統領は、"21st Century Cures Act"(H.R.34)署名、同法案は成立した。この法案の中には、小規模企業が単独でHRA(Health Reimbursement Arrangements)を設けることを認める条文が含まれている(『医療貯蓄勘定』参照)。

制度概要は次の通り。 IRS、労働省(DOL)が2013年に規定を変更してから、小規模企業が単独でHRAを開設できなくなっていた(「Topics2014年5月22日 医療貯蓄勘定(2)」参照)。

企業側は概ね歓迎しているが、専門家の中には、保険プランを提供する小規模企業が減少するのではないか、との懸念を表明している者もいる。

※ 参考テーマ「HSA

12月14日 E-Verifyの個人情報 
Source :Download E-Verify Records Before They Are Purged (SHRM)
12月10日、Obama大統領は暫定歳出法案(H.R. 2028)に署名し、同法案は成立した(SHRM)。同法案は2017年4月28日までの連邦政府活動に必要な歳出を認めるものであり、これにより、連邦政府のプログラムであるE-Verifyも、運用継続が可能となった。

そもそも、このプログラムは、移民が合法的に就職できるかどうかの確認をするための法律で、従業員に関して提出した情報(I-9)が、連邦政府に記録されているその他の公式記録と合致しているかどうかを確認するものである。連邦政府では、E-Verifyの利用を義務付けている場合もあり、このような政府機能が失われることはあってはならない。

一方で、このプログラムを所管しているUSCISは、2014年、プログラムが保持している記録は10年を経過した後に消去すると発表している。個人情報の管理、漏洩防止のためとしている。

この規則に拠れば、2006年12月31日以前に取得された記録は、2017年3月31日時点で消去されることになる。今後はこのような記録消去が毎年行なわれることになる。そのため、上記sourceでは、各企業は記録が消去される前にダウンロードして保管しておくことを進めている。個人情報漏洩のリスクは企業側が負うことになるが、従業員のデータを持っておくことは重要だという訳である。

移民の国の雇用管理は、結構大変である。

※ 参考テーマ「人事政策/労働法制」、「移民/外国人労働者

12月13日 州の最低賃金引き上げ 
Source :State Minimum Wage Increases for 2017 (Map) (HR Daily Advisor)
上記sourceは、2017年に最低賃金を引き上げる予定になっている州を紹介している。全部で21州にものぼる。しかも、NY州やCA州のように、何年かにわたってさらに引き上げていくことが決まっている州も結構多い。

一方で、連邦政府が定める最低賃金は、2009年以来ずっと$7.25/hに張り付いている。その結果、 と大きく分断されてしまっている(America Minimum Wage Rates)。しかも、連邦レベルを超えているところは、さらに引き上げの方向に動いているため、州間格差はどんどん広がりつつある。

加えて、先に紹介した通り、次の労働長官に指名されたAndrew Puzder氏は、レストランのチェーン店のCEOであり、最低賃金引き上げに消極的であろう(「Topics2016年12月9日 残業代新ルールの行方」参照)。つまり、ここしばらくは、この格差拡大の傾向は続いていくことになる。いくら生活コストのレベルが違うといっても、同じ国内で労働対価が倍になるということはあるまい。どこかで調整しなければ、本当に分断された社会になってしまう。

※ 参考テーマ「最低賃金

12月12日 MD州CO-OP営利企業へ 
Source :Maryland co-op exits state's marketplace (AP)
MD州のCO-OP、"Evergreen Health Cooperative"は、2日、2017年のMD州Exchange(Maryland Health Connection)での保険プラン販売を行なわない旨発表した。

2016年は、Exchangeを通じての加入者は6,000人だが、約4,000人はKaiser Permanenteに、残る2,000人はCareFirstに移行する予定だそうだ。ただし、Exchangeではなく、直接Evergreenから保険プランを購入している場合には、新たな保険プランを購入しなければならなくなる。

これで、発足当初は23あったCO-OPs(「Topics2014年3月8日 Co-opsの成果と課題」参照)のうち、存続するのは5つだけとなった(National Association of State Health Co-Ops)。

ただし、今回のEvergreenの撤退は、採算割れとか、加入者数の減少といった理由ではなく、営利企業に衣替えしたいというものである。つまり、市場の動きを見て、利益が充分確保できそうだという見込みがあるということだ。MD州特有の事情が背景にあるのかもしれない。

※ 参考テーマ「CO-OP