5月10日(1) PHE終結とMedicaid
Sources : The COVID public health emergency ends this week. Here's what's changing (NPR)
Fact Sheet: End of the COVID-19 Public Health Emergency(HHS)
4月10日のCOVID-19の国家緊急事態宣言の終結宣言(White House, H.J.Res. 7)に続き、5月11日、公衆衛生緊急事態宣言(public health emergency)が終結する(「Topics2023年4月14日(1) 連邦政府もテレワーク縮小」「Topics2023年5月6日(2) 連邦政府ワクチン義務化終結宣言」参照)。 2020年2月9日以来、緊急事態宣言は3年超続いた(COVID-19 Public Health Emergency)。この間、少なくとも600万人が入院し、110万人が死亡した。

緊急事態宣言終結に伴い、医療関係の制度でも変更が生じる。当websiteの関心事項は次の2点。
  1. Medicaid加入者

    Medicaid加入者は、コロナ禍の中、大きく増加した。最新の推計では、2020年2月~2023年12月の間、2,120万人増、増加幅は29.8%増であった(KFF推計)。
    その結果、Medicaid加入者数は、2022年12月時点で9,500万人、アメリカ国民の1/4以上が加入者となった。

    しかし、この緊急事態宣言終了を見越して、既に加入資格確認の作業が始まっている(「Topics2023年3月22日(1) Medicaid資格喪失」参照)。その結果、最大2,440万人が資格を喪失すると見込まれている(KFF推計
    コロナ禍で増えた分以上に減少してしまいかねない状況だ。気になるのは、年初から加入資格喪失者推計の規模が徐々に大きくなっていることだ(「Topics2023年1月27日(3) Medicaid加入者大幅減の可能性」「Topics2023年3月22日(1) Medicaid資格喪失」参照)。

  2. ワクチンと陽性検査の費用

    これまでは連邦政府が負担してきたが、今後は、医療保険プランが負担する。ただし、ワクチンについて、個人の負担は実質的に無料となる。無保険者については、2024年までは連邦政府が負担する。
※ 参考テーマ「無保険者対策/州レベル全般

5月10日(2) センサス結果は過少
Source :The 2020 census may have missed a big share of noncitizens, the bureau estimates (NPR)
5月5日、Census Bureauは、2020年センサスに関するレポートを公表した。行政記録を利用してセンサス結果の正確性を高めるための研究プロジェクトが行なわれており、今回のレポートはその第一弾ということだ。

行政記録から推計した総人口は、公表されたセンサス結果よりも2.3%も多いとの結論が示されている(「Topics2021年4月27日 センサス結果第1弾」参照)。こうした差異が生じた原因は、主に不法移民がセンサスでカウントされなかったと見られている。不法移民の約19.7%がセンサスに回答しなかったのではないかと推測されている。

予てより、2020年センサスには誤差があると指摘されてきた(「Topics2022年5月23日 2020年国勢調査の誤差」参照)。その最大の要因は、トランプ大統領によるセンサスに対する介入だ(「Topics2020年7月25日 センサスから不法移民除外」参照)。この大統領介入は、政権交代により修整されたものの、その影響は大きく残ったということだろう(「Topics2021年1月21日 バイデン Day 1st」参照)。

※ 参考テーマ「人口/結婚/家庭/生活

5月9日 FSAとCOBRA
Source :COBRA for the Health FSA (Newfront)
上記sourceは、退職の際、FSAがCOBRAの対象になる場合を、事例付きで説明している。 (「Topics2009年2月8日 失業したら・・・」「医療貯蓄勘定 比較表(2020年6月)」参照)

ところで、HSAがCOBRAの対象にならない理由がわからない。

※ 参考テーマ「HSA

5月8日(1) MD州最低賃金法改正
Source :Maryland Moves to Revise Paid Family and Medical Leave Insurance Program Implementation Dates, Raise State Minimum Wage (Ogletree Deakins)
Maryland州(MD)の話題を二件。先ずは最低賃金引き上げについて。

4月11日、Fair Wage Act of 2023(SB 555)が成立した。2024年1月1日以降、MD州の最低賃金を一律$15/hと定める。

2023年1月1日時点のMD州最低賃金は$13.25/hである。また、これまでの制度では、企業規模に応じて最低賃金の引き上げ額を変えてきた。また、2025、2026年については、物価指数に連動させることを定めていた。これを企業規模一律の制度に変更したのである。

他方、Montgomery Countyの最低賃金についても、2023年7月1日に引き上げられる(「Topics2022年6月15日 最低賃金$15超え」参照)。 ※ 参考テーマ「最低賃金

5月8日(2) MD州FMLA改正
Source :Maryland Moves to Revise Paid Family and Medical Leave Insurance Program Implementation Dates, Raise State Minimum Wage (Ogletree Deakins)
次に、FMLPの制度変更について。

5月3日、MD州FMLP改正法(SB 828)が成立した(「Topics2022年4月14日 MD州:10番目の有給FMLA」参照)。主に、施行日程の変更である(赤字部分が変更部分)。 ※ 参考テーマ「FMLA

5月8日(3) 学生ローン返済支援拠出
Source :401K Matching for Student Loan Payments Finally Arrives (HR Daily Advisor)
2022年末、SECURE 2.0法案が成立した(「Topics2022年12月31日 "統合SECURE 2.0"法案成立」参照)。そこには、確定拠出年金プランにおいて、従業員の学生ローン返済支援を目的とした、事業主のマッチング拠出を認める条項が含まれている(「Topics2022年4月1日 SECURE 2.0下院可決」参照)。

学生ローンベネフィットの充実を図ろうとしている企業にとっては、長い間待ち焦がれた新制度である(「Topics2019年7月17日 学生ローンベネフィットの実態」「Topics2020年1月7日 ベネフィット:6大潮流」参照)。

また、学生ローン債務返済免除の先行きが不透明となっている中、学生ローンを抱える従業員にとっても朗報である(「Topics2023年3月2日(1) 学生ローン免除:最高裁審議開始」参照)。

制度施行日は、2025年1月1日である。

※ 参考テーマ「教 育」、「企業年金関連法制」、「DB/DCプラン

5月6日(3) Medical Credit Cards
Source :Biden administration warns consumers to avoid medical credit cards (NPR)
5月4日、Consumer Financial Protection Bureauは、"Medical Credit Cards and Financing Plans"というレポートを公表した。ポイントは次の通り。
  1. Medical Credit Cardsその他の医療債務のリスクが高まっている。

  2. 全米で約1億人(成人の41%)が何らかの医療債務を負っている。

  3. 2018~2020年の3年間で、支払遅延利払いとして$1Bを負担している。

  4. 利払いの負担により、医療債務は約25%増大したとみられる。

  5. 高利率が債務を増大させ、債務者を破綻させる可能性が高まる。
ここで、Medical Credit Cardsとは何かを初めて知った。
  1. 典型的な商品として、上記sourceは、CareCreditを紹介している。

  2. 通常、医療機関の待合室で紹介される。

  3. 一定期間は金利ゼロが維持される。

  4. 一旦支払いが遅れたり、一定期間中に返済が終わらなければ、金利支払い義務が生じる。時には27%にも達する。
何だか詐欺みたいなシステムだが…。

※ 参考テーマ「無保険者対策/連邦レベル

5月6日(1) サービスの労働需要強い
Source :In a surprise, the job market grew strongly in April despite high interest rates (NPR)
5月5日、雇用統計が公表された(BLS)。4月の雇用増は25.3万人となった。3月の雇用増が大幅に下方修正(16.5万人)されたものの、「予想に反して」大きな数字となったそうだ(「Topics2023年4月8日 雇用増の水準も低下」参照)。
雇用者数は155.7M人となった(Table B-1. Employees on nonfarm payrolls by industry sector and selected industry detail)。業種別増加数は次の通り。
相変わらず、サービス産業の労働需要が高い。上記ourceによれば、航空、ホテル、レストランの増加が、他の産業の弱い需要をオフセットしている。

失業率は3.4%と、さらに低下した(Table A-1. Employment status of the civilian population by sex and age)。
労働市場参加率は62.6%と、横這いとなった。依然として、コロナ禍以前には程遠い低水準が続いている。
25~54歳の労働市場参加率も83.3%と、上昇傾向が続いている(BLS)。
労働市場に参加していない人の中で仕事を得たいと考えている人数は、反転増加した。
長期失業者(27週以上)の失業者全体に占める割合は、20.6%と上昇が続いている。
FRBが注目してきた、サービス産業での労働需要の強さが続いているようだ(「Topics2023年5月5日(3) 再びインフレ抑制優先」参照)。

※ 参考テーマ「労働市場

5月6日(2) 連邦政府ワクチン義務化終結宣言
Source :The COVID-19 Vaccine Mandates for Feds and Contractors Are Officially Ending (Government Executive)
5月1日、大統領府は、連邦政府職員、契約企業の従業員に対するワクチン接種義務を終了することを正式に表明した(The White House)。終了の日付は、緊急事態宣言が終了する5月11日である。

実質的には、既に昨年8月、接種義務化を終結させている(「Topics2022年8月18日(1) 連邦職員ワクチン接種義務化終結」参照)。

一方で、連邦政府によるワクチン接種義務化の有効性を巡る司法闘争は続いている(「Topics2023年3月26日 ワクチン接種義務化差止判決」参照)。

※ 参考テーマ「人事政策/労働法制

5月5日(1) ECI伸び率5%続く
Source :Employment Cost Index Summary (BLS)
4月28日、3月のEmployment Cost Index(ECI)が公表された。
  1. 雇用市場全体の雇用コストは前年同期比4.8%増と、昨年12月に較べて僅かに伸び率は低下したが、相変わらず大きな伸びが続いている(「Topics2023年2月1日(1) ECI足許伸び率鈍化」参照)
  2. しかし、ここに来て民間セクターの賃金の伸び率は横這いとなっている。
  3. 足許の3ヵ月前との比較では、民間、公的ともに、伸び率は下げ止まっている。
  4. 民間部門の産業別を見ると、伸び率は、ほぼ5%弱前後に集中している。
労働コストの上昇は5%程度の勢いが続いている。

※ 参考テーマ「労働市場

5月5日(2) 労働需給緩和は遠い
Source :Job Openings and Labor Turnover Summary (BLS)
5月2日、BLSが、3月末の求人数を発表した。3月末の求人数は959.0万人で、前月比38.4万人の減少となった(「Topics2023年4月5日(1) 求人/転職熱は解消傾向」参照)。減少傾向が続いている。
労働力人口に占める求人数の割合は5.8%と、こちらも低下した。
新規雇用数は614.9万人と、微減となった。
失業者数/求人数は、0.6と横這いだった。
3月の自発的失業(Quits)は385.1万人と、再び減少に転じた。
Quits level, Total nonfarm - 2019~2023年

Quits level, Total nonfarm - 2007~2023年
こうした中、3月の時間給をみると、上昇率は反転増加している。

Federal Reserve Bank of Atlanta's Wage Growth Tracker
賃金上昇率は、堅調な伸びが続いている(「Topics2023年5月5日(1) ECI伸び率5%続く」参照)。

※ 参考テーマ「労働市場

5月5日(3) 再びインフレ抑制優先
Source :The Fed raises interest rates again in what could be its final attack on inflation (NPR)
5月3日、FOMCは政策金利の0.25%の引き上げを決定した(「Topics2023年3月23日 インフレ抑制を優先」参照)。政策金利の幅は、5.00~5.25%となる(FOMC statement)。
FOMC直前には、First Republic Bankが破綻し、JPMorgan Chaseに売却された(NPR)。今回もまた、金融システム不安への対応よりも、インフレ抑制を優先した形だ。

その判断はよく理解できる。サービス消費は依然堅調だし、これを受けてか、労働市場の過熱は冷え切ってはいない。いや、上記の通り、むしろ反転に向かっているかもしれない(「Topics2023年4月28日(1) サービス消費は堅調」参照)。FRBの政策目標である、物価上昇率2%を大きく上回っている状況にある。

※ 参考テーマ「労働市場