7月17日 学生ローンベネフィットの実態
Source :A Deep Dive Into Student Loan Repayment Assistance Benefits (IFEBP)
学生ローンは、大学卒業生一人当たり平均残高が$28,650に達するとの推計もあるくらい、若者にとっては大きな負担となっている。これを企業ベネフィットで軽減しようという動きが盛んになってきていることは、当websiteでも何度か紹介してきた(「Topics2018年6月13日 学生ローンベネフィットの潮流」「Topics2018年8月23日 学生ローンベネフィット2類型 」参照)。

上記sourceは、企業アンケートで学生ローンベネフィットの実態、課題を紹介している。主なポイントは次の通り。
  1. 実際に学生ローンベネフィットを提供しているのは4%。また、実施に向けたプロセスに入っているのが1.6%ということで、全体では5.6%が実施、もしくは実施直前となっている。

  2. また、将来的に提供を検討しているのは22.6%。
  3. 企業規模別でみると、従業員5,000人以上の企業では、実際に提供しているのが9.3%に達している。
  4. ベネフィットを提供しようと考える動機は、
    1. 将来の有望な人材の確保
    2. 従業員の引き留め策
    3. 従業員の満足度、忠誠度を高める
    などが挙げられている。
  5. ベネフィット導入に向けた課題としては、
    1. コストがかかる
    2. 制度が複雑になる
    3. 既にローンを返済し終わった従業員、資格のない従業員にとって不公平感が高い
    などが挙げられている。
4.の制度導入の動機を満足させようとすると、一度に弁済するのではなく、例えば10年間で弁済するなど、一定の期間企業に引き留められるような払い方をしないといけないだろう。

※ 参考テーマ「ベネフィット」、「教育

7月16日 最低賃金引上のインパクト
Source :CBO Analysis: $15 Minimum Wage Would Boost Incomes, Trigger Job Cuts (SHRM)
連邦議会下院で、連邦最低賃金の引き上げを求める法案(Raise the Wage Act, H.R.582)が審議されており、今月中に下院で投票が行われる予定だ。

同法案の概要は次の通り。
  1. 連邦最低賃金を次のようなスケジュールで引き上げる。
    現  行:$ 7.25/h
    2019年:$ 8.55/h
    2020年:$ 9.85/h
    2021年:$11.15/h
    2022年:$12.45/h
    2023年:$13.75/h
    2024年:$15.00/h
    2025年以降:物価上昇率で引き上げ
  2. チップを受け取る従業員、身体障碍者、20歳未満の従業員に関する特例を廃止する(「Topics2015年2月8日 Tipped Minimum Wage」参照)。
仮に下院で可決されたとしても、共和党が多数を握る上院では可決される見込みは低い。ただし、この法案に関連して、CBOがその影響を試算しているので、まとめておきたい。

  1. この法律により、2,700万人の賃金が引き上げられる。内訳は、$15/h未満の従業員が1,700万人、$15/h以上の従業員が1,000万人。

  2. 一方、企業のコスト削減により、130万人が職を失う。

  3. 実質賃金の動きは次のようになる。下位10%の賃金に直接影響が及ぶものとみられる。
※ 参考テーマ「最低賃金

7月13日 市民権質問最終決定
Source :Trump Backs Off Census Citizenship Question Fight (NPR)
7月11日、トランプ大統領は、国勢調査における市民権質問に関するスピーチを行った。ポイントは次の通り。
  1. 国勢調査に市民権に関する質問を掲載することを断念する。

  2. 大統領令により、全ての連邦政府機関に対して、市民権を有する者、有しない者、移民の法的ステータスに関するデータを商務省(Census Bureau)に提出させる。

  3. Census Bureauは、国勢調査で得られたデータと、連邦政府機関から提供を受けたデータを統合し、『正式な国勢調査結果』を公表する。
1.に関しては、一旦、連邦政府が市民権質問を落とした調査票で印刷を開始すると断言したのだが、その後も政権内部では、裁判所への説明を追加できないか、担当弁護士を入れ替えられないか、など様々な試みが行なわれていた(「Topics2019年7月4日 市民権質問断念の背景」参照)。しかし、最終的には、国勢調査実施のスケジュールに悪影響が出ることを回避するため、法廷闘争は断念した。

2.は、先に市民権質問を断念した背景として、当websiteで紹介した(「Topics2019年7月4日 市民権質問断念の背景」参照)。中でも、SSADepartment of Homeland Securityから得られる情報は正確度が高く、Census Bureauの分析官も、最初からこちらを利用すべきと推奨していたくらいである。

3.は、トランプ政権の強い意志を示している。国勢調査票によって集められた情報を集計したものが国勢調査結果なのではなく、国勢調査票の情報に連邦政府全体の情報を統合したものが『正式な国勢調査結果』となると主張しているのだ。

市民権質問に関する司法闘争では敗れたものの、『正式な国勢調査結果』では市民権を持たない不法入国者、不法滞在者の数が示されることになる。これは、その後の選挙区割り、連邦予算配分に反映されることになるのだろう。

※ 参考テーマ「政治/外交」、「人口/結婚/家庭/生活」、「大統領選(2020年)

7月12日 TX州:大学授業料全額免除
Source :University of Texas-Austin Promises Free Tuition For Low Income Students In 2020 (NPR)
7月9日、University of Texas-Austinは、中低所得家庭の子女に対して学費を援助するプログラムを開始すると発表した(プレスリリース)。中低所得層の家庭の優秀な学生がなかなか入学できなくなっていることに対応する支援拡大措置である。拡大支援プログラムの概要は次の通り。
  1. プログラムの開始は、2020年秋から。

  2. 年間所得$65,000以下のTX州家庭の子女については、学費(約$10,500/年)を全額免除。

  3. 年間所得$125,000以下のTX州家庭の子女については、学費を一部免除。

  4. 対象学生数は、約8,600人となる見込み。

  5. 財源は、Permanent University Fundから受け入れる基金。
TX州では、2008年から、Texas A&M Universityが年間所得$60,000以下のTX州家庭の子女については、学費を全額免除している。その財源も、上記5.と同様、Permanent University Fundからの受け入れである。

当websiteでは、公立大学授業料免除プログラムがWA州で施行されていることを紹介した(「Topics2019年5月16日 WA州:公立大学授業料免除制度」参照)。WA州とTX州との大きな違いは、財源である。WA州の財源は売上税であるのに対して、TX州はPermanent University Fundからの基金である。

Permanent University Fundは、最初から州内の高等教育機関である上記両大学に対して支援を行うために設立された基金であり、その財源は、州有地を石油会社、ガス会社、自然エネルギー発電会社等に貸し付ける対価として受け取る貸地料である。これならば、新たな州民負担を伴わずに、安定的に支援を継続できる。

大学の学費の高騰に対する支援措置は、各州が知恵を絞って執り行われている。

※ 参考テーマ「教 育

7月11日 CA州:髪型差別禁止法
Source :California Lawmakers Ban Workplace Discrimination Based on Hairstyle (SHRM)
7月3日、CA州知事が署名し、CROWN Act(SB 188)が成立した。これは、職場で髪型により差別することを禁じる州法だ。同様のものはNYCが導入済みとのことだが、州法レベルでは全米初となる。

適用される職場は、公立学校、従業員5人以上の企業、州政府・関係機関となっている。宗教団体、非営利団体は適用除外だ。

アメリカ企業では、一般的に、服装、みだしなみについて事細かに規定している場合が多い。しかし、余りにも厳格に定めると、差別とみなされるケースが増えている(「Topics2018年11月9日 服装規定と差別訴訟」参照)。

そこで、上記sourceでは、みだしなみ規定については、次のようなアドバイスを提示している。
  1. Be driven by legitimate, objective business needs, not subjective personal preferences.
  2. State the reason for the standards, such as to protect the health and safety of employees.
  3. Be equally and fairly implemented and should not disproportionately impact employees in a legally protected category.
  4. Accommodate employees' religious beliefs, where appropriate.
  5. Apply only to the workplace and should not attempt to regulate employees' off-duty appearance.
特に、最後の5番目のアドバイスは、極めて重要だと思う。『職場のみだしなみ』を職場の外にまで持ち込もうとするのは、古今東西、多く見られる現象だ。

※ 参考テーマ「人事政策/労働法制