6月20日 AHPs規制緩和
Sources : Trump administration expands use of health plans that skirt ACA consumer protections (Washington Post)
Trump administration finalizes rule to expand association health plan access (Modern Healthcare)
6月19日、労働省は、Association Health Plans(AHPs)に関する規制緩和策を発表した(「Topics2018年1月10日 AHP制度設計案」参照)。これは、昨年10月の大統領令に基づくものである(「Topics2017年10月13日 オバマケア破壊大統領令」参照)。

ポイントは次の通り。
  1. 1月の提案通り、次の2形態を認める。

    • "common geography":同じ地域に居住する限り、加入者の職業は問わない。中小企業従業員、個人事業主なら誰でも加入できる。

    • "common industy":同じ業種の中小企業、個人事業主のみの加入を認める。ただし、これは全米規模の組織でも構わない。

  2. "common industy"型の場合、保険プランの州際購入が可能となるが、規制当局は州政府としている。ただし、詳細はこれから詰めるようだ。

  3. 妊娠、処方薬、メンタルヘルスその他、PPACAで"essential health benefits"として規定されているサービスを除外することを認める。

  4. 既往症に基づく保険料の差異は認めないが、年齢、性別、地域に基づく保険料の設定を認める。
労働省は、大企業に適用されるERISAに基づく医療保険プランとの同等条件を確保することを目的にしていると説明しているが、『ペナルティ課税ゼロ』と同様、狙いはPPACAの骨抜きであることは明白だ(「Topics2017年12月21日 ペナルティ課税ゼロ」参照)。

コンサル会社の推計によれば、AHPsの保険料は、Exchangeプランの保険料に較べて、2022年までに、中小企業で年間$2,900、個人で年間$9,700安くなる。これに伴い、AHPs加入者は400万人増加、うち無保険者の加入が40万人と労働省は推計している。

一方、Exchangeプラン保険料は今後5年間で3.5%上昇、13万人が無保険者になるものと見られている。

AHPsの規制緩和については、多くの州政府、医療機関、保険会社が反対を表明しているが、全米レストラン協会は「これで保険プランが購入可能となる」と評価している。

トランプ政権は、AHPs規制緩和に続いて、短期保険プランについても12ヵ月加入を認める案を検討しているそうだ。

※ 参考テーマ「医療保険プラン」、「無保険者対策/連邦レベル

6月19日 ゲリマンダリング:判断先送り
Source :Supreme Court Leaves 'Wild West' Of Partisan Gerrymandering In Place - For Now (NPR)
6月18日、連邦最高裁は、党派的なゲリマンダリングの合憲性を争う事案2件について、下級審への差し戻しを決定した。

判決の対象となったのは、
@WI州における共和党によるゲリマンダリング(「Topics2017年6月25日 ゲリマンダリングの合憲性」参照)
AMD州における民主党によるゲリマンダリング
である。

連邦最高裁は、いずれの事案についても合憲性に関する見解は示さず、原告側が『司法が介入すべき具体的な損害』を選挙区ごとに明示するよう求めた。

これで党派的なゲリマンダリングに関する最高裁の判断は先送りとなった。

※ 参考テーマ「政治/外交」、「司 法

6月16日 複数事業主プラン:USCC提案
Source :Testimony: Employer Perspectives on Multiemployer Pension Plans (U.S. Chamber of Commerce)
PBGC複数事業主プラン勘定の急速な悪化(「Topics2018年6月1日 複数事業主プランが急速に悪化」参照)を踏まえ、6月13日、連邦議会の複数事業主プランに関する両院共同委員会が開かれ、全米商工会議所(USCC)が証言を行なった。

当websiteでは、昨年末に公表されたUSCCの複数事業主プランに関する報告書を紹介した(「Topics2017年12月28日 複数事業主プランに警鐘」参照)。そこでは、複数事業主プランの継続性に対する危機感が表明されていた。

今回の証言も、危機感を強く表明することが中心になっているが、最後の方に、課題解決のための提案が列記されている。
  1. First, all members of the Committee must recognize that rescue legislation is urgently needed. Congress can no longer kick the can down the road. 


  2. Second, struggling plans will need financial assistance. Our recommendation is for long-term, low-interest loans that will protect taxpayers from financial liability. 


  3. Third, all parties will have to be part of the solution, including plan beneficiaries and participating employers. 


  4. Fourth, while the PBGC may ultimately need more money, in the form of increased premiums paid by employers, these increases must be evaluated after tools to restore the solvency of these plans are put in place. 


  5. Finally, composite plans must be authorized so that healthy multi-employer plans can stay that way. Composite plans are a hybrid between traditional pension plans and individual accounts plans that can bridge the gap between current existing options. 
いずれも抽象的な提案にとどまっているが、ポイントとしては、先ず特別融資(低金利、超長期)により継続の危機に陥っているプランを救済する。その後、PBGC保険料を引き上げる。並行的に、"Composite Plans"制度を導入する(「Topics2016年5月6日 "The Composite Plan"」参照)。

当websiteでは、"Composite Plans"制度はPBGC保険料免除が狙いと見ているので、USCC提案の主眼は危機的状況にあるプランの財政的救済と考える。

※ 参考テーマ「PBGC/Chapter 11

6月15日 Housing Wage
Source :A minimum-wage worker can’t afford a 2-bedroom apartment anywhere in the U.S. (Washington Post)
"Living Wage"という考え方がある。その地域で生活していくために最低限必要な賃金(時給)のことである。この"Living Wage"は、軒並み各州の最低賃金を上回っている(「Topics2015年9月17日 Living Wage>Min. Wage」参照)。このギャップを解消するため、CA州、NY州は最低賃金を$15/hまで引き上げている(「Topics2016年4月7日(1) CA州:最低賃金$15」「Topics2016年4月7日(2) NY州も最低賃金$15」参照)。

ところが、リーマンショック後の順調な景気回復や、貸家市場への供給が限られていることから、家賃が急上昇している。そのため、家賃が充分に支払えるだけの給与という意味での"Housing Wage"は高水準になっており、"Living Wage"を遥かに上回っている。

下の図は、州別に見た2 bedroom用の"Housing Wage"である。
これを高い方から順番に並べたのが、次の表である。
上位3州は、HI, CA, NY州で、いずれの2 bedroom用"Housing Wage"は$30/hを超えており、当然、州最低賃金$15/hをも超えている。

また、最低のAR州は$13.84/hだが、AR州の最低賃金は$8.50/hである。

これを1 bedroom用"Housing Wage"で見ると、5州22のcountyでかろうじて最低賃金を下回るところが出てくるそうだ。

全米平均でみると、2 bedroom用"Housing Wage"は$22.10/h、1 bedroom用"Housing Wage"は$17.90/hとなる。これらを上回る時間給を得ている職種はかなり限られる。
低所得層が借家をしようとすると、財政的にはかなり厳しい状況に置かれることになる。

ところで、ここで言う"Housing Wage"は、収入の3割を家賃に回すことを前提として計算されている。これを利用して、"Housing Wage"から月額家賃を逆算してみると、MD州(全米4位、$29.04/h)の2 bedroom用の家賃は$/1,510Mとなる。
$29.04/h * 3/10 * 40h * 52w / 12M = $1,510
日本円に直すと、約16.6万円になる。確かにこれは高いと思う。

※ 参考テーマ「最低賃金

6月14日 就労義務規定の効果
Source :Implications of Work Requirements in Medicaid: What Does the Data Say? (Kaiser Family Foundation)
今年1月、CMSは、これまでの運用規定を変更し、州政府がMedicaid受給要件に『就労』を加えることを認めるとの通達を発した(「Topics2018年1月30日 Medicaid:就労義務規定の許容」参照)。これまでに就労義務規定の導入を申請した州は11州で、うち4州が連邦政府の承認を得ている。

Kaiser Family Foundation
一方、Medicaid加入者のうち、既に働いている割合は62%を占める。これを健康状態別でみると、健康状態が良好な加入者の中で働いている割合は71%に達するのに対して、病弱だったり芳しくない加入者の場合は37%にしかならない。
また、就労義務規定が入ることによって就労義務が課せられる可能性のあるMedicaid加入者の割合は、たった6%しかない。
働かないために低所得に陥ってMedicaidに加入している場合よりも、働いていても職業能力が低い、働く時間が短い、健康状態が思わしくなくて働けない、といった場合の方が多く、解決すべき課題となっている。

※ 参考テーマ「無保険者対策/州レベル全般

6月13日 学生ローンベネフィットの潮流
Source :Competitive Hiring Tool - Paying Off Employees’ Student Loans - Gains Traction (Blank Rome Workplace)
30歳以下で学士以上の学位を持っているアメリカ人の53%が学生ローン残高を抱えており、その総額は$1.3Tにのぼると言われている。以前も当websiteで学生ローンベネフィットが注目されていることを紹介したが、いよいよ企業側の関心も高まってきたようだ(「Topics2016年7月4日 学生ローンベネフィット」参照)。

上記sourceで紹介されている、最近の学生ローンベネフィットの特徴は次の通り。
  1. 採用時からすぐに支給を開始する。(⇔一定期間後に受給権が発生する形ではない)

  2. 単純な定額支給。(⇔ローン残高や勤続年数を考慮に入れない)

  3. 月払いその他、定期的に支給する。(⇔一括給付ではない)
これらの特徴から見えてくる企業の採用戦略は、 また、上記sourceでは、学生ローンベネフィットを提供する際の注意事項も紹介している。
  1. 当該支給は課税対象になる。

  2. 公平性確保の観点から、学生ローンを抱えずに就職した従業員には別の形のベネフィットを提供する。
いよいよ、学生ローンベネフィットは本格的に普及していきそうである。

※ 参考テーマ「ベネフィット」、「教育

6月11日 ベネフィットの税制変更
Source :Is Wining and Dining Still Worth It? A Look at Meals and Entertainment Deductions Today (Withum)
昨年の税制改正で、企業が提供する飲食関係の税制が大きく変更になった(「Topics2017年12月27日 減税法案のベネフィットへの影響 」参照)。 アメリカ企業の従業員ベネフィットを大きく見直す切っ掛けになりそうだ。

※ 参考テーマ「ベネフィット