1月10日 AHP制度設計案
Source :DOL Issues Proposal Governing Association Health Plans (Littler Mendelson P.C.)
1月5日、労働省(DOL)がAHP(Association Health Plans)に関する制度設計案を公表した(「Topics2017年10月13日 オバマケア破壊大統領令」「Topics2018年1月9日 5つの注目点」参照)。

主な骨子は次の通り。
  1. 利益が共通する複数の企業がまとまり、あたかも一つの企業が保険プランを提供すると見做せるようにする。ERISAの下での"Employee Welfare Benefit Plan(EWBP)”、"Group Health Plan"などが想定されている。

  2. 個人事業主も参加することができる。

  3. ERISA§3(5)の解釈を拡大し、「利益が共通する複数の企業」の定義を変更する。

    • "common geography"

      「主な事業活動地域が州境を超えない」または「同じメトロポリタン地域内」と定義する。メトロポリタン地域の場合には、州境を超えても構わない(例えばワシントンDC地域)。

    • "common industry"

      「同じ業種」、「取引関係系列」など。

  4. 全国規模の業界団体の場合には、全国規模のAHPを提供できる。

  5. AHPは、保険プランの提供を唯一の目的とする組織でなければならない。
州政府の監督権限がどうなるかは明確になっていないが、連邦法により州法を超越できることになれば、その影響は大きい。なぜなら、AHPの結成により、Exchangeに頼らなくてもよくなるからだ(Mark Stember)。Exchangeを通じた保険加入者が減少すれば、参入している保険会社の採算は悪化し、保険料は上昇する。

パブリックコメントの締め切りは3月6日になっている。

※ 参考テーマ「無保険者対策/連邦レベル」、「無保険者対策/州レベル全般」、「医療保険プラン

1月9日 5つの注目点
Source :From premiums to politics: 5 predictions for the health insurance industry in 2018 (Fierce Healthcare)
上記sourceでは、2018年の医療保険関係で5つの注目点を挙げている。今後の視点として参考になると思う。
  1. CVSとAetnaの合併

    昨年、医療関係の大企業同士の合併が実現した。これは垂直統合であり、今後、こうした巨大企業同士の垂直統合が相次ぐと見られている。各段階の市場に対するインパクトも大きい。

  2. PPACAの安定化

    共和党、民主党ともに、市場関係者からの圧力を受け、制度の安定化を図らざるを得なくなる。その際、連邦議会上院が51vs49と拮抗していることから、相互にどこで歩み寄るかが焦点となる。

  3. 保険料の更なる上昇と個人市場からの撤退

    実質的に個人保険加入義務が外れたため、若者、健康者が個人保険市場から退出していくことが予想される。また、保険会社側も、大企業が再参入する気配はない。CSRに関する支払いも確実ではなく、保険会社としては保険料を上げていくことで対応せざるを得なくなると見られている(「Topics2017年10月19日 CSR延期は不透明」参照)。

  4. 大統領令の具体化

    連邦政府(労働省、厚生省、財務省)において、昨年10月に出された大統領令の具体化、制度化が開始される(「Topics2017年10月13日 オバマケア破壊大統領令」参照)。民主党寄りの州政府では、連邦政府が制度変更しようとしても州政府の権限でそれを抑えるように動くことが予想される。州ごとにルールが異なる事態がみられることになるかもしれない。

    ※労働省は早速、AHPに関する制度設計案を公開し、パブリックコメントを求めている。これについては後日触れることとする(「Topics2018年1月10日 AHP制度設計案」参照)。

  5. 質への支払い傾向強化

    連邦政府は質への支払いの要素を高めるかどうか不明だが、市場ベースでは連邦政府がどう動こうと、質への支払いへの要素を高めていくという傾向は強まっていく。
ようやく空中戦の時期を終え、具体的な制度設計のフェーズに入ってきたようだ。

※ 参考テーマ「無保険者対策/連邦レベル」、「無保険者対策/州レベル全般」、「医療保険プラン