0 The Gateway to the US Labor Market/Topics/23042   4月20日 医療過誤保険料高騰
Source :Surge in medical liability premiums increases reaches fourth year (American Medical Association)
医療過誤保険の保険料が、4年連続(2019~2022年)上昇している。このような状況は、20年ぶりとのこと。上記sourceのポイントは次の通り。
  1. 2000年代初め、医療過誤保険料は大幅に上昇したが、様々な抑制策が採られ、落ち着いていった。(「Topics2004年9月7日 過誤保険料の高騰」参照)

  2. ところが、2010年代、いくつかの州で抑制策が廃止され、徐々に保険料は上昇していった。(「Topics2010年2月6日 賠償金上限設定は州憲法違反」参照)

  3. 2013~2018年の間は、保険料が上昇したプランの割合は緩やかに増えていた。

  4. 2019年、保険料上昇プランの割合は約27%と、2018年から倍増した。2020~2021年の間はほぼ30%だったが、2022年は36.2%に上昇した。これは2005年以来の高い水準だ。

  5. 保険料が上昇したプランの、平均上昇率は8.1%であった。

  6. こうした状況が続けば、医療機関の移転、廃業が増え、診療を受けられない国民が増えていくことになる。
AMAとしては、医療過誤賠償金の上限設定など、保険料を抑制する策を提言しているが、その実現性は低い(「Topics2004年1月19日 医療過誤賠償法案の効果」参照、「Topics2004年2月26日(1) 医療過誤賠償法案はお蔵入り」参照)。

※ 参考テーマ「医療過誤

4月17日(1) CA州医療機関最低賃金法案
Source :Would $25 health care minimum wage help or hurt patient care? California debates (Business Journal)
4月12日、CA州議会上院労働委員会で、"Minimum wage: health care workers(SB-525)"が可決された。この法案は、病院やクリニックで働く医療スタッフばかりでなく、多くの医療・サービス提供機関の働き手の最低賃金を$25/hに引き上げるという法案である。

これに、医療機関は猛反発している。それでなくても、コロナ禍により、CA州内の約2割の医療機関は、赤字経営のために閉鎖の危機に瀕している、と主張している(Becker's Hospital Review)。

加えて、看護師団体も反対しているそうだ。多くの看護師は既に$25/h以上の給与を得ており、$25/hで最低賃金が設定されると、医療機関は看護師の給与を引き下げてくるかもしれない、という。

CA州の医療機関の立て直しは、厳しい局面を迎えている。

※ 参考テーマ「無保険者対策/CA州

4月17日(2) Thomas判事への疑惑
Source :Clarence Thomas has for years claimed income from a defunct real estate firm (Washington Post)
Thomas判事への疑惑の目が厳しくなっている(「Topics2023年4月11日 最高裁判事の倫理規定」参照)。

  1. 妻の家族が経営する会社からの報酬
    • 1982年、Ginger Limited Partnershipが設立された。パートナーは、Thomas判事の妻Ginni Thomas、妻の両親と3人の兄弟。事業は不動産の売買、リース。

    • 1990年にThomas判事は連邦控訴裁判所判事に任命。その際の申告によると、妻の資産は当時$15,000。

    • 2006年3月、Ginger Limited Partnership解散。ほぼ同時期に、Ginger Holdings, LLC設立。所在地は全く同じ。Ginni Thomasの姉妹"Joanne K. Elliott"が経営者として登録。同じ3月中に、不動産物件が移転される。

    • Thomas判事は、2006年以降、賃貸料(rent)として、Ginger Limited Partnershipから$270,000~$750,000を受領した。申告額が金額幅で示されてきたため、絶対額はわからない。ちなみに、Thomas判事の判事としての年収は、$285,000である。

    • 最新の申告(2021年)によると、Thomas判事の家族のGinger Limited Partnershipの持ち分は、$250,000~$500,000。また、同年、Thomas判事がGinger Limited Partnershipから受け取った報酬は、$50,000~$100,000。

  2. Ginni Thomasの就労状況の不申告
    • 2003~2007年の間、Ginni Thomasは、Heritage Foundationに勤め、総額$686,000を受け取っていた。しかし、Thomas判事は申告していなかった。

    • 2008、2009年も同様に、Thomas判事は申告していなかった。

    • その後、Thomas判事は申告を修正した。

  3. 不動産売却の不申告
  4. 2017年と2018年、Kansas州とGeorgia州の大学で授業をしたが、交通費、食事代、宿泊費を受け取っていたことを申告しなかった。後日、指摘されて修整。

こうしてみると、妻Ginni Thomas絡み、Harlan Crow氏絡みが怪しく見えてくる。

※ 参考テーマ「司 法

4月14日(1) 連邦政府もテレワーク縮小
Source :The Biden Administration Tells Agencies to Scale Back Telework (Government Executive)
4月13日、Office of Management and Budget(OMB)は、4月10日のCOVID-19の国家緊急事態宣言の終結宣言(White House, H.J.Res. 7)に伴い、連邦政府・機関に対して職員のテレワークの規模を縮小するよう要請した。

上記sourceによれば、SSAIRSのカスタマーサービスの劣化が批判されているそうだ。

ところが、連邦政府職員の労働組合は、事前に知らされていなかったらしく、「プロ労組を謳っている大統領のもとで、OMBは何も相談しなかった」と、相当に怒っている(「Topics2021年5月30日 労組支援TFの影響範囲」参照)。

※ 参考テーマ「Flexible Work」、「人事政策/労働法制」、「労働組合

4月14日(2) MA州週4日勤務制パイロット法案
Source :This Massachusetts lawmaker wants to create a 4-day workweek (CNBC)
4月10日、Massachusetts州(MA)議会に、"An Act relative to a four-day work week pilot program"(Bill HD.4267)が提出された。文字通り、MA州で週4日勤務制を試行するための法案である。ポイントは次の通り。
  1. 試行プログラムに参加する企業は、少なくとも15人以上の従業員を、給与を下げずに週32時間勤務に移行させる。

  2. 導入状況を定期的に報告することと引き換えに、税額控除を受け取る。

  3. 税額控除については、歳入省、労働開発省が共同で運営する。

概要は、MD州議会に提出された法案と似ている(「Topics2023年3月10日 MD州議会週4日法案取り下げ」参照)。

※ 参考テーマ「人事政策/労働法制」、「Flexible Work

4月14日(3) DACAに公的給付を
Source :Biden moves to expand DACA recipients' access to government-funded health insurance (NPR)
4月13日、バイデン大統領は、DACA(Deferred Action for Childhood Arrivals)対象者がExchangeとMedicaid救急診療の対象になるよう、受給者の定義を変更する計画であることを公表した(White House Fact Sheet)。Exchangeに加入できれば、保険料補助金を受けて安い保険料で受診できるようになるし、Medicaidであれば、もっと安価な医療が受けられる。

これが実現すれば、約60万人のDACA対象者が、初めて公的社会保障給付を受けられるようになる。画期的な出来事になることは間違いないが、いずれも各州政府が関与することになるため、レッドステーツでは訴訟が起こされることになろう。

※ 参考テーマ「移民/外国人労働者

4月13日 CPI上昇率は低下
Source :Inflation eased in March but prices are still climbing too fast to get comfortable (NPR)
4月12日、BLSは3月の消費者物価指数(CPI-U)を公表した(News Release)。前年同月比5.0%の上昇と、伸び率は着実に低下している(「Topics2023年3月15日 CPIは冷却せず」参照)。前月比では+0.1%となり、勢いはだいぶ収まってきた感じだ。
エネルギー全体の価格指数は、前年同月比で伸び率はマイナス6.4%の伸びとなった。マイナスの伸び率となったんは、2021年1月以来である。
食料品価格の伸び率は前年同月比8.5%増と、水準は低下してきたものの、依然として高い伸び率となっている。
なお、卵の価格は、足許(前月比)の低下が続いている。
エネルギー、食料品を除くCPI上昇率は前年同月比5.6%と、同じ水準の伸び率が続いている。
住居費は前年比8.2%増と、上昇率の高まりが止まらない。
3月の実質時給は、前月比0.2%、前年同月比で-0.7%となった(Real Earnings News Release)。
ただし、サービス業の価格上昇率は高い水準を続けている。
※ 参考テーマ「労働市場

4月12日 Medicare入院診療報酬
Source :CMS proposes 2.8% hospital inpatient reimbursement hike (Modern Healthcare)
4月10日、CMSは、2024年のMedicare入院診療報酬体系(hospital inpatient prospective payment system)の改訂案を公表した。2024年は、総体で2.8%の増加ということだ(CMS Fact Sheet)。

これに対して、全米病院協会(American Hospital Association)などの医療機関団体は、猛反発している(AHA Press Release)。

CMSとしては、可能な限り、Medicare基金の枯渇を先延ばししたいと考えているので、こうした提案になることは仕方あるまい(「Topics2023年4月3日(1) 年金/Medicareの余命は10年」参照)。これに対して、Medicare診療を提供する医療機関がどのような対応になるのかが注目される。

※ 参考テーマ「Medicare

4月11日 最高裁判事の倫理規定
Sources : hy it's unlikely ethics rules on Supreme Court gift disclosures will work (NPR)
Senate panel will hold a hearing on the Supreme Court's ethical standards (NPR)
先に、連邦最高裁判事への饗応が行なわれていたことを紹介した(「Topics2023年4月7日 最高裁判事に饗応」参照)。その後に判明した事実を追記しておく。
  1. 豪華な旅行への招待は、20年以上にわたって行なわれていた。

  2. 3月14日、連邦最高裁は、判事が受領したギフトに関する開示ルールに、"personal hospitality"も対象にすることを決め、施行した(Reuters)。
もともと、連邦最高裁判事は、"Ethics in Government Act of 1978"に従って、受領した"gifts"について開示することが求められている。さらに、2022年5月には"Courthouse Ethics and Transparency Act(S.3059)"に基づき、株式の売買に関する開示も求められることになった。

そして、2023年3月14日に定めた内部規定では、"gift"に加えて"personal hospitality"も開示対象に加えることとなった。しかしながら、そこにも多くの例外があるそうだ。

これに対して怒りを露わにしているが、連邦議会のDick Durbin上院議員(D-IL)だ。上院のJudiciary Committeeの委員長を務めている。Judiciary Committeeは、11年前に、連邦最高裁Roberts長官に対して、「連邦最高裁判事も"Judicial Conference's Code of Conduct for United States Judges"に従うべき」と求めたが、Roberts長官はこれを拒否した。

Durbin上院議員は、3/14の改訂は前進ではあるが更なる行動が必要だとして、「裁判所自身が問題を解決できないのであれば、委員会で解決するための法律を検討するしかない」と述べている。その手始めとして、聴聞会を開催することを検討している。

これは憶測だが、連邦最高裁内部で"personal hospitality"の問題が表面化することを見越して、つまりは隠しきれないことが判明したので、3/14の規定改訂をひっそりと行ったのではないか。Durbin議員もそれを感じとっているのではないか。

こうした一連の流れについて、Northwestern UniversityのSteven Lubet教授は、連邦最高裁判事が現状より厳しい開示ルールに従うかどうかは疑問だ、と述べている。その理由は、次の3点。
  1. 法執行の強制力がない
  2. 最高裁判事の任期は終身
  3. 3/14以前の規定によっても本来Thomas判事は申告すべきものはあったのに、申告していない。
昨年は、判決文素案が流出するというスキャンダルもあった(「Topics2022年5月11日(1) 最高裁の審理過程」参照)。連邦最高裁に対するアメリカ国民の目は厳しくなっている。

※ 参考テーマ「司 法