4月28日(1) サービス消費は堅調
Source :The U.S. economy is losing steam. Bank woes and other hurdles are to blame. (NPR)
2023年第1四半期の成長率は、年率1.1%となった(BEA News Release)。このため、上記sourceヘッドラインのように、景気熱が失われつつある、という評価となった。
ところが、支出項目の寄与度を見ると、マイナスに引っ張っているのは、在庫と住宅投資である。
一方、個人消費は堅調に伸びている。前期比年率で3.7%と、むしろ強い伸びなっている。耐久財は同16.9%、非耐久財は0.9%、サービスは2.3%である。
「サービス需要が堅調→サービスの求人増加→サービス価格上昇」という連鎖が想像できる。次のFOMCは、5/2~3である(FOMC Meeting calendars, statements, and minutes)。

※ 参考テーマ「労働市場

4月28日(2) 歳出削減法案下院可決
Sources : House Republicans overcome internal divisions to pass debt ceiling bill (NPR)
House GOP Passes Debt Ceiling Bill That Puts Tens of Thousands of Federal Jobs At Risk (Government Executive)
4月26日、連邦議会下院は、"Limit, Save and Grow Act of 2023 (H.B.2811)"を可決した。217 vs 215の僅差であった(Roll Call 199)。法案内容のうち、当websiteの関心事項は、次の通り。
  1. 連邦政府の借入権を$1.5B増加。

  2. 連邦政府の裁量支出水準を2年前(2022年)に戻す。

  3. 今後の支出額を年1%増に抑える。

  4. 学生ローン債務免除策を廃止する。(「Topics2023年3月2日(1) 学生ローン免除:最高裁審議開始」参照)

  5. 扶養者のいない成人が連邦政府の福祉プログラムから受給するためには、就労義務が課される。その年齢上限を50歳から56歳に引き上げる。

  6. 公的年金、Medicareには、変更を加えない。
この法案が成立した場合、2023~2033年の10年間で、総額$4.8Tの歳出削減効果を持つ(CBO Estimate)。

ただし、本法案は、上院で審議が進む見込みはなく、バイデン大統領も拒否権発動を示唆している(Statement)。

※ 参考テーマ「政治/外交

4月28日(3) 就業義務規定の歳出削減効果
Source :Questions and Answers About Work Requirements Provisions in the House Republican Debt Limit Proposal (American Enterprise Institute)
4月26日に連邦議会下院で可決された"Limit, Save and Grow Act of 2023 (H.B.2811)"では、"Work Requirement (WR)"(就業義務規定)が一つのキーワードになっている(「Topics2023年4月28日(2) 歳出削減法案下院可決」参照)。当websiteでは、州のMedicaid給付条件として、よく出て来ていた。

上記sourceは、社会保障プログラムにおけるWRについて、解説している。
  1. 一般的にWRとは、成人が社会保障プログラムから受給する際には、働いていることを条件とするもの。

  2. ここでいう就労とは、雇用されているだけではなく、求職活動、訓練など、雇用に結びつく活動を広く含めている。

  3. いくつかの社会保障プログラムには、既にWRは盛り込まれている。
  4. 歳出削減法案では、3つの手法でWRを強化しようとしている。
    1. 対象年齢を引き上げるなど、対象者の拡大
    2. 就労の範囲に、"community engagement requirements"を含める
    3. TANFのWRを強化する

  5. 世論調査結果では、このWRを支持する割合が高い。
と説明しているのだが、州レベルのMedicaidのWRは、ほぼ実現不可能となっている(「Topics2021年12月26日 就業義務規定に終止符」参照)。だから、共和党は、歳出削減手段として、連邦レベルでWRを強化しようとしているのである。

同法案のMedicaidに関する政策効果について、CBOが分析して公表している(CBO’s Estimate of the Budgetary Effects of Medicaid Work Requirements Under H.R. 2811, the Limit, Save, Grow Act of 2023)。
  1. 約150万人がMedicaid加入資格を失う。

  2. これに伴い連邦支出は、2023~2033年の10年間で、$109B減少する。

  3. 一方、州政府の側で、資格喪失者の60%を州政府支出により加入者資格を維持すると想定すると、州政府の支出は増加する。

  4. 無保険者は増加する。

  5. 雇用者数、勤労時間については、ほとんど影響はない。
こんな政策効果でも無理やり押し通しますか、という問いが聞こえてきそうである。

※ 参考テーマ「無保険者対策/州レベル全般

4月27日(1) Prop.22再びCA州最高裁へ
Source :California Supreme Court asked to step into Prop. 22 fight after union loss to Uber, Lyft (Yahoo News)
4月21日、Service Employees International Union (SEIU) Californiaほかは、CA州最高裁に対して、3月にCA州控訴裁が下した『Prop.22は州法たり得る』との判決を再審理するよう、上告した(「Topics2023年3月14日(1) CA州Uber勝訴」参照)。

しかし、その際にもコメントした通り、CA州最高裁は、一度、Prep.22を支持する判決を下しており、今回も控訴審判決を支持する可能性が高い(「Topics2021年2月9日 Prop.22訴訟棄却」参照)。

※ 参考テーマ「人事政策/労働法制

4月27日(2) 最高裁長官召還拒否
Source :Chief Justice Roberts declines to testify before Senate panel (NPR)
4月25日、John Roberts連邦最高裁長官は、連邦議会上院Judiciary Committeeの召還を拒否した(「Topics2023年4月11日 最高裁判事の倫理規定」参照)。その理由は次の通り。
"Testimony before the Senate Judiciary Committee by the Chief Justice of the United States is exceedingly rare, as one might expect in light of the separation of powers concerns and the importance of preserving judicial independence," Roberts wrote in his response to the invitation.
併せて、連邦最高裁判事の倫理規定と、それを遵守するとの判事の決意が添えられていたそうだ。しかし、それらが信頼に足らないからこそ、上院委員会が召還したのだろう(「Topics2023年4月17日(2) Thomas判事への疑惑」参照)。しばらくは泥沼のやり取りが続きそうである。

※ 参考テーマ「司 法

4月27日(3) Disney社が訴訟
Source :Disney sues Florida Gov. Ron DeSantis, claiming 'government retaliation' (NPR)
4月26日、Disney社は、Fl州Ron DeSantis知事その他州政府首脳に対して、訴訟を起こした。2月に成立したDisney特区廃止法は、 という主張である(「Topics2023年3月1日(2) Disney特区廃止法案成立」参照)。これまた泥沼の法廷戦が長く続きそうである。

※ 参考テーマ「LGBTQ」、「人事政策/労働法制

4月27日(4) PBM狙い撃ち法案
Source :PBMs targeted in bipartisan Senate bill (Modern Healthcare)
4月25日、上院に"Pharmacy Benefit Manager Reform Act of 2023"が超党派で提出された(Senator Bernie Sanders)。同法案のポイントは次の通り。
  1. "spread pricing"の禁止

  2. 製薬会社から受け取ったリベートを全額消費者に還元する。

  3. 薬価の開示
上院では、別の超党派PBM関連法案も検討されている。

薬価抑制のために、Pharmacy Benefit Management(PBM)の収益を狙った法案が注目されている(「Topics2022年6月8日 PBM寡占化」参照)。

話は逸れるが、上記のspread pricingなんて、寡占市場だからできるのである。管理人にとっては、昔の長信銀債を連想させる。

※ 参考テーマ「医薬品

4月27日(5) 高校卒業生の進路
Source :COLLEGE ENROLLMENT AND WORK ACTIVITY OF RECENT HIGH SCHOOL AND COLLEGE GRADUATES - 2022 (BLS)
上記sourceは、2022年10月時点での高校、大学卒業生の進学状況、就職状況を調査したものである。少し読み解くのが難しいのだが、トライしてみよう(上記sourceのTable.1参照)。
  1. 2022年の高校卒業生(16~24歳)
    1. 大学進学率:62.0%(=1853/2987)
      うち、4年制大学進学率:45.1%(=1348/2987)、2年制大学進学率:16.9%(=504/2987)

    2. 労働市場参加率:45.8%(=1367/2987)

    3. 雇用率:38.8%(=1159/2987)

    4. 失業率:15.2%(=208/1367)

  2. 大学生の労働状況
    1. 労働市場参加率:31.4%(=582/1853)

    2. 4年制大学:27.8%(=375/1348)

    3. 2年制大学:41.1%(=207/504)
大学生と言えども3割以上、2年制では4割以上が働こうとしている。

※ 参考テーマ「教 育」、「労働市場

4月25日 Amazon派遣社員の労組
Source :Amazon delivery firm allows its drivers to unionize with the Teamsters (Washington Post)
4月24日、Teamstersは、「Amazonのドライバー達がTeamstersに参加することで合意した」と発表した(Press Release)。Amazonの労働者が新しい形で労働組合の結成に動いているのか、と思ってしまった。

ところが、上記sourceを読むと、Teamstersと協力して労組を結成しようとしているのは、Battle Tested Strategies社の従業員達で、彼らはアマゾンの配送センターや配送車で、アマゾンのユニフォームを着て働く派遣社員なのである。Battle Tested Strategies社は、この従業員達の動きを容認しているだけなのである。

これでは、Amazon従業員の労組結成とはならない。もしも今のTeamstersによる労組結成が成功しても、それはBattle Tested Strategies社の従業員による労組結成であり、AmazonがBattle Tested Strategies社との派遣契約を止めてしまえば、それまでである。

実際、Amazon社の広報担当者は、 と述べている。

なお、配送業最大のUPSの従業員は、Teamstersにより労働組合を結成しているそうだ。

※ 参考テーマ「労働組合

4月21日 給与歴調査禁止法の普及状況
Sources : Salary history bans (HR Dive)
Salary History Bans by State (AccuSourceHR)
久し振りに給与歴調査禁止法の州別普及状況を確認した(「Topics2019年12月22日 NJ州:給与歴調査禁止法施行」参照)。

HR Dive - April 20, 2023

AccuSourceHR
HR Diveの方が、調査時点が新しいということだろう。

※ 参考テーマ「人事政策/労働法制