2月10日 難民申請者の送還停止
Source :Biden Moves To End Trump-Era Asylum Agreements With Central American Countries (NPR)
2月6日、国務省(U.S. Department of State)は、中米3ヵ国との間で結んでいた"Asylum Cooperative Agreements"を即時執行停止するとともに、廃止に向けた手続きを開始すると発表した(Press Release)。

中米3ヵ国との協約のポイントは次の通り。
  1. トランプ大統領の移民政策変更に基づいて結ばれた(「Topics2019年5月17日 移民政策大統領提案骨子」参照)。

  2. 対象国は、El Salvador、Guatemala、Honduras。

  3. この協約の下で、アメリカ合衆国は難民申請を求めてきた不法入国者を本国に創刊することができるようになった。
いずれも2019年に署名されているが、Guatemalaへの送還は、2020年3月以降、パンデミックを理由に停止されている。ほか2ヵ国との間では、送還は開始されていなかった。

バイデン政権は、2月3日の大統領令に基づき、3ヵ国とは協力的、互恵的な関係を再構築したいとしている(「Topics2020年2月3日 移民政策の見直し方策」参照)。

※ 参考テーマ「移民/外国人労働者

2月9日 Prop.22訴訟棄却
Source :California Supreme Court throws out challenge to Prop. 22 (Los Angeles Times)
2月3日、CA州最高裁は、Prop.22に関する訴訟の上告を棄却した。Prop.22の内容は既に紹介した(「Topics2020年11月5日 CA州:Prop.22可決」参照)。

今回の訴訟は、一部のUber/LyftドライバーとSEIUが起こしたもの。「Prop.22の内容は、選挙で選ばれた州知事、州議会の権限を制限するものであり、CA州憲法に違反している」との主張である。州最高裁は、この訴訟に関する審理を行わないとの決定をしたのだ。

これでProp.22の法制化は一歩前進した形だが、SEIUやSan Francisco、Los Angeles、San Diego各市は諦めておらず、今後も別の訴訟を準備しているという。

CA州のギグワーカーを巡る闘いは、今後も続きそうだ。

※ 参考テーマ「人事政策/労働法制

2月8日 最低賃金引上げは一時お預け
Sources : Senate Says No To $15 Minimum Wage For Now, But Democrats Vow To Push On (NPR)
Biden Doesn't Think $15 Federal Minimum Wage Hike Will Survive COVID-19 Relief Bill (NPR)
2月4日、連邦議会上院は、COVID-19感染拡大に対する救済策を検討する中で、「世界的なパンデミックの間は、連邦最低賃金を引き上げない」との決議を賛成多数で可決した。連邦最低賃金引き上げによる雇用減少懸念が大きいことが影響している(「Topics2021年1月28日 最低賃金引上げ法案2021」参照)。

バイデン大統領も、今は連邦最低賃金を引き上げることはできないだろう、と語った。

一方、ペロシ連邦議会下院議長は、コロナ救済策がどのような内容になろうと、民主党は連邦最低賃金引き上げを諦めない、と発言した。

やはり、連邦賃金引き上げは一時お預けになったようだ。

※ 参考テーマ「最低賃金

2月6日 雇用者数微増
Source :U.S. Adds Just 49,000 Jobs In January, 'Not Anywhere Close' To Recovering Those Lost (NPR)
2021年1月の雇用統計が公表された。
  1. 雇用者数は4.9万人の増加となった。しかし、2020年12月の22.7万人減少(下方修正)の1/4にも満たない(「Topics2021年1月9日 雇用減に転落」参照)。
  2. 専門職、金融で雇用増になっている一方、バー、レストランの雇用減が続いている。

  3. 2020年3~4月に失われた雇用が2,200万人。その後に回復した雇用数は、その55%に相当。コロナ感染症拡大以前に較べ、依然として1,000万人の雇用が失われている。

  4. CBO推計によれば、コロナ感染症拡大以前の雇用数に回復するのは2024年とされている。
    "Labor market conditions continue to improve. As the economy expands, many people rejoin the civilian labor force who had left it during the pandemic, restoring it to its prepandemic size in 2022.1 The unemployment rate gradually declines throughout the period, and the number of people employed returns to its prepandemic level in 2024."
  5. 失業率は6.3%に低下した(2020年12月は6.7%で変わらず)。
※ 参考テーマ「労働市場

2月5日 新規失業3週連続減
Source :Jobless claims better than expected last week and lowest in two months (CNBC)
2月4日、労働省は新規失業保険申請数を公表した。今週は77.9万人、前週から3.3万人の減少となった(「Topics2021年1月29日(2) 新規失業一進一退」参照)。少しずつではあるが、3週連続の減少となっている。46週間で累計7,718万人となった(新規失業保険申請件数data)。

雇用保険被保険者の中の失業者数は459.2万人と、こちらも19.3万人の減少となった。
また、COVID-19対策で導入された追加失業給付(「Topics2020年3月30日 2兆ドル対策(COVID-19)」参照)の新規申請数は、
5/30: 79.9万人
6/ 6: 70.0万人
6/13: 77.4万人
6/20: 88.1万人
6/27: 99.7万人
7/ 4:104.6万人
7/11: 95.5万人
7/18: 96.0万人
7/25: 90.9万人
8/ 1: 65.6万人
8/ 8: 49.0万人
8/15: 52.5万人
8/22: 60.8万人
8/29: 75.1万人
9/ 5: 86.8万人
9/12: 67.5万人
9/19: 61.6万人
9/26: 50.8万人
10/3: 37.9万人
10/10:33.7万人
10/17:34.5万人
10/24:35.9万人
10/31:36.2万人
11/7: 29.6万人
11/14:32.0万人
11/21:31.9万人
11/28:28.8万人
12/5 :41.5万人
12/12:45.4万人
12/19:39.7万人
12/26:30.8万人
1/ 2 :16.1万人
1/ 9 :28.5万人
1/16 :42.4万人
1/23 :42.7万人
1/30 :34.9万人
と、こちらも減少に転じた。

一方、COVID-19感染状況を見ると、バイデン効果なのか、波が収まりつつあるように見える。

Johns Hopkins University Health
また、感染リスクがグリーンのレベルまで改善した地域が出てきた。

Brown School of Public Health
※ 参考テーマ「労働市場

2月3日 移民政策の見直し方策
Sources : Here Are The Immigration Actions President Biden Plans To Sign (NPR)
FACT SHEET: President Biden Outlines Steps to Reform Our Immigration System by Keeping Families Together, Addressing the Root Causes of Irregular Migration, and Streamlining the Legal Immigration System (The White House)
2月2日、バイデン大統領は、移民政策の具体的な見直し方策について、3本の大統領令を発出した。
  1. Executive Order on the Establishment of Interagency Task Force on the Reunification of Families

    アメリカへの不法入国後拘束され、親たちは国外退去、子供たちはアメリカ国内で保護されたというように、別れ別れになった家族が5,500以上あるといわれている。バイデン大統領は、タスクフォースを設立し、このような家族が一緒になれる方策を検討するよう指示した。タスクフォースは、まず120日後に進捗状況を報告し、その後、60日ごとに報告する。

  2. Executive Order on Creating a Comprehensive Regional Framework to Address the Causes of Migration, to Manage Migration Throughout North and Central America, and to Provide Safe and Orderly Processing of Asylum Seekers at the United States Border

    難民保護政策を立て直す。特に、Migrant Protection Protocols (MPP)("Remain in Mexico")をどのように見直すかを検討する(「Topics2021年2月2日 移民政策の司法審理」参照)。

  3. Executive Order on Restoring Faith in Our Legal Immigration Systems and Strengthening Integration and Inclusion Efforts for New Americans

    移民政策を全面的に点検し、見直す。特に、入国後に社会保障給付を必要とする可能性のある者には在留資格を与えないようにする制度(Public Charge)の見直しに重点を置く(「Topics2019年8月20日 移民審査規定強化」「Topics2019年10月6日 移民申請要件に医療保険」参照)。
こうした大統領令発出の準備がされていたため、昨日のような連邦最高裁への申し入れとなったのだろう(「Topics2021年2月2日 移民政策の司法審理」参照)。

ところで、The White HouseのHPでは、まず冒頭のsourceに示した"FACT SHEET"が掲載され、随分と後になってからこの3本のExecutive Ordersが掲載された。プレスにとっては、先にブリーフィングが届いたような形になる。マスメディアに優しい大統領府広報のようだ。

※ 参考テーマ「移民/外国人労働者

2月2日 移民政策の司法審理
Source :Biden Administration Asks Supreme Court To Delay Considering 2 Key Trump Policies (NPR)
2月1日、連邦最高裁に対して、バイデン政権は意見陳述の日程延期を申し入れた。係争案件は次の2つ。
  1. トランプ前大統領が、連邦議会が否認した国境の壁の建設を、防衛省の予算を転用して建設しようとしたことの是非。

  2. Migrant Protection Protocols (MPP)("Remain in Mexico")の是非
いずれも、バイデン政権が全面見直す方針を既に発表している政策である(「Topics2021年1月21日 バイデン Day 1st」「Topics2021年1月23日 移民政策執行制度の見直し」参照)。バイデン政権としての基本スタンスを確立したうえで審理の場に臨みたいということのようだ。

新政権としてはもっともな意見だが、ここで意見陳述をはじめとした審理スケジュールを遅らせていけば、司法の場での判断はできなくなってしまう。そのあたりを最高裁判事達がどのように見定めるのだろうか。

※ 参考テーマ「移民/外国人労働者」、「司 法