Source : | Raising the Age of Medicare Eligibility : A Fresh Look Following Implementation of Health Reform (Kaiser Family Foundation) |
連邦政府の財政赤字削減策の一つとして、Medicare支出の抑制がある。その具体的な手法として考えられるのが、Medicare加入年齢の引き上げである。
上記sourceでは、大胆な前提を置いたうえで、Medicare加入年齢の引き上げの政策効果について推計している。
まず、試算のための大きな前提は次の通り。主な結果は次の通り。
- Medicare加入年齢を、2014年に(65歳から)67歳に引き上げる。
- 同時に、医療保険改革法を一気に施行する。
単純に2歳引き上げるだけでも、各方面に相当の影響が及ぶものとみられる。
- 2014年の連邦政府支出は、ネットで$7.6B削減される。
支出項目 支出額 Medicare連邦支出 ▲$31.1B Medicaid連邦支出 $8.9B Exchage連邦補助 $7.5B Medicare保険料(収入減) $7.0B ネット ▲$7.6B - 65、66歳の国民のうち、平年ペースで約500万人が影響を受ける。それらの人々の保険プランは次のようになると推計される。
- 65、66歳の国民のうち、自己負担額が増える割合は約4分の3。
- Exchangeにおける65歳未満の加入者の保険料は、平均3%上昇する。
- Medicare Part Bの保険料も、平均3%上昇する。
- 2014年における企業負担は$4.5B増、州政府負担は$0.7B増となる。
※ 参考テーマ「Medicare」
Source : | Companies Accelerate Spending as U.S. Productivity Bypasses Jobs (Businessweek) |
アメリカ経済は消費の伸びと企業の投資増に支えられて回復しつつある。もちろん、公的部門における支出抑制はこれから本格化するのだが。
そうしたアメリカ経済全体の回復に較べ、雇用が思うほどの勢いをもって回復していない。企業は合理化投資を盛んに行い、生産性を高めることに集中しており、雇用増までは視野に入っていないそうである。
このように、経済の回復が雇用増に結び付かない原因の一つとして、医療保険改革の施行が挙げられている。現在、アメリカ企業の経営者は、医療保険改革法がどのような影響をもたらすのかを見極めようとしており、そうした環境の中で雇用を思いっ切り増やしていく訳にはいかない、というのである。
企業経営に与える影響が判明してくるためには、施行に伴う細かな規則が定まる必要があり、それにはまだまだ時間がかかると思われる。視界が晴れない中で、雇用環境の改善も遠くなりつつあるようだ。
※ 参考テーマ「労働市場」、「無保険者対策/連邦レベル」
Source : | How Can California Exchange Minimize 'Churning'? (California Healthline) |
CA州は、一度"Exchange"で失敗し(「Topics2011年2月28日 "Exchange"失敗の教訓」参照)、2000年代後半には皆保険制度の導入に失敗している。従って、今回の連邦政府主導の医療保険改革法の施行に伴う問題点にも敏感である。
上記sourceでは、保険プランをしょっちゅう変更していると、質の高い医療を継続できないという"Churning"問題があると指摘している。今回の医療保険改革法では、低所得者層向けに、という二つの施策が用意されている。しかし、低所得者層は、毎年の所得が変更になるたびに、Medicaidへの出入りを繰り返すことになり、結果として"Churning"問題を抱えることになりやすいという。
- Medicaid加入資格の拡大
- Exchnageの創設
そこで、この"Churning"問題を開始するための手法ついて、専門家の意見を聞いている。簡単にまとめると、次のような方策が考えられている。※ 参考テーマ「無保険者対策/CA州」
- "Basic Health Plan"を活用する。これにMedi-Calのマネージド・ケア・プランが加われば、医療機関を変更することなく制度間を移動することが可能となる。
"Basic health plan"
(PPACA) Permit states the option to create a Basic Health Plan for uninsured individuals with incomes between 133-200% FPL who would otherwise be eligible to receive premium subsidies in the Exchange. States opting to provide this coverage will contract with one or more standard plans to provide at least the essential health benefits and must ensure that eligible individuals do not pay more in premiums than they would have paid in the Exchange and that the cost-sharing requirements do not exceed those of the platinum plan for enrollees with income less than 150% FPL or the gold plan for all other enrollees. States will receive 95% of the funds that would have been paid as federal premium and cost-sharing subsidies for eligible individuals to establish the Basic Health Plan. Individuals with incomes between 133-200% FPL in states creating Basic Health Plans will not be eligible for subsidies in the Exchanges.
from Summary of New Health Reform Law - Kaiser Family Foundation- Medicaidの加入期間を最低12ヵ月間とする。これにより、少なくとも1年間は確実に医療サービスを継続できる。
- "Exchange"の加入資格を単純化し、州内で統一する。
Source : | States Weigh Reductions in Benefits For Unemployed; Rising Costs Cited (The Washington Post) |
いよいよ州政府による失業保険の見直しが本格化し始めた。深刻な失業保険財政、州財政がその背景にある(「Topics2010年11月14日 失業保険も財政危機」参照)。これらの他にも、連邦政府からの借入金の大きさから見れば、
- Michigan州
失業給付期間の上限を20週に引き下げる(通常26週)。州知事も当該法案に署名する旨言明。
- Florida州
失業率の低下に連動させて、失業給付期間を最低12週間(失業率5%未満の場合)に引き下げる。今年8月1日から施行。(New York Times) (下線部は4月2日に追記)
- Arkansas州
失業給付額を凍結すると同時に、給付期間を25週に引き下げることを検討中。などが失業保険プランで多額の借金を抱えているし、
- California州
- New York州
- Pennsylvania州
- Illinois州
なども危険水域に達しているとみられている(Los Angeles Times)。
- Indiana州
- Louisiana州
- Massachusetts州
- Rhode Island州
失業率が依然として高い水準にあり、しかも長期化している中で、失業給付の削減は社会問題になりかねない。他方、失業保険料率を上げればビジネスにとっては労働コストの上昇につながり、雇用の維持・創出に逆行しかねない。州政府はここでも厳しい立場に追い込まれている。
※ 参考テーマ「解雇事情/失業対策」
Source : | New York City vs. New York State, the Pension Battle (New York Times) |
NY市とNY州との間で、NY市職員の年金プランを巡って主導権争いが行われている。
1970年台の財政危機の際、NY市の財政管理はNY州が管理していた。それ以降、NY市年金プランは、NY州の議会、州知事が管理している。丁度、PA州とPittsburgh市の間に起こりそうであった関係が生まれた。
それ以降、年金プランの制度変更は、NY市長と市職員労組との間で交渉が行われ、最終的には州議会が承認し、労組に有利な項目を付け加えるということが繰り返された。その結果、NY市年金プランは次のように膨れ上がっている。この間、州議会が市職員組合に提供してきた有利な変更として、上記sourceは次のようの事例を紹介している。
- NY市の拠出金額は、2001年の$1.5Bから2012年には$8.4Bまで増える。
- 年金給付額は、2002年の$6.6Bから2011年には$11Bまで増える。
こうしたコスト増要因を受け、年金給付額がどんどん膨らみ続けたため、NY市としてはもう耐えられないということになってきた。NY市長は、運営権限を取り戻したとしても、これまで受給権を付与してしまった分については州憲法の制約から変更はできないものの、
- COLAの割り増し(選挙のあった2000年)。これにより、給付額は年間$696Mも増加。
- 非制服組の市職員(例えば教員)が負担する保険料を、勤続11年目から免除(同じく2000年)。これにより、給付額は年間$406M増加。
- 警官、消防士などについては、年金額計算の基礎となる給与を最終年のみとする(同じく2000年)。それまでは最終3年間の平均であった(「Topics2010年11月1日 8つの事実:NY州年金プラン」参照)。同時に、職員の保険料を5%から2.5%に引き下げる。
- 自動的に勤務によって深刻な障害が発生したと見做す("heart bills")。これにより、市職員の年金額の所得代替率は、約50%から75%に引き上げられた。
といった抑制策を講じると公言している。
- 新規採用職員から、受給権付与を勤続5年から10年に引き上げる
- 受給開始年齢を、現行の55〜57歳から65歳以降に引き上げる
- 年金額計算の基礎となる給与を最終3年間の平均に戻すとともに、所定外賃金は含めない
- 制服組の年金プランを新規のプランに変更する
- 今後の退職者については、"heart bills"規定を適用しない
州議会議員達は、州財政をいためずにNY市職員労組に恩恵を与え続けてきた。財政規律の回復のためにも、NY州からNY市への権限変換が必要であろう。
※ 参考テーマ「地方政府年金」
Source : | Public Employees Rush to Retire (The Wall Street Journal) |
先日、『地方公務員にとっては、まさに八方塞がりの状況になりつつある。』と書いた(「Topics2011年3月24日(2) 州から地方自治体への圧力」参照)。それで、彼らは退職を急いでいるという訳だ。
中でもWI州では、前年の同期に較べ、退職申請者数は73%も増加しており、退職申請の最初のステップである「年金額の照会件数」も134%増となっている。同州の労働組合の交渉権を制約する法律は、公務員に大きな危機感を抱かせたようである。
そうした中高年職員の早期退職が進めば、労働コストは抑制され、レイオフの規模を縮小できるというメリットもあるが、サービスの質の低下とともに、退職者の年金、医療といったコストが実現してしまうというデメリットも大きい。特に、年金については、縮減前のレベルで裁定されてしまうため、その影響は確実に自治体財政に効いてくる。
※ 参考テーマ「地方政府年金」、「労働組合」
Source : | Proposed Rule Outlines State Waiver Process Under Health Reform (CCH) |
Obama大統領は、医療保険改革法(PPACA)の施行に際して、州政府の独自性を認める旨を公言していた(「Topics2011年3月1日 州知事に歩み寄り?」参照)。これに基づき、3月14日、財務省とHHSは、州政府が独自の運用・制度を設けるためにクリアすべき基準案を策定し、公表した。基準案に対するコメントの公募は、公表から60日間行われる。
基準案に示された主な項目は次の通り。果たして、州知事達はどのような反応を示すのだろうか。
- 州法として立法するとともに、連邦法・規制と整合性を確保する。
- PPACAと同程度の総合性("Comprehensive")を持つ。
- PPACAと同程度の購入のしやすさ("Affordable")を持つ。
- PPACAと同程度の保険加入率("Affordable")を確保する。
- 連邦政府の財政赤字を拡大させない。
- 独自制度の事後検証を行い、四半期・年毎に連邦政府に報告する。
※ 参考テーマ「無保険者対策/連邦レベル」、「無保険者対策/州レベル」
Source : | COBRA Premium Subsidy Cost U.S. Government $34 Billion (Workforce Management) |
連邦議会両院税制委員会が、COBRA保険料補助にかかった政策コストの推計を公表した。残念ながら、政策効果については触れられておらず、当websiteで既に紹介した民間の分析(上述)に依らざるを得ない。
期 間 政策コスト 当website参照 2008/9/1〜2009/12/31 (補助期間:9ヵ月) $24.7B 「Topics2009年1月19日(1) 下院民主党の景気対策−医療関係」
「Topics2009年1月24日 失業者への医療保障」
「Topics2009年1月27日(1) COBRA上院案」
「Topics2009年1月29日 COBRA両院改正案比較」
「Topics2009年2月10日 COBRA両院改正案比較(2) 」
「Topics2009年2月14日 アメリカ復興再投資法」
「Topics2009年2月17日(1) COBRA-65%補助」
2010/1/1〜2010/2/28 (補助期間:15ヵ月) $6.5B 「Topics2009年10月10日 失業対策」
「Topics2009年11月5日(2) COBRA延長法案」
2010/3/1〜2010/3/31 (補助期間:15ヵ月) $1.1B 「Topics2010年3月4日(2) COBRA補助策の延長」
2010/4/1〜2010/5/31 (補助期間:15ヵ月) $2.0B 「Topics2010年4月23日 Medicare償還額削減問題」
「Topics2010年5月23日 医療関連予算の時限爆弾」
「Topics2010年5月27日(2) 医療関連予算の時限爆弾(2)」
「Topics2010年5月29日(1) アメリカ救済法案」
「Topics2010年6月12日(1) COBRA補助継続案」
「Topics2010年6月15日 救済法案の中身は?」
「Topics2010年6月22日 Pelosi下院議長の怒り」
「Topics2010年6月25日(1) 再び可決されず - アメリカ救済法案」
「Topics2010年7月2日 アメリカ救済法案不成立の影響」
「Topics2010年7月22日(2) 失業給付延長法案前進(2)」
「Topics2010年7月24日(2) アメリカ救済法案成立」
総 額 $34.3B 「Topics2010年8月22日 COBRA補助終了」
「Topics2010年10月17日 COBRA保険料補助の政策効果」
※ 参考テーマ「解雇事情/失業対策」
Source : | States Pass Budget Pain to Cities as Cutbacks in Services Cascade (New York Times) |
いよいよ州政府の財政赤字削減圧力が高まり、その矛先が地方自治体に直接向かっている。州政府は、次年度予算案作成の中で、地方自治体への直接・間接支援を大幅削減する方向性を明確にしつつある。
これが実現すると、地方自治体は、固定資産税の増税か、住民サービスのカット、さらには職員のレイオフの選択を迫られる。住宅の差し押さえが相次ぎ、住宅価格が長期低迷状態にある中で、ただでさえ固定資産税の負担感は高く、固定資産税の引き上げを言い出せる自治体は少ないとみられる。地方公務員にとっては、まさに八方塞がりの状況になりつつある。
公的部門のバランスシート調整が本格化してきたようである。
※ 参考テーマ「地方政府年金」、「労働市場」
Source : | Some Firms Find That In-House Clinics Are Just What the Doctor Ordered (Workforce Management) |
医療保険改革法(PPACA)の施行が視野に入りつつある中、事業所内診療所への注目が高まっているという。もともと事業所内診療所は、従業員の健康管理を目的に設立され、といったメリットが言われていた。
- 健康管理、予防診療に役立つ
- 病気の重篤化防止、慢性病の治療に効果的
- 従業員の通院コスト・時間を節約できる
それがなぜ今の時期に注目されてきたのかというと、という理屈である。
- PPACAにより、保険加入者が3,000〜4,000万人増加する。
- ただでさえ医療提供体制がひっ迫しているところに、それだけの大量の保険加入者が入ってくれば、必要な治療を受けにくい、医療費がさらに高騰することが見込まれる。
- 事業所内診療所で初期治療を正しく行えば、医療費を節約でき、通院時間も充分確保できる。
- こうした効果により、最終的な企業負担も抑制できる。
従業員500人以上企業の34%が事業所内診療所を持っているというが、持てる企業の従業員の恩恵は確かに高まる。しかし、それ以外の国民の医療サービス、医療費負担はどうなるのだろうか。PPACAの政策効果は充分検証されるべきであろう。
※ 参考テーマ「無保険者対策/連邦レベル」
Source : | Arizona Rejects Further Anti-Immigration Measures (New York Times) |
AZ州ではさらに厳しい不法移民対策法案が検討されていた(「Topics2011年2月25日 AZ州:さらに厳しい不法移民対策案」参照)。しかし、17日の州議会でいずれの法案も否決され、当面、不法移民対策の強化策は止まった形となった。
その主な理由は次の2つである。特に、後者は厳しい状況に陥っているようである。昨年4月の法案成立以降、それを理由とした大型会議のキャンセルが相次いでいるそうだ。アリゾナホテル協会の指摘によれば、それまでPhoenixの人気は上位4位内から23位まで転落したという。ホテル・観光業が傾くようでは、AZ州内の経済も厳しくなってしまう。
- 昨年4月に導入された不法移民対策法が、依然として司法の場で争われている。
- 観光業やコンベンション産業などを中心に、経済界がこれ以上の強化に反対している。
州民の間では、依然として強化策への期待も高いと言われているが、経済とのバランスをどう考えるのか、しばらくはこうした議論が続きそうである
※ 参考テーマ「移民/外国人労働者」
Source : | Wisconsin Judge Blocks Union Collective Bargaining Law (New York Times) |
WI州の州政府労組の権限を制約する法律は、州知事が既に署名し、公報を待つばかりであった(「Topics2011年3月13日(2) WI州知事署名」参照)が、18日、裁判所は公報の仮差し止めを命じた。これにより、法律の効力発行のためのプロセスが一時停止することとなる。
※ 参考テーマ「労働組合」