8月31日 住宅関連の雇用が不振 
Source :US housing woes compound labour concerns (Financial Times)
上記sourceは、住宅関連産業の展望が拓けないため、雇用全体の足を引っ張っているという記事である。主な分析結果は次の通り。
  1. 直近3ヵ月で、建設ならびに関連産業で12万人が失職した。

  2. 民間部門全体の雇用増をみると、2〜4月の3ヵ月間で月平均15.3万人であったものが、5〜7月の3ヵ月間は月平均5.1万人に減退している。

  3. 5〜7月の3ヵ月間で、建設部門の雇用は6.1万人、関連部門の雇用は5.6万人減少した。

  4. 2006年の住宅バブル崩壊により、当時660万人あった建設ならびに関連産業の雇用が、約300万人減少している。

  5. 同じ時期に製造業は200万人の雇用を失っているが、足許では、2〜4月に7.3万人、5〜7月に8.8万人の雇用増となっている。
今後の住宅市場についての見通しは、悪化こそすれ、改善する兆しは少ない。
上図を見る限り、住宅価格の水準はまだまだ高い。また、バブル期に住宅を購入して保持している層がまだたくさんいる。これは、逆から見れば、差し押さえ予備軍がまだまだたくさんいるということである。

そして、これは局地的なニュースではあるが、高級住宅街を含んでいるLos Angeles Countyで、その高級住宅の差し押さえが急増している(Los Angeles Times)。
一般的には、差し押さえ件数は、2008年第3Qにピークを迎え、その後高水準で推移している。一方、100万ドルを超えるような豪邸の差し押さえ件数は、2009年になって増え続け、今年第2Qに急増した。豪邸を保有していた資産家も、遂に首が回らなくなったというわけである。ただし、差し押さえに至った理由は、一般の持ち家と同じで、
  1. 資産管理のまずさ
  2. 失業
  3. 家屋の資産価値の下落
が挙げられている。

もちろん、こうした状況は大変だ、ということなのだが、もっと大変なのは、金融機関のバランス・シートが依然として傷み続けている、ということである。そういう状況では、金融機関からの融資が拡大することはなく、貸し出しが渋り続けることになる。そうすると、新たな投資や起業といった活動が阻害されていく。

やはり、アメリカ経済の傷みは相当大きいと覚悟しておくべきだろう。

※ 参考テーマ「労働市場

8月28日 自治体職員の負担増 
Source :States Press Workers on Health Care (Wall Street Journal)
財政赤字や給付債務の改善策として、自治体職員のベネフィットの見直しが相次いでいる。当websiteでも何度か紹介してきている。

その傾向は、上記sourceにも示されている通り。 給付債務の状況は、メディア的にはPewの調査がベースとなり始めている(「Topics2010年2月20日 1兆ドルギャップ」参照)。上記sourceでも、それをベースに各州の積立状況を示している。
そのうえで、Michigan州では、州職員給与の3%を退職者医療プランの積立のために徴収することにしたが、これに反発して訴訟が行われていることを紹介している。Kentucky州でも、給与の1%徴収を3.75%に増額したが、訴訟は起きていないという。もちろん、これまでまったく負担してこなかったMichiganと、たとえ1%とはいえ負担してきていたKentuckyとでは事情が異なる。しかし、Kentucky州は、負担率引き上げまでに18ヶ月もかけて交渉してきたという。

同じ例は、医療保険プランへの個人の加入義務制度に関するMA州と連邦政府の対応の違いにみられる(「Topics2010年1月21日(1) MA州のメッセージ」参照)。 やはり、関係者の間で時間をかけた議論をしなければ、制度変更への納得感は得られない。これは世界共通ではなかろうか。

※ 参考テーマ「GAS 45」、「地方政府年金

8月27日 広告 vs 教育 
Source :Healthcare law backers plan counteroffensive (Los Angeles Times)
医療保険改革法に対するアメリカ国民の風当たりは依然として強い。 11月の中間選挙を控え、共和党は反"Obamacare"キャンペーンを強めている。反対キャンペーンにつぎ込んだコストは、支持キャンペーンの4倍に達しているという。

民主党側は、法案が通ってしまえばこの問題は決着する、とタカをくくっていたが、ここに来て、これはやばいと思い始めたようだ。キャンペーン広告を打つのはもちろんとして、改革法の内容を理解してもらえれば支持は増えるはず、という自信もあるようである。

医療保険改革法を舞台にして、共和党は「広告」で、民主党は「教育」で戦っていくことになりそうである。

※ 参考テーマ「無保険者対策/連邦レベル」

8月26日(1) 保険料引上げ幅決定:CA州 
Source :Anthem Blue Cross allowed to move ahead with rate hikes (Los Angeles Times)
医療保険改革法審議の山場で、連邦政府を巻き込んでの大騒ぎとなったCA州Anthem Blue Crossの保険料引上げ幅について、ようやく決着がついた(「Topics2010年2月13日 CA州で保険料急騰のおそれ」参照)。

同社が当初通知した保険料引き上げ幅は30〜39%であったが、結論は、平均14%、最高で20%ということになった。確かに半分以下の引き上げ幅に収まったが、それでも二桁上昇である。

先日述べたように、CA州民の中には三重苦で苦しんでいる人達がいる。それ以外でも楽な生活を展望できている人はそれほど多くないだろう。やはり医療費そのものの抑制策が必要なのではないか。

※ 参考テーマ「無保険者対策/CA州」、「無保険者対策/連邦レベル」

8月26日(2) ブランド医薬品の高騰 
Source :AARP Says Brand-Name Drug Prices Up 8% in 2009 (New York Times)
AARPの分析によれば、ブランド医薬品の価格は高騰しているという。ジェネリックを含む医薬品全体の物価上昇率、全国の物価上昇率を大きく上回っている。
高齢者は慢性病のためにブランド医薬品を利用している場合が多く、その負担が急増している、と訴えている。ジェネリックの利用割合が増えていく中で、大きな収益源であるブランド医薬品の値上げをしたいのは、製薬会社の本音であろう。しかし、一方では、独占的な地位にあることも間違いない。この両方の側面のバランスをどうやって取っていくのか。永遠の課題であろう。

※ 参考テーマ「医薬品

8月25日 CA州民の三重苦
Source :85,000 lost health insurance in Sacramento area, UCLA study finds (Sacramento Bee)
2007年から2009年の間、つまり景気後退期に、CA州における無保険者は200万人増え、全体で800万人になったとの推計が発表された。

一方で、CA州は、全米の中でも失業率が高い方で、7月は12.3%を記録している。


やはり、失業と無保険者割合はかなりの程度リンクしているものと思われる。これに、住宅の差し押さえを加えて、CA州民は三重苦に苦しんでいる人達が増えている、というわけである。

これに較べればまだまだ大したことではないのだが、LA市職員が初めて医療保険料を負担することとなった(Bloomberg)。 こちらは、専ら州政府予算が厳しいところから来ているのだが、無保険者として職場から追い出されるよりはうんとましである。

※ 参考テーマ「無保険者対策/CA州

8月23日 保険プラン見直しの方向性 
Source :Large Employers’2011 Health Plan Design Changes (National Business Group on Health)
来年の医療保険プラン提供に向けて、企業はプラン設計の見直しを検討している。当然、医療保険改革法を踏まえたものとなる。

上記sourceは、大企業70社を対象としたアンケート調査の結果であり、みやすいグラフがたくさん載っているので、是非直接お読みいただきたい。中でも特徴的なところを3点だけピックアップしておく。
  1. 医療費負担抑制のために、CDHP導入が効果的と考える企業が多い。
  2. 保険料、窓口負担とも従業員の負担を増やす方向を検討している。
  3. 健康増進のためのインセンティブ・ペナルティが一般化している。
企業は大きくプラン内容を変更すると、適用除外措置がなくなり、新法に基づいた新たな付加義務が発生することになる(「Topics2010年6月19日 「適用除外」の要件」参照)が、それを超えても対応すべきことがたくさんあるということらしい。

※ 参考テーマ「医療保険プラン

8月22日 COBRA補助終了 
Source :More Workers Using COBRA Benefits Even without the Subsidy (Plansponsor)
Hewitt Associatesというところが、COBRAの利用状況について調査した。対象は、大手200企業である。上記sourceで示されたポイントは次の通り。
  1. 2010年6月のCOBRA加入率は21%。

  2. COBRA保険料補助が行われていた期間の平均加入率は25%。

  3. 非自発的に解雇された労働者(COBRA保険料補助対象者)に限ってみると、その加入率は38%。ピークは2009年6月の46%。補助期間最終の2010年5月の加入率は31%。

  4. (リーマンショックが起きた)2008年9月から(COBRA保険料補助が始まる直前の)2009年2月までの平均加入率は38%(Workforce Management)。
こうしてみると、COBRA保険料補助は、補助対象者の加入率を倍増させたことがわかる。かなりの効果をもっていたことは確かだが、その分、お金もかかっている。CBOの試算では、約$25Bを要している。

そうした高いコストのために、COBRA保険料補助の延長は見送られたままとなっている(「Topics2010年7月22日(2) 失業給付延長法案前進(2)」参照)(「Topics2010年7月24日(2) アメリカ救済法案成立」参照)。

これまでCOBRA保険料補助を受けて保険プランに加入していた人達の心情は複雑である。財政赤字をこれ以上拡大させない、との方針に理解を示しながらも、失業したままCOBRAに加入し続けるのは家計上厳しい。小規模グループ保険プランを探してみても、持病のために加入を認められない、といった深刻な事例も出てきている(USA Today)。

※ 参考テーマ「解雇事情/失業対策

8月21日 誰も雇わない 
Source :CEOs explain why they're not hiring despite cash, rising profit (Washington Post)
アメリカ企業は好決算を記録しているが、雇用には動いていない。最終消費が大きく伸びていくとの見通しが立たないから、というのがその最大の理由である。アメリカの消費者は、ローン返済を優先し、クレジットに頼らず、減少した所得に合わせた支出をする、という見立てだ。

そうした環境で利益を上げるために、企業は合理化・効率化投資はしていくが、新規雇用は見合わせる、という訳だ。

そして、もっと衝撃的なのが、公立学校である。Obama大統領と連邦議会民主党は、通常であれば夏休みに入っている時期も審議を急いで、教職員雇用確保法を成立させた(「Topics2010年8月11日 教職員雇用確保法案成立」参照)。同法で連邦政府は教職員のレイオフを抑制するために、$10Bを用意した。これにより、16万人の教職員の職が確保されるはずであった。

ところが、当の自治体の方は、受け取った資金を手許に置いておくという(New York Times)。今回の資金は一度限りの支給であり、今使ってしまうと、来年はもっと大規模なレイオフをしなければならなくなる、というのである。これでは、連邦議会の面子は丸つぶれである。

このように、民間も自治体も、一時的な目の前の対策では、安心して雇用を増やす気にならなくなっている。アメリカの労働市場はきわめて厳しい状況に陥ってしまった。

※ 参考テーマ「労働市場