9月28日 米国FMLPの現状
Source :Paid Family and Medical Leave in the United States (CRS)
9月25日、CRSがアメリカにおける有給休暇制度の現状を紹介するレポートを公表した。そのポイントは次の通り。
  1. 連邦レベル

    1. 現行法では、 "The Family and Medical Leave Act of 1993"があるが、無給休暇の提供を求めるものであり、有給休暇を求めるものではない。

    2. 有給休暇の提供は、企業の裁量に任されている。後述の州法規定を含めて、民間企業従業員のうち約24%が有給休暇を取ることができる(2022年3月時点)。
    3. 連邦法では、有給休暇を提供した企業に対して税制優遇を設けているが、これは2025年末に失効する。これに対応するため、連邦議会には有給休暇提供法案が提出されている(「Topics2023年5月23日(2) 連邦版FMLA提出」参照)。ただし、審議は一向に進んでいない。

    4. 国レベルで有給休暇制度がないのは、OECD諸国ではアメリカだけである。
  2. 州レベル

    1. 13州+D.C.で、企業は有給休暇提供を義務付けられている(「Topics2023年7月18日(1) ME州:FMLP2026年開始」参照)。

    2. そのうち、2023年9月時点で、8州+D.C.で施行されている。残る5州では、制度立法されたものの施行されていない。

    3. ただし、各州で提供すべきと規定されている週数は区々である。
    4. NH州は、州法で定められているものの、企業、従業員の参加は任意となっている(「Topics2022年11月16日(3) NH州PFML始動」参照)。
※ 参考テーマ「FMLA

9月27日(1) 大統領スト拠点訪問
Source :Autoworkers get a historic visitor to the picket line: President Biden (NPR)
9月26日、バイデン大統領は予告通り、UAWのストライキ拠点を訪問した(「Topics2023年9月24日(2) UAWスト拡大」参照)。現役大統領がスト拠点を訪問するのは初めてのことだそうだ。歴史的な一幕と報じられている。

ただし、The White Houseによれば、大統領は労使交渉に参加していない。また、先に表明した政府高官の派遣も止めている(「Topics2023年 9月20日 UAW次の一手」参照)。

一方のトランプ前大統領も、27日にミシガン州を訪れる。さながら、UAWを巡る大統領選挙活動になってきた。

なお、日経新聞に大統領のUAWスト拠点訪問に対する評価が掲載されていたので、リンクを張っておく。

※ 参考テーマ「労働組合」、「大統領選(2024年)

9月27日(2) 学生ローン返済再開
Source :How new borrowers can prepare for their first student loan payment (NPR)
いよいよ、10月から学生ローンの返済が再開される(「Topics2023年7月1日(2) 学生ローン返済免除案敗訴」参照)。全く初めて返済を行なう人は、約700万人にものぼるという。これが政治、経済にどのような影響をもたらすのか、注目されている。

※ 参考テーマ「教 育

9月25日 再保険料大幅増額(2)
Source :Medical Stop Loss Premium Survey (Aegis Risk LLC)
企業提供医療保険プランのうち、"Self-Insured"向けの再保険料が大幅増額しているとの証左が、改めて提示された(「Topics2023年8月18日(2) 再保険料大幅増額」参照)。

2021年から2023年の間に、ほとんどのタイプで2桁増額となった。
※ 参考テーマ「医療保険プラン

9月24日(1) CTCに就労義務規定案
Source :This Republican senator wants an expanded child tax credit ? with work requirements (NPR)
子供税額控除(Expanded Child Tax Credit, ECTC)の政策効果が議論されている(「Topics2021年9月27日 ECTCの効果」「Topics2023年9月15日(1) 貧困者割合急増」参照)。この議論の中で、共和党のMarco Rubio上院議員(FL)は、就労義務規定を設けるべきだと主張している。

上記sourceにあるインタビューの中で、Rubio議員が主張の根拠として挙げているが、次の2点のように思える。
  1. "If you turn it into just simply a transfer payment, you've absolutely gutted the tax credit concept,"

  2. "Economic policy needs to be about two things: growth and prosperity in a free enterprise economy; and the creation of good, reliable, dignified work for American workers"
Medicaidの就労義務規定と同様の議論が起きるのだろうか(「Topics2023年4月28日(3) 就業義務規定の歳出削減効果」参照)。

※ 参考テーマ「人口/結婚/家庭/生活

9月24日(2) UAWスト拡大
Source :UAW significantly ramps up strikes against GM and Stellantis ? but not Ford (NPR)
予告通り、9月22日正午、UAWはストライキを拡大した(「Topics2023年9月20日 UAW次の一手」参照)。新たな対象となったのは、GM、Stellantisの38拠点、約5,600人である。主に、販売店向けに部品を配送センターで、20州にわたる(UAW News)。

Fordは交渉が進展していることを理由に、対象とならなかった。

今回は、UAWの招待を受けて、バイデン大統領は9月26日、Michigan州のストライキ拠点を訪問する予定だ。一方、トランプ前大統領も、来週、Detroitを訪問する予定だ。

※ 参考テーマ「労働組合

9月24日(3) 企業プランコスト急増
Source :US employers to see biggest healthcare cost jump in a decade in 2024 (Reuters)
コンサルタント企業の調査結果では、2024年の企業提供医療保険プランのコストは5.4~8.5%の伸びとなる。最近10年間では最大の伸びとなる。ただし、従業員の負担増を考えている企業は少数派だ。昨今の労働市場の需給逼迫を反映してのことだろう(「Topics2023年9月3日(1) 依然サービス需要強い」参照)。
大きな伸びの背景は、診療コストの上昇に加え、体重削減効果を持つ処方薬が高額になっていることが挙げられている。
※ 参考テーマ「医療保険プラン

9月24日(4) Medicaid確認作業停止
Source :Under federal pressure, 30 states curtail Medicaid unwinding (Modern Healthcare)
9月21日、HHSは、州政府に対してMedicaidの加入資格確認を是正するよう求めたことを公表した(HHS News)。実際に是正を求めたのは8月30日であった。

州政府による加入資格確認は今年4月から始まっていた(「Topics2023年5月10日(1) PHE終結とMedicaid」参照)。これにより、9月20日までに約720万人が資格を失ったと推計されている。

ところが、州政府による自動確認作業では、本来有資格である者もはじかれてしまう事例が頻発していたため、HHSは、自動確認作業により有資格者がはじかれないことが確認できるまで、自動確認作業を停止するよう求めた。HHSによれば、この措置により、50万人が資格を回復すると推計している。

今回の措置の対象となったのは、29州+D.C.(上記source)。

※ 参考テーマ「無保険者対策/州レベル全般

9月24日(5) 報酬開示の広がり
Source :Indeed says half of its US job postings now feature pay transparency (HR Dive)
Indeedの調査では、求人の際に報酬を明示する("pay transparency")傾向が強まっている。

New York州では、昨年8月の31%から今年8月には61%に高まっている。報酬開示に関する州規則が9月17日に施行されたため、今後はさらに高まっていくことが予想される。
全米レベルで見ても、2020年2月の18%から、2023年8月には50%に達した。
開示を求めている、または求めることになる州およびその周辺で、開示の比率が高まっている。州法の動向は、ここで追いかけることができる。
※ 参考テーマ「人事政策/労働法制

9月21日(1) 政策金利は据え置いたが
Source :The Federal Reserve holds interest rates steady but hints at more action this year (NPR)
9月20日、FOMCは政策金利の据え置きを決定した(「Topics2023年7月27日(1) 政策金利再度引き上げ」参照)。ただし、インフレへの警戒感は緩めていない(「Topics2023年9月14日(2) しつこい物価上昇」参照)(FOMC Statement)。

"Recent indicators suggest that economic activity has been expanding at a solid pace. Job gains have slowed in recent months but remain strong, and the unemployment rate has remained low. Inflation remains elevated. The U.S. banking system is sound and resilient. Tighter credit conditions for households and businesses are likely to weigh on economic activity, hiring, and inflation. The extent of these effects remains uncertain. The Committee remains highly attentive to inflation risks."
また、2023年末の適切な政策金利水準は5.6%に据え置かれている。現在が5.25-5.50%なので、今後年内2回(11/1-2, 12/12-13)のFOMCで、もう一度引き上げる可能性を示唆している。
さらに、2024年末、2025年末の政策金利水準見込みについて引き上げられており、金融緩和のタイミングは遠のいたとの印象である。

※ 参考テーマ「労働市場

9月21日(2) 州が短期プラン規制強化に反対
Source :States resist Biden proposal limiting short-term health insurance (Modern Health)
今年7月に、CMSは、短期医療保険プラン(short-term limited-duration insurance, STLDI)に関する規制強化案を公表した(「Topics2023年7月12日(2) 短期保険プラン規制強化案」参照)。

これに対して、National Association of Insurance Commissioners(NAIC)が反対を表明している。 他方、保険会社の業界団体AHIPは、CMS提案を支持している。

NAICの発表によれば、2022年の短期保険プラン加入者数は235,775人、前年比36.5%増とのことである。この増加を、国民が選択した結果とみるのか、保険料を負担できない層が増えている結果とみるのか、という問題のような気がする。

※ 参考テーマ「医療保険プラン」、「無保険者対策/連邦レベル」、「無保険者対策/州レベル全般