9月20日 UAW次の一手
Source :UAW has a unique strike strategy. It keeps Detroit Big 3 automakers guessing (NPR)
9月18日、UAW会長は、このままビッグ3との交渉に進展が見られなければ、9月22日(金)正午をもって、ストライキを拡大すると宣言した(UAW News)。ただし、どこの工場で、何人が出勤しない、といった情報は一切出していない。ビッグ3側からすると、どこの工場で生産に支障が出るのかがわからず、手の打ちようがないという。

こうした状況に政治が動いている。バイデン大統領は、9月15日の声明で、政府高官を派遣し、労使交渉を手助けすると公表した(President Remarks)。また、トランプ前大統領は、共和党の第2回討論会(9月27日予定)を欠席し、代わりにデトロイトを訪問して、ストに入っている工場従業員に向けて演説をするとの意向を示している。

こうした政治の動きに対して、UAWは反発を示している。 労使自治は民主主義の基本である。

※ 参考テーマ「労働組合

9月17日 UAWのレイオフ対策
Sources : Ford and GM announce hundreds of temporary layoffs with no compensation due to strike (NPR)
How the UAW strike could have ripple effects across the economy (NPR)
UAWのストライキ開始に対して、企業側はレイオフを公表した。 他方、UAWは、組合員への支援策を用意している。 労使妥結までにどれだけの時間を要するのだろうか。

※ 参考テーマ「労働組合

9月16日(1) UAWスト開始
Sources : As UAW strike begins, autoworkers want to 'play hardball' (NPR)
Why you shouldn't be surprised that auto workers are asking for a 40% pay raise (NPR)
9月15日、UAWによるストライキが始まった(「Topics2023年9月14日(1) 大統領とUAWの溝」参照)。上記sourceによれば、ビッグ3全社を相手に一斉にストライキを打つのは、UAW史上初ということだ。

当初の戦術通り、初日のストライキは一部の工場にとどまり、参加するUAW組合員は全体の9%相当とのことだ。対象となっている工場は、人気車種を製造しており、UAWが狙い撃ちしている。

一昨日、『40%の賃上げ要求とは驚きである』と書いたのだが、上記sourceによれば、驚くにはあたらないという。
  1. 今年7月、Teamstersは、UPSのパートタイマーについて、5年間の労使契約で48%の賃上げを確保した。

  2. 8月、American Airlinesのパイロット組合"Allied Pilots Association"は、4年間の労使契約で46%の賃上げを実現した。しかも、およそ21%は直ちに実行される。

  3. 2023年第1四半期の労使交渉で、最初の1年については平均7%の賃上げが実現している。
専門家は、「UPSやパイロットは交渉力が強いため、ここまで大きな賃上げを実現することができた。UAWもそれなりの交渉力はあるものの、労組が入っていない工場、自動車会社がある分、交渉力は劣る」と解説している。要求通りの賃上げは難しいだろうが、かなりの賃上げは実現するのではないかとみられている。

※ 参考テーマ「労働組合」、「労働市場

9月16日(2) 勤務時間内の在宅勤務増加
Source :Remote Work Stable at Higher Rate Post-Pandemic (GALLUP)
在宅勤務の質が変わってきたようだ。
  1. コロナ禍でいったん在宅勤務は広がったものの、2022年頃から落ち着いてきた。全労働者の中で見ると、月あたり4日弱(毎週1回弱)という利用頻度だ。
  2. 在宅勤務の経験割合は、ほぼ半分まで上がった。
  3. 通常勤務時間における在宅勤務の利用割合が上昇し続けている。逆に、時間外の利用は減少している。
  4. 在宅勤務の生産性については、少しずつ疑問が広がっている。
※ 参考テーマ「人事政策/労働法制」、「Flexible Work

9月15日(1) 貧困者割合急増
Source :Poverty Rate Soared in 2022 as Aid Ended and Prices Rose (New York Times)
9月12日、Census Bureauが、"Income, Poverty and Health Insurance Coverage in the United States: 2022"を公表した。 そのポイントは次の通り。
先ず目を引くのが、貧困者割合の急増である。コロナ禍における様々な給付金、補助金が打ち切られたことが大きい。
その中でも、子供税額控除(Child Tax Credits)の縮小の影響が大きい(「Topics2022年9月15日(2) ECTC延長なし」参照)。


※ 参考テーマ「人口/結婚/家庭/生活

9月15日(2) 無保険者割合低下
Source :Poverty Rate Soared in 2022 as Aid Ended and Prices Rose (New York Times)
上記の続きで、一方、2022年の無保険者割合は低下した(「Topics2022年9月15日(1) 無保険者割合最低に(2)」参照)。
無保険者を世代別にみると、現役世代で多くなっている。それでも、前年に較べて割合は低下した。
低所得層の無保険者割合が、おしなべて低下している。これは、Medicaidの加入資格確認が免除されていたことが大きい(「Topics2023年5月10日(1) PHE終結とMedicaid」参照)。Medicaid拡充州とそれ以外の州とでは、無保険者割合の水準が大きく異なる(「Topics2023年8月22日 GA州/OK州のMedicaid」参照)。
※ 参考テーマ「無保険者対策/連邦レベル」、「無保険者対策/州レベル全般

9月14日(1) 大統領とUAWの溝
Source :Sky-high CEO pay is in focus as workers everywhere are demanding higher wages (NPR)
UAWはスト突入の構えを見せている。ビッグ3とUAW(15万人)の労使契約は9月14日に期限切れとなる。UAWは、9月12日時点で、(一部9/15追記 を求めている(NPR)。これが通らなければ、最初はいくつかの工場でストを開始し、徐々に範囲を拡大していく戦術を準備している。

インフレが激しいのは理解できるが(「Topics2023年9月14日(2) しつこい物価上昇」参照)、それでも40%の賃上げ要求とは驚きである。

この要求の背景には、『ビッグ3のCEOの報酬は40%も増加しているのに、組合員の給与はたったの6%しか増加していない』という想いがある。それに加えて、上記sourceによれば、報酬水準そのものの違いが大きすぎる。

CEO-worker 2022 compensation at Big Three automakers

General Motors

  • CEO Mary Barra: $29 million
  • Median worker: $80,034
  • CEO-worker pay ratio: 362-to-1

Ford

  • CEO Jim Farley: $21 million
  • Median worker: $74,691
  • CEO-worker pay ratio: 281-to-1

Stellantis

  • CEO Carlos Tavares: $24.8 million
  • Average worker: $67,789
  • CEO-worker pay ratio: 365-to-1

Source: U.S. Securities and Exchange Commission filings

労使間の溝は、相当深いと思われる。

他方、バイデン政権とUAWの間の溝も深まっているようだ(NPR)。バイデン大統領自身は、当初から「労働組合の味方」との立場を続けている(「Topics2021年5月30日 労組支援TFの影響範囲」参照)。UAWのストライキに関して大統領が「ストにはならないと思う」と発言したところ、UAW会長は、次のようにコメントしたと報じられている。
"I think a strike can reaffirm to him of where the working-class people in this country stand. And, you know, it's time for politicians in this country to pick a side. Either you stand for a billionaire class where everybody else gets left behind, or you stand for the working class."
とても辛辣なコメントである。

バイデン大統領の再選についても、ほとんどの有力労組は支持を表明しているのに、UAWは表明していない。ここまでこじれている要因は、バイデン政権のEV推進政策である。昨年8月のインフレ抑制法(IRA)で、EVに対する手厚いインセンティブを用意した(「Topics2022年8月8日 インフレ抑制法案:上院可決」参照)。大統領は労組従業員によるEV製造を求めていたが、その要件化ができないまま、インセンティブは開始されている。UAWは、ここに大きな雇用不安を感じているのである。

ことはUAWだけではない。全米の労働組合が、UAWのストとバイデン政権の立ち位置を見定めようとしている。ここで労組のバイデン大統領に対する信頼が揺らげば、2024年の大統領選に大きな影響を及ぼすことになる。

※ 参考テーマ「労働組合」、「大統領選(2024年)」、「経営者報酬

9月14日(2) しつこい物価上昇
Source :August core inflation, excluding food and energy, rose 0.3%, hotter than expected (CNBC)
9月13日、BLSは8月の消費者物価指数(CPI-U)を公表した(News Release)。前年同月比3.7%の上昇と、2ヵ月連続の上昇となった(「Topics2023年8月11日 CPI上昇率若干増」参照)。コアの伸び率は4.3%と若干の低下、足許については、前月比で+0.6%と横ばいだった。
エネルギー全体の価格指数は、前年同月比で伸び率はマイナス3.6%となり、低下幅が縮小した。足許では、前月比5.6%増、中でもガソリン代は10.6%の伸びとなった。
食料品価格の伸び率は前年同月比4.3%増と低下しており、だいぶ落ち着いてきた感じである。
エネルギー、食料品を除くCPI上昇率は前年同月比4.3%と低下した。
住居費は前年同月比7.3%増と、わずかに下がったものの、高水準が続いている。足許では、前月比0.3%増となっている、そのうち、家賃については、前年同月比7.8%増、前月比0.5%増となった。
サービス業の価格上昇率は5.9%と僅かに低下したものの、高い水準を続けている。労働需要の高いことを反映している(「Topics2023年9月3日(1) 依然サービス需要強い」参照)。
8月の実質時給は、前月比-0.5%、前年同月比で+0.5%となった(Real Earnings News Release)。
金融政策緩和に転じるのはまだ先になりそうである(「Topics2023年7月27日(1) 政策金利再度引き上げ」参照)。

※ 参考テーマ「労働市場

9月13日 UAW:週4日勤務要求
Source :Why a 4-day workweek is on the table for autoworkers (NPR)
現在、労使協定を巡って闘争を続けているUAWは、週4日勤務で週5日勤務と同水準の給与を求めている(「Topics2023年8月1日(2) 週4日勤務試行に満足」参照)。

※ 参考テーマ「人事政策/労働法制」、「Flexible Work