8月8日 インフレ抑制法案:上院可決
Sources : Democrats pass a major climate, health and tax bill. Here's what's in it (NPR)
Congress is about to act on drug price reform. Here's what you need to know (NPR)
8月7日、連邦議会上院は、インフレ抑制法案(Inflation Reduction Act, H.R.5376)を可決した。投票は、党派別の賛否50vs50で、副大統領の賛成票により可決された(Roll Call 325)。

下院は、今週末の投票を予定している。

法案のポイントは次の通り。
  1. 気候変動

    2005年対比で2020年代末までに40%の排出削減を実現する。これは、バイデン大統領が当初主張していた削減幅の半分である。

  2. Medicare処方薬価格の抑制

    1. Medicare対象処方薬について、毎年、HHS長官が直接価格交渉をできるようにする。2026年に10品目から始めて、2029年までに20品目に拡大する。

    2. 処方薬価格の上昇分のうち、物価上昇率を上回る部分はMedicareに返還する。2019-20でみると、Medicare処方薬の半分は、インフレ率を上回る価格上昇となっている。

    3. 2025年以降、Medicare加入者の自己負担額は、年間上限額$2,000とする。

    4. 上記i~ⅲは、BBB法案の内容を縮小したものとなっている(「Topics2021年11月24日 BBB:薬価抑制策」参照)。

  3. Exchange保険料補助の延長

    アメリカ救済法に盛り込まれた、Exchange加入者に対する保険料補助金を3年間延長する。政府の推計によれば、Exchange加入者の4/5は、月額保険料が$10以下に抑えられている。8月中に法案が可決されれば、来年の保険プランに反映できるという(「Topics2022年7月20日 州Exchange保険料10%増か」参照)。

  4. 税制改革

    所得が$1B以上の法人税については、15%の最小課税(minimum tax)を設ける。

  5. CBOの推計によれば、2022-3の物価上昇に与える影響は、ほとんどない(Information About H.R. 5376, the Inflation Reduction Act of 2022)。
バイデン政権にとっては、BBB法案が可決されない中、公約実現に向けて半歩前進ということなのだろう(「Topics2021年12月20日(1) BBBが窮地に」参照)。

※ 参考テーマ「Medicare」、「政治/外交」、「労働市場

8月6日(1) 労働需給は軟化か
Source :The job market got even better, in a surprisingly positive sign for the economy (NPR)
8月5日、雇用統計が公表された(BLS)。7月の雇用増は52.8万人となった(「Topics2022年7月12日 労働市場参加率低下」参照)。今年2月以来の増加幅であり、5、6月も合計で28,000人の上方修正となった。全体として雇用は力強い伸びとなっている。

Washington Post
これで、コロナ感染拡大以前の雇用水準に回復した。
6月同様、幅広い業種で雇用増となった。なかでもサービス産業の雇用増が顕著である。
失業率は3.5%に低下。
長期失業者(27週以上)の割合は大幅に低下し、18.9%となった。
労働市場参加率は62.1%と僅かに低下し続けている。
25~54歳の労働市場参加率は82.4%と、僅かに上昇した。2022年に入ってからは82%台前半を維持している(BLS)。
労働市場に参加していない人の中で仕事を得たいと考えている人数は、再び上昇した。
求人数が減少し、雇用者数が増加しているという状況は、粗熱が取れ始めた状況と言えるのではなかろうか。労働者側はそろそろ就職を本格的に考え始め、企業側は焦って雇用を増やすことは控え始めた、ということではないか(「Topics2022年8月3日 失業者数/求人数は反転」参照)。

※ 参考テーマ「労働市場

8月6日(2) 越境移民をバス移送
Source :GOP governors sent buses of migrants to D.C. ? with no plan for what came next (NPR)
信じられないことが起きている。Texas州知事Arizona州知事が、越境移民をバスに乗せてWashington, D.C.のUnion Stationまで連れて行き、そこでバスから降ろして放置している。

放置された越境移民たちは、ボランティアなどが面倒をみているそうだが、当然のことながら手が足りない。何せ、TX州から週6日でバスが到着し、連れてこられた越境移民の累計は6,100人以上となっているそうだ。

D.C.市長は連邦政府に対応を求めているそうだが、連邦政府がまったく対応していない。

TX州知事は、コロナ禍で移民の入国を認めなかった措置を、バイデン政権が廃止しようとしていると批判し、様々な対策を講じている。その中に、堂々とバスによる移民送致が掲げられている(Press Release)。

こんなこと、認めてよいのだろうか。

※ 参考テーマ「移民/外国人労働者

8月4日(1) Medicaidで中絶支援
Source :Biden signs executive order to protect travel for abortion (Modern Health)
8月3日、バイデン大統領は、大統領令("Executive Order on Securing Access to Reproductive and Other Healthcare Services")に署名した。州際を越えて人工妊娠中絶を求める女性に対して、Medicaidで支援するという内容である。

州法で禁止されている行為に対して連邦資金を利用してよいのか、という法的課題は残されており、今後、訴訟が相次ぐものと思われる。

しかし、バイデン政権は腹をくくっており、人工妊娠中絶を認めている州の代表者を集めて、禁止されている州からやってきた女性に対して人工妊娠中絶を施すためにMedicaidを利用する許可申請を促している。

※ 参考テーマ「無保険者対策/州レベル全般」、「人口/結婚/家庭/生活

8月4日(2) 無保険者割合最低に
Source :New HHS Report Shows National Uninsured Rate Reached All-Time Low in 2022 (HHS)
2022年第1四半期の無保険者は2,640万人、無保険者割合は8.0%となった。2000年代に入って最低の割合である。
最後の一押しは、アメリカ救済法による保険料補助金の拡充とのことで、政策の継続性という意味では若干疑問が残る(「Topics2021年3月11日 $1.9Tコロナ経済対策法案成立へ」参照)。

※ 参考テーマ「無保険者対策/連邦レベル

8月3日 失業者数/求人数は反転
Source :Job Openings and Labor Turnover Summary (BLS)
8月2日、BLSが、6月末の求人数を発表した。5月末の求人数は1,070万人で、3ヵ月連続の減少となった(「Topics2022年7月7日(2) 求人数微減」参照)。

BLS
労働力人口に占める求人数の割合は6.6%と、こちらも3ヵ月連続の低下となった。

BLS
また、新規雇用数は637万人となり、4ヵ月連続の減少が続いている。

BLS
失業者数/求人数は、0.6と立ち上がってきた。

BLS
5月の自発的失業(Quits)は427.4万人、5月は423.7万人(P)と、依然として高水準ながらも3ヵ月連続の減少となった。
Quits level, Total nonfarm - 2019~2022年

Quits level, Total nonfarm - 2007~2022年
こうした中、6月の時間給は、前年比6.7%増と大幅上昇が続いている。また、転職した人達の賃金はさらに上昇し、7.9%増となった。

Federal Reserve Bank of Atlanta's Wage Growth Tracker
労働市場の需給は若干の緩和が続いているが、転職者の賃金上昇が続いているため、過熱感は残っている。

※ 参考テーマ「労働市場