7月9日 サービス労働需要は堅調
Sources : The U.S. added 209,000 jobs in June, showing that hiring is slowing but still solid (NPR)
The job market is cooling but still surprisingly strong. Is that a good thing? (NPR)
7月7日、雇用統計が公表された(BLS)。6月の雇用増は20.9万人となった。併せて4月は21.7万人、5月は30.6万人に下方修正された(「Topics2023年6月4日 サービス労働需要続く」参照)。
雇用者数は156.2M人となった(Table B-1. Employees on nonfarm payrolls by industry sector and selected industry detail)。業種別増加数は次の通り。
相変わらず、サービス産業の労働需要が強い。

失業率は再び3.6%に上昇した(Table A-1. Employment status of the civilian population by sex and age)。4%を下回ったのは17ヵ月連続で、1970年代以来最長とのことだ。
労働市場参加率は62.6%と、4ヵ月連続の横這いとなった。依然として、コロナ禍以前には程遠い低水準が続いている。
25~54歳の労働市場参加率も83.5%と、僅かずつではあるが上昇傾向が続いている(BLS)。
同年代の女性の市場参加率は77.8%と、1948年以来の高水準を記録したそうだ。

労働市場に参加していない人の中で仕事を得たいと考えている人数は、若干減少した。
長期失業者(27週以上)の失業者全体に占める割合は、18.5%と大きく低下した。
労働市場は徐々に冷却しているものの、FRBが注目するサービス業の需要の強さが続いている。それは、着実に賃金が上昇していることに支えられ、旺盛なサービス需要が続いているためである。

※ 参考テーマ「労働市場

7月7日(1) 保険者の拒否率
Source :How often do health insurers deny claims? No one knows (Modern Healthcare)
アメリカの民間保険プランでは、医師が診療や検査をしようとしても、それを保険でカバーすることを拒否することがある。これは有名な話なのだが、その実態は誰も知らないというのだ。上記sourceでは、拒否率を明らかにしようとする試みをいくつか紹介しているが、全体像にはたどり着けていない。
  1. 限られた連邦政府資料によれば、概ね10~20%になっているらしい。

  2. 2010年に成立したPPACAでは、この拒否率に関するデータを保険者から収集する権限がCMSに賦与された。HHSは、それらのデータを公表することになっている。対象となる保険は、Exchangeだけではなく、企業提供プランも対象となっている。

    ところが、2017年から公表されたのは、連邦立Exchangeの数値のみであった。その加入者は1,200万人程度で、民間保険プラン加入者の10%にも満たない。

    この情報に基づきKFFが分析したところ、拒否率は概ね5件に1件の割合であった。

  3. National Association of Insurance Commissionersは、各州の詳細データを収集している。参加しているのは、NY州、ND州以外のすべての州である。しかし、同機関はデータを公表していない。内部で共有し、保険行政に活用しているそうだ。

  4. Connecticut州とVermont州は、独自に各州のデータを公表している。そのうち、VT州では、拒否率は7.7~10.26%となる。
PPACAに定められていても数字が集められない、公表ができないというのは変な話である。保険者にとっては、病気がちな人を加入させたくない、という強い意思がある。拒否率が低いことが公になって、そうした人々が加入申請をしてこられては困るのだ。同じくPPACAで、病気がちの人をそのことを理由に加入拒否してはならない、とされているからだ。

※ 参考テーマ「医療保険プラン

7月7日(2) 労働市場は徐々に収束
Source :Job Openings and Labor Turnover Summary (BLS)
7月6日、BLSが、5月末の求人数を発表した。5月末の求人数は982.4万人で、前月比49.6万人の減少となった(「Topics2023年6月1日 労働市場過熱は収束方向」参照)。減少傾向が続いている。
労働力人口に占める求人数の割合は5.9%と、こちらも低下した。
新規雇用数は620.8万人と、若干の増加となった。
失業者数/求人数は、0.6となった。
5月の自発的失業(Quits)は401.5万人と、大幅増加となった。
Quits level, Total nonfarm - 2019~2023年

Quits level, Total nonfarm - 2007~2023年
こうした中、5月の時間給をみると、伸び率の収束がより明らかになってきたように見える。

Federal Reserve Bank of Atlanta's Wage Growth Tracker
過熱状態ということではなくなってきたようだ。

※ 参考テーマ「労働市場

7月7日(3) 高齢化の社会的負担
Source :The boomers are retiring. See why that’s bad news for workers (Washington Post)
上記sourceは、アメリカ社会の高齢化の状況を紹介している。その中で、当面、課題となるのはSocial Security(公的年金)とMedicareの持続可能性である(「Topics2023年4月3日(1) 年金/Medicareの余命は10年」参照)。

そして、さらに大きな問題となるのが、介護である。現状、介護に関する公的な給付制度はない(「Topics2023年1月26日(5) WA州介護保険7月開始」参照)。高い金を払って介護施設に入所するか、親族や親友に依存するしかない。これもまた、アメリカ社会に大きな負担をもたらすことになる。

その解決策として移民を挙げてはいるが、もう長い間、移民政策の法的変更は実現していないのである。

社会の高齢化への対応は、ほとんどできていないように見える。

※ 参考テーマ「人口/結婚/家庭/生活」、「公的年金改革」、「Medicare」、「公的介護保険」、「移民/外国人労働者

7月3日(1) ギグワーカーに時間給の選択肢
Source :DoorDash says it will give drivers the option to earn a minimum hourly wage (CBS News)
6月28日、DoorDashは、運び手が働く際、最低賃金を選択することができるようにすると発表した(Press Release)。
  1. 運び手が、サービスごとのフィーと、時間あたりのフィーを選択することができるようにする。

  2. 時間あたりのフィーは、配達物を受け取った時点から配達が完了した時点までの時間に対して支払われる。

  3. 1時間あたりの金額は特定されていないが、New York Timesの報道によると、地域によって$10~19.5/hが適用されるようだ。

  4. チップは100%受け取れる。

  5. 運び手は、配達の注文を受けた時点で、その度ごとに、サービスフィーと時間フィーの選択ができる。
ギグワーカーの位置づけが、ますます曖昧になってきた(「Topics2021年1月25日 ギグワーカーとバイデン政権」参照)。

※ 参考テーマ「人事政策/労働法制

7月3日(2) 大学アファーマティブアクション違憲判決の余波
Source :Affirmative Action Ruling May Upend Hiring Policies, Too (New York Times)
6月30日、連邦最高裁は、大学入試におけるアファーマティブ・アクションは違憲であるとの判決を下した(日経『大学入学選考で人種考慮 米最高裁「違憲」判断』)。これに対して、バイデン大統領は「最高裁の判決に、強く反対する」と述べている(Remarks)。また、EEOC委員長は、「雇用における影響はない」とのコメントを発表した。

実際、連邦最高裁の判決には、雇用におけるアファーマティブアクションについては何も触れていない。それでも、その是非を問う動きは強まることが予想される。特に、特定のマイノリティのみを対象とした昇進奨励プログラムやインターンシップなどは、批判の対象となる可能性が高い。

上記sourceでは、既に活動を活発化させている組織を紹介している。 かといって、アメリカ企業が一斉にマイノリティ優遇策を止めてしまえば、人種差別を理由とする訴訟が多発することになる。アメリカ企業の雇用政策は隘路に追い込まれそうだ。

※ 参考テーマ「人事政策/労働法制

7月1日(1) 同性婚サービス提供拒否は可能3
Source :Supreme Court says 1st Amendment entitles web designer to refuse same-sex wedding work (NPR)
6月30日、連邦最高裁は、同性カップルに対するサービスを個人の信条に基づいて提供しないことを認める判決を下した(「Topics2022年12月9日 同性婚サービス提供拒否の可否」参照)。原告の主張を認め、CO州のサービス提供義務を退けた。賛否は6 vs 3で、完全に保守派対リベラル派で分かれた。

CO州の規定を巡る判決では、2018年にケーキ屋が同性カップル用のウェディングケーキを断った案件で、連邦最高裁がケーキ屋を支持する判決(Masterpiece Cakeshop v. Colorado Civil Rights Commission)を下した(「Topics2018年6月5日 宗教か差別禁止か」参照)。当時は、CO州で同性婚が認められていなかったという背景があったが、今回の場合は、まっさらな状況で、連邦最高裁が同じ判断を下したと言える。

CO州と同様に、『一般顧客にサービスを提供する場合、同性婚カップルを拒否することはできない』と法定している州は、CO州を含めて全部で30州あるそうだ。これらの州では、同性カップルに対するサービス拒否が頻発することになるのだろうか。CO州の規定は見直されるのだろうか。

※ 参考テーマ「LGBTQ

7月1日(2) 学生ローン返済免除案敗訴
Sources : Supreme Court kills Biden's student debt plan in a setback for millions of borrowers (NPR)
What the Supreme Court's rejection of student loan relief means for borrowers (NPR)
6月30日、連邦最高裁は、バイデン大統領の返済免除提案は、連邦政府の権限を超えているとの判決を下した(「Topics2022年8月25日 学生ローン返済免除」参照)。賛否内容は、6対3で、党派別の内容であった。

これで、9~10月には免除なしの返済が始まることになる(「Topics2023年6月23日(1) 返済再開のインパクト」参照)。

と思っていたところ、同日、バイデン大統領は、「まだまだ終わりではない。新たな救済策を提示する」との声明を公表した(Statement)。その後の動きは、NPRのここのページで、随時報じている。

それによると、 ただし、具体的な制度設計には数か月を要するとされており、いったんは返済が始まりそうである。

※ 参考テーマ「教 育