1月30日(1) Breyer判事引退表明
Source :Supreme Court Justice Breyer formally announces his retirement (NPR)
1月27日、連邦最高裁のStephen Breyer判事が、正式に引退を表明した。連邦最高裁が夏休みに入る頃に退職したいとの考えを示し、それまでに後任判事の指名、承認が済んでいることを望むと述べた。

民主党支持者の間では、『やっと』という安堵感が広がっているだろう(「Topics2021年7月18日 Breyer判事の去就」参照)。 引退会見に同席したバイデン大統領は、2月末までに後任判事の指名を行なうと述べ、後任判事は黒人女性になると明らかにした(Remarks by President Biden)。

そこで有力候補にあがっているのが次の2人である。どちらにしても、史上初めての黒人女性連邦最高裁判事となる。 Jackson判事は、オバマ大統領時代の候補者リストに載ったこともある(「Topics2016年3月17日 最高裁判事指名」参照)。

(2/1, 17 追記)

その後、大統領は幅広い候補者の中から選任するとの意向を示した。報道ベースで名前のあがっている判事は次の通り(NPR)。

Current Justices of the US Supreme Court (as of January 30, 2022)

Name Born Appt. by First day University
John G. Roberts
(Chief Justice)
01955-01-27 January 27, 1955 George W. Bush 02005-09-29 September 29, 2005 Harvard
Clarence Thomas 01948-06-23 June 23, 1948 George H. W. Bush 01991-10-23 October 23, 1991 Yale
(Stephen Breyer) 01938-08-15 August 15, 1938 Bill Clinton 01994-08-03 August 3, 1994 Harvard
Samuel Alito 01950-04-01 April 1, 1950 George W. Bush 02006-01-31 January 31, 2006 Yale
Sonia Sotomayor 01954-06-25 June 25, 1954 Barack Obama 02009-08-08 August 8, 2009 Yale
Elena Kagan 01960-04-28 April 28, 1960 Barack Obama 02010-08-07 August 7, 2010 Harvard
Neil McGill Gorsuch 01967-08-29 August 29, 1967 Donald Trump 02017-04-10 April 10, 2017 Harvard
Brett Kavanaugh 01965-02-12 February 12, 1965 Donald Trump October 6, 2018 Yale
Amy Coney Barrett 01972-01-28 January 28, 1972 Donald Trump 02020-10-26 October 26, 2020 Notre Dame Law School
Katanji Brown Jackson 01970-09-14 September 14, 1970 Harvard
Leondra Reid Kruger 01976-07-28 July 28, 1976 Harvard, Yale
仮にどちらかが指名、就任するとなれば、9人の判事のうち、女性は4人、黒人は2人となる。ただし、学閥的には変わらない。

※ 参考テーマ「司 法

1月30日(2) ECI急騰が続く
Source :Employment Cost Index Summary (BLS)
1月28日、BLSは12月のEmployment Cost Index(ECI)を公表した。以後、数値は前年同月比伸び率である。
  1. 雇用市場全体の雇用コストは4.0%。その中で、Wages and salariesが4.5%と大きくなっている。いずれも昨年9月の伸び率を上回っている(「Topics2021年11月3日(2) ECI急騰」参照)。
  2. 官民比較では、民間が4.4%、州・地方政府が2.6%と、いずれも伸びが高まっている。
  3. 民間では、Wages and salariesが5.0%、Benefitsが2.9%。賃金の伸びが大きくなっていることがわかる。
  4. 一方、州・地方政府では、Wages and salariesが2.7%、Benefitsが2.5%。
  5. Wages and salariesの伸びが顕著な業種は、レジャー/ホスピタリティ、流通、医療となっている。
労働コストの上昇が続いている。

※ 参考テーマ「労働市場

1月28日(1) 保険料上乗せ負担受容
Source :Penalties for unvaccinated workers gain favor, report says (HR Dive)
ワクチン接種をしていない従業員に保険料の上乗せ負担を求める制度について、従業員の間で支持が広がっている。支持率は、
  • 2021年8月:41%
  • 2022年1月:47%
とじわりと上昇し、ほぼ半分となっている。

従業員側の受容度が高まってくれば、企業側も上乗せ負担制度を導入しやすくなる(「Topics2021年8月13日(2) ワクチン接種と保険料」参照)。

接種義務化は頓挫している中、上乗せ負担制度は有力なワクチン接種促進策となりそうだ(「Topics2022年1月21日(2) 接種義務化は企業判断」参照)。

※ 参考テーマ「医療保険プラン」、「人事政策/労働法制」、「人口/結婚/家庭/生活

1月28日(2) 連邦職員最低賃金$15/h
Source :Biden administration raises minimum wage for U.S. federal employees to $15 (Reuters)
1月30日より、連邦政府及び関係機関における最低賃金が$15/hに引き上げられる(OPM Press Release)。2021年1月22日のバイデン大統領令に基づく措置である(「Topics2021年1月26日 最低賃金$15/h第一歩」参照)。

この措置により、約220万人の連邦政府職員のうち、約67,000人の賃金が引き上げられることになる。最も多いのは防衛省(約50,000人)、次いで退役軍人省(9,707人)、農業省(1,956人)となっている。なお、U.S.Postalは対象外となっている。

※ 参考テーマ「最低賃金

1月27日(1) "The Great Renegotiation"
Source :The Great Resignation? More like The Great Renegotiation (NPR)
自発的離職が急増していることを捉えて、マスコミでは"The Great Resignation"と銘打っている(「Topics2022年1月6日(1) 自発的失業が高水準に」参照)。しかし、上記sourceは、"The Great Renegotiation"と呼称すべきだと主張している。ポイントは次の通り。
  1. 離職者の一部を構成しているのは高齢者である(「Topics2021年12月10日(2) 労働市場退出の主役」参照)。株価の上昇、不動産価格の上昇等で、資産が増大したことが、早期退職の主な要因となっている。

  2. また、第2の働き手もまた、離職者の一部を構成している。学校閉鎖に伴い育児に専念せざるを得なくなった、またはコロナ感染症拡大のために対面サービスを回避するためである。

  3. しかし、何と言っても一番大きな割合を占めるのは、『よりよい職場を求めて』離職した人達である。よりよい給与、ベネフィット、柔軟な労働時間、待遇などの改善を求めてである。

  4. そうした動機で離職した人達の多くは、低賃金労働者である。11月だけで見ても、レジャー、ホスピタリティ産業から100万人が離職した。

  5. 大量の離職は、インフレの副産物である(「Topics2022年1月13日(2) 物価急騰継続」参照)。平均的なアメリカ人労働者の実質賃金は、2021年2.4%低下した(「Topics2022年1月20日 実質賃金低下が続く」参照)。低賃金労働者は、タイトな労働市場を見て、生活レベルを維持するためによりよい職を求めて離職している。

  6. 最も恐れることは、賃金と物価のスパイラル的上昇である。
※ 参考テーマ「労働市場

1月27日(2) H-1B却下率急落
Source :H-1B Visa Denial Rate Drops (SHRM)
2021年、H-1Bビザ申請における却下率が大幅に低下した。
2018年24%
2019年21%
2020年13%
2021年4%
専門家に言わせると、トランプ政権以前の水準に戻ったということだ。

トランプ政権では、H-1Bに対する規制を強化してきた(「Topics2017年4月19日 H-1Bビザの見直し」参照)。それをバイデン政権は停止した(「Topics2021年4月3日(2) ビザ発給停止措置失効」参照)。

こうした連邦政府方針の変更を踏まえ、2022年のH-1Bビザ申請は、2021年の同時期に比較して12%も増加している。コロナ禍後を見据えて、アメリカ社会が外国人の吸収を再開する。

※ 参考テーマ「移民/外国人労働者

1月26日 OSHA恒久ルールを検討
Source :OSHA Seeks Permanent Vaccine-or-Testing Rule, Shelves Temporary Directive (SHRM)
1月13日の連邦最高裁執行差止判決(「Topics2022年1月14日(1) OSHA× CMS○」参照)を受けて、1月25日、OSHAは、11月4日に公表した民間企業ワクチン接種義務ロール(OSHAルール)の取り下げを公表した(「Topics2021年11月6日(1) 企業接種期限は1月4日」参照)。取り下げの執行日は1月26日となる(OSHA Statement 01/25)。

ただし、OSHAの言い方は、『Emegency temporary standard(ETS)として執行するのは取り下げるが、恒久措置提案としては取り下げない』としている。今後、恒久ルールとしての"COVID-19 Healthcare Standard"の導入に注力すると述べている。

もともと、ETSを作成してから6ヵ月以内に恒久ルールを作成しなくてはならないことになっているので、OSHAとしては既定路線と言えるのだが、それでも前途は厳しいとみられる(「Topics2021年9月15日 OSHAの責務」参照)。

※ 参考テーマ「人事政策/労働法制」、「人口/結婚/家庭/生活

1月22日(1) 連邦政府職員接種義務も差止め
Sources : Federal court blocks Biden's vaccine mandate for federal workers (NPR)
CMS extends COVID-19 vaccine deadline for health workers in 24 states (HR Dive)
もう一日待っていればよかった(「Topics2022年1月21日(1) 契約企業接種義務見通し立たず」参照)。 1月21日、Texas州連邦地方裁判所は、連邦政府職員350万人超に対するワクチン接種義務の差し止め命令を下した(「Topics2021年9月11日 民間企業接種義務化大統領案」参照)。これは全米の連邦政府職員に適用される。連邦政府は控訴する予定だ。

この判決を下した判事は、トランプ前大統領が指名した。判決理由の一つとして、『接種義務に従わず解雇されることになれば、重要な就業機会を失うことになる』としている。"Employment at will"はどこに行ってしまったのだろうか(「Topics2021年9月1日(1) ワクチン拒否と失業給付」参照)。

一方、CMSは、連邦最高裁判決が出るまで執行差止になっていた24州について、2回目接種期限を3月15日と定めた。その他の25州+D.C.のスケジュールは変わらない(「Topics2022年1月4日 民間医療機関に新接種ルール」参照)。

よって、連邦政府が求める接種義務化の状況は次の通りに書き直される。
対象機関 従業員100人以上の民間企業 連邦政府契約企業 連邦政府職員 Medicare/Medicaid医療機関等
従業員のワクチン接種期限 執行差止最高裁判決 執行差止判決 執行差止判決 *25州+D.C.:2/28
**24州:3/15
対象者数 8,400万人 700万人 350万人 1,700万人
規則所管機関 OSHA The White House The White House CMS

*25州+D.C.:California, Colorado, Connecticut, Delaware, Florida, Hawaii, Illinois, Maine, Maryland, Massachusetts, Michigan, Minnesota, Nevada, New Jersey, New Mexico, New York, North Carolina, Oregon, Pennsylvania, Rhode Island, Tennessee, Vermont, Virginia, Washington, Wisconsin and Washington, D.C

**24州:Alabama, Alaska, Arizona, Arkansas, Georgia, Idaho, Indiana, Iowa, Kansas, Kentucky, Louisiana, Mississippi, Missouri, Montana, Nebraska, New Hampshire, North Dakota, Ohio, Oklahoma, South Carolina, South Dakota, Utah, West Virginia and Wyoming.(Texas州のみ未定)
昨日は、『結局、バイデン政権はほとんど何もできていないのである。』と書いてしまったが、よく考えてみると、
  • 義務化は医療機関だけで、現状は常識的である

  • 連邦政府が義務化の旗を振ったことで、民間企業の義務化の動きを後押しした

  • 連邦契約企業、連邦政府内で、自主的な接種が促進された
という評価もできる。

※ 参考テーマ「人事政策/労働法制」、「人口/結婚/家庭/生活

1月22日(2) 州の有給FMLA
Source :2022 state paid family and medical leave contributions and benefits (Mercer)
上記sourceは、州としての有給傷病休暇制度の現状をまとめたものである。徐々に有給FMLに注目が集まりつつある。

※ 参考テーマ「FMLA

1月22日(3) 民主党支持率大きく低下
Source :Americans' political party preferences shifted to Republicans in recent months (NPR)
GALLUP調査によると、2021年の民主党への支持率は46%、共和党支持率は43%と、民主党が上回った。
しかし、これを四半期別にみると、2021年の間に民主党への支持は大きく低下した。第1四半期に民主党支持が49%もあったのに、第4四半期には42%に低下した。一方、共和党支持は、同時期に40%から47%に上昇し、その差は5%ポイントとなった。
こうした民主党支持率の急降下は、
  1. バイデン大統領のアフガニスタン撤退の失態(中道・右派から批判)
  2. BBB法案の頓挫への失望(左派から批判)
などを背景にしていると思われる。 そして、注目すべきは、独立派の増大である。自認する党派で、民主党が29%、共和党が27%なのに対し、独立派が42%と過去最高(43%)に迫っている。
一時共和党に傾いていた人達が同党を離れたようにも見える。それよりも、両党が党派色の強い行動ばかりしているのに対して嫌気がさしているいるのではないだろうか。

※ 参考テーマ「政治/外交

1月21日(1) 契約企業接種義務見通し立たず
Source :An Update on the Federal Contractor Vaccine Mandate: No Need to Comply for Now, but Private Arrangements May Still be Enforceable (Littler Mendelson P.C.)
OSHAルールにばかり注目が集まっていたが、連邦契約企業へのワクチン接種義務化に関する情報にようやく辿り着いた。

連邦契約企業へのワクチン接種義務化を求めた大統領令に対しては、連邦地方裁レベルでいくつも訴訟が起こされ、悉く原告側が勝利した(「Topics2021年12月10日(5) 大統領令執行差止判決」参照)。

その後、第5、第6、第8、第11控訴裁判所に持ち込まれ、連邦政府側は迅速審議を求めたが、いずれも却下された。この結果、各控訴裁で結審するのは、早くとも4月となる。もしも原告側が敗訴したとしても、執行は年後半となろう。

現在の執行差止状況が続く限り、連邦政府から契約企業に対してワクチン接種義務化を要求することはできない。

現状、連邦政府が民間機関に求める接種義務化は、次の表の通りとなる。
対象機関 従業員100人以上の民間企業 連邦政府契約企業 Medicare/Medicaid医療機関等
従業員のワクチン接種期限 執行差止 新ルール(25州+D.C.のみ)1回目1/27 2回目2/28
接種免除
対象者数 8,400万人 700万人 1,700万人
規則所管機関 OSHA The White House CMS
結局、バイデン政権はほとんど何もできていないのである。

※ 参考テーマ「人事政策/労働法制」、「人口/結婚/家庭/生活

1月21日(2) 接種義務化は企業判断
Sources : Starbucks drops COVID vaccine mandate after Supreme Court ruling (NPR)
Starbucks ends its plan to require worker vaccination and testing. (New York Times)
1月13日の連邦最高裁判決は、企業の職場安全政策に大きな影響をもたらしている(「Topics2022年1月14日(1) OSHA× CMS○」参照)。

まず、判決を受けて、接種義務化or毎週検査の方針を取り下げた企業だ。その代表は、Starbucksで、1月18日、2月9日を接種期限としたワクチン検査パッケージを取り下げた(「Topics2022年1月6日(2) Starbucks接種義務付け」参照)。また、GEも2月11日を期限とした接種義務を取り下げた。

一方、判決に拘わらず、接種義務化を継続しているのが、Citiなどである(「Topics2022年1月12日(2) Citi接種義務日程を堅持」参照)。

他方、Target、McDonaldなどは、方針を示していない。

連邦契約企業への接種義務化が差し止められていること(「Topics2022年1月21日(1) 契約企業接種義務見通し立たず」参照)に加えてOSHAルールがなくなったということは、連邦、州、自治体の規制がバラバラな中で、企業側が自ら職場の安全衛生を守る責任が生じたということになる。従業員との対話と丁寧な説明が求められる。

※ 参考テーマ「人事政策/労働法制」、「人口/結婚/家庭/生活

1月21日(3) 最高裁判事の確執
Source :Supreme Court justices aren't 'scorpions,' but not happy campers either (NPR)
上記sourceは、連邦最高裁の人間模様を描いた記事である。
Members of the Supreme Court:
Seated from left are Associate Justice Samuel Alito, Associate Justice Clarence Thomas, Chief Justice John Roberts, Associate Justice Stephen Breyer and Associate Justice Sonia Sotomayor,
Standing from left are Associate Justice Brett Kavanaugh, Associate Justice Elena Kagan, Associate Justice Neil Gorsuch and Associate Justice Amy Coney Barrett.
Erin Schaff/New York Times/AP
いろいろ書かれていて面白いのだが、今後の考察に役立てるために、2つだけエピソードをまとめておく。
  1. Gorsuch判事はマスクをしない

    コロナ過で彼だけはマスクを着用しない。そのために、糖尿病を抱えるSotomayor判事は、オンライン参加を余儀なくされている

  2. Alito判事Roberts長官をバカにしている

    当時の長官の死亡のタイミングがあと1ヵ月後ならば、Roberts長官ではなく、Alito判事が最高裁長官に就任するはずであった
※ 参考テーマ「司 法

1月21日(4) 2021年労組加入率/組織率
Source :Union Members Summary (BLS)
1月20日、BLSは2021年の労働組合加入率、組織率を公表した。

2020年の加入率/組織率とも上昇したものの、2021年は再び低下した(「Topics2021年1月24日 労組加入率/組織率上昇」参照)。全被用者では、2020年と同じ水準であった(データ)。ただし、パートタイマーの加入率、組織率の上昇が続いていることは、労組にとって朗報である。
州別の状況について、大きな変化は見られない。
※ 参考テーマ「労働組合