9月16日(1) 2020年無保険者割合上昇
Source :Health Insurance Coverage in the United States: 2020 (Census Bureau)
9月14日、Census Bureau医療保険加入状況報告書(2020年)を公表した。ポイントは次の通り。
  1. 2020年の無保険者割合は8.6%(全国民ベース)。2018年から0.1%ポイント上昇した。
  2. トランプ大統領時代に無保険者割合は徐々に上昇した。
  3. 企業提供保険プランの割合は54.4%。2018年から0.7%ポイント低下した。

  4. こちらは、トランプ大統領時代に低下している。
  5. 意外なことに、Exchangeを通じた保険購入の割合が3.3%しかない。

  6. 一方、公的保険プランは34.8%を占めた。特に、Medicareが伸びている。

  7. Medicaidについては、2019年を底に反転上昇している。
  8. 低所得層の保険加入は、公的プランが大きく貢献している。
  9. Medicaid拡充の有無で、州の勤労世代(19~64歳)の無保険者割合は明確に異なる。
  10. 全米の勤労世代(19~64歳)の無保険者割合は11.9%。2018年から0.2%ポイント上昇した。また、無保険者割合が比較的高い属性は、ヒスパニック、不法入国者、パートタイマー、別居、南部。
※ 参考テーマ「無保険者対策/連邦レベル」、「無保険者対策/州レベル全般

9月16日(2) NY民主党選挙区見直し案
Source :New York Will Soon Lose 1 House Seat. The G.O.P. Might Lose 5. (New York Times)
NY州は、9月15日に、選挙区見直しの第1案が公表される予定であった。NY州は、連邦議会下院の議席が一つ減となるので、選挙区見直しは必須だ(「Topics2021年4月27日 センサス結果第1弾」参照)。

NY州は、選挙区見直しについては、独立した委員会が案を作成することとしている。ところが、NY州民主党は、既に独自案を作成して準備しているという。というのも、州議会の2/3以上の賛成で修正することが可能だからだ。
"As of 2014, New York’s congressional and state legislative lines are drawn by an independent commission, subject to modification by a supermajority of the state legislature. The ten members of the independent commission have been appointed; one of the commissioners has sued the state over the commission’s staffing and funding."
All about Redistricting (NY)
現在のNY州議会は、上下両院とも民主党が2/3以上を占めており、充分に修正可能な状況にある。

このNY州民主党が用意している選挙区見直し案では、共和党が5つも議席を減らす可能性があるという。NY州民主党は、現在、民主党本部と協議しているそうだが、彼らが準備している案通りに修正してしまえば、独立委員会に案作成を委ねるという党派中立に向けた仕組みは骨抜きになってしまう(「Topics2021年8月5日 選挙区見直しの主導権」参照)。2022年の中間選挙を重要視することはわかるものの、民主党の姿勢が問われている。

※ 参考テーマ「政治/外交」、「中間選挙(2022年)

9月15日 OSHAの責務
Source :Biden vaccine mandate will test OSHA, U.S. workplace regulator (Reuters)
OSHA(Occupational Safety and Health Administration)が注目を集めている。バイデン大統領の指示に従って、民間企業におけるワクチン接種義務化のためのルールを作成することになったからだ(「Topics2021年9月11日 民間企業接種義務化大統領案」参照)。

通常、OSHAがルールを作成すると公表してから、最終案の交付までには半年から5年かかる。

Occupational Safety and Health Administration (OSHA): Emergency Temporary Standards (ETS) and COVID-19 - September 13, 2021 (CRS)
しかし、そんな悠長なことはやっていられないので、今回のルール作成は、"Emergency Temporary Standards (ETS)"という基準作りプロセスを利用する。これを利用すると、ルール案の公表、即施行という手順が取れる。ただし、それから6ヵ月以内に恒久ルールを作成して、引き継がなければならない。

Emergency Temporary Standards

Section 6(c) of the OSH Act provides the authority for OSHA to issue an Emergency Temporary Standard (ETS) without having to go through the normal rulemaking process. OSHA may promulgate an ETS without supplying any notice or opportunity for public comment or public hearings. An ETS is immediately effective upon publication in the Federal Register. Upon promulgation of an ETS, OSHA is required to begin the full rulemaking process for a permanent standard with the ETS serving as the proposed standard for this rulemaking. An ETS is valid until superseded by a permanent standard, which OSHA must promulgate within six months of publishing the ETS in the Federal Register. An ETS must include a statement of reasons for the action in the same manner as required for a permanent standard. State plans are required to adopt or adhere to an ETS, although the OSH Act is not clear on how quickly a state plan must come into compliance with an ETS.
Occupational Safety and Health Administration (OSHA): Emergency Temporary Standards (ETS) and COVID-19 - September 13, 2021 (CRS)
ところが、OSHAの緊急ルール作りに対して不安材料が揃っている、というのが上記sourceの論調だ。
  1. OSHAが設立されて50年経つが、ETSを使ったルール作りはこれまで10回しか行なっていない。

  2. しかも、そのうち4つは裁判で無効に、1つは一部無効になった。

    Occupational Safety and Health Administration (OSHA): Emergency Temporary Standards (ETS) and COVID-19 - September 13, 2021 (CRS)
  3. 最新例は、医療現場におけるコロナ感染防止策に関するルールである。バイデン大統領が大統領令を発してからルール作成、施行まで5ヵ月かかった。しかも、直後に労働組合から不十分として訴訟を起こされている。

  4. 監督官(inspectors)が圧倒的に少ない。約800人で10万以上の民間企業を監督しなければならない。トランプ大統領時代に、予算と人員を大幅に削減されてしまった。このため、職場の安全が確保されていないという事例がいくつも報告されているにもかかわらず、現場検証に行けない、もしくは行くまでに数ヵ月もかかっている。

  5. OSHAが摘発し、企業名を公表した企業もあるが、そのうち2/3は罰金を支払っておらず、半分以上は訴訟に持ち込んでいる。
加えて、共和党は猛反発しており、ルールの発表後、直ちに全国で訴訟が行なわれるだろう。まさに内憂外患である。

※ 参考テーマ「人事政策/労働法制」、「人口/結婚/家庭/生活

9月12日 Amazon:大学教育全額支援
Source :Amazon offers to pay college tuition for most US workers (CNN)
Amazonは、従業員の4年制大学の学費及び関連費用を負担する。対象は、時給で働く従業員75万人で、90日間以上勤務していることが条件となる。加えて、大学に通う間は勤務を継続する。通学可能となる大学のリストは検討中とのこと。

4年制大学の授業料を負担するのは、Walmart、Targetに続く動きである(「Topics2021年7月28日 Walmart:大学教育全額支援」参照、「Topics2021年8月15日(2) Target:大学教育支援」参照)。

Amazonは、時給を$15~17支払っており、就職時のボーナスも最大$1,000を払っている。加えて、今回の大学学費負担である。労働市場の供給が順調に伸びない中、新規採用、従業員引き留めに躍起になっている姿が浮き彫りになっている(「Topics2021年9月9日(1) 失業者数/求人数低下続く」参照)。

※ 参考テーマ「教 育

9月11日 民間企業接種義務化大統領案
Sources : Biden Mandates COVID-19 Vaccinations for All Feds (Government Executive)
Biden Lays Out Plan To Mandate Vaccines Or Testing For Millions Of Workers (NPR)
Unvaccinated United Airlines Employees To Be Put On Temporary Leave (NPR)
9月9日、バイデン大統領は、連邦政府職員ならびに連邦政府との契約企業に対してワクチン接種を義務付ける大統領令に署名した(「Topics2021年8月1日 連邦職員にワクチン接種要請」参照)。 報道官の説明によると、連邦政府職員は75日以内に2回接種を終えるか、宗教、健康を理由とする接種免除を申請しなければならない。労働組合の中には義務付けを歓迎しているところもあるが、多くは沈黙しながら反発を覚えているようだ。

一方、同じ日に、バイデン大統領は、連邦政府のルールとして民間企業に従業員のワクチン接種を義務付ける緊急対策の方針を示した。ポイントは次の通り。
  1. 対象となる企業は、従業員100人以上の民間企業。

  2. 対象となる従業員は、全部で8,000万人。

  3. 対象となる従業員は、ワクチン接種証明を提出するか、毎週検査結果を提出しなければならない。

  4. 所管は労働省。

  5. 『バイデン政権の高官によりますと、従わない場合は1件の違反当たり最高で1万4000ドル(日本円で150万円余り)の罰金を科すということです。』(NHK
共和党議員は猛反発している。でも、大統領の指示で従業員の接種義務化が進むのであれば、歓迎する企業は多いだろう。

この大統領方針と平仄を合わせるかのように、United Airlinesは、期限を区切った接種義務化の具体策を公表した(「Topics2021年8月27日(1) FDA正式承認の効果」参照)。
  1. 宗教、健康を理由に接種免除を申請して認められた場合、10月2日から一時的な自宅待機とする。

  2. 宗教を理由とした場合には一時無給私用休暇、健康を理由とした場合には一時的傷病休暇とする(内部メモ)。

  3. 接種免除が認められなかった場合には、9月27日までに1回目を接種しない、または免除不許可通知日から5週間以内に2回接種をしなければ、解雇される。

  4. 従業員は9月27日までに接種証明書を提出しなければならない。9月27日は、FDAがファイザーワクチンを正式承認してから5週間にあたる(「Topics2021年8月24日 ファイザーワクチン正式承認」参照)。
ちなみに、州レベルの接種義務化の動向を確認してみたところ、民間企業におけるワクチン接種義務化を禁止している州が、3州(8/30)から2州(9/9)に減っていた(「Topics2021年8月30日 州レベルの接種義務化(2)」参照)。
大きな動きは出ていないようだ。

※ 参考テーマ「人事政策/労働法制」、「人口/結婚/家庭/生活