Source : | US Chamber mandates vaccines for employees, visitors (The Hill) |
8月16日、全米商工会議所(USCC)の広報責任者は、次のように述べた。National Association of Manufacturers(NAM)、Business Roundtableも同様の措置を採る予定だ。
- FDAがワクチンを正式承認すれば、USCCの全職員にワクチン接種を義務化する。在宅勤務者も対象に含まれる。
- D.C.にあるUSCC本部への来訪者に対しても、ワクチン接種証明を求める。
- USCC職員の90%以上は、ワクチン接種済みである。
USCCの狙いは、2つあると思う。
第1に、バイデン政権のワクチン接種奨励政策を支援すること(「Topics2021年8月1日 連邦職員にワクチン接種要請」参照)。
第2に、職場におけるワクチン接種の義務化を容認する流れを作ること。自らの職員に義務付けることもさることながら、「FDAによる正式承認」を条件とすることで、労働組合との歩調を合わせ、義務化に慎重な企業の背中を押すことを狙っている(「Topics2021年8月19日(1) 従業員は接種義務化に両論」参照)。
※ 参考テーマ「人事政策/労働法制」、「人口/結婚/家庭/生活」
職場におけるワクチン接種の義務化は、連邦政府において進んでいる(「Topics2021年8月1日 連邦職員にワクチン接種要請」参照)。WA州も、連邦政府と同様に、州職員、州との契約企業にワクチン接種を求めることとした。
また、医療現場でも職員への接種義務化を導入した所は1750ヵ所に及ぶ。
司法もこの動きを支援している。少し余談になるが、上記の連邦最高裁の判決を下したのはBarrett判事であった。保守派の期待の新星だが、やはり無茶な暴れ方はされないようだ(「Topics2021年7月8日 Barrett判事の評判」参照)。
- TX州の医療機関従業員が接種義務化に反対して提訴したが、連邦裁判所はこの提訴を退けた。
- Indiana大学が教職員、学生に対して秋までにワクチン接種するように求めた措置に対して、連邦最高裁は司法として介入しないとの判決を下した。
しかしながら、職場におけるワクチン接種の義務化が進んでいるかというとそうではない。
まず、州レベルでは、既に7州が職場におけるワクチン接種の義務化を禁じており、多くの州で同様の法案が導入されている。企業でもワクチン接種の義務化を導入しているが、同業他社で同じような動きが広がっていない。先頭を切ったハイテク企業でも職場再開を遅らせる動きが出ていて、実質上、接種義務化が遅れている(「Topics2021年8月8日 7月も雇用大幅増」参照)。
National Academy for State Health Policy
接種義務付け
(出勤の場合)職場勤務再開 出勤頻度 ○ 9月⇒10月18日⇒22/1/11 ○ 10月 許可制在宅勤務 Apple × 10月に延期⇒22/1 3Ds/W Amazon × 秋⇒2022/1/3 3Ds/W Microsoft ○ 9月⇒10/4 ○ 未 定 期間限定なしの在宅勤務OK ※ Microsoftについて、接種義務化との報道(8/3日経)があったので、×から○に修正。Amazon、twitterについては職場勤務再開延期の報道(8/7日経)があったので修正。Microsoftの出勤開始遅れは上記sourceによる。Google、Appleの職場勤務再開延長は9/2日経による。労働組合も今の状況では、義務化には反対している。なかでも、United Food and Commercial Workersは、「FDAの正式承認が降りる前に義務化を実施することには懸念がある」としている。
では、労働者はどのように考えているのか。それを示しているのが、上記sourceのGALLUP調査結果だ。調査時点は7月19~26日。企業は、今のところは慎重な立場を崩していない。
- 職場におけるワクチン接種の義務化について、両極端に分かれている。「強く歓迎する」が36%、「強く反対する」が29%。
How would you feel about your employer requiring all employees (who do not have a medical exemption) to receive the coronavirus/COVID-19 vaccination?
% Strongly favor 36 Favor 16 Neither favor nor oppose 10 Oppose 9 Strongly oppose 29 SUMMARY Total % favor 52 Total % oppose 38 Based on U.S. adults employed full or part time Gallup Panel, July 19-26, 2021 - 5月からの変化を見ると、「強く歓迎する」は7%ポイント増えているが、「強く反対する」は2%ポイントしか低下しておらず、抵抗感が根強いことが伺える。
- 自らの職場で義務化が導入されているかどうかを問うと、「導入済み」が9%、「推奨」が62%。「導入済み」は5月の6%からあまり増えていない。義務化に踏み切った企業は、まだまだ少数派であることがわかる。
※ 参考テーマ「人事政策/労働法制」、「人口/結婚/家庭/生活」
Source : | Sudoku Creator Maki Kaji, Who Spread The Joy Of Puzzles, Has Died (NPR) |
8月10日、「数独」の名付け親、鍛冶真起氏が亡くなった。訃報は世界で大きく配信されている。「数独」が世界的な人気を誇っている証左である。当website管理人も大ファンである。
世界的な人気ゲームになった一つの要因として、上記sourceは、日本以外で「数独」を商標登録しなかったことにあると紹介している。そんな話があったのか、と改めて驚きながら、鍛冶氏のご冥福をお祈りいたします。
※ 参考テーマ「数 独」
Source : | Consider These Steps When Asking Employees About Vaccination Status (SHRM) |
こちらは人事政策に関するコンサルタント会社だけあって、ワクチン接種に関して極めて慎重な進め方を奨励している。ポイントは次の通り。現段階では、常識的なアドバイスであろう。
- 基本姿勢は、職場の安全確保と従業員のプライバシーに対する配慮のバランスを取ることである。
- 従業員に対してワクチン接種に関する情報提供を求めることは、法的に認められている。
- ワクチン接種に関する情報提供は、接種証明書の提示、もしくは薬局、医師による接種証明が考えられる。EEOCのupdated FAQsで、上記2.とともに言及されている。
- しかし、未接種の理由その他の医療情報の提供を求めることは、避けるべきである。接種証明の書類についても、必要最低限にすべきである。
- ワクチン接種に関する情報は、従業員の個人情報として扱い、アクセスや利用については限定すべきである。
※ 参考テーマ「人事政策/労働法制」、「人口/結婚/家庭/生活」
Source : | How Full FDA Approval Could Spur Vaccination (KFF) |
上記sourceは、ワクチン接種の更なる進展に向けて、FDAのワクチン正式承認に期待を寄せている。1.の31%とはいっても、全体で見れば10%程度の増加(33%×31%)しか期待できない(「Topics2021年8月6日 ワクチン接種動向(7月)」参照)。本当にFDAの正式承認が降りるまで、ワクチン接種の義務化がどこまで進むかはわからない(「Topics2021年8月12日 ワクチン接種義務化のハードル」参照)。
- FDAの正式承認が降りれば、未接種の人の31%はワクチンを接種すると言っている。
- 未接種の人の半分以上が、ワクチンの承認状況を正確に認識していない。正式承認となれば、その安全性を改めて確認する。
- 従業員に対するワクチン接種義務化の正当性を与えることができる。
- 地方政府、自治体、企業のワクチン接種義務化を強く促すことができる。
※ 参考テーマ「人事政策/労働法制」、「人口/結婚/家庭/生活」
Source : | Target counters Walmart with 'debt-free' education benefit (HR Dive) |
8月4日、Targetは、全従業員34万人を対象にした大学教育全額支援プログラムを直ちに開始すると発表した(Press Release)。ライバルであるWalmartのプログラムに対抗したものである(「Topics2021年7月28日 Walmart:大学教育全額支援」参照)。
従業員数の規模こそ違うものの、選択肢はWalmartよりも格段に幅広い。
- 学費については、大学以下については年間$5,250、修士については年間$10,000を上限とする。
- その他、教科書代等も自己負担なしに提供する。
- 40の大学、250のビジネス系学科から選択できる。
ところで、このベネフィットを提供するためにTarget社が契約したのは、Guild Educationという企業だ。Walmartも同社との契約で現在のプログラムを実施している。HPを見ると、他にも有名大企業が契約しているようだ。人手不足が課題になっている中、教育支援プログラムはベネフィットの主要メニューになりつつある。
※ 参考テーマ「ベネフィット」、「教 育」
Source : | Inflation could prompt largest Social Security cost-of-living adjustment in decades. Why there's a push to change the way it's calculated (CNBC) |
2022年の物価スライド率が、俄然注目を集めている。2021年6月、7月と連続して、CPIが前年比5.4%となったためだ。
Social Security(公的年金)は、毎年、年金給付額に物価スライドを適用している(SSA)。その際、物価上昇率として"Consumer Price Index for Urban Wage Earners and Clerical Workers (CPI-W)"を利用することが法定されている。2021年のCOLAは1.3%だった(Cost-of-Living Adjustment (COLA) Information for 2021)。ところが、今のCPIの水準からみると、2022年のCOLAは6.2%にまで上昇するとの推計も公表されている(The Senior Citizens League)。もしもこの水準になったとすると、1982年(7.4%)以来の高さとなる。 一方、連邦議会にはThe Fair COLA for Seniors Act of 2021という法案が提出されており、ここでは物価上昇率として、"Consumer Price Index for the Elderly (CPI-E)"を使用することを求めている。CPI-Eは、62歳以上の支出構成に合わせて作成した物価指数である。例えば、医療費のウェイトが高くなる。バイデン大統領も選挙公約の中でこの考え方を支持していた。また、 以前連邦議会に提出されていたSocial Security 2100 Actにも含まれていた(「Topics2019年8月22日 年金改革法案目白押し」参照)。
もしも、この変更案が可決されると、COLAはさらに高まることが見込まれている。これまでも「CPI-W<CPI-E」の傾向が続いている。 単年度では0.2%ポイントくらいの上乗せとなるが、25年も経てば、5%ほど給付額を引き上げる効果がある。
CPI-Eの採用は、2つの意味で課題がある。※ 参考テーマ「公的年金改革」
- 先ずはCPI-E事態が孕んでいる課題である。年金制度の権威であるAlicia H. Munnell教授(Center for Retirement Research @Boston College)は、3つの問題を指摘している(Market Watch)。
- サンプル数が小さすぎる
- 価格の調査地点が若者と同じであり、高齢者世代が利用する購入地点の特徴を反映していない。
- 価格調査対象の商品が、高齢者世代の購入対象の特徴を反映していない。
- 給付金額は増額されるかもしれないが、公的年金財政はより悪化することになる。その対策は何も触れられていない(「Topics2021年3月26日 基金枯渇は目前」参照)。
Source : | 2020 Census Statistics Highlight Local Population Changes and Nation’s Racial and Ethnic Diversity (Census Bureau) |
8月12日、Census Bureauは、2020年センサス調査の詳細結果を公表した。4月26日の第1弾公表時に想定していた日付よりは少しだけ早まった(「Topics2021年4月27日 センサス結果第1弾」参照)。 気になる結果だけピックアップしてまとめておく(Population Distribution and Change: 2010 to 2020)。いよいよ、選挙区見直しの火ぶたが切って落とされる。
- 人口増加のスピードは逓減している。
- 州ベースで人口が10%以上増加しているのは、TX、FLなどのほか、もともと人口の少ない州でも大きく増えているところが目立つ。
- 人口5万以上のcountyの人口が増加し、それ以下のcountyの人口が減少している。つまり、人口の多いcountyへの集中が進んでいる、
- トップ10の大都市で、Phoenix(AZ)は11.2%も増加している。
※ 参考テーマ「人口/結婚/家庭/生活」、「政治/外交」
Source : | How Vaccine Mandates Are Helping Companies (Knowledge@Wharton) |
上記sourceでは、従業員に対するワクチン接種義務化を企業に勧奨する経営学教授の意見を紹介している。ポイントは次の通り。『職場の安全確保』は、確かに錦の御旗である。しかし、この考え方はワクチン接種を拒否している人達を排除しようとしているものであり、権威主義国家と同じだ。それとも、民主主義国家もその基本理念を棚上げせざるを得ない状況になっているのだろうか。
- 企業は従業員の安全を確保しなければならない。
- 感染症が広がっている中で、ワクチン接種は個人の選択という考え方は適切ではない。なぜなら、周囲の人々への脅威とコスト負担をもたらすからだ。
- 企業は一歩進んで、はっきりとした行動に出るべきだ。
- 州/自治体議会議員は、住民へのワクチン接種義務化を検討すべきだ。
※ 参考テーマ「人事政策/労働法制」、「政治/外交」
Source : | Health Plan Premium Surcharges For Those Not Vaccinated for COVID-19? (Benefits Law Advisor, Jackson Lewis P.C.) |
従業員に対するワクチン接種義務化に企業はなかなか簡単には踏み切れないなかで、企業が提供する医療保険プランで工夫しようと検討している企業が増えているという(「Topics2021年8月12日 ワクチン接種義務化のハードル」参照)。それは、ワクチンを接種しない従業員の保険料に上乗せ負担を求めようというものである。
といった背景があり、企業としては取り組みやすい面がある。もちろん、制度設計には充分な配慮が必要だが、既に取り組んできている方策については、従業員の理解が得やすいだろう。
- 喫煙者に上乗せ負担を求めることは既にやっている(「Topics2016年5月19日 健康管理策ルール決定」参照)
- EEOCが5月28日に公表したガイドラインで、従業員に対してワクチン接種を促すインセンティブを設けることは可能であると示している
※ 参考テーマ「人事政策/労働法制」、「医療保険プラン」、「人口/結婚/家庭/生活」
Source : | 3 charts showing the evolution of federal discrimination charges (HR DIVE) |
上記sourceは、EEOCへの提訴数の推移を紹介している。EEOC統計のオリジナルは、ここを参照。※ 参考テーマ「人事政策/労働法制」
- 2020年の状況(含む理由)
- 1997年以降の提訴数の推移
- 人種、性、障がい別の推移
CNNが、ワクチン接種をしないまま出勤して働いたことを理由に、3人を解雇した。
NJ州の医療機関が、ワクチン接種を拒否したことを理由に、6人の医療従事者を解雇した。
NC州の警察幹部が、ワクチン接種に関する情報を開示しなかったことを理由に、解雇された。
その他、出勤時にワクチン接種を条件とする企業が次々に報じられている(「Topics2021年8月8日 7月も雇用大幅増」参照)。連邦政府も職員、契約企業にワクチン接種を求めることとしており、全米商工会議所も歓迎している(「Topics2021年8月1日 連邦職員にワクチン接種要請」参照)。
加えて、法務省(Department of Justice)は、政府・自治体、企業が従業員に対して(FDA緊急承認も含めて)ワクチン接種を義務付けることを禁じていないとの立場を表明している。また、EEOCも、従業員の間に差別がない限り、企業が職場に出勤する全従業員に対してワクチン接種を義務付けることを禁じてはいない、とのガイドラインを示している。
それでも、全米の企業が従業員に対するワクチン接種義務化に向けて一斉に動いているわけではない。むしろ慎重な姿勢を維持している。
先ずは、従業員からの反発を警戒している。以前に紹介したKFFのアンケート調査結果を確認すると、要求されればワクチンを打つという人の割合は極めて小さく、絶対にワクチンを打たないとしている人の割合を見ると、大卒かどうか、所得が高いかどうか、白人か黒人かヒスパニックか、といったところで顕著な差が残っている(「Topics2021年8月6日 ワクチン接種動向(7月)」参照)。つまり、科学的な知識、情報が国民全体に行き渡っていない中で従業員のワクチン接種を義務化すれば、反発を招き、集団訴訟、集団退職といった事態を招きかねない。また、それが自社内に収まらず、不買運動につながらないとも限らない。
実際、WalmartやTargetは、本部・機能を有している職場の従業員にはワクチン接種を義務化しているが、売り場や配送拠点などの現場の従業員には義務化していない。まだまだ理解を得られてはいないとの判断なのだろう。
次に、やはり労働組合からの反発が表面化する可能性が残されている。労働組合は、職場の安全確保という観点からワクチン接種に積極的になってもよい反面、組合員の自由意思の確保が解雇につながるような局面では、組合員側に立たざるを得ない。
ワクチン接種義務化に関する次の転換点は、FDAによるCOVID-19ワクチンの正式承認ではないだろうか。現在の緊急承認の状況では、通常の医薬、ワクチンのような安全性が確保されているとは言い難い。しかし、正式承認となれば、接種の義務化への流れは強まって来るのではないかと思う。
専門家によれば、FDAによるワクチン正式承認は、数週間から数か月後と見られている。一年後には今と違った世界が広がっているかもしれない。
※ 参考テーマ「人事政策/労働法制」、「人口/結婚/家庭/生活」
Source : | Job Openings and Labor Turnover Summary (BLS) |
8月9日、BLSが6月末の求人数を発表した。6月末の求人数は1,010万人となった。5月末から59万人の増加となり、増勢は続いている(「Topics2021年7月10日 求人数急増」参照)。失業者数/求人数も低下し続け、6月はちょうど0.9と、ついに1を割った。マクロでも人手不足が確認された(「Topics2021年8月8日 7月も雇用大幅増」参照)。
BLS自発的失業(Quits)も、5月末は一旦減少したものの、6月末は再び増加した(「Topics2021年7月1日 自発的離職が急増」参照)。
BLSQuits level, Total nonfarm - 2019~2021年※ 参考テーマ「労働市場」
Quits level, Total nonfarm - 2007~2021年