4月19日 H-1Bビザの見直し 
Source :President Trump Promotes "Buy American and Hire American" (The White House)
4月18日、トランプ大統領は、遊説中のWiscon州で、"Buy American and Hire American"に関する大統領令に署名した。その中で、H1-Bビザ発給の厳格運用により悪用をやめさせるとともに、本来の目的通りとなるよう制度変更を検討するよう求めている。

H-1Bビザは、本来、高い技能を持った外国人に対して発給されるべきなのに、研究調査によると発給された80%の外国人の給与は低レベルの報酬しか得ていないという。これを捉えて、トランプ大統領は、「H-1Bビザにより、アメリカ人の職が低所得の外国人により奪われている」と主張している。

同時に、演説の中で「H-1Bの発給対象については完全にくじ引きになっていて、これは間違っている」とも主張しているが、そこには少々事実誤認があるようだ。

関連の専門誌記事によると、制度運営は次のようになっている。 実は、前日の4月17日、USCISは、2018年度のH-1Bビザ対象者の選出を終了したと発表した。つまり、制度変更は、早くとも来年の今頃からとなる。

なお、2018年度の応募総数は199,000件であった。

※ 参考テーマ「移民/外国人労働者

4月18日 製造業規制緩和のターゲット 
Source :EPA emerges as major target after Trump solicits policy advice from industry (Washington Post)
トランプ政権が成立してからすぐの1月24日、トランプ大統領は商務省に対して、アメリカ国内の製造業に関する規制緩和を検討するよう指示を出した(Presidential Memorandum)。その後、商務省には168件のコメントが寄せられた。下図はその省庁別、分野別内訳である。
省庁別に見ると、環境保護庁(EPA)についで、労働省(DOL)関連が多くなっている。オバマ政権下で労働関係の規制が強化、増加したことに対する反発だろう。この図は、大統領予算提案骨子と似ている(「Topics2017年3月21日 大統領予算提案骨子」参照)。
トランプ政権は、環境保護庁、労働省の規制も予算も減らそうとしているのである。環境保護庁の規制緩和は当該製造業にのみ関係するかもしれないが、労働省関係の規制緩和については、全産業に影響が及ぶ可能性がある。

商務省は、3月27日に、NAM(National Association of Manufacturers)のメンバー企業100社と対応を協議しており、本格的な詰めの作業を行なっていると思われる。ロス商務長官は、5月末にも報告書を公表する予定としている。

※ 参考テーマ「人事政策/労働法制

4月17日 ACA規制変更
Sources : White House finalizes ACA rule to strengthen individual market (Modern Healthcare)
Market stabilization rule could collapse the ACA exchanges (Modern Healthcare)
4月13日、連邦政府(HHS)がPPACA関連の規制変更を公表した。トランプ大統領からの指示で規制の見直しを行なってきた結果(「Topics2017年1月22日 PPACA規制の見直し指示」参照)であり、2018年から適用される。

主な規制変更は次の通り。
  1. 加入申請期間を3ヵ月から、11月1日〜12月15日の6週間(約半分)に短縮する。

  2. 特別加入期間での加入申請の要件を厳格化する。

  3. 保険料未払いの加入者に関する給付を、保険者が拒否できるようにする。

  4. 診療費に対する保険給付の比率の下限を、68%から66%(Silver Plans)に引き下げる。

  5. 保険プランの医療機関ネットワークが適切かどうかを判断する権限は、連邦政府から州政府に移行する。
上記1.と2.について、保険会社は激しく反発している。申請期間の短縮は、加入者の減少をもたらし、リスクプール機能の低下、保険料の高騰を招くからだ。しかも、上記1.の期間は、Medicareの加入申請期間(10月15日〜12月7日)と重なる部分がある。保険会社としては、安定した市場で加入も確実なMedicareの方に経営資源を寄せてくる可能性が高い。

しかも、今回の規制変更では、予てから保険会社が求めていた2つの項目について、全く言及していない。
  1. 個人の保険加入義務を継続するのかどうか

  2. 保険料補助金制度を継続するのかどうか
これら2項目について言及がなければ、2018年以降のExchnageが安定した制度となるかどうか、まったく見通すことができない。トランプ政権は、意図的にExchange市場の将来像を見せないことで、Exchnage市場を崩壊させようとしているのだろうか。それとも、政権の体制が整わず、単純に判断が間に合っていないということなのだろうか。

※ 参考テーマ「無保険者対策/連邦レベル

4月13日 学生ローン負債者がパニック 
Source :Panicked Borrowers, and the Education Department’s Unsettling Silence (New York Times)
学生ローンを背負っている若者がパニックに陥っている。返済が免除されると思っていたのに、急にそれが確実ではなくなってきたからだ。

アメリカには学生ローン返済の免除制度(public service loan forgiveness program)がある。免除を受けるための要件は次の4点。
  1. 120ヵ月分の返済を行なっている。
  2. 適格な職場(政府、非営利団体等)でフルタイマーとして雇われている。
  3. 適格なローン制度を利用した。
  4. 返済方法が適切である。
この免除制度は10年前に法制化された。これまでは返済免除資格があると思われる学生ローン負債者は、毎年、FedLoan Servicingという機関に免除資格申請書を提出し、有資格かどうかの認定を受ける。ローン負債者がこれまで有資格との認定を受けていたにもかかわらず、突然、理由も説明されずに、不適格との連絡を受けるケースが増えている(New York Times)。さらには、先月末、連邦教育省が「FedLoan Servicingの有資格判定は、拘束力がなく、いつでも覆る可能性がある」との意見書を法廷に提出したため、全米の学生ローン負債者は驚いてしまっている。これまで免除されることを前提に職場を選び、人生設計・金融プランを立てていたのに、それが全部台無しになるかもしれないからだ。

有資格判定はかなり複雑らしく、特に、「適格な職場」に当たるのかどうかは、統一的な解釈が示されていないらしい。

実は、免除を受ける要件の1.にある通り、制度ができてから10年間は、実際に負債が免除されることはなかった。それが、今年10月に第一陣の免除判定が行なわれる。その直前になって、教育省がどうなるかわからないとの意見書を出したのだから、激震が走ったのも当然だ。 学生ローン返済免除候補者は、55万人以上いると見られている。その中には1,000万円近くの負債を抱えている若者もいる。返済免除を期待して公的機関で働いてきた人達だ。大きな社会問題になりかねない。

※ 参考テーマ「教育

4月11日 CA州:残業代新ルール法案 
Source :California Lawmakers Aim to Implement Overtime Rule Despite Federal Delay (SHRM)
CA州議会は、残業代新ルール法案(A.B. 1565)を検討している。

先に紹介した通り、CA州法では、最低賃金と残業代適用限度額が連動している(「Topics2016年10月20日 CA州:最低賃金と残業代新ルール」参照)。具体的には、
残業代適用限度額=最低賃金×2×1080h
となっている。

一方、現在州議会で審議されている新法案(A.B. 1565)は、2018年1月1日より、従業員規模に拘わらず、「月収$3,956(年収$47,476)」と「最低賃金の倍」の大きい方を残業代適用限度額とする、という内容である。明らかに、頓挫した連邦ルールを意識している(「Topics2016年11月24日 残業代新ルール施行延期」参照)。
CA州最低賃金
(従業員26人以上)
CA州残業代適用限度額
現行ルール新ルール法案
2017年1月$10.50/h$43,680-
2018年1月$11.00/h$45,760$47,476
2019年1月$12.00/h$49,920同左
2020年1月$13.00/h$54,080同左
2021年1月$14.00/h$58,240同左
2022年1月$15.00/h$62,400同左
2023年〜CPI上昇率で引き上げ
上の表でも判るように、新ルール法案が成立したとしても、影響が生じるのは2018年の1年限りであり、その後は最低賃金の引き上げによって適用限度額は引き上げられていく。このことからもわかるように、今回の新ルール法案は、ワシントンD.C.のトランプ政権に対抗するというCA州議会民主党の意思を表明したものに過ぎない。

州知事は署名を拒否するかもしれないが、州議会民主党は州知事の拒否権を覆すだけの数(両院とも2/3以上)を握っている。連邦政府(R)対州議会(D)の戦いが始まる。

※ 参考テーマ「人事政策/労働法制