10月20日 CA州:最低賃金と残業代新ルール 
Source :Uncertainty Abounds as California Minimum Wage Continues to Rise (SHRM)
来年1月より、CA州の最低賃金引き上げが始まる(「Topics2016年4月7日(1) CA州:最低賃金$15」参照)。これはこれで、CA州の経営者の間では不安や不満が高まっているし、政策論議としても賛否両論が続いている。

一方、連邦政府が打ち出している残業代適用対象者の新ルール(「Topics2016年5月20日 残業代対象者新ルール」参照)が、このCA州最低賃金引き上げと絡んで、経営課題となっている。

CA州では、最低賃金と残業代適用ルールが結びついている。具体的には、
残業代適用限度額=最低賃金×2×1080h
となっている。これを、連邦政府が打ち出した残業代適用限度額と比較すると、次のようになる。
CA州最低賃金CA州残業代適用限度額連邦残業代適用新限度額
現  在$10.00/h$41,600$23,660
2017年1月$10.50/h$43,680(2016年12月1日〜)$47,476
2018年1月$11.00/h$45,760$47,476
2019年1月$12.00/h$49,920$47,476
2020年1月$13.00/h$54,0803年ごとにインフレ調整
2021年1月$14.00/h$58,240
2022年1月$15.00/h$62,400
2023年〜CPI上昇率で引き上げ
2017、2018年については、連邦残業代適用新限度額がCA州限度額を上回ることになり、CA州企業は連邦限度額を適用しなければならなくなる。これにより、CA州企業は、最低賃金引き上げによるコストアップ、残業代対象者の急増という二重のコストアップ要因を抱えることになる。もちろん、新たに残業代対象者となる従業員への対策も必要である(「Topics2016年10月6日 残業代新ルールの施行日」参照)。

※ 参考テーマ「人事政策/労働法制」、「最低賃金

10月19日 Simple Choice登場 
Source :HealthCare.gov Will Add ‘Simple Choice’ Plans in Effort to Improve Value (New York Times)
11月1日から始まる、来年の保険加入手続きにおいて、新顔の保険プランが提供されるという。

"HealthCare.gov"がExchange保険プラン手続きを行っている州、つまりは主に連邦立Exchangeにおいて、"Simple Choice"の提供が開始される。同プランは、免責額の設定がなく、かつ基本的な診療はカバーされているという内容になるそうだ。

具体的なプラン内容は公表されていないそうだが、免責額の設定がないことから、保険料、診療ネットワーク、付加的サービスだけで保険プランの内容を比較できることになる。それゆえ"Simple"だという訳である。

それでも、保険料の設定額については規制がないので、安い保険プランとなるかどうかはわからない。ただ、免責額を負担に感じる加入者にとっては朗報だ。

※ 参考テーマ「医療保険プラン」、「無保険者対策/連邦レベル」、「無保険者対策/州レベル全般

10月18日 保険料支払猶予期間 
Source :Marketplace Grace Periods Working as Intended (Center on Budget and Policy Priorities)
細かいテクニカルな話題だが、Exchangeにおける保険料支払いシステムの一端が伺われるので、内容をまとめておきたい。上記sourceの主張のポイントは次の通り。
  1. Exchangeにおける保険料支払猶予期間は3ヵ月となっている。保険会社はこれが悪用されているとして、短縮(例えば1ヵ月)を要望している。

  2. しかし、実態から見て保険料支払い猶予期間を悪用しているという確証はない。

  3. さらに、保険料補助金の返還b、ペナルティの支払い等を考えると、猶予期間を悪用する経済的インセンティブは働かない。

  4. むしろ、猶予期間を短縮すると、やむを得ず無保険者となってしまう人数が増えてしまう可能性が高い。

  5. Exchangeにおける支払猶予期間を3ヵ月としているのは、バランスの取れた妥当なルールである。
まず、保険料支払猶予期間の長さについてである。

上記sourceによれば、多くの州では、医療保険プランの保険料支払猶予期間を1ヵ月と定めている。しかし、PPACAでは、Exchangeにおいて、保険料補助金(premium tax credit)を受け取る資格のある加入者については、猶予期間を3ヵ月と定めている。

次に、支払猶予期間中の保険給付の取り扱いである。

支払猶予期間が過ぎて保険契約を打ち切られた加入者の負担は次のようになる。 また、支払猶予期間の悪用が認められない根拠として、次の2点を挙げている。
  1. 全国データはないものの、WA州のデータが有効である。これらのデータから見て、悪用しようとする意図は見えない。
    1. 2015年に支払猶予期間に入った加入者のうち、62%はその後1回は保険料を支払っている。

    2. その人達を平均すると、支払猶予期間に入って20以内に保険料の支払いを行なっている。

    3. 支払猶予期間に入った人のうち、結局保険契約打ち切りになったのは14%のみである。

  2. Exchange加入者の推移を月ごとに追っていくと、なだらかに減少している(もしも悪用しようとする人が多ければ、最後の3ヵ月でいきなり減少していくはずである)。

※ 参考テーマ「無保険者対策/連邦レベル

10月14日 Medicaid拡充の効用 
Source :Medicaid Expansion Producing State Savings and Connecting Vulnerable Groups to Care (Center on Budget and Policy Priorities)
PPACA施行後、同法の大事な柱の一つであるMedicaid拡充に踏み切ったのは、31州+D.C.となっている(右図)。

拡充していない州知事・政府は、主に共和党の強いところであり、州政府の負担が増えることを反対理由に掲げている。しかし、上記sourceの分析では、Medicaidを拡充しても州政府のコスト節減効果が見込めるうえ、その他の効用も認められるという。Medicaid拡充の主な効用は次の通り。
  1. PPACAの規約上、拡充分の一部は州政府負担となるものの、無保険者に関わるコストの低減、加入者に関わる保険会社からの税収の増加等から、財政上の費用節減効果が認められる。しかも、その効果は長期にわたって続くものとみられている。

  2. 低所得層に顕著にみられるメンタル障害、薬物乱用などに対して診療ができるようになるため、結果的にコストが安く済む。

  3. 社会復帰した受刑者への医療サービスができるようになるため、再犯が減少している。
確かに、財政上の計算だけでMedicaid拡充の効果を計測することはできない。社会の安定、保健政策に大きな影響をもたらしているのかもしれない。

※ 参考テーマ「無保険者対策/州レベル全般」、「無保険者対策/連邦レベル

10月13日 Soda Taxに援軍 
Source :WHO calls for tax on sugary beverages to address obesity (Modern Healthcare)
アメリカでは、2010年前後から、Soda Taxの議論が活発になってきた(「Topics2012年9月17日 ソーダ規制は"nanny state"?」参照)。

最初は、PPACAの財源探しの中で浮上してきたが、最終的には見送られた(「Topics2010年2月10日 Soda Taxの行方」参照)。また、先陣を切ってきたNY市は、法案を通したものの施行直前で司法からストップがかかり、結局施行は見送られた(「Topics2013年3月12日 NY市のソーダ規制に無効判決」参照)。

そうした見送りが続いた後、転機となったのはCA州Berkeley市で、2015年1月から最初の加糖飲料課税を施行している(「Topics2014年11月8日 Soda Tax 誕生」参照)。また、今年6月には、Philadelphia市が、1オンスあたり¢1.5の加糖飲料課税を行なう法案を可決した。

さらに、11月の大統領選と同時に、4つの地域(Boulder Colo., San Francisco, Oakland and Albany, Calif.)で加糖飲料課税に関する住民投票が予定されている。これらの地域で可決されれば、大きな流れとなってくる可能性が出てくる。

そのうえ、ここに来て強力な援軍が出現した。WHOである。10月11日に公表されたWHOの報告書では、次のように指摘している。
  1. 肥満をなくしていくために、各国政府が加糖飲料課税を支援するよう求める。

  2. 加糖飲料価格に20%の追加課税をすれば、加糖飲料の消費量は明らかに減少する。

  3. 補助金によって果物や生野菜の価格を10〜30%引き下げれば、それらの消費は増大する。
もちろん、飲料メーカーの団体などは猛反発しているが、流れはできつつあるようである。

※ 参考テーマ「人口/結婚/家庭/生活

10月12日 次は予見可能シフト法 
Source :Predictable Scheduling Laws: The Next Trend in Workplace Regulations (SHRM)
職場の働き方関連法制で、次のトレンドとなりそうなのが、『予見可能シフト法』ということだ。既に2015年にはSan Franciscoが導入し、現在、Seattle市、NY市が法案を審議している。 企業側としては使い勝手が悪くなる、との評価だろうが、時間の面でも収入の面でも目安が明確になるということは、労働者の生活にとっては望ましい方向性である。

※ 参考テーマ「人事政策/労働法制

10月11日 賠償基金からの支払い 
Source :Obama administration may use obscure fund to pay billions to ACA insurers (Washington Post)
本格的なExchange稼働とともに設立されたCO-OPsが相次いで閉鎖、または経営難に陥っていることは紹介している。その苦戦の最大の要因は、CMSが用意していたリスク調整のための財政支援が大幅に縮小されてしまったからだ(「Topics2015年10月17日 CO-OP:CMSの締め付け」参照)。

しかし、この財政支援縮小は、CO-OPsに限らず、大きな保険会社の経営戦略にも影を落とした。大保険会社が相次いでExchageからの大幅撤退を表明している理由の一つともなっている(「Topics2016年8月19日 Aetnaも大幅撤退」参照)。

このようになってしまったのは連邦議会共和党による財政支出抑制策であるが、おかげで連邦政府は、莫大な債務を負ってしまった。2014年については、未払いとなっている。2014年分は$2.5Bにものぼっており、2015年については未公表であるが、同様規模の債務が上乗せされることになるとみられる。

こうした状況を解消するため、保険会社に対して背負ってしまった債務を、連邦財務省(DOT)が持つ訴訟対応基金から支払う案が検討されているそうだ。

同基金は、裁判で命じられた賠償金等を支払うための基金である。今回の場合もいくつもの保険会社・機関が訴訟を起こしており、和解・示談のための支出だとすれば、筋は通る。しかし、PPACAで規定されている支払いを同基金で賄うのは、連邦政府内の資金の「流用」という印象がぬぐえない。

※ 参考テーマ「無保険者対策/連邦レベル」、「医療保険プラン