Source : | OUTSIDE PRESSURE MOUNTING ON CONGRESS TO STOP MEDICARE PART B SPIKE (Bloomberg) |
Medicare Part Bの保険料引上げが目前に迫っている。理屈の流れは次の通り。このような事態を回避するため、連邦上下両院の民主党は、Mediare保険料凍結法案を提出している。 しかし、いずれも共和党からの共同提案者はなく、審議は止まったままである。保険料を凍結すると、$7B超の財源が必要となるからだ。
- Social Securityの2016年COLA適用は見送られた。
- 負担急増回避条項(Center for Medicare Advocacy)により、Medicare加入者の70%の保険料引き上げは見送られる。
- しかし、適用とならない残り30%(約1,650万人)については、適用者が負担するはずだった分も含めて負担することになるため、保険料は$104.90/Mから$159.30/M、何と52%アップとなる。
- さらに、Medicare Part Bの免責額(加入者全員)も52%引き上げられ、$147から$223となる。
※ 参考テーマ「Medicare」、「公的年金改革」
Source : | This study is forcing economists to rethink high-deductible health insurance (Vox) |
2016年も、HDHP(高免責額プラン)+HSAの組み合わせは、これまでも紹介してきた通り、さらに広がる勢いを増していきそうである(Benefitfocus)。
ところが、2013、2014年のHDHPの実態を調査した結果、『HDHP+HSAの組み合わせでは、医療費抑制という目的は達成できたものの、費用対効果を考慮した選択が進んだということではなく、単に受診を減らす結果となった』との結論が導かれた。
理論上は問題なしと考えられた年途中の診療価格変更(全額自己負担⇒保険給付+自己負担)は、実際には大きな影響をもたらすことがわかった訳だ。別の調査では、アメリカ人は医療機関よりも自動食器洗浄機の選択に時間をかけているそうだ。結局、医療については、負担比較のためのツール、情報が不十分なのだ。よって、コストが安くなる選択肢を探すのではなく、単純に受診を減らす行動にでることになる。
- 7.5万人以上の従業員・家族を持つ大企業は、2013年、HDHP+HSA($3,750)に移行した。そこで起きた変化は次の通り。
- 受診者一人当たりの費用:$5,222.60(2012年)⇒ $4,446.08(2013年)(約15%の減少)
- 同じく救急治療費用:25%減、外来費用:18%減、メンタルヘルスサービス:6%減
- ところが、外来一回当たりの返平均費用は減少していない。
- 病気がちの従業員ほど受診回数を減らし、一旦免責額を超えると受診頻度は急に多くなる。
おそらく、本当の結果が判明するには、10年単位の期間が必要であろう。受診抑制の結果、後年の医療費が膨らんでいることがわかるためには、相当精緻な分析が求められる。
※ 参考テーマ「医療保険プラン」、「HSA」、「無保険者対策/連邦レベル」
Sources : |
Half of America's remaining uninsured are eligible for health coverage (Modern Healthcare) 10 million people expected to have Marketplace coverage at end of 2016 (HHS) |
Kaiser Family Foundationは、現在の無保険者(65歳未満)3,230万人のうち、およそ半数は何らかの財政支援を受けることができると推計している。ポイントは次の通り。また、CBOは、『Medicaid、SCHIP、Exchangeを通じた保険加入者数が2015年1,760万人から2016年には3,300万人に大幅増加する』と推計している。 一方、HHSは、10月15日、『2016年末時点でExchange加入者が1,000万人に達する見込みである』と公表した(「Topics2015年2月20日 2年目は1,140万人加入」参照)。2015年末で910万人と見込んでおり、年初めの見込みとほぼ同水準である。
- 2015年の無保険者(65歳未満)は、約3,230万人。推計のベースは、連邦政府が公表した2014年の無保険者数(「Topics2015年9月18日 2014年無保険者大幅減少」参照)。
- 上記無保険者のうち、何らかの財政支援を受けられる可能性があるのは1,570万人、49%に達する。
- 財政支援を受けられるのに保険加入しない理由はたくさんあるが、上位は次のようなものと考えられている。
- 加入可能な保険プランがあることを知らない、気付いていない。
- 加入資格に関する情報が混乱している。
- 保険料補助金を受けてもなお負担が重いと考える人が多い。
- 財政支援を受けられない人達の中で、約3割は不法移民である。
Exchange加入者の増加幅はだんだん縮小してきており、やや飽和感が出てきつつあるようだ。理論上、ブレークスルーは不法移民ということだが、現在の政治状況から考えても、Obama大統領任期中は難しい。
※ 参考テーマ「無保険者対策/連邦レベル」
Source : | Financial health shaky at many Obamacare insurance co-ops (Washington Post) |
CO-OPs5件目の破綻が公表された。しかも、今度もPew財団が『健闘している』と評価していたところである(「Topics2015年9月29日 CO-OP:4件目の破綻」参照)。
10月9日、Kentucky Health Cooperative Inc.は、2016年以降保険プランを提供しないと公表した。同CO-OPには約51,000人が加入していた。これは、KY州のExchange"Kynect"全体の加入者88,904人の実に70%にあたる(Kentucky.com)。
これだけ健闘していたKentucky Health Cooperativeが、ここに来て営業停止に追い込まれたのは、ずばり、連邦政府(CMS)が用意している財政支援を大幅に絞ったからと言われている(Modern Healthcare)。
CMSは、PPACAの本格施行に際し、保険プラン提供機関の財政安定化、逆選択対応、保険料抑制を目的に、"3Rs"(Reinsurance, Risk corridors, Risk Adjustment)と呼ばれる財政調整プログラムを用意している。ところが、その一つで損失補てんを目的としたRisk corridors programについて、10月1日、CMSは請求を受けた金額のわずか12.6%しか支払わないことを決定した。この決定に伴い、Kentucky Health Cooperativeは、請求した$77Mのうち$9.7Mしか受け取れないことになってしまい、財政の行き詰まりがはっきりしてしまった。
CMSがこうした決定を行った背景には、CO-OPsが"3Rs"に依存していることに対する警戒感があるようだ。
しかし、支払いを絞り込んだことによって影響を受けるのは、ひとりKentucky Health Cooperativeにはとどまらないのではないか。真剣な経営再建努力を重ねなければ、CO-OPsの存続は難しいかもしれない。
と書いて、アップしようとしたところ、さらにCO-OPsの破綻が報じられた(Modern Healthcare)。これで合計8件の破綻である。KY州以降4件連続と、まさにドミノ倒しの様相である。
- Community Health Alliance(TN):10月14日、年末で保険プラン提供を停止することをTN州政府に通知した。
- Colorado HealthOP:10月16日、CO州政府は閉鎖命令を公表した。同CO-OPは法廷抗争に持ち込む構えである。
- Health Republic Insurance:同日、年末で保険プラン提供を停止することをOR州政府に通知した。
※ 参考テーマ「CO-OP」、「無保険者対策/連邦レベル」
Source : | In Courts, Running Out the Clock on Obama Immigration Plan (New York Times) |
Obama大統領が進めてきた不法移民保護大統領令は、第5控訴裁判所の判決が遅れているため、大統領の任期中に本格執行される可能性はなくなってきた(「Topics2015年6月13日(1) 大統領令施行停止」参照)。これから判決が出て、連邦最高裁に上がり、認める判決が出たとしても、大統領の任期は半年足らずしか残されておらず、規模も10万人単位(当初予測は400万人)に留まることになるそうだ。
残念ながら、不法移民に関するObama大統領のレジェンドは形成されない模様だ。
※ 参考テーマ「移民/外国人労働者」
Source : | D.C.'s 16-week family leave plan would be most generous in U.S.(The Washington Post) |
10月6日、Washington, D.C.議会に、新たな有給休暇制度法案(Universal Paid Leave Act of 2015 (B21-0415))が提出された。概要は次の通り。失業保険のような形で、企業が新たな公的負担を行い、それを財源に休暇中の給与を支給しようというものである。有給休暇を提供する企業自身が負担して従業員に支払うのではなく、D.C.の公的制度として給付しようというもので、新たな社会保険給付の性格を有している。
- 家族ケアや病気療養のために、16週の有給休暇を付与する。
- 対象者は次の通り。
- D.C.で働く正規・非正規従業員
- 連邦政府機関で働くD.C.住民(少額の自己負担により加入選択可能)
- 連邦政府機関で働くMA州、VA州住民は対象外
- 給付額
- 年間所得$52,000以下の従業員:給与の100%
- 年間所得$52,000超の従業員:週あたり$1,000+超過分の50%(最大週あたり$3,000)
- 財 源(企業負担)
- 年間給与$150,000以上の従業員の場合、一人につき給与の1%
- 最低賃金の従業員の場合、一人につき給与の0.6%
当然のことながら、D.C.商工会議所は強く反対している。
※ 参考テーマ「人事政策/労働法制」
Source : | Obama signs law preventing premium hikes under health law (AP) |
小規模企業の定義を現行通りで継続する法案(The Protecting Affordable Coverage for Employees Act (PACE), HR 1624)は、その後、10月1日に上院で満場一致により可決、10月7日に大統領が署名し、成立した(「Topics2015年10月1日 PPACA負担増の回避策」参照)。
それにしても、法案名も報道タイトルも偏向している。誰にとってaffordableなのか、誰の保険料を抑制するのか。PPACAの下で、従来の小規模企業従業員(従業員50人未満)の保険料は下がる、または伸びが抑制される可能性があったにもかかわらず、今回の法律が成立したことでその可能性は大きく低下してしまった。ExchangeでのSHOP保険料も、この影響を受けるに違いない。
誰のための政策なのか。大統領選への思惑により混乱し始めたのではないか。
※ 参考テーマ「無保険者対策/連邦レベル」、「医療保険プラン」