2月20日 2年目は1,140万人加入 
Source :Obama Cites Health Plan Tally of 11.4 Million (New York Times)
Obama大統領は、2月17日、2015年のExchange加入者は1,140万人に達したと発表した。加入期間末に技術的な問題で加入手続きが終了していない人がいるため、来週になるとこの数字は若干増加するということである。昨年よりも加入者数は増えそうだが、その主な理由はペナルティのようである。

ただし、この加入者数が年末まで維持されるわけではない。保険料を払わなかったり、加入資格がなかったりして、年末までに段々減っていくからだ。ちなみに2014年は、
2014年4月 800万人 ⇒ 10月 710万人 ⇒ 11月 670万人
と、最終的には当初比で16%減少した。

ちなみに、HHSは、年末時点で910万人加入を目指しているという。2014年よりは低めの残留率を見込んでいる。

※ 参考テーマ「無保険者対策/連邦レベル

2月19日 大統領令執行延期 
Source :Dealt Setback, Obama Puts Off Immigrant Plan (New York Times)
2月16日の連邦地方裁判所の判決を受け、Obama大統領は、国外退去猶予措置の執行の延期を発表した(「Topics2015年2月17日 大統領令差止請求認める」参照)。具体的には、18日に予定されていた退去猶予申請書の受付を延期することとなった。しかも、司法で決着がつくまで、という条件までついている。

大統領府はすぐさま控訴裁判所への上告の手続きに入るということだが、『司法で決着がつくまで』ということになると、ひょっとすると、来年半ばまで申請受付が行われない可能性もある。移民政策について、Obama大統領は大きく後退したとの印象が拭えない。

※ 参考テーマ「移民/外国人労働者

2月18日 連邦最高裁判決後の対応 
Source :Obamacare rescue ruled out by some states, others weigh options (Reuters)
連邦立Exchangeにおける保険料補助金(tax credits)の合法性に関する連邦最高裁の判決に対して、関心が高まっている。もしも違法との判断になった場合、その影響は甚大だからである(「Topics2015年1月14日 保険料補助金が違法になったら」参照)。

違法判決が出された場合の善後策として、州政府が連邦政府に代わって補助金を提供するという選択肢も考えられるが、州政府の財政負担の大きさを考えると、その可能性は低い。もう一つ、改めて州立Exchangeを設立することで、合法的に連邦政府から補助金を出してもらうという選択肢も考えられる。上記sourceは、この後者を検討しているかどうかを連邦立Exchangeが運営されている州の知事に問い合わせた結果を紹介している。まとめは、この表(注2)の通りである。 そもそも連邦立Exchangeとなっている州は、共和党勢力が強く、PPACAに反対する立場であり、連邦最高裁が違法判決を出したからといって、その救済策として州立Exchangeを設立する可能性は低い。しかも、昨年の選挙で共和党知事が増えている状況ではますます可能性は低下している。

上記sourceによると、州立Exchangeを設立する意向はない(××)、州議会共和党の反対で設立は難しい(×)としている9州では、合わせて140万人が保険料補助金を受け取ることでExchangeで保険加入している(2015年)。この人たちは、違法判決が出たらたちまち補助金がカットされ、加入を継続することは難しくなる。

こんな大混乱を招くような判決を果たして連邦最高裁は出すのだろうか。それとも、最近主張を強めている文言どおりの解釈に拘るのだろうか(「Topics2015年1月29日 退職者医療プランの受給権を否定」参照)。はたまた、大統領権限を振り回すObama大統領に愛想を尽かして、混乱を承知で違法だと判決するのだろうか(「Topics2014年12月8日 最高裁も反転攻勢か」参照)。

※ 参考テーマ「無保険者対策/連邦レベル」、「無保険者対策/州レベル全般」、「司法

2月17日 大統領令差止請求認める 
Source :Obama Immigration Policy Halted by Federal Judge in Texas (New York Times)
2月16日、テキサス州の連邦地方裁判所は、26州連名の大統領令差止請求を認める判決を下した(「Topics2014年12月5日 17州が大統領令差し止め訴訟」参照)。今月18日には、拡充された国外退去猶予措置の申請が開始される予定であったため、その直前に差止請求が認められたことになる。

ただし、法律の専門家によると、おそらく第5控訴裁判所から連邦地裁判決の執行停止命令が即座に下されることになるようだ。

それにしても、26州がテキサスでObama大統領令に反対する訴訟を起こしたというのは、PPACAの時を想起させる(「Topics2010年4月17日 連邦政府 vs 州政府」参照)これから長い司法過程が待っているのだろうか。

※ 参考テーマ「移民/外国人労働者

2月15日 MBAの交際費 
Source :At Business School, Networking Can Cost $18,000 a Year (Bloomberg Business)
MBAの学生達は、ネットワーク作りのために多額の交際費支出をしているそうだ。例えば海外旅行やスキーなどである。しかも、上位のランクの学校ほど、交際費は多くなる。

そうした行動につながっていく思考回路は次のようになっている。
交際仲間の中から10年後にはCEO候補が出てくる。もしかしたら自分かもしれない
 ↓
そうなれば、自分のキャリアアップにつながる
 ↓
将来の収入がそれだけ大きくなるのだから、多額の借金をしてでも使っちゃえ
上記sourceによると、MBAの授業料は2年間でおよそ10万ドル。Tuck Schoolの学生の負債額は中位数で9万ドル、Wharton Schoolの学生は6.6万ドル、全米平均では4万ドル。4年生大学の卒業生が抱える負債額は$26,000〜29,000と言われているので、2〜3倍の負債を抱えることになる(「Topics2014年4月13日 学生ローン返済方法」参照)。

確実に得られた所得でもないのに見込みで消費してしまうところは、アメリカ人の消費行動そのままだが、ちょっと桁が大きすぎる。こっちは学生時代、とにかく金を使わないで旅行するために自転車に乗っていたものだから、彼我のギャップに驚いてしまうが、そもそもの目的が違うのだから仕方ないか。

※ 参考テーマ「教育

2月14日 CA州最低賃金論:所変われば 
Source :Businesses find creative ways to cope with minimum wage hikes (Los Angeles Times)
California州(CA州)の最低賃金は、NY州のそれを上回っている(Wikipedia)。
State2015年2016年
California$9.00/h$10.00/h
New York$8.75/h$9.00/h
さらに、CA州内の市では、独自にさらに高い最低賃金を定めている。

上記sourceでは、その最低賃金の高い都市部のレストランが、最低賃金引き上げに対してどのような策を採ったのか、ルポで説明している。大まかに見ると、次のように類型化できそうだ。
  1. 営業時間を短縮する、客の少ない時間帯を閉店にする。

  2. 従業員の数を減らす、勤務時間を減らす。

  3. 食材の質を変更する。

  4. チップ収入を全従業員で分配する。
結局、大量のレイオフや倒産ということは起きていないが、最低賃金引き上げにより従業員の手取り収入が増えているということでもない。こうした結果になる要因の一つとして、レストラン業界の利益率の薄さが挙げられている。全米で民間企業の利益率が平均6.3%あるのに対して、レストラン業界は3%程度しかない(2013年)。この薄い利益率を確保するために、人件費の増分をどこかで削るという行動が出てくる。いわば総人件費管理の考え方である。

そして、面白いことに、上記sourceが示しているチップを受け取る労働者に対する見方が、NY州とは異なっているのである(「Topics2015年2月8日 Tipped Minimum Wage」参照)。

Los Angeles Times紙は、チップを受け取る労働者は他の労働者よりもかなり恵まれており、最低賃金の引き上げは、手当てする必要のないチップを受け取る労働者の賃金までも上げてしまうことになる、と見ているのである。このような見方に至る要因の一つとして、CA州に"Tipped Minimum Wage"の仕組みがないことが挙げられる。チップを受け取る労働者達は、最低賃金を受け取ったうえにチップを自らの収入とすることができるのである。従って、チップを受け取る労働者達の方が所得は高いということになる。

一方、NY州は"Tipped Minimum Wage"の仕組みを採用しており、同州の"Tipped Minimum Wage"は連邦レベルより高いものの、連邦レベルの一般最低賃金よりも低い水準に抑えられている。従って、チップ労働者の貧困率が高くなってしまう。そこで、"Tipped Minimum Wage"なんてやめてしまえ、という主張につながっていく。

CA州の新聞も、NY州の新聞も、隣の芝生は青く見えているのである。

※ 参考テーマ「最低賃金

2月13日 AL州:同性婚で大混乱(2) 
Source :Federal Judge Sets Hearing in Alabama on Same-Sex Marriage (New York Times)
Alabama州の同性カップルに対する結婚証明書発行について、混乱が続いている(「Topics2015年2月11日 AL州:同性婚で大混乱」参照)。発行手続きを始めていないcountyは、52から44にまで減ったようだが、実際に発行された証明書数はわずかにとどまっているようだ。 そうした混乱の中、動きが2つあった。
  1. 同性婚支援団体が連邦地方裁に対して、『Mobile County Probate CourtのDavis判事に同性婚証明書発行の命令を下す』よう求める提訴を行った。連邦地方裁は、12日に公判を開く予定にしている。

  2. 一方、Davis判事は、Alabama州最高裁に対して、AL州最高裁長官の通達の有効性について方針を示すよう求めた。
Davis判事は、同性婚支援団体から、Alabama州Probate Judgeの代表として標的に据えられてしまったので、州最高裁に善後策の指示を仰いだ、という構図だろう。

そして2月12日、連邦地方裁は即決で、Davis判事に対して同性カップルに結婚証明書を発行するよう命じた(Sacramento Bee)。

一方のAL州最高裁長官は、相変わらず、連邦最高裁に対しても異議を唱え続けると公言している。そもそもDavis判事が州最高裁に対して『州最高裁長官の通達は有効なのか』とお伺いしても、ほとんど意味がないだろう。

結局は、連邦地方裁と州最高裁のどちらが強い権限を有するのか、ということだろうし、おそらく根本解決は、6月の連邦最高裁判決と、州最高裁判事の退任まで待つしかないのではなかろうか。

※ 参考テーマ「同性カップル」、「司法

2月12日 高免責額が中間層に打撃 
Source :Dilemma over deductibles: Costs crippling middle class (Shreveport Times)
当websiteで ということを何度も紹介してきた。

上記sourceは、それが中間層の家計に打撃を与えているばかりか、受診抑制を引き起こして医療費増嵩につながりかねない、と指摘している。PPACAは低所得層の保険加入を促すことには成功したが、中間層への手当てがないということである。

民主党は
"医療保険改革に突き進んでいくとの決断が、今の民主党の混迷につながっている。民主党が医療保険改革を優先しようとすればするほど、中間所得層は『民主党は我々の方を向こうとはしない』と考えたのだ。"
と総括しているが、民主党が中間所得層の向かないどころか、中間層の家計にダメージを与えている、と理解されかねない(「Topics2015年1月4日 GOP vs DEM」参照)。

やはり、医療費そのものの抑制策を講じることが最大の政策課題であろう。

※ 参考テーマ「医療保険プラン」、「無保険者対策/連邦レベル」、「政治/外交

2月11日 AL州:同性婚で大混乱 
Source :Gay Marriage in Alabama Begins, but Only in Parts (New York Times)
同性カップルの結婚証明書の発行を巡って、Alabama州(AL州)で混乱が広がっている。ことの経緯は次の通り。 2月9日に結婚証明書が発行された同性カップルもあったようだが、同性婚支援団体の調査によると、AL州67のcountyのうち、52のcountyで結婚証明書の発行手続きが受け付けられなかったそうだ。州最高裁長官の通知を受けて、裁判官が発行手続きに入ることを躊躇したのだ。

AL州では、Probate Judgeという裁判官が結婚証明書を発行することになっており、その親玉が州最高裁長官となる。従って、今回の同性カップルへの結婚証明書について、Probate Judgeは、連邦地方裁の判決と州最高裁長官との間に挟まれて、身動きできないという状況に陥っている。

さらに、AL州知事は、 とのステートメントを公表するにとどまり、結婚証明書発行に関する判断をProbate Judgeに委ねてしまい、自ら混乱の収拾には乗り出さないという考えを示した。

これで、AL州では、当分の間、同性カップルへの結婚証明書発行の是非は、個別のProbate Judgeの判断に委ねられることになる。

なお、今回の連邦最高裁が執行停止要望を棄却したことは、今年央に想定される同性婚判決の行方を示唆するものとして注目されている(「Topics2015年1月19日 同性婚:最高裁が容認判断示すか」参照)。

※ 参考テーマ「同性カップル」、「司法